補助犬の入店拒否。補助犬に関する法律は?入店拒否はできない?
補助犬の入店拒否。補助犬に関する法律は?入店拒否はできない?
身体障がい者を支える補助犬。法律で同伴が決められているに関わらず、補助犬同伴での入店を拒否されることが多くあります。とくに、このコロナ禍でソーシャルディスタンスを守るようにされているため、ますます入店拒否がふえているとのことです。
補助犬や補助犬に関する法律が知られていないことが原因として考えられます。そこで、補助犬について、補助犬に関する法律、入店拒否は不可なのかを解説します。
補助犬とは?
補助犬は身体に障がいがある方の生活を支える犬のことです。「身体障害者補助犬法」に基づいて認定された犬であり、特別な訓練を受けています。法律に基づいて衛生管理もされているため、人が立ち入るさまざまなところに同伴できます。飲食店や施設のほか、病院(人が立ち入れるスペース)は補助犬と一緒に入ることができます。
補助犬への理解をすすめるために、厚生労働省は「ほじょ犬マーク」を作成・配布しています。
出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15684.html 「ほじょ犬マーク」とは
補助犬の種類
補助犬は障がいの困り事に合わせて、3種類に分かれています。それぞれ仕事内容や、訓練方法などがちがいます。
・ドアの開閉
・指示したものをもってくる
・落としたものを拾う
・スイッチを押す
・車いすの牽引
・起立・歩行介助
・着替えを手伝う
・緊急時の救助の要請を助ける
介助犬は仕事中、「介助犬」と書かれた緑色のケープを着ています。
聴導犬は仕事中、「聴導犬」と書かれたオレンジ色のケープを着ています。
補助犬に関する法律
補助犬は「身体障害者補助犬法」という法律で管理されています。
- 補助犬は適切に管理しなくてはいけない
- 補助犬は補助犬である旨を表示して(ケープなど)周知しなくてはいけない
- 補助犬の体を清潔に保ち、予防接種や検診を受けさせ、公衆衛生上の危害を生じさせないように努めなくてはいけない
- やむを得ない理由がない限り、以下のお店や施設は補助犬の同伴を拒んではいけない ・不特定かつ多数の人が利用する施設 ・公共交通機関 ・国や地方公共団体などの事務所、従業員50人以上の民間企業(職場)
- 以下は補助犬の同伴を受け入れるように努めなくてはいけない ・障害者雇用事業主以外の事業主 ・住宅管理者 ・従業員50人未満の民間企業(職場)
などの内容が示されています。全文はこちらから。
補助犬の入店拒否は不可?
全国盲導犬施設連合会が2020年におこなった調査によると、補助犬の受け入れ拒否をされたことが「ある」と回答した方は全体の5割以上となっています。補助犬の受け入れ拒否に遭った場所で最も多かったのは、「レストランや喫茶店など飲食店」です。
しかし、身体障害者補助犬法や障害者差別解消法では、飲食店などのお店や施設は補助犬の入店を拒否してはいけないと義務付けられています。
ただし補助犬を同伴することで、事業やお店、施設に著しい支障が生じるおそれがある場合、そのほかやむを得ない理由がある場合は、この法律は施行されません。また入店拒否をした場合、法律上の罰則はありません。しかし、補助犬のパートナーである障がい当事者に訴えられる可能性はあります。
補助犬の入店拒否が却下された理由
飲食店の場合「犬アレルギーや動物嫌いのお客様がいるから」「食べ物を扱うお店のため衛生上の心配がある」「犬を置いておくスペースがない」などの理由で、入店拒否をされるお店があります。
このような理由では、補助犬の入店を拒否する正当な理由になりません。「補助犬の入店拒否」が却下される理由を解説します。
「食べ物を扱うお店だから」「衛生上の理由で受け入れられない」
補助犬はブラッシング、シャンプー、爪切りなどをして清潔を保つことを義務づけられています。また排泄は障がい当事者が指示したとき、指示した場所のみでおこなうため、店内を汚しません。もし足の汚れなどで店内の清潔が保たれない場合は、持参した敷物を敷き、その上に補助犬を待機させるよう義務付けられています。そのため食べ物を扱うお店でも入店は可能です。
病院の場合、「清潔にしているため動物の出入りは拒否」という理由がありますが、着替えや靴の履き替えなどが必要のない場所、一般の人が立ち入れるスペースは、盲導犬の同伴が可能だと認められています。
「犬を置いておくスペースがない」
「犬を置いておくスペース」については、盲導犬は待機中、テーブルの下にもぐりこんだり、障がい当事者の足元に潜りこんだりして待機します。また犬はどれだけスペースをとるのかは障がい当事者が把握しているため、「スペースがない」と拒否するのではなく、店内で同伴ができるなかで、スペースが確保できるかどうか確認させる対応が望まれます。
「犬アレルギーや動物嫌いのお客様がいるから」
身体障害者補助犬法や障害者差別禁止法では、「国民は、身体障害者補助犬を使用する身体障害者に対し、必要な協力をするよう努めなけれなならない」とされているため、犬アレルギーや動物嫌いは入店を断る正当な理由になりません。
入店拒否が許されるやむを得ない理由とは?
身体障害者補助犬法には、「事業やお店、施設に著しい支障が生じるおそれがある場合、そのほかやむを得ない理由がある場合は、法律は施行されません」とも書かれています。
この「やむを得ない理由」は、食品衛生法が定めている「販売する食品の受け渡しなどは清潔で衛生的におこなわなければいけない」に違反することが考えられます。補助犬が著しく汚れており、清潔が保たれていない場合は、入店拒否が認められるでしょう。
また盲導犬の適切な管理がされていないことが明らかな場合は、やむを得ない理由に該当すると考えられます。
- 障がい当事者の指示にしたがわない
- トイレのない場所で排便をする
- 理由なく吠え、周囲を不安にさせる
- 法律で定められたケープやハーネスなどを身につけていない
- 汚れている、病気にかかっているなど明らかに不衛生な場合
補助犬には合理的配慮が必要
補助犬の同伴を拒否することは、身体障がい者の行動を制限することになります。お店や施設側はより慎重に、障がい当事者と補助犬に向き合っていかないといけません。
お店や施設側はやむを得ない理由がない限り、一方的に拒否せず、どのようにすれば身体障がい者の行動を制限せず、補助犬を受け入れられるかどうか、話し合いや妥協案を提示してください。
まとめ
身体障害者補助犬法などで義務づけられているにも関わらず、補助犬が入店拒否をされる事例が多くあります。
補助犬は法律のもと、適切に管理されており、一般の人が立ち入れるスペースは同伴可能だと決められています。一方的に拒否することなく、障がい当事者もお店側も納得のいく折衷案を出すことが必要です。
参考
盲導犬同伴を理由に飲食店などへの入店を拒否する行為、法的問題は? | オトナンサー
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