引きこもりの定義とは?現状・症状・引きこもりと発達障がいの関係性
引きこもりの定義とは?現状・症状・引きこもりと発達障がいの関係性
2021年8月には「ひきこもり実態調査」が厚生労働省によって取りまとめられたことで、ひきこもりの現状に注目が集まり、ひきこもり相談窓口をふやす措置がとられたり、6月に発行された「ひきこもり白書2021」が話題に上がったりしています。
ここで改めて引きこもりの定義とは、引きこもりと発達障がいの関係性、引きこもりへの対応について解説します。
引きこもりの定義とは
引きこもりの定義は調査とともに変更されることがあります。以前は、家から6か月以上出ない状態を「引きこもり」と定義していましたが、内閣府がおこなった平成30年度調査では、以下のように「引きこもり」の定義が公表されました。
②近所のコンビニなどには出かける
③自室からは出るが、家からは出ない
④自室からほとんど出ない
①から④のどれかに当てはまり、その状態が6か月以上連続して続いている場合、「引きこもり」と定義づけられます。
ただし、以下の方は引きこもりの定義から外れます。
- 引きこもりになったきっかけが「身体的病気」
- 妊娠、介護・看護、出産・育児がきっかけに引きこもりになった専業主婦・主夫、家事手伝いであり、最近6か月間に家族以外の人とよく会話した・ときどき会話した方
- 自営業または自由業で自宅で仕事をしている方
引きこもりの症状
引きこもりの症状では、
・昼夜逆転
・ストレス、暴力
・強迫行為
などがあります。
朝や昼に太陽の光を浴びないと、体内リズムが崩れ、夜に寝付けず、昼夜逆転の生活になりやすいです。また、昼間はみんなが忙しく生活しているので起きていると焦りや不安を感じやすいですが、夜はみんなが寝ているため、周囲を意識することなく過ごせることも、昼夜逆転の生活になる理由のひとつとなっています。
さらに体内リズムが崩れたり、自分の中にたまったエネルギーを発散できない状態になると、イライラしやすくなります。上手くストレス発散ができないと家族に身体的暴力をしてしまうことも。
「強迫行為」は過度な不安から、同じ行動をくり返したり、止めようと思っても止められないことを指します。具体的には、手を何度も洗う、鍵を閉めたか何度も確認する、など。ひきこもっている状況のせいで将来への大きな不安に悩まされ続け、不安に動かされて、あるいは不安を和らげるために、強迫行為をおこなうことがあります。
引きこもりの現状
2019年に内閣府が実施した40~64歳を対象にした調査では、引きこもりの推計61万3000人。15~39歳の引きこもりの推計は54万1000人。あわせて国内総数では、引きこもりの人数は110万人以上とされています。
内閣府がおこなった調査から現状を解説します。
男性が7割超
平成30年度調査(40~64歳が対象)
平成27年度(15~39歳が対象)
画像引用:特集2 長期化するひきこもりの実態
親和群・・・以下すべてに当てはまっており、引きこもりに肯定的な方
・家や自宅に閉じこもっていて外に出ない人の気持ちがわかる
・自分も閉じこもりたいと思うことがある
・嫌な出来事があると外に出たくなくなる
・理由があるなら家や自室に閉じこもるのは仕方ない
一般群・・・上記以外の方
広義の引きこもり群で見ると、39~64歳の男性の割合が著しく、7割を超えています。
男性の方が多い理由として考えられるのは、社会的な許容度です。女性は昼間に外出していても、家事手伝いや主婦として見られます。しかし、男性は昼間に出歩いていると奇異な目で見られるため、外出しなくなり、引きこもりになる可能性が高くなるという考えです。
また、男性の社会的さらに就職氷河期を経験した40~44歳の方の3人に1人が「20~24歳」で引きこもりになったと回答しており、就職活動も原因ではないかと考えられています。
引きこもりの最多のきっかけは「退職したこと」
40~64歳の方がひきこもりになった原因は「退職したこと」が最も多く、次に「人間関係がうまくいかなかったこと」が多いです。
15~39歳の方が引きこもりになった原因は「不登校」や「職場にうまくなじめない」「就職活動」「人間関係がうまくいかない」という回答が多くありました。
