2021.12.10

合理的配慮の義務化!就労者にする合理的配慮とは?具体的な方法は?

合理的配慮

合理的配慮の義務化!就労者にする合理的配慮とは?具体的な方法は?

障害者差別禁止法より、民間企業の合理的配慮が義務化がされます。交付は2021年6月4日であり、施行されるのは交付日から三年以内となっています。

今はまだ努力義務化ではありますが、最近では「合理的配慮をしなかった」として、就労者が事業側を訴えることもふえてきています。このような事態を防ぐために、合理的配慮とは何か、合理的配慮をおこなう手順、合理的配慮の具体例をご紹介します。

 

合理的配慮とは?

合理的配慮は、障害者差別禁止法によって決められています。

合理的配慮をわかりやすく説明すると、障がいのある人が「障がい」が理由で、健常者よりも意思や行動が制限されないように、事業側やまわりの人が過重の負担にならない程度で、その人に合わせた対応をすることです。

過重の負担にならない程度のため、すべての要求にこたえる必要はありませんが、要求の実現がむずかしい場合はまず代替案を出し、障害者の要求と対応を調整することが求められます。

過重な負担を判断する要素
・事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか)
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
・事務・事業規模
・財政・財務状況

 

合理的配慮に罰則はある?

障害者差別禁止法や障害者雇用促進法では、合理的配慮の提供義務について罰則は決められていません。ただし障害者が「合理的配慮に応じてもらえなかった」と訴えを起こすと、民法や労働契約法の違反に該当するか判断され、損害賠償の支払いを命じられるおそれはあります。

合理的配慮に関する法律
・公序良俗(民法90条)
・不法行為(民法709条)
・信義則(労働契約法3条4項)
・解雇権乱用(労働契約法16条) など

また、合理的配慮をおこなわない不平等な事案が起こり、管轄省庁から報告を求められたとき、事業側が虚偽の報告をしたり、報告を怠ったりした場合には「罰則」があたえられます。この場合は20万円以下の過料に処せられます。

 

 

合理的配慮のプロセス

合理的配慮をおこなうまでのプロセスは「対話→調整→双方の合意」であると定められています。具体的に、企業が合理的配慮をおこなうプロセスは以下になります。

①障害者や関係者が申し出る

②企業との話し合い

③合理的配慮の実施

 

①障害者または関係者が申し出る

合理的配慮をおこなうために、雇い主側が障害について当事者に積極的に聞くのは、プライバシーの保護問題に関わる場合があるので、慎重におこなわないといけません。

なので合理的配慮の実施は、障害者またはその関係者が要望を申し出ることから始まるのがほとんどです。

 

②企業との話し合い

配慮には「してあげる」「こちらからする」といったイメージがありますが、合理的配慮の言語である「Reasonable Accommodation」の「Accomodation」には、「調整・便宜」という意味が込められています。そのため、お互いにとって働きやすい環境にはどうすればいいのかを話し合うことが大切です。

その申し出が事業側の「過重な負担」に当たる場合は、申し出た方に認めてもらうように理由を説明する義務があります。また、できるかぎり実現可能に近づけるよう、代替案を出すことが望ましい対応です。

 

 

合理的配慮の実施

話し合いの末、お互いの合意を得られたら、合理的配慮をおこなうために、設備や人員の整備などをおこなっていきます。

 

職場における障がい別・合理的配慮の具体例

職場では、具体的にどのような合理的配慮が必要になるのでしょうか。

より詳しく知りたい方は、内閣府が提供する「合理的配慮サーチ」もご参考ください。

ここでは一例を障害別にご紹介します。

・視覚障がい

・聴覚障がい

・身体障がい

・精神障がい

・発達障がい

・知的障がい

・内部障がい

 

視覚障がい

視覚障がいにはまったく見えない人と、見えづらい人がいます。見えづらい人は視界の一部しか見えなかったり、物がゆがんで見えたり、まぶしさがあったりと病気によって見え方に特徴があります。そのため以下のような合理的配慮が望まれるでしょう。

