ちゃんと聞こえているのにわからない!もしかして聴覚情報処理障がい?症状・原因・治療法は?
ちゃんと聞こえているのにわからない!聴覚情報処理障がい?症状・原因・治療法は?
定期検診や耳鼻科に行っても異常なし。けれど、まわりの声が聞こえているのに、何を言っているのかわからず、コミュニケーションに悩んでしまう方がいます。聞いているつもりなのに、「聞いてない」と言われたり、まわりに相談しても「そういうことがある」と理解されないことも。
もしかしたら「聴覚情報処理障がい」かもしれません。聴覚情報処理障がいとは何か、原因や治療法、対策などをご紹介します。
聴覚情報処理障がいとは?
聴覚情報処理障がいとは、「聴力は正常で、音は聞こえているけれど、言葉を頭の中で正しく読み取れない状態」のことを指します。
英訳すると、Auditory Processing Disordersであり、頭文字をとって「APD」といわれることが多いです。海外ではICD-10 において規定されており、支援がすすんでいます。
1950年代には聴覚情報処理障がいの存在が確認されていましたが、あまり知られていない障がいでした。しかし、2018年にNHKで取り上げられたことから、少しずつ知られるようになり、2021年の大阪市立大学により、国内初、大規模調査がおこなわれました。
聴覚情報処理障がいの患者は推定240万人以上ともいわれており、日本人の約2%になります。さらに聴覚情報処理障がいの症状がある患者の半数以上が、発達障がい者であり、発達障がいと深いつながりがあるのではないかと考えられています。
もしかして聴覚情報処理障がい?
つぎの症状が見られた場合は、聴覚情報処理障がいの疑いがあります。
- 聞き返し、聞き間違いが多い
- 電話で相手の言っていることがわからない
- 雑音や他の音があると、相手の言葉が聞き取れない
- 聞いて学ぶことがむずかしい
- 相手に言われたことをよく忘れてしまう
- 長い話になると集中して聞き続けていられない
ただし、以上のすべてが当てはまるからといって、「聴覚情報処理障がい」に該当するとは限りません。
言語発達の遅れ、精神的な影響や、少しでも聴力が低下していると、聴覚情報処理障がいと似た症状を起こすことがわかっています。あくまで疑いとして、医師に相談しましょう。
聴覚情報処理障がいの原因は?
聴覚情報処理障がいの原因や治療法は解明されておらず、国内では診断基準も確定していません。そのため多くは、通常の聴力検査と、APDに関わる聞き取り検査をおこない、聴力が正常であるにもかかわらず、一定の基準から外れていた場合、「聴覚情報処理障がい(APD)」と診断されます。
原因として考えられるのは、脳の神経機能の問題や、睡眠、発達、心理的要因などが挙げられています。
発達障がいとの関係
研究では聴覚情報処理障がいが起こる要因として、注意や記憶などの認知力が関わっているのではないかという報告があります。APD症状を示す児童を調査したところ、不注意、衝動性、多動性が見られる子どもの多くが、聴覚情報処理障がいに似た症状を発しており、発達障がいがひとつの要因だと指摘されています。しかし、聴覚情報処理障がいだからといって発達だというわけではなく、それを明確にする方法も確立していません。
心理的要因との関係
心理的な問題があり、聴覚情報処理障がいの症状を訴える方もいます。
しかし、心理的な問題が起こったから聴覚情報処理障がいになったのか、あるいは、聴覚情報処理障がいによって心理的な問題が引き起こされたのかを明らかにする方法がなく、解明する方法について研究されています。
聴覚情報処理障がいは治療できる?対処は?
聴覚情報処理障がいの疑いがある場合は、耳鼻科、神経内科、精神科などで受診しましょう。
しかし、聴覚情報処理障がいの明確な治療法は確立されておらず、確実な治療はむずかしいです。
日々の生活で、聴覚情報処理障がいに対処する必要があります。
環境を整える
仕事などは雑音の少ない個室を用意してもらいましょう。または、パーテンションで仕切るなどして、雑音をふせぐように工夫しましょう。
補聴器などを使用する
雑音がたくさんある中で聞き取りにくさを感じるときは、補聴器のように聞こえをサポートする道具の使用をおすすめします。
たとえば、「FM補聴システム」というものがあります。ワイヤレスマイクのようなもので、声を発する人は送信機をつかい、声を受け取る側は、受信機を耳につけます。このシステムを利用すると、雑音が多いなかでも、一人の声を聞き取ることが可能です。
聴覚トレーニング
音を聞き取る力をきたえるトレーニングをおこないます。音の数を覚えたり、二つの音を聞き分けたり、会話を続けるための注意力や記憶力を高めるといった、さまざまなトレーニングを受け、聞き取る力を改善する方法です。聴覚情報処理障がいの治療として、一部の病院でもおこなわれています。
まとめ
聴力は正常であり、音は聞こえているのに、雑音が混じると聞こえにくい、言葉として認識できないなどの症状を「聴覚情報処理障がい(APD)」といいます。原因・治療法ともに確立されておらず、聴覚情報処理障がいと診断された場合は、日々の生活の中で対策が必要になります。
診断名がわからず、まわりに話を聞いていないと怒られるなど、人間関係に影響をおよぼす前に、耳鼻科や神経内科で医師に相談しましょう。
参考
【海外最新情報】APD(聴覚情報処理障害)の具体的な症状と解決策 – able official site
聞こえているのに 聞き取れない APD 聴覚情報処理障害 当事者の悩み | 未来スイッチ!課題解決で暮らしやすい社会へ|NHKニュース
【聞こえているのに聞こえない】聴覚情報処理障害(APD)とは|就労移行支援事業所ディーキャリア