職場で障がい者いじめ・パワハラなどにあったときは?これは虐待?
職場で障がい者いじめ・パワハラなどにあったときは?これは虐待?
新しい職場でなじむことができず、やめてしまう障がい者の方が多くいます。また、自分がされていることが、いじめやパワハラ、虐待に該当するかもわからず、まわりに相談できない方もいます。仕事が自分に合っていたとしても、人間関係でやめなくてはいけなくなるのはツライですね。
職場の障がい者いじめやパワハラに該当する行為や、障がい者いじめやパワハラを受けたときの対応について解説します。
職場の障がい者いじめ・パワハラに該当する行為は?
これはいじめやパワハラに該当するのか、虐待にもなるのか、一人で判断できないことが多くあります。仕事でミスをたくさんして落ち込み、自信がなくなっているときは、とくに「自分が悪い」とよく考えてしまいます。
以下のことがあった場合、障がい者いじめやパワハラを疑いましょう。
・大勢の前で怒鳴られた
・ミスを叱られたときに「バカ」や「アホ」など悪口を言われた
・人格や障がいを否定するような言葉を言われた
・仕事に関する重要な情報をもらえない
・有給休暇の申請理由などをしつこく聞かれる
・職場でからだをさらわれた
・職場で暴力をふるわれた
・障がいがあるからと給与をへらされる など
障がい者へのいじめやパワハラは、「障がい者への虐待」とされます。
障がい者虐待防止法により禁じられており、以下のような行為が、「虐待」と定義づけられています。
身体的虐待
身体的虐待は、障がい者に暴力をふるうなどして、体を傷つけたり、またはケガになるおそれがあるものも「身体的虐待」になります。なので、殴る蹴るだけではなく、
・危険な仕事をさせる
・異物、腐りかけのものを食べさせる
・監禁する
といった行為も含まれます。
ネグレクト
ネグレクトは「放棄・放任」という意味です。食事をとらせなかったり、仕事をあたえなかったり、放置して障がい者の健康や安全に配慮しないことです。また、わざと無視することもネグレクトになります。
性的虐待
性的虐待は、障がい者に性的な行為をせまったり、性的な暴力をふるったりすることです。障がい者の前でわざと性的な会話をして、障がい者を困らせることも「性的虐待」です。
心理的虐待
心理的虐待は、言葉の暴力などで障がい者を傷つける行為を指します。具体的には、脅迫、悪口、拒絶反応などです。ほかの障がい者と差別したり、みんなの前で怒鳴るなどして、意図的に恥をかかせる行為も含まれます。
経済的虐待
障がいがあるからといって、賃金を払わなかったり、最低賃金にも満たない賃金で働かせることや、障がい者の了承なく通帳などを勝手に管理することなどが、「経済的虐待」になります。障がい者が受けている虐待で最も多いのが「経済的虐待」といわれています。
障がい者いじめの現状
厚生労働省による「令和2年度使用者による障がい者虐待の状況等」で、事業所や会社など職場で障がい者が受けている、いじめの推計や種類などが公表されました。(使用者とは、障がい者を雇用している事業主や経営担当者、また責任者や管理者などのことを指します)
こちらをもとに、障がい者いじめの現状についてふれていきます。
虐待の通報・認定は減少傾向
障がい者虐待の通報があった事業所、通報や届出の対象となった障がい者の数は前年度とくらべて25%以上減と、大きく減少しました。
【通報・届出のあった事業数】
【通報・届出の対象となった障がい者数】
虐待の通報は「経済的虐待」「精神障がい者」が最多
「経済的虐待」は過去のデータでも多く、令和2年度も「43.9%」と全体の約半数という結果になっており、多くの障がい者が経済的に苦しんでいることがわかります。さらに、虐待と認められた障がい者数では「経済的虐待」が約80%となっています。
虐待を受けた障がいでは、少しの差ですが、精神障がい者が最多です。
平成28年度は「知的障がい者」が最多であり、精神障がい者と少し大きな差がありました。しかし、精神障がい者の割合がどんどんふえていき、令和2年度は精神障がい者が最多という結果になっています。
しかし、「虐待」と認められた数は、「知的障がい」が最も多く、精神障がいは二番目に多く虐待と認められています。
職場で障がい者いじめやパワハラにあったら?
いじめやパワハラを受けていると悩み続けていると、障がいが悪化・再発して、さらに仕事のミスがふえ、いじめやパワハラの被害も大きくなるという悪循環が発生することがあります。
いじめやパワハラを受けているかもしれない疑いがある場合は、つぎのようにすることをおすすめします。
いじめ・パワハラの証拠を保管
いじめやパワハラを受けたと思うとき、メールの文面や、音声の録音など、証拠をとっておきましょう。また症状が悪化した場合は、診断書などをもらって、いじめ・パワハラの証拠を保管しておきます。
窓口に相談するときや、退職でモメたとき、労災認定を受けるときなどにも役立ちます。
窓口に相談する
社内で相談窓口を設けている場合は、相談をして社内で環境を変えてもらうようにすることも、一つの手です。しかし、社内の人に知られるのはツライ、あまり知られたくない方もいるでしょう。社外では以下の窓口を利用できます。
・障がい者就業・生活支援センター
・相談支援員
・都道府県労働局
・労働基準監督署 など
転職する
社内の環境が変わる可能性がない場合は、転職を検討しましょう。そのまま働き続けて、障がいが悪化し、働けない状態になるよりは別の会社で働いたほうが良いでしょう。
退職すると決めたら、早めに退職届を提出しましょう。退職関係でモメたときは、いじめ・パワハラの証拠が役立ちます。
また、失業保険の受給要件を満たしている場合は、「失業保険」の申請を忘れずにしましょう。「会社都合退職」になれば、退職後に早く失業保険を受けることができます。
さらに、障がい者手帳をもっている方が、障がい者枠で失業保険を受給すると、失業保険を受給できる期間が一般の方にくらべて、とても長くなります。
失業保険の申請に行くときは、以下を用意しましょう。
- 雇用保険被保険者離職票
- マイナンバー、通知カード、個人番号が書いてある住民票のいずれか1つ
- 身元が確認できる書類
- 写真(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚
- 印鑑や通帳
まとめ
これは障がい者いじめ、虐待にあたるのか、わからないこともあります。とくに障がい者の方は障がいで仕事のミスが発生しやすく、自信をもつこともむずかしいので、悩んでしまいがちです。だれにも相談できず、障がいが悪化して、働けなくなる人もいます。
職場で障がい者いじめやパワハラを受けているかもしれないと感じたときは、早めに相談しましょう。
参考
障がい者雇用でのいじめの現状や対応策は?|お役立ち情報|障がい者雇用・就職支援の株式会社エスプールプラス