2022.05.27

知的障がいではないけれど普通の子どもたちとも違う。もしかしたら境界知能かも?

境界知能

知的障がいではないけれど普通の子どもたちとも違う。もしかしたら境界知能かも?

時間はかかるけれど、普通の子たちと同じように作業できる。コミュニケーションは問題ない。けれど、どれだけまじめに勉強しても、テストの点数がいつも平均以下。お子様本人も勉強ができないことを悩んでいるみたい。それは、もしかしたら「境界知能」かもしれません。境界知能とは何か、境界知能の子が抱えやすい問題や、境界知能のお子様への対処法を解説します。

 

境界知能とは?

境界知能とは、知的障がい者ではないけれど、普通の人の枠にも入ることができない人たちのことを指します。

知的障がい者だと診断されるのは、IQ69以下。「普通の人」とされる平均的なIQは85~115です。なので、どちらでもない「IQ70~84」の方は「境界知能」と診断されます。

昔はWHOによる区分で、「IQ70~84」は「境界線精神遅滞」といい、知的障がいの一つとして定義されていました。しかし、それだと知的障がい者の人口があまりに多く、支援が追いつかなくなるため、知的障がいから除外されたという過去があります。

境界知能は日本人の7人に1人いるとされます。35人のクラスであれば、約5人が「境界知能」かもしれない計算になります。

クラスの中でテストの点数がいつも低い5人がいたとして、まわりの反応はどうでしょうか。「努力不足」「やる気がない」と決めつけることが多いでしょう。

さらにすべてのことができないわけではなく、あるテストでは点数がとれる子もいるので、「嫌いな教科はまじめに勉強しないのでは」と疑われることもあり、「境界知能」だと気づかれないことが多いです。

 

境界知能と発達障がい・グレーゾーンとの違い

発達障がいのお子様はテストの点数はとれていて知的な問題はなく、環境しだいでは普通の子どもたちと問題なく過ごせることが多いです。また、こだわりの強さがあったり、会話で一方的に自分の話をするなど、性格やコミュニケーションが特徴的です。グレーゾーンといわれるお子様にも似た特徴があります。

境界知能のお子様はテストの点数がいつも低く、学習面で全体的に遅れています。コミュニケーションでも、特徴があるというよりも、まわりより子どもっぽいイメージです。

勉強でも生活やコミュニケーションでも2~3才分遅れているというのが、境界知能です。

 

境界知能の子どもの特徴

境界知能の疑いがあるお子様には以下のような特徴があります。

  • 見る、または聞く力が弱い
  • 予想外のことにすぐ対応できない
  • 感情をコントロールすることが苦手
  • 作業をすばやくおこなうことが苦手
  • 論理的に物事を説明することができない
  • 力の加減ができない    など

 

 

境界知能の子どもが抱える問題

境界知能は障がいとも呼べず、普通の人の枠にも入ることができないことから、以下のような問題が起こるおそれがあります。

 

支援をスムーズに受けられない

療育手帳をもらえなくても、特別な支援を受けられる「支援級」で学校の授業を受けたり、子育て相談をしたりすることはできます。ただ、就職に強い高等支援学校は、手帳がないと入学資格を得られません。なにか専門的な道を探すのもひとつの手ですが、一般と同じように高校進学、社会人になると生きづらさを抱えたままになってしまうでしょう。

 

自己肯定感が育たない

境界知能のお子様は勉強をがんばっていてもテストの点数が伸びず、「努力不足なのではないか」「自分はできないやつだ」と、自分を責めて自信を失いがちです。

とくに境界知能のお子様はまわりからも一般の子どもと同じような扱いを受けるので、本人もまわりとくらべ、自信を失う機会がとても多いです。

自己肯定感が育たないと、勉強以外にも自信をなくし、消極的になり、ひいては一生に大きな影響をあたえるおそれがあります。

 

「普通」の中で不適応を起こす

境界知能のお子様は、知的障がいとちがい、言葉の受け答えはハッキリとできる子が多いので、境界知能の可能性に気づいていても、「もしかしたら勘違いかもしれない」「これから伸びるかも」と期待され、一般の子どもたちと学校生活を送ることがよくあります。

しかし、普通の子どもたちの中で、まわりとの違いに気づき、まわりと合わせようとしたり、周囲の大人が普通の子どもと同じように接したりして、「不適応」を起こす子もいます。

・わからないのにわかったふりをして勉強しない

・まわりの子どもにストレスをぶつける

・いじめにあう

・不登校になる

など、もっと勉強できなくなり、将来も危うくなってしまいます。さらには精神的な障がいを引き起こすおそれもあります。

 

 

境界知能かもしれない子どもにはどうしたらいいの?

知的障がいでなくても、知能検査を受けることは一つの支援になります。

知能検査では全体的なIQだけではなく、子どもがどのようなことを得意としているか、苦手としているかを知ることができます。なので、その子に合った勉強や生活の支援方法がわかりやすいです。

また、お子様自身も、「どうして自分だけできないんだ」「まわりとくらべて努力していないだけじゃないのか」と答えの出ない悩みを抱え、自分を責めていたりします。そんな子どもたちは、「境界知能」と診断されることで「境界知能だからできることが普通の人より少ないんだ」と安心できることもあります。

小児神経専門医のいる施設|一般社団法人 日本小児神経学会

 

 

相談先を決める

境界知能について、どこにも相談できないわけではありません。また、ご両親も家族の中だけで答えの出ない悩みを抱えるより、相談先を決めて解決の糸口を見つけた方が精神的にも良いでしょう。

以下の施設に相談すると、子どもとの接し方や、頼れる支援の紹介などを相談員から得られることがあります。

・発達障がい児者支援センター

・精神保健福祉センター

・子ども家庭支援センター   など

また、境界知能の子どもにも療育手帳を交付している自治体もあります。お住まいの自治体の窓口にも問い合わせてみましょう。

 

 

子どもの悩みに共感する

親も苦しいかもしれませんが、お子様自身も努力しているのに報われない苦しみを抱えています。さらに理解者がいない環境だと、お子様はもっと孤独になってしまいます。

なので、悩みを聞いたときは、解決策だけではなく、お子様の気持ちに寄り添って共感することも大切です。

理解者もおらず、ただ勉強は「苦しいもの」「努力しても意味のないもの」だと覚えてしまうと、もっと勉強がいやになります。

引き起こされる悪循環
勉強がいやになるもっと勉強ができなくなるまわりに怒られる・バカにされる

理解者がいるだけで、お子様自身も前向きに考えられるようになります。悪循環から抜け出し、適切な学習方法を見つけられる可能性が高まります。

 

子どもの学習上の特徴を理解して具体策を立てる

知能検査で特定の分野が弱い子には、それを補うように教える必要があります。「もっと勉強に集中できるようにしよう」「自分が教えよう」「塾に通わせよう」だけでは、解決になりません。

何に悩んでいるのか、何を苦手としているのかを知る必要があります。

知能検査で聴覚情報よりも視覚情報を理解することが得意だと結果が出ているなら、言葉で教えるよりも、図を作成して教えると理解しやすくなります。

「全然覚えられない」という悩みをもつ子には、その子に合った記憶方法を提案するなど、子どもの学習上の特徴を理解して、すぐに実践できるような具体策を立てましょう。

 

 

まとめ

知的障がい者でもなく、普通の人の枠にも入れず、生きづらさを感じている子どもがいます。まわりに理解されず、自信を失うことが多く、大変な問題を抱えています。まずは親が理解者になり、適切な支援方法を見つけることが大切です。

 

参考

知っておいてほしい…知的障がいとの狭間「境界知能」と呼ばれる人たち | KARADAs

困っている子を見逃すな!もしも子どもが「境界知能」だったら?親や周囲の人がやるべきこと/児童精神科医・宮口幸治さん

なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした | NHK | WEB特集

 

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