2022.06.03

これは発達障がい?トラウマ?発達障がいとトラウマの違いや関係性

発達障がいとトラウマ

これは発達障がい?トラウマ?発達障がいとトラウマの違いや関係性

発達障がいの症状と、トラウマを受けた子どもの症状は共通するところが多かったり、トラウマが発達障がいのような症状を引き起こす場合があります。そのため発達障がいなのか、トラウマなのか誤診されることもしばしば起こります。発達障がいとトラウマの違いや関係性について解説します。

 

発達障がいとトラウマに共通する症状は?

トラウマで衝動性があらわれたり、トラウマを思い出して集中力が切れたりと、トラウマが原因で発達障がいに似た症状が起きることがよくあります。

  • 集中力の欠如、学習がむずかしくなる
  • ぼーっとして、話を聞いていないように見える
  • パニックを起こす
  • 落ち着きがない
  • 睡眠に問題を抱える

 

発達性トラウマ障がい

さらにトラウマの症状のひとつに、ADHDや自閉症スペクトラムと非常によく似た症状である「第四の発達障がい」「発達性トラウマ障がい」があります。

「発達性トラウマ障がい」は、虐待など非常に強いトラウマを抱えるお子様にしばしば見られます。幼少期に受けたトラウマ体験(激しいストレス)により、本当に脳が変化してしまう障がいです。

ただ発達障がいと違うのは、「発達性トラウマ障がい」とあるように、症状が発達ごとに変化していく点です。

・幼少期は愛着障がいをもつ
・学童期にはADHDと同じような多動、破壊的衝動が見られる
・思春期にはPTSDと解離症状が現れる
・青年期は解離性障がいおよび素行障がいになる
・成人期には、一部の人は複雑性PTSDになる

 

発達障がい者特有のトラウマがある?

逆に、発達障がいとトラウマを区別する、ひとつの特徴になるものもあります。

トラウマはトラウマになった経験と近い体験をしたときに、その時の映像がフラッシュバックして、パニックになります。

しかし、発達障がい者は、まったく関係のない出来事からトラウマのフラッシュバックが起こることがあります。

たとえば、大震災がトラウマになった発達障がい者は、母親に叱られたことで大震災で受けたトラウマを思い出し、パニックになったという症例があります。

健常者の場合は、小さな地震や人のケガなどを見て大震災を思い出しますが、このように発達障がい者は「母親から叱られる→大震災」という無関係にも思えるようなことでトラウマを思い出す傾向があります。

さらに発達障がい者自身も、トラウマ自体だけでなく、どうして今トラウマを思い出したのかわからず、もっと混乱してしまう様子が見られます。

 

 

発達障がいはトラウマになりやすい?

もとより発達障がい者はトラウマになりやすい傾向があります。なので、発達障がい者がトラウマをもっていることは多く、発達障がいが原因のトラウマなのか、トラウマだけを有しているのか、とても判断がむずかしくなっています。

発達障がい者がトラウマを抱えやすい理由は以下になります。

 

いやなことが記憶に残りやすい

自閉症など発達障がい者は、昔のことをとても鮮明に覚えている方もいます。記憶力が優れているぶん、いやなこともよく思い出しやすく、トラウマを抱えやすいです。

また、発達障がい者は健常者にとっては小さなこともトラウマになることがあります。人から叱られたことや、ケンカしたこと、嫌われたことなどがずっと心に残り、何十年経ってもその時に受けた心のストレスを再現してしまいます。

なぜ叱られたことがトラウマになりやすいのか。その理由として考えられるのは、二つあります。

①発達障がい者は他者の心理や場の空気を読むことがむずかしいので、怒りなど強い感情を向けられることは、「急に起きた変動・大事件」のように感じる

②怒声など急な大声、音程が変わる声に物理的な感覚過敏があり、とてもショックを受ける

 

トラウマになるような経験をしやすい

発達障がい者はもとから苦手なことが多く、教室や職場など集団の場では浮いてしまうことがよくあります。いじめられたり、まわりができるのにどうして自分はできないんだとストレスを抱えやすかったりします。

成功体験よりも、物事に失敗・挫折する経験のほうが多く、トラウマになるような経験をしやすくなっています。

 

妄想の中でトラウマになることがある

発達障がいの子の中には想像力がとても豊かで、現実と妄想の区別がはっきりとついていない子がいます。そういった子は、自分がいやなことを体験していなくても、「見た」ものがトラウマになってしまうことがあります。

たとえば被災地の状況を映したテレビや、番組や映画の衝撃的なシーン、いつも見ていたアニメで好きなキャラが死んでしまうなど、目の前で起こったことではなくても、見た体験がトラウマになる子も多くいます。

 

 

発達障がいとトラウマの治療法は異なる

発達障がいは生まれつきの脳機能の偏りなので、発達障がい自体を完全に治療することはできません。発達障がいは生きづらさをへらすことが「治療」となります。トラウマはトラウマ経験を克服することが「治療」です。

発達障がいとトラウマの治療法はちがっており、発達障がい者にトラウマ治療をおこなうと治療がすすみません。逆の場合も同じく、トラウマに発達障がい者へおこなう治療法をおこなうと、なかなか治らず、長期化してしまうケースがあります。

 

発達障がいの治療方法

  • 発達障がいのどんな特性があるかを詳細に把握する
  • 行動のマネジメント
  • 家族やまわりとの対人関係について相談
  • ペアレントトレーニング
  • 療育プログラムをおこなう
  • 薬物療法

発達障がいの治療には、まず本人の障がいの特性を知り対策をとることや、本人だけでなく周囲も関わり方を学ぶことなどが求められます。

薬物治療をおこなうときは、種類や症状によって、コンサータやインチュニブなどが使用されます。

 

トラウマの治療方法

  • 環境を整える
  • トラウマになった出来事をカウンセリングする
  • ゆがんだ考えを修正する
  • 情緒や行動、生理的反応など子どもの能力を高める
  • 薬物治療

できるかぎりトラウマになりそうな場からは遠ざけ、安全な環境に整えます。またトラウマになった出来事を信頼できる人に話すだけで大きく症状が改善することがあるので、カウンセリングをおこなうことも。

とくに代表的な治療法としては、

・認知処理療法

・持続エクスポージャー療法

・眼球運動脱感作療法

があります。

トラウマを治療する薬はありませんが、トラウマから起こる不安やストレスには、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がよく使用されています。

持続エクスポージャー法・・・まずトラウマの心理教育と、気持ちを落ち着かせる呼吸法を学ぶことから始める。トラウマになった出来事を思い出しながら、出来事との向き合い方などを学ぶ療法

眼球運動脱感作療法・・・トラウマを頭に思い浮かべながら眼球を左右に動かし、作業によってトラウマの苦しみを消失させる療法

 

まとめ

発達障がいとトラウマの症状は似ていることが多く、さらにトラウマが原因で脳が変化し、発達障がいにとてもよく似た障がいが現れることも報告されています。さらに発達障がい者はトラウマになりやすいです。このように、発達障害とトラウマの違いは少なく、とても深い関係性があります。

参考

発達性トラウマ障がい(DTD)の10の特徴―難治性で多重診断される発達障がい,睡眠障がい,慢性疲労,双極II型などの正体

発達障がいとPTSDについて〜忘れたくても忘れることができない - 成年者向けコラム | 障がい者ドットコム

ストレス科学研究30巻 トラウマからみた発達障がい

トラウマと発達障がい | 兵庫県こころのケアセンター

 

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