ゲーム障がいが国際疾病として発効。ゲーム障がいとは?診断基準は?治療法・対策は?
ゲーム障がいが国際疾病として発効。ゲーム障害とは?診断基準は?治療法・対策は?
生活に影響が出るほどゲームに没頭してしまう「ゲーム障がい」。2022年1月1日にWHOより、ゲーム障がいを含めた「国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が発効されました。日本の医療でもICD-11が導入され、ゲーム障がいの診断基準や治療法がより確立していくことが予想されます。また、ゲーム市場は伸び続けており、将来的にゲーム障害がもっとふえるおそれがあります。
ゲーム障がいとはどういった障がいなのか、今の診断基準、治療法、家庭でできる対策をご紹介します。
ゲーム障害とは?
ゲーム障がいが正式な病気だとWHOに認定されたのは、2019年5月25日。ギャンブル依存症と同じ精神疾患だと位置づけられています。
ゲームをする頻度・長さを制御することができず、社会生活に影響を及ぼしている状態を「ゲーム障がい」といいます。
厚生労働省が中高生を対象におこなった2017年度の調査によると、オンラインゲームを含めたネット依存症者は推計93万人にもなるという結果が明らかになりました。
とくにゲーム障がいは男性に多い傾向が見られており、女性の約3倍というデータも。ゲームの種類では複数プレーヤーが参加するロールプレイングゲーム、シューティングゲームへの依存度が高く、ゲーム障がいになりやすいとされています。
ゲーム障がいがあると何が起こるのか
ゲーム障がいになると心身、社会的、さまざまなところに悪影響を及ぼすと指摘されています。常に同じ体勢をとり、食事も忘れてゲームに没頭することや、脳の前頭前野に影響して精神的な変化があらわれること、ゲームにたいして制御できなくなり課金を続けることから、以下のようなことが起こるおそれがあります。
・昼夜逆転
・引きこもり
・血流障害
・栄養障害
・体力・筋肉・体重減少
・視力低下
・睡眠障害
・暴言や暴力をふるう
・人間関係の悪化
・借金
過去には、世界各地でゲーム依存による死亡事件もありました。韓国では24歳の男性がオンラインゲームに没頭しトイレとたばこを買うとき以外の86時間、ゲームを続けたことで死亡。死亡の要因は、長時間同じ体勢をとっていたことで、下半身がうっ血して発症する「エコノミークラス症候群」でした。2019年にはタイで17歳の少年が毎晩徹夜で、食事の時さえもコンピューターゲームを続け、脳卒中を引き起こして亡くなっています。
ゲーム障がいは決して油断できない障がいです。
ICD11のゲーム障害の診断基準
WHOが定めるゲーム障害の診断基準は3つです。
②日常生活の中でゲームを最優先する
③生活に支障が出ていてもゲームを続ける
以上3つの状態が12か月以上続いた場合、ゲーム障がいが疑われます。しかし、以上3つすべてに当てはまっており、症状が重い場合は、12か月未満でも「ゲーム障がい」に該当します。
ゲーム障がいの治療法は?
ゲーム障がいの基本的な治療は、ゲーム障がいの原因を解明し、ゲームから離れた環境に身を置き、ゲームをおこなう時間を少しずつ減らしていく形です。完全にゲームを断つことが目標ではなく、ゲームの時間をへらして、ゲームの優先度を下げることが目標となります。
原因を明らかにする
まずはカウンセリングをして、ゲームにハマってしまう理由や日常生活でストレスに感じていることを明らかにします。
ときに発達障がいが原因であったり、これをきっかけに発達障がいが見つかることもあります。
ゲーム障がいになりやすいといわれているのは、ADHDの方です。ADHDはドーパミンという快楽や達成感に関わる脳内物質が不足しており、ゲームで補おうとするためだと考えられています。
運動やコミュニケーションの機会を設ける
集団で運動をしたり、家族会やコミュニティでコミュニケーションをとったりして、ゲーム以外の楽しみを見つける治療をおこないます。
ゲームから離れた環境に身を置かせる
デイケアでも改善しない場合は、「入院治療」がとられます。入院やキャンプなどでゲームから離れた環境に身を置かせます。短くて数週間、長くて2か月ほど入院することになります。入院で規則正しい生活習慣を身につけ、ゲーム以外の、自分の今置かれている状況や、将来のことについて考えるきっかけをつくります。
ゲーム障がいの自宅での対策は?
ゲームにハマってしまったあとに、ゲームの時間をへらすように注意しても、なかなか聞いてはもらえないでしょう。そのため、事前の対策が重要になります。
- ゲームを始める年齢を遅くする
- ゲームの時間を記録する
- ルールは子どもと決める
- ゲーム以外の生活を充実させる
ゲームの使用を始める年齢を遅くする
2019年6月21日に新潟市でおこなわれた日本精神医学会で、久里浜医療センターは「ゲームの使用年齢が低い人ほど、中学生になったときのゲームへの依存度が高い」という調査結果を発表しています。
ゲーム依存のリスクを下げるために、ゲームの使用を始める年齢を遅くしましょう。
ゲームの時間を記録する
ゲームに何時間費やしているか記録することも有効です。ゲーム依存に陥りそうな方はゲームのやりすぎを自覚することがむずかしく、それほどゲームをしていないように感じています。そのため、アプリで記録したり、ゲームに付いている時間記録の機能を使ったりして、どれぐらいゲームをしているかを把握させます。
ルールは子どもと決める
ゲームをあたえるときは、あたえっぱなしにせず、ルールを決めてください。
ただし、一方的にルールを強いるのではなく、子どもと相談して、子どもが納得した状態でルールを決定することが大切です。
ゲーム以外の生活を充実させる
ゲーム以外に熱中するもの、楽しいと感じるものを見つけましょう。
スポーツや、家族や友達との会話など、リアルで楽しいものを見つけ、充実させることでゲーム障害を予防できます。
まとめ
寝食を忘れてゲームに熱中し、さまざまな弊害を引き起こすゲーム障害。過去には死亡事例もあり、決して油断できない障害です。自粛期間によってゲームにハマる人も増加しており、対策が必要です。すでにゲーム障害の疑いがある場合は、医療機関などにご相談ください。
fa-arrow-circle-rightゲーム依存症 相談先一覧|特定非営利活動法人ASK
参考
やめられない怖い依存症!ゲーム障害はひきこもりの原因にも 治療法について | NHK健康チャンネル
インターネット・ゲーム依存症|治療法もご紹介 | メンタルヘルス | ミーデン株式会社