ADHDが急増中?ADHDかもしれない症候群とは?
ADHDが急増中?ADHDかもしれない症候群とは?
インターネットに載っているADHDチェックリストを見てみて、多くの方が当てはまると感じたのではないでしょうか。
近年、発達障がい者が増加していることがわかっています。とくに増加率が著しいといわれているのがADHDです。さらに「ADHDかもしれない」と悩む大人もふえるようになってきました。
ADHDかもしれないとネットの情報だけで決める危険性や、ADHD急増の原因、ADHDと健常者のちがいについてまとめます。
ADHDとは?
ADHDは脳機能の欠陥のひとつであり、生まれつき起こる障がい。多動性(落ち着きがない)や衝動性(思いつくと行動する)、注意欠陥性(注意力が低い)が行動にあらわれるのが特徴です。
多動性・衝動性が目立つタイプと、注意欠陥性が目立つタイプがあります。
多動性や衝動性が目立つタイプ
・カッとなって手が出やすい
・落ち着くことができない
・頭の中がいろいろな情報でいっぱい
・順番を待てない
注意欠陥性が目立つタイプ
・注意がそれやすい
・ものをよく無くす
・ミスが続く
・締め切りを守れない
・時間の約束にいつも遅れる
・整理整頓が苦手
この二つのタイプのほかに、どちらの要素も持った中間のような方もいます。
ADHDは急増している?
文部科学省による平成25年度「通級による指導実施状況調査」によると、平成18年から、発達障がいをもつ子どもの数は著しく上がっています。とくに平成18年とその翌年で変化が大きいのはADHDですね。
米国でも発達障がいをもつ子どもの増加が見られています。発達障がいと診断された3~17歳の子どもの割合は、2017年には17.8%(子どもたちの約6人に1人)になったという報告も。
さらに近年、子どもだけでなく、「大人の発達障がい」という言葉も広まりつつあります。
ADHDが急増している要因
発達障がいは生まれつきのものであり、急増したり、大人になってあらわれたりするのは不思議なことです。この原因は明らかになっていませんが、さまざまな説が挙げられています。
診断基準の変更
発達障がいを判断する診断基準は長い歴史のなかで繰り返し改訂されています。診断基準として使われていた「DSM-Ⅲ」は、落ち着きのない子ども(多動性)より、不注意が多い子ども(注意欠陥性)のほうがADHDの診断基準となっていました。
1994年に公表されたDSM-Ⅳでは、多動性、注意欠陥性のほかに、多動性と注意欠陥性の混合型が診断基準に加えられました。
つぎに2013年に公表されたDSM-5(現在の診断基準)では、症状が現れる年齢の下限が緩められています。それまで「7歳以前」に障がいがあらわれた子どもが診断の対象でしたが、「12歳以前」に変更。障がいの範囲も広くなり、自閉症スペクトラムとの合併診断が認められ、ADHDと自閉症どちらの特徴ももつ方も診断できるようになりました。
そして17歳以上は診断基準の項目がへらされ、大人もADHDの診断がつきやすくなっています。
ADHDが急増しているというより、基準の変更で診断がつきやすくなり、ADHDの発見が急増したという見方です。
認知度の向上
「発達障がい」や「ADHD」という言葉が注目されはじめたのは、ここ10年ほどの話ですね。今や「発達障がい」と調べれば、インターネット上のどこでも「チェックリスト」が公開されています。相談窓口も見つかりやすく、子育て時の違和感や、社会で働いているときの違和感を解決しやすくなっています。
さらに「発達障がい」だと発言をしてもいい空気ができてきていますね。それまで違和感があっても、自分がまわりに合わせるしかない、まわりに合わせられない自分がだめなんだ、と発達障がいの生きづらさを訴えられない方がたくさんいました。発達障がいの認知度が上がり、診断を受けやすくなったことが、ADHD急増の理由のひとつでしょう。
大人になってから気づく
子どもの頃は見過ごされてきた発達障がいが、大人になってから生きづらさとしてあらわれるケースがあります。
子どもの頃は宿題を忘れても、集中できなくても、それだけでは大きな問題として取り上げられることはありません。
しかし社会人になると、時間や納期を守れない、ミスが続く、仕事を続けられる集中力がないと、働いて生活していくことがむずかしくなります。
「発達障がい」だと相談しやすくなった現代、生きづらさで診断を受ける大人が多くなり、ADHDが急増したといわれる理由になったと考えられます。
スマホが原因説も
ADHDや大人の発達障がいが増えた要因のひとつに、「スマホ利用者の増加」とする説も。
スマホの画面ばかりに集中すると、自然と視野が狭くなりますよね。そのため健常者でも注意障がいが悪化するのではないか、という考えです。
スマホが普及してから、寝る前にスマホを見てしまう方もいるのではないでしょうか。
不規則な生活を過ごしていたり、良質な睡眠がとれていなかったりすると、日中に物忘れをしやすくなり、集中力を維持することがむずかしくなります。このような症状を、ADHDだと疑う方が多くなっているのかもしれません。
ADHDとADHD疑いのちがいとは?