平成30年度調査(40~64歳が対象)
平成27年度(15~39歳が対象)
画像引用:特集2 長期化するひきこもりの実態
引きこもりは長期化している
画像引用:特集2 長期化するひきこもりの実態
平成27年度に15~39歳におこなった調査では、「7年以上」ひきこもっていると回答した方は全体の約3割でした。しかし、40~64歳を対象にした平成30年度の調査では、引きこもり状態になったから7年以上経過したという回答が5割を超えています。引きこもりの長期化、高齢化がすすんでいます。
引きこもりと発達障害
引きこもりと発達障がいの関係性がよく指摘されています。発達障害とは、脳機能の偏りのことで、コミュニケーションがうまくできない、指示をすぐに理解することができない、など仕事や人間関係の悪化につながりやすい障がいです。
発達障害は生まれつきのものですが、子どもの頃は見過ごされ、大人になってから周囲と仕事をするうちに、まわりとうまくいかず、発達障害だと明らかになる「大人の発達障害」もあります。
さらに発達障害は思い込みが強く、ストレスを抱え込みやすい性質の方が多く、発達障害が原因で起こる障害として「不安障害」「うつ病」「引きこもり」などがあります。
・「少し」などあいまいな指示がわからない
・約束や時間をまったく守れない
・同じミスをくり返す など
発達障がいの特徴について、くわしくはこちらの記事をご参考ください。
https://www.minnanosyougai.com/child/syougai
大人の発達障がいの特徴・診断・治療
子どもの頃からまわりと様子がちがっていた、周囲の大人に指摘されたことがあるという方は、発達障害を疑ってみるとよいかもしれません。
引きこもりからの回復
引きこもりが発達障がいや精神障がいなどで起こっている可能性があるときは、精神科や心療内科の受診をおすすめします。もし引きこもりから脱出したとしても、同じ症状で悩めばまた引きこもってしまう可能性があるからです。
ただ発達障がいは診断がむずかしいので、発達障がいを多く診ているところや、専門としている病院を調べて行きましょう。
まずは家族の理解から
まわりから見ると、ひきこもっている状態は「甘えている」「怠けている」という印象があるでしょう。しかし、本人は「このままではいけない」「将来が不安」といったストレスを抱えて、どうしようもないと苦しんでいることがあります。
そのため、まずは家族が理解し、悩みに共感することが必要です。何かをさせようという前に、本人が話しやすい環境をつくり、適度な距離を保って接することから始めましょう。
その際、以下の話題は避けた方がよいでしょう。
- 将来の話
- 学校、仕事、同世代の人のうわさ話
- 引きこもりについて議論や説得
また医師に相談し、適切な距離や接し方を聞いて実践していくことも大切です。
趣味などで他者と交流する機会をもつ
ひきこもっていた方が外で仕事をして他者と交流するのはとてもハードルが高いです。
まずは同じ趣味の仲間と集まったり、興味のある習い事をしたり、ボランティアなどに参加してみたり、適度に他者と交流できるところから始めましょう。
まとめ
現在、引きこもりの長期化が深刻化しています。引きこもりの裏には、本人が葛藤を抱えていたり、発達障がいや精神障がいなどが潜んでいたりする可能性があります。
子どもの頃からまわりと様子が違っているなど気づいた点があれば、心療内科や精神科で医師に相談することをおすすめします。
無理やり外や病院に連れだすのではなく、まず引きこもりには理解や共感を示し、本人が話しやすい環境をつくることが大切です。
参考
特集2 長期化するひきこもりの実態|令和元年版子供・若者白書(全体版) - 内閣府
第2章 引きこもりと発達障害(福島学院大学 大学院附属心理臨床相談センター 心療内科医師 星野仁彦
「発達障害」の29歳が引きこもりを脱せた理由 | 私たちは生きづらさを抱えている | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
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