2021.11.12

ヤングケアラーとは?調査から見る現状・支援

ヤングケアラーとは?調査から見る現状・支援


ケアラーとは、家族などの介護や世話をする人です。これまで介護や世話をするケアラーにたいしての支援はそれほど重視されていませんでした。
しかし近年、介護や世話をする人も支援が必要だという考えが広がり、注目され始めたのが「ヤングケアラー」です。

2020年3月には、全国の要保護児童対策地域協議会や中高生に、「ヤングケアラー」の実態に関する全国調査がおこなわれました。
ヤングケアラーとはなにか、ヤングケアラーの現状や支援などをご紹介します。

 

ヤングケアラーとは?

病気や障がいのある家族のケアや世話をしたり、介護やケアで忙しい大人の代わりに家事をしたり、労働をしたりする18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」といいます。
ヤングケアラーが介護やケアをしているのは、多くは親や祖父母ですが、きょうだいや親戚の場合もあります。
たとえば、以下のような例が「ヤングケアラー」と呼ばれます。

  • 病気や障がいがある家族のために買い物や料理など家事をしている
  • 親の代わりに幼いきょうだいを世話している
  • 障がいや病気のあるきょうだいの見守りをしている
  • 認知症など目を離せない家族の見守りをしている
  • 障がいがある家族のために通訳をしている
  • 病気や障がいがある家族のために労働をしている
  • アルコールや薬物など問題がある家族の対応をしている
  • 障がいや病気のある家族の食事や入浴・トイレなどの介助をしている
  • がんや難病などがある家族へ、長期または長時間の看病をしている

 

ヤングケアラー問題

子どもたちが介護や家事を大人の代わりにおこなって、家族の役に立っているとよろこんでいたり、家族の絆が深まったりすることもあるので、ヤングケアラーすべてが問題というわけではありません。
しかし、つぎのようなことが起こっている場合は問題として意識する必要があります。

子どもの学校生活や人間関係に悪影響が出ている

  • 家族のケアや家事などで勉強の時間が確保できない
  • 長時間のケアや労働などで疲れが十分にとれず、授業に集中できない
  • 放課後や休日は家族のケアなどがあり、友達と遊ぶ時間がない
  • 家族のケアや世話などを理由に、就職や進学先を変える、またはあきらめる

また家族の支援をはじめた年齢が低いと、子どもの成長に支障が出てしまっているおそれがあります。
子どもの学校生活、人間関係、将来まで影響が出ている場合は、ヤングケアーの早期支援が必要になります。

 

 

ヤングケアラーは見つかりにくい

ヤングケアラーは、「家族は助け合わないといけない」という使命感があったり、問題と思っていなかったり、まわりに普通と思われたかったりして、周囲の大人に訴えることが少ないため、見つかりにくく、支援が遅れるという問題があります。

厚生労働省による、ヤングケアラーに関する全国調査では、ヤングケアラーを把握できていない理由について、以下のように回答が出ています。

引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

ヤングケアラーを支援しにくい

ヤングケアラーを支援しにくいことも問題のひとつです。
子ども自身がケアにやりがいを感じていて支援を求めない場合や、家族や周囲の大人に「子どもがヤングケアラーである」という認識がなく、支援に動けないことがあります。

またヤングケアラーへの支援体制が整っていないこともひとつの理由です。中学や高校などにおこなった全国アンケート調査では、「ヤングケアラーという言葉を知っているが、特別な対応をしていない」と答えた学校が最多でした。

 


引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

ヤングケアラーの現状

2020年3月の全国調査では、中学校や高校のヤングケアラーへの対応に関するアンケートと、全国の中学2年生・高校2年生へのアンケート調査もおこなわれました。
こちらのアンケート調査から、ヤングケアラーの現状を見ていきましょう。

 

ケアを始めた年齢は平均9.9歳

ヤングケアラーが何歳から家族の世話をしているか、アンケートをとると、中学2年生は平均9.9歳。全日制高校2年生は12.2歳が最多。

学年ごとにカテゴリーを分けると、中学2年生は「小学生(高学年)」から家族の支援を始めたという回答が多く、全日制高校2年生は「中学校以降」が最も高いです。

さらに就学前から支援を始めたというヤングケアラーも、多いところで8.8%もいることがわかっています。

幼い頃から家族の支援を始めると、「当たり前」という感覚が強くなり、相談しにくくなってしまいます。

引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

 

ヤングケアラーの把握状況は6割程度

「ヤングケアラーについて知っており、学校として意識し対応をしている」という中学校や高校へ、ヤングケアラーの実態を把握しているかどうかをアンケートしたところ、「把握している」は、中学校で61.2%。全日制高校では、37.5%。
ヤングケアラーに対応している学校でも、十分に把握しきれていないという現状があります。


引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

 

