0か100か。発達障がい者が陥りやすい白黒思考による困りごと・対処法
0か100か。発達障がい者が陥りやすい白黒思考による困りごと・対処法
0か100か。白か黒か。「良い」「悪い」など、物事を二つの選択肢でしか判断できない状態を「白黒思考」といいます。発達障がいがなくても白黒思考の方もいますが、とくに発達障がいのある方は白黒思考になりやすいといわれています。
発達障がい者が白黒思考になりやすい理由、白黒思考になっている方が陥りがちな困りごとや対処法をご紹介します。
白黒思考になっている方が陥りやすい困りごとは?
- どれだけ親しくしていても一度いやな目にあうと、もう仲良くすることはできないと思う
- 友達の友達という関係がよくわからない
- グループに知らない子がいるとそのグループ自体がイヤになる
- 仕事でひとつミスすると、自分はなにもできない人間だと思ってしまう
- たくさん仕事できる日もあれば、まったくできない日がある
- 仕事が中途半端になっていることにとてもストレスを感じる
当てはまることはありましたか?
白黒思考になっている方は、以下のようになることが多く、仕事や人間関係で支障をきたしやすくなっています。
人間関係をリセットしがちになる
白黒思考になっている方は、人間関係をリセットしたくなることがよくあります。
どれだけ長く深く親しくしていても、ケンカしたり、一度いやな目にあったりすると終わりです。傷つくことを避けたり、もう相手に嫌われてしまっただろうと考えて、自分から関わるのをやめてしまいます。
また、人間関係には「友達の友達」「顔見知り」のような、微妙な関係がありますね。
相手との関係にあいまいな部分があると、関係をスパッと切ってしまいます。連絡先には、友達や両親など、ハッキリと関係に名前をつけられる方しかいないのではないでしょうか。
学生時代は問題なかったかもしれませんが、職場では「広く浅く」な人間関係が好まれますし、いやな思いをした人とも関係を切ることができません。
他人から見て悪くない人間関係でも、人間関係を理由に仕事をやめてしまう人もいます。
マイナス思考から抜け出せなくなる
白黒思考の方は、調子が良いときはすこぶる良いですが、悪いことが起こると、悪いことが100の状態になり、なんでもマイナス思考になってしまいます。仕事のミスが続くと、もう今日はだめかもしれないと思ったり、一度のミスですごく自分ができない人間だと感じたり。誰かに励ましてもらっても、自分が納得しない限りはずっとマイナス思考に。
そして、あまり良くない経験の方が記憶に残りやすく、気持ちの切り替えが上手ではないので、すべてが終わってしまったように感じます。
集中できる時とできない時の差が激しい
0か100かの白黒思考は、仕事の出来にも現れていませんか?
興味があったり、好きなことをする時間は、100どころか120ぐらいの力で働くことができますが、120も出した分、ドッと疲れてしまい、なにもできない0の日があります。
けれど、会社員は常に同じ就労時間で働く必要があり、一定の仕事が求められるもの。なにもできない日は受け入れられないので、どれだけ好きな仕事でも続かないことが、しばしば起こってしまいます。
発達障がい者が白黒思考に陥りやすいのはなぜ?
発達障がいの「あいまいなことがわからない」「注意を向けられる幅が狭い」などの特性により、白黒思考に陥りやすくなっています。
あいまいなことがわからないため
自閉症スペクトラム(ASD)の方には、「少し」「だいたい」など、あいまいなことがわからない特性があります。
だれでも、わからないことや謎なものには不安やストレスを感じますよね。
健常者 :10分ぐらいかな、と考えられる人は余裕で待つことができる、
発達障がい者:「ここで待ってて」と言われたようなイメージ。
「ここで待ってて」とだけ言われたら、どのぐらい?と気になって聞いてしまう人もいれば、「すぐ戻ってくるだろう」と不安を落ち着かせる人もいるかもしれません。
このように発達障がいのある方はあいまいなことがわからず、不安やストレスを感じやすいので、ハッキリ白黒つけたくなります。
意識を向ける幅を広げられない
発達障がいの特性があると、多方面に目を向けることができず、一点に絞られがちになります。
白黒はっきりと分かれておらず、グレーなときは、白黒よりも多くの選択肢があります。迷ったり、考えたりすることが多く、どの選択肢に意識を向ければ正解なのかがわからなくなります。なので、白黒とハッキリ分かれさせて、意識を向ける幅を狭く、単純なものにしようとすることがあります。
白黒思考をやわらげる思考・対策は?
白黒思考は完璧主義ともいって、仕事の出来などで良い面が見られることもありますが、社会はどちらかというと柔軟な思考が求められます。白黒思考による苦しみを抱えながら、社会で働く人がほとんどでしょう。
白黒思考をやわらげる方法を身につけて、仕事をしやすくしましょう。
人によって感じ方は異なることを認識する
同じ出来事が起こったとしても、人によって感じ方はちがうことを認識しておく必要があります。
たとえば、同じ内容のニュースを見ていても、人によって考えや意見はちがいますね。それは日常生活でも当てはまります。
誰かがミスをしたとき、「なんでミスをするんだ」と怒る人や、「そういうミスもあるよね」と同情する人、人のミスはどうでもいいと思う人もいます。
「そういうミスもあるよね」と同情する人は、過去に同じようなミスをした人です。人のミスはどうでもいいと思う人は、普段から人に興味がないのでしょう。
このように、人は性格や体験によって考えや意見が異なります。
すべての人の性格や体験を知ることはできません。「全員こう思っている」と思い込まず、人によって感じ方は違うのだと認識することが、極端な思考から抜け出すヒントになります。
選択肢が二つになったときは細分化を意識する
「するか」「しないか」など、選択肢が二つしかないと思ったときは一度、「するか」「しないか」の間の選択肢を考えてみましょう。
たとえば、仕事内容は好きだけど年収が不満なとき、転職するか、しないか、の二択になりがちです。けれど、細かく考えると、「今のスキルで転職してキャリアアップできるのか」「ほかの会社で同じような仕事ができるのか」などの課題が見つかります。
すると、「今の仕事をしながら副業をする」といった新たな選択肢が見つかります。
このように選択肢が二つしかないと思った時こそ、その周りや背景を深掘りして、細分化することを意識しましょう。
紙に書いて客観的に見る
白黒思考でいるとき、マイナス思考になったときは、ひたすらに悪い方向へ頭が働きます。あれもこれもと頭の中で結びつけて、激しく疲れてしまうことがあるでしょう。
マイナス思考になったときは、「紙に書く」というワンクッションを置くことで、あれもこれもと結びつけるのを抑えられます。
紙に書いて見直すと、もっと客観的にその物事を見られるようにもなり、「これは考えすぎなのではないか」「白黒思考になっているな」と冷静になれます。
マイナス思考になりそうなときは、考えをすべて紙に書きだしてみましょう。
ルーティンをつくって生活習慣を正す
睡眠不足や不規則な生活が続くと、必要な脳内物質の分泌がへり、発達障がいの特性が出やすくなります。
または白黒思考によってマイナスから抜け出せず、明日がイヤになり、睡眠不足や不規則な生活になってしまう方もいるかもしれません。
このような失敗に陥りがちな方は、「良いことがある」と確信できるルーティンを、毎朝同じ時間につくるのが効果的です。
白黒思考が強いということは、思い込みの強さに繋がります。
人はさまざまな考えをもっているとわかりながらも、「みんなこう思っているだろう。間違いない」と考えるのは、思い込みが強いですよね。
この思い込みの強さを利用して、「毎朝〇時に○○をすると、その日の仕事は調子がよくなる」というルーティンをつくりましょう。
思い浮かばない方は、「今日は仕事の調子がよかった、良いことがあった」と思う朝に何をしたのかを思い出して、ルーティンに結びつけそうな行動を見つけましょう。
まとめ
発達障がい者に起こりやすい白黒思考があると、仕事や人間関係などで支障をきたしやすくなります。人の考えは違っていることをしっかり認識すること、白黒思考を細かくすること、紙に書くことで、白黒思考をやわらげられます。
体調が悪いときにマイナス思考になりがちだと感じている方は、毎朝『良いことが起こる』ルーティンをつくって、必ずその行動をするように徹底しましょう。
参考