子どもが朝起きない…引きこもりがち…病気?もしかして起立性調節障がい?
子どもが朝起きない…引きこもりがち…病気?もしかして起立性調節障がい?
なかなか朝に起きてこないお子さん。叱っても起きてこず、引きこもりがちになり、子どもとの距離が広がるばかりで変わらない状況に疲れていませんか。
もしかしたら、お子さまは起きたくても起きられないような病気にかかっているのかもしれません。
発達障がいや、思春期に発症しやすい「起立性調節障がい」とは何か、起立性調節障がいの診断基準、治療法などについて解説します。
起立性調節障がいとは?
起立性調節障がいは、午前中に、頭痛や立ちくらみ、めまい、動悸などが起こりやすくなる病気です。朝に起きられない、夜に眠れないという症状もあります。
ただ、「朝は不調だったのに、いつのまにか元気に」「楽しい事がある日は朝から元気」なこともあり、「サボり」と誤解されやすい病気です。
自律神経の乱れが原因のひとつ
起立性調節障がいの原因は、血圧をコントロールする自律神経の不調です。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。
幼少期は体が活発になる「交感神経」が優位で、大人になると体がリラックス状態になる「副交感神経」が優位になります。ちょうど思春期の頃は、移り変わりの時期のため、自律神経が乱れやすくなっています。
中学生の約10%、不登校の30-40%が起立性調節障がいにかかっているといわれています。
「過剰に適応する子」「まじめな子」がなりやすい
自律神経の乱れは、精神的なストレスからも起こります。
- まわりに合わせすぎてしまう子
- 成績もよく、まじめな優等生
このようなお子さんは「不満や不安など気持ちをため込みやすい」点があります。なので、ちょうど自律神経が乱れやすい時期と重なって、起立性調節障がいを発症しやすくなっています。
発達障がい児が発症する割合は35%前後
自閉症スペクトラム障がいやADHDのお子さまの発症率は、35%前後と高くなっています。
発達障がいのあるお子様は、環境によるストレスが大きかったり、思春期には人との違いに悩みやすかったりします。このとき、起立性調節障がいを気にかけるだけでなく、発達障がいに向けた対処が必要になります。
お子さまの行動で気になることがある場合は、医師に相談してみましょう。
起立性調節障がいの診断基準は?
起立性調節障がいは、発達障がいが一緒にあったり、睡眠障がいや片頭痛、鉄欠乏性貧血など似た病気が多くあったりします。なので、起立性調節障がいだと自己判断しないようにご注意ください。
起立性調節障がいのサインや診断方法をご説明します。
子どもの起立性調節障がいが疑われるサイン
起立性調節障がいが疑われるサインは11項目あります。
- 立ちくらみやめまいを起こしやすい
- 立っていると気持ち悪くなる、ひどくなると倒れる
- 入浴時やあまり良くない話を聞いたとき、体調が悪くなる
- 少し動くと動悸や息切れがする
- 朝起きられず、午前中は調子が悪い
- 顔色が青白い
- 食欲不振
- 頭痛
- へそのあたりが急に痛いと時々訴える
- 倦怠感がある、または疲れやすい
- 乗り物に酔いやすい
このうち、3つ以上が当てはまっていると、起立性調節障がいの可能性があります。
「新起立試験」で分かる4つのタイプ
起立性調節障がいには、4つのタイプがあります。
- 起立直後、立ちくらみ・めまいが多いタイプ
- 起立直後の動悸息切れが多いタイプ
- 立っているときに失神するタイプ
- 起立から少し経って症状が出るタイプ
病院では「血液検査」やカウンセリングなどをおこない、他の病気ではないかを確認します。つぎに、「新起立試験」を用いて診断します。
新起立試験とは、横になった状態から立ち上がったときの血圧回復時間や、血圧・心拍数の変化を見る検査です。この検査をおこなうと、お子さまの起立性調節障がいが4つのタイプのうち、どれに当てはまるかがわかります。
子どもが起立性調節障がいだった場合、治療法は?
起立性調節障がいの治療には、子どもが治療に前向きであること、ご家族の理解が大事です。
まず医師が子どもと親に起立性調節障がいとは何かを説明し、障がいへの理解を深めます。
検査でわかったタイプに合わせて、ご家族で治療をおこなっていきます。
正しい姿勢や、生活習慣を身につける
- 血圧の変化をへらす、ゆっくり立つ姿勢を覚える
- 起床時間を一定にして規則正しい生活を心がける
- 15分の散歩など軽い運動をすすめる
- 水分や塩分をしっかり摂る
など、自律神経の乱れをふせぐように生活や姿勢を整えます。腹圧バンドや弾性ストッキングなど、血圧の低下を防止する装具を身につける場合もあります。
ストレスをへらすための環境調整・心理療法
自律神経の乱れがストレスからくる場合、ストレスをへらすためにカウンセリングをおこないます。
また、学校などとも連携をして、起立性調節障がいの理解を深めたり、注意点を伝えたりします。起立性調節障がいのお子さまが過ごしやすい環境に整えることも、完治に近づくのに重要です。
重症の場合は薬物治療も
規則正しい生活、ストレスをへらす環境調整・心理療法などをおこなっても回復しない場合は、薬物治療も考えられます。ミドドリンやアメジニウムなど自律神経の働きをよくする薬が用いられることもあります。ただし、副作用が確認されているため、薬物治療は医師とよく話し合う必要があります。
まとめ
子どもがいくら叱っても朝に起きてこないとき、心配なときは、起立性調節障がいを考えてみるのもひとつです。そして起立性調節障がいのサインが見られる場合は、自己判断せず、内科や小児科に行き、診断を受けましょう。起立性調節障がいの治療には、子どもの意思と、ご家族の協力が大切です。
参考
起立性調節障害お悩み解消BOOK 「朝起きられない」子に親ができること! 著者:吉田 誠司