・資料を拡大文字や点字で作成したり、資料の内容を読み上げたりする
・指示の位置関係をわかりやすく伝える
・パソコンの読上機能を使えるように資料のテキスト形式データを提供する
・段差がある場所は事前に伝えて注意を促がす
・物の場所を定位置にする   など

 

聴覚障がい

聴覚障がいはまったく聞こえない人と、難聴、中途失聴の3つに分類されます。話すことにも障害を抱えている方もいます。

聴覚障がい者と対話をする際、手話や筆記、触手話、指点字、筆談、キュートスピーチなどの方法がありますが、人によって利用できる方法は異なります。聞きやすい音も人それぞれですので、当事者と話し合い、症状に合わせて対応することが必要です。

・筆談や手話など目で見てわかる方法でコミュニケーションをとる
・ゆっくりはっきりと話したり、複数の発言が交ったりしないようにする
・文字が書けるボードやタブレットを置いておく
・危険か所や危険の発生を視覚で確認できるようにする  など

 

 

肢体不自由

肢体不自由の方には、設備や作業環境を整える配慮を求められます。

・身体や車いすに適したデスクを用意する
・出入口付近にデスクを置く
・移動の支障になるものを通路に置かない
・スロープ、手すりの配置
・体温調整がしやすい服装の着用を認める   など

 

精神障がい

精神障害は人によって調子が悪くなる原因・タイミングが異なります。また調子が良いときと悪い時の差が激しいため、出勤時間や仕事量に配慮する必要があります。

・精神が不安定になったときに休める個室を確保する
・本人の体調に合わせて業務量を調整
・仕事の優先順位をわかりやすく教える
・通院等を考慮してシフトを調整する
・教育の担当者を定める  など

 

発達障がい

発達障害にはADHD、自閉症スペクトラム、LDがあります。発達障害の種類によって大きく特性が異なります。また人によっては「感覚過敏」があることも。音が人より大きく聞こえたり、太陽光で目が痛かったりなど、人より感覚が鋭いことです。

本人と困り事を話し合って合理的配慮をしましょう。

・指示を端的でわかりやすいものにする
・読み書きに困難がある場合は、タブレットなどの補助具の使用を許可する
・聴覚過敏がある場合は耳栓などの使用を許可する
・作業しやすい場所にデスクを置く
・こだわりが強い場合は作業手順などを一定にする  など

 

 

知的障がい

本人が意思を伝える事がむずかしいため、相談できる担当者や、支援スタッフの介入を許可する必要があるでしょう。そのほか、資料や言葉での指示を工夫する配慮が望まれます。

・ゆっくり話したり、コミュニケーションボードを用いる
・資料を簡潔な文章にする
・文章にルビをつける
・実物や写真、絵を用いてわかりやすく業務指示する
・業務は一つずつ指示する
・相談できる担当者をつける  など

 

 

内部障がい

心臓や腎臓、呼吸の機能など体の内部に障害がある状態です。体力が低下していたり、定期的な通院が必要だったりします。またペースメーカーなど機器を身につけている人もいるので、機器面での配慮が必要になるでしょう。

・症状に応じた柔軟な対応をおこなう
・体調に合わせて仕事をする場所、仕事内容を調整する
・通院や服薬などのために休暇や休憩に配慮する

 

 

まとめ

3年以内に民間企業も義務化される合理的配慮。合理的配慮をおこなうことで、障害者が働きやすくなり、業務にも良い影響があらわれるようになります。

障がい当事者と話し合い、当事者と企業、お互いにとって良い合理的配慮をおこないましょう。

 

 

参考

障害者差別解消法改正をわかりやすく解説。企業に求められる姿勢とは?

合理的配慮とは?障害のある人の権利と事業者の義務、職場における合理的配慮の具体例を紹介します | LITALICO仕事ナビ

合理的配慮とは?障害者差別解消法で法的義務化されます!|公益財団法人 日本ケアフィット共育機構

障害者差別解消法の改正 (合理的配慮の提供義務)(2021年) | ブログ | Our Eyes | TMI総合法律事務所

「合理的配慮」はどこまで浸透したか-障害者差別解消法の施行から2年 |ニッセイ基礎研究所

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