パラリンピックで活躍!義肢の種類・作り方
義肢とは、身体に欠損がある人が、欠損部分を補うためにつかう義足や義足のことです。 生活を支えるものや、見た目を整えるもの、スポーツをするために機能性が重視されたものなど、人の数だけ多くの種類があります。パラリンピックでは、板バネ式の義足を見たことがあるのではないでしょうか。 今回は、この義肢をつくる人や、義肢の種類・作り方をまとめました。
義肢・義足を作っているのは義肢装具士
義肢装具士とは、身体の欠損がある人の目的にあわせて、義手や義足など義肢を制作する医療専門職です。 医師の処方にしたがって、装具者の採型や採寸、装具者と対話をおこない、希望に合わせた義肢装具を制作します。そして病院などで装具者の身体に適合し、丁寧に調整を重ねます。 パラリンピックなどで使われるような競技用の義足をつくることも仕事のひとつです。
義肢装具士になるには、義肢装具コースのある4年制大学か、養成施設と認定されている3年制以上の専門学校を卒業し、国家試験で合格しなければいけません。 なお、義肢装具士の養成校は2021年現在、全国に10校あります。
義肢装具士の数
義肢装具士はほかの医療・福祉分野の専門職とくらべると、圧倒的に少ないです。現在、義肢装具士の資格をもっている人は5000人弱だといわれています。
毎年200人以上が義肢装具士になるための国家試験を受けていますが、合格者は200人以下です。さらに、ここ5年間の推移を見ると、合格者がへっていることがわかります。
画像引用:https://jqos.jp/kokka/gishisogushi
義肢装具士に必要なスキル
義肢装具士には、手先の器用さや義肢を制作する技術のほかに、以下のスキルを求められます。 ・医学的な知識 ・コミュニケーション能力 ・忍耐力 ・柔軟な対応力
義肢装具士は使用者の体型、症状や目的に合わせて義肢装具をつくっていきます。医師や理学療法士とも連携して制作するので、「医学的な知識」が必須です。 しかし、どれだけ採寸をしても、使用者が少しの違和感を感じる場合があります。 その違和感を直すために、使用者の希望をくみとる「コミュニケーション能力」や、使用者の希望に合わせて制作する「柔軟な対応力」が求められます。
また身体欠損にショックを受けている使用者もいるため、義肢を拒否して、義肢装具士にきつく当たるケースもあります。 そうした使用者さんにも根気強く対話していかないと適した義肢が制作できないため、「コミュニケーション能力」と「忍耐力」が欠かせません。
違和感を直すためにミリ単位の調整を何度もおこなうので、作業的な「忍耐力」も必要です。 以上のことがあり、「ものづくりが好き」「手先が器用」というだけでは勤められない大変な仕事です。
義肢の種類
義肢は目的ごとや、障がいの程度によって種類が分かれています。
目的ごとのちがい
義肢を使う目的として、「競技用」「生活用」に大きく分かれます。 競技・スポーツ用は機能性やスポーツのしやすさが重視されます。パラリンピックでは陸上競技用、自転車用、卓球用の義肢があります。 パラリンピックの陸上選手に見られる、板バネがついた義足は、カーボン繊維でつくられています。鉄の10倍の強度・鉄の4分の1の重量である素材で、高強度と軽量を兼ね備え、選手の走りをサポートしています。
生活用は、使用感を重視したものや、表面が本物の皮膚のように再現されている「リアルコスメチック義足」などがあります。義足をシリコーン素材で覆い、肌を再現しています。
障がいの程度によるちがい
腕や足の切断面ごとに、種類が分かれています。 たとえば義足の場合、足先か、ふくらはぎか、膝関節、股関節、片側骨盤か、どこの部位で切断されているかで、構造や使用する素材が大きくちがってきます。
義肢の作り方は?
義足の基本的な作り方は、 ①カウンセリング・採寸・採型 ②モデル制作・修正 ③ソケット作成 ④組み立て・仮合わせ ⑤修正 ⑥仕上げ(外装) になります。
①カウンセリング・採寸・採型
義肢装具士は使用者と話し合いをしながら、義肢装具の形状や義肢につかう素材を決めます。 つぎに石膏が塗ってあるギプス包帯を使用者の患部に巻きつけます。ギプス包帯が固まったら患部から外し、型をとります。たとえば太ももの先が欠損している場合は、欠損している先、太ももに包帯を巻きつけます。
②モデル制作・修正
採った型に石膏を流して固めると、使用者の切断部位や周辺の状態にフィットさせるため、必要な部位に石膏を盛ったり削ったりして調整します。
③ソケット作成
ソケットとは足の切断面を納め、義足と接続する部位のことです。ソケットによって体重を支え、力を伝達するため、とても重要な部位です。ソケットが合わないと、装着時に痛み、うまく歩いたり動かしたりすることができなくなります。 このソケットは石膏モデルにぴったりと重なるように成型します。
画像引用:https://nosaka-gishi.com/processs/ 野坂義肢製作所 011-221-1406
④組み立て・仮合わせ
ソケットと、日常用またはスポーツ用の足先のパーツを組み立てます。半完成品の状態の義肢を実際に使用者に装着してもらい、歩行などして、痛み、歩きづらさ、違和感がないかを検査します。
⑤修正
歩行を観察したり、使用者の要望を聞いたりして、義足のバランスや角度を修正していきます。 使用者が違和感なく使用できるまで、「仮合わせ」と「修正」をくりかえします。
⑥仕上げ(外装)
強度の確認、スポンジ貼り、滑り止めの装着などをして全体の形を整え、外装を仕上げると義肢が完成します。
まとめ
義肢は身体障がい者の生活を助け、スポーツ分野では選手の動きを支えて活躍しています。 そんな義肢をつくっているのが、義肢装具士です。患者と何度もコミュニケーションをとり、数ミリ単位の調整を何度もおこない、非常に神経を使う仕事です。 パラリンピックの選手となれば、動きやすさや使用感、機能性を両立させるために、義肢装具士たちはもっと多くの調整と研究を重ねています。 パラリンピックで活躍する義肢と選手にご注目ください。
参考
義肢装具士のつらいこと・大変なこと・苦労 | 義肢装具士の仕事・なり方・年収・資格を解説