ヤングケアラーは1クラスに1人以上

厚生労働省の「中高生の生活実態に関するアンケート全国調査」によると、ヤングケアラーは中学2年生で全体の5.7%、高校生で4.1%いることが明らかになりました。
中学生は約17人のうち1人、高校生は約24人のうち1人がヤングケアラー。
つまりヤングケアラーである子どもは、1クラスに1人2人はいるという計算に。

引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

 

ケアに費やす時間は平均4時間

ヤングケアラーが家族のケアをしている頻度や時間を調べると、ケアの頻度は中学校も高校も「ほぼ毎日」という回答が最多でした。


引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

平日1日あたりにケアに費やす時間は、中学2年生は平均4.0時間。全日制高校2年生は平均3.8時間。家族のケアに7時間以上費やしているヤングケアラーも1割以上いることがわかりました。

とくに通信制高校は、7時間以上家族のケアをしている割合が全体の2割以上。これでは子どもの学業や生活に支障が出てしまうでしょう。

引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

ケアなど支援をする時間ごとの、子どもたちの「現在の悩み事や困りごと」を見ると、世話の時間が1日7時間以上費やしている子どもが多く困っていることは以下になります。

 1.進路 ・・・58.9%
 2.友人との関係・・・34.2%
 3.家庭の経済的状況・自分と家族との関係 ・・・31.5%

また、どの時間でも「進路のこと」という結果が最多。さらに通信制高校への入学理由や全日制高校をやめた理由を調べると、割合は低いけれど「家族の世話や介護」がありました。

家族の世話や介護のために進路を変えなくていけないことのほかに、時間がなく、受験勉強など長時間の勉強に集中できないのも、進路に不安をあたえているのではないでしょうか。

引用:ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

 

 

 

日本のヤングケアラー支援は?

日本ではまだ法制度などが整備されていませんが、このヤングケアラーに関する全国アンケート調査を受けて、ヤングケアラーへの支援策に動き出しています。
ヤングケアラー支援のためのプロジェクトチームが結成され、2020年5月、国内初のヤングケアラーの支援策が発表されました。
ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告によると、以下の内容が、今後取り組むべきと検討されています。

 

早期発見・把握

ヤングケアラーの支援は早期発見が大切です。
ヤングケアラーへの理解を深めるために、福祉・介護・医療・教育など関係機関や、専門職、ボランティアなどへ、ヤングケアラーに関する研修や学ぶ機会を積極的に取り入れることが検討されています。
また地方自治体がヤングケアラーに関する現状をしっかりと把握するように促すことも、取り組むべきとされています。

 

 

ヤングケアラー支援の環境整備

ヤングケアラー支援団体と連携し、悩み相談をおこなう地方自治体への支援を検討中です。
そのほか関係機関との連携をスムーズにするため、マニュアルの作成なども取り組むべき、とされています。
学校など教育機関にはスクールソーシャルワーカーなど配置をふやすための支援をするなど、子どもが相談しやすい環境づくりにも動き出しています。

 

 

ヤングケアラーの認知度の向上

ヤングケアラーの認知度は低く、今回のアンケート調査でも、中学・高校2年生はヤングケアラーについて「聞いたことがない」という回答が8割以上。
ヤングケアラーを支援しやすい環境にするためには、ヤングケアラーとは何か、ヤングケアラーの問題を多くの人が知る必要があります。

そこでプロジェクトチームは、2022年度から2024年度までの3年間をヤングケアラー認知度向上の「集中取組期間」とし、社会全体の認知度を調査しながら、中高生たちの認知度5割を目指す方針です。

 

 

まとめ

ヤングケアラーは家族の介護や世話などをしている18歳未満の子どもの事です。家族の介護や世話で子どもらしい学校生活をおくることが困難となっていることや、ヤングケアラーが見つかりくいこと、支援しにくいことなどが問題となっています。
ヤングケアラーのためにまわりができることは、ヤングケアラーという存在を知り、認知度を高めることや、子どもが相談しやすい環境をつくることです。

 

 

参考

日本における若年介護者の問題―イギリスのヤングケアラーの現状と対策をふまえてー 

ヤングケアラー~幼き介護:国が初のヤングケアラー支援策 家事代行やオンライン相談など | 毎日新聞

ヤングケアラー問題の現状と支援について|介護のコラム|老人ホーム検索【探しっくす】

ヤングケアラーの早期発見と支援について

ヤングケアラーの実態に関する研究 報告書

家族の世話担う中学生5.7% 、負担重く孤立しがち :ヤングケアラー実態調査 | nippon.com

「ヤングケアラー」中学生の約17人に1人 国 初の実態調査 | 教育 | NHKニュース

ヤングケアラーについて 厚生労働省

関連情報

みんなの障がいへ掲載希望の⽅

みんなの障がいについて、詳しく知りたい方は、
まずはお気軽に資料請求・ご連絡ください。

施設掲載に関するご案内