インターネット上に公開されているADHDチェックリストに「当てはまっている」と感じて、診断名をつけずに、自分はADHDかもしれないと思いこむ方もいます。
よくADHDかもしれないと疑われるのは、うっかり屋の人や、活動的な人ですね。これらとADHDとの違いを確認しましょう。
ADHDとうっかり屋のちがい
うっかりがどのくらいの頻度で起こっているかによります。たまにうっかりミスをしてしまうのか、仕事する度にミスが起きてしまうのか。
ADHDとうっかり屋の大きなちがいは、ミスをしたあとに対処できるかという点です。
うっかり屋はミスをして叱られたあと、ミスをしない対処法を実践して、ミスの頻度をへらすことができます。
ADHDは対処法を知って実践しても完全に抜けてしまいます。たとえば明日に締め切りが迫っていてメモやカレンダーに残し、通知をオンにしても忘れてしまったり、やっていない課題や仕事をなぜか「やった」と思ったりしてできません。
ADHDと多動性・衝動性のちがい
体を動かすことが好きで、じっと待っていることが苦手という特徴は、ADHDにも活動的な人にも当てはまっているように感じますね。
活動的な人とADHDの大きなちがいは、ひとつのことを最後まで集中してやりきれるか。
ADHDの場合、集中力が維持できず、興味があちこちに行くので、やりっぱなしが多いです。活動的でフットワークが軽い人はひとつのことを最後まで続けることができます。
ADHDかもしれない症候群の危険性
ADHDのチェックリストだけでADHDかもしれないと決めつけてしまう「ADHDかもしれない症候群」の大人もふえています。さらにADHDの診断基準が緩んだことで、ADHDだと過剰診断され、内服薬を渡されることも。
ADHDの内服薬は副作用や依存性をともなうものもあり、ADHDでない方が服薬するのは危険です。もし本当はADHDでなかった場合、服薬で最初は効果があっても、どんどん効果が薄れていきます。しかし、その頃には服薬をやめることができず、効果がないまま処方を続けられるという事態に。
そのためインターネット上のチェックリストで「ADHDかもしれない」と思ったときは、ます以下のことに留意して診断を受けてください。
まずは環境を見直してみよう
ADHDのような症状で悩み、仕事や生活ができない状態になっているなら、発達障がいを診療している医師に相談するべきです。
しかし、ADHDの特徴はあるけれど生活できている場合は、まずは環境を整えてみましょう。
不規則な生活を送っていると、日中のミスや集中できない時間はふえます。ミスの対処法を実施しないと同じミスを何度もくり返します。仕事や仕事のやり方が合っていないと、集中力を持続できません。
そのため生活習慣を整える、仕事のやり方を変えるなど、環境を見直すことから始め、それでも改善しないときは医師に相談しましょう。
まとめ
ADHDが急増しているのは、時代の変化によるものです。診断基準の変更、発達障がいだと発言しやすい環境、スマホ利用者の増加などが要因として考えられています。
こうした時代に合わせて、ADHDかもしれないと疑い、過剰診断される方もふえてきました。ADHDでない方が安易にADHDのための薬を服薬するのは危険です。
ADHDかもしれない症状があったとしても生活ができている場合は、まず環境の見直しから始めてみてください。
<<参考>>
ADHDの9割は誤診? 疑似ADHDとは | 横浜つづきクリニック|内視鏡内科 心療内科 内科
ADHDの人は増えている? 「診断」をひもとく:朝日新聞デジタル
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