職場内カサンドラとは?職場内カサンドラの原因・職場でできる対処
職場内カサンドラとは?職場内カサンドラの原因・職場でできる対処
障がい者雇用がすすみ、障がい者のサポートや、教育係になるなど障がい者との関わりがふえてきます。その一方で、「職場内カサンドラ」も問題になる可能性があります。
職場内カサンドラとは何か、職場内カサンドラの原因や対処をご紹介します。
職場内カサンドラとは?
カサンドラ症候群が職場内の関係で起こったときに「職場内カサンドラ」といいます。
カサンドラ症候群とは病名ではなく、その人の精神の状態を指す言葉です。ASD(自閉症スペクトラム)と密接に関わる人が、ASD当事者とコミュニケーションが上手くいかず、精神の不調を起こすことを指します。
カサンドラ症候群はASD当事者の配偶者に起こると多く報告されています。しかし、ASD当事者と密接に関わる場合、親子、友達、職場などの関係でも起こる可能性があります。
またカサンドラ症候群は女性がかかりやすいといわれていましたが、男性がカサンドラ症候群になったという報告もあります。
なので上司や部下、同僚、サポートや教育係などで密接な関係にあり、コミュニケーションに困難を感じている状態が続くと、男女や年齢関係なく、職場内カサンドラになるおそれがあります。
職場内カサンドラの特徴
発達障がいの方と密接な関わりがあり、以下に当てはまっていると、職場内カサンドラになっている可能性があります。
- 不眠や片頭痛など体の不調が起こっている
- 抑うつや無力感など精神的な不調が起こっている
- 自分に自信がなくなっている
- 発達障がい者以外の人間関係もどう付き合っていくかわからなくなっている
- 発達障がい者の言動に常にストレスを感じている
- 発達障がい者に何を言っても無駄だという無力感を感じている
- まわりに発達障がい者とのコミュニケーションの困難を理解してもらえない
- 発達障がい者について相談できる人がいない
職場内カサンドラは労災になる?
カサンドラ症候群は医学的な正式名称ではなく、精神の状態を指す言葉であり、明確な定義づけもなく、診断がつけにくいものです。そのため、カサンドラ症候群ではなく、「うつ病」や「適応障がい」など、そのほか精神障がいの病名がつきます。
精神障がいの場合、厚生労働省が公表している「精神障がいの労災認定」によると、以下の3つを満たすと労災が認められます。
①認定基準の対象となる精神障がいを発病していること
- 統合失調症、統合失調症型障がいおよび妄想性障がい
- 気分(感情)障がい
- 神経症性障がい、ストレス関連障がいおよび身体表現性障がい
- 生理的障がいおよび身体的要因に関連した行動症候群
- 成人のパーソナリティおよび行動の障がい など
以上が、認定基準の対象となる精神障がいです。
②発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
「業務による強い心理的負荷」とは、職場内で発病に関する具体的な出来事があり、その出来事とその後の状況が、労働者に強い心理的負荷をあたえたかどうかになります。
心理的負荷の強さは、立場・職務・年齢・経験などが似ている労働者が、一般的にどう受け止めるかで評価されます。なので、非常につらい思いをされていても、似ている労働者が強い心理的負荷がかかっていると認めない場合は、基準を満たすことができません。
③業務以外の心理的負荷や個体側の要因により発病した可能性がないこと
業務以外の心理的負荷とは、
・離婚または別居した、夫婦や子どもとトラブルがあったなど家庭内事情
・収入が減少した、借金返済など困難を抱えている
・事件や事故にあった
・引越しをした、家族以外の知人と住むようになったなど変化
以上のように、業務以外で心理的負荷があり、この心理的負荷で発病したと認められると、労災認定はむずかしくなります。
個体側の要因とは、当事者に精神疾患の既往歴やアルコール依存状況などがある状態を指します。個体側の要因がある場合は、それが発病の原因となったのかを慎重に判断されます。
職場内カサンドラになるのをふせぐには?
職場内カサンドラになるのを防ぐには、発達障がいへの理解を深め、こちらの行動や考え方を変える必要があります。
当たり前を求めない
ASDの特徴は、
・マイルールなど強いこだわりがある
・相手の立場になって考えることが苦手
・暗黙の了解がわからない
・「ちょっと」「少し」などあいまいな表現はわからない
・自分の興味あること以外に関心がない
・自分の都合を優先する
・チームワークが必要でも単独行動をする
などがあります。
これらのことを意識していないと一つ一つが受け入れられないでしょう。
「○○をして当たり前」と考えたり、同じ仕事をしているからと同程度の仕事を求めたりすると精神的に疲れてしまいます。
指示の出し方・接し方を変える
発達障がい者が指示通りに動かず、ストレスになっている場合は、指示の出し方などを変える必要があります。
ASDはあいまいなことがわからない、仕事の優先順位がつけられない、臨機応変な対応ができないなどの特徴があるので、以下のように変えると指示が通りやすくなります。
- 指示はメモやメールなど視覚的なものにする
- 指示は一つずつ具体的にする
- 予定の変更は早めに伝える
- 注意をするときは𠮟責や苦情ではなく、具体的にどうしてほしいのかを説明する
職場内カサンドラかもしれない場合は?
すでにカサンドラ症候群の症状が見られる場合、相手を変えさせるのは非常に困難です。自分がコミュニケーションのし方や考え方を変える努力をするか、距離をとるかといった対処になります。
深く関わないようにする
カサンドラ症候群により身体的な不調が出ている場合は、異動願などを出して関わりをへらせるどうか相談しましょう。
たとえ発達障がい者に上から注意や指導が入ったとしても、発達障がい者が変わることは困難です。ASDの場合、厳しい注意や指導を「攻撃」ととらえ、受け入れることがなかなかできません。
そのため自分が変わるしかありませんが、不眠など身体的な症状が出ているなら、自分を変える努力をすることもむずかしい状況です。体を壊したり、うつ病になったりする前に対処しましょう。
まとめ
職場内カサンドラとは、ASDなど発達障がい者の上司や部下、同僚、教育係など近い関係にある方が、コミュニケーションの困難さから身体的・精神的な不調を起こしたときを指します。
職場内カサンドラを防ぐには、こちらの考え方や接し方を変えること。すでにカサンドラ症候群の身体的な症状が出ており、考え方や接し方を変える努力がむずかしい場合は、あまり深く関わらないように、異動願を出したり、教育係を代わってもらうなどしましょう。
参考
発達障害のある方との接し方:シーン1-1 解説|厚生労働省l
家庭内ばかりか職場の人間関係発の「カサンドラ」が増加中(野波 ツナ,SORA) | 現代ビジネス | 講談社
精神障害の社員が法改正で職場に増加、うまく付き合う心得とは? | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン