障がい者✖VR。VRとは?VRは障がい者の生活にどのように活用されている?
障がい者✖VR。VRとは?VRは障がい者の生活にどのように活用されている?
仮想現実を体験できるVRは障がい者支援にも役立っています。支援にVRの導入を検討している事業所もあるでしょう。
VRについて、VRの健康上の注意点や、障がい者支援とVRの関わりについてふれていきます。
VRとは?
VRは、専用のゴーグルを身につけると、ディスプレイ上に立体的な映像が表示され、その映像内に自分がいるような体験ができる技術のことです。
VRゴーグルには左右2枚のレンズが配置されており、2枚のレンズによって立体的で奥行きのある映像を再現しています。
VRは脳をだます
VRゴーグルで見ると、映像が綺麗なグラフィックでなくても、現実世界のように錯覚しますね。映像とわかっているはずなのに、恐ろしい映像だとその場にいるような感覚になり、生理的な恐怖を感じることがあります。
VRが脳を騙すことは、実験でも証明されています。
VRを研究しているハンブルグ大学のフランク・シュタイニック博士がおこなった実験です。部屋の中に椅子を置き、VRでは実際に椅子が置かれている場所とちがうところに椅子の映像を映し出します。そして実験中に、VR上の椅子が実際の椅子に重なるように少しずつ映像を動かしていきます。被験者には離れた位置から椅子へと歩き、座るように指示します。
すると被験者はVR上の椅子を追って緩いカーブを描いて、最終的には実際の椅子に座ることができました。しかし、被験者の意識では椅子に向かってまっすぐ歩いていたつもりだったそうです。つまりVRで方向感覚や認識までも騙せることがわかりました。
VRは考え方や行動まで変える
「没入感の高いVRは脳に働きかけて、体験者の行動を変えることもできる」と、スタンフォード大学のベイレンソン教授が指摘しています。
実際に、高齢者はどのように見えているか感じているかを若い人に体験させる実験をおこなったところ、高齢者へ関心がなかった若い人も、高齢者にたいして優しくなったり、肯定的になったという結果が出ています。
さらに鎮痛剤を打っても効かないレベルの激痛を感じていた患者にVR体験をさせたところ、痛みが和らいだという報告がされています。こちらは脳の働き方に明らかな変化があらわれたとのことです。
健康上の問題は?
脳の働き方、考え方や行動まで変えてしまうVR。長時間使用すると、健康上に問題があらわれる可能性はあります。
まず、一つ目に「VR酔い」です。吐き気や目まいなど車酔いのような症状があらわれます。個人差はありますが、三半規管が弱い人や、12~15歳のお子様がなりやすいといわれています。
二つ目に心配なのが「視覚」です。VRは左右で異なる映像を見せているものなので、現実世界を見るときと目の使い方が違います。大人の場合、目が疲れるだけで済むことが多いですが、6歳から10歳程度の子どもが長時間VRをすると、斜視になったり、空間認識能力に影響が出るリスクが高くなるので注意が必要です。斜視になると、両目で見たものが二重に見えたり、寄り目が戻らなくなったりします。
〇体調が悪い時は使用しない
〇2眼式ゴーグルは7歳未満の子どもに使用させない
〇7~13歳の子どもがVRをするときは、必ず瞳孔間距離の調整をおこなう
障がい者支援とVR
VR体験者の考え方や行動を変えたり、現実世界ではできないことを臨場感たっぷりに体験できるVR技術は、障がい福祉にも積極的に取り入れられています。
障がい者の視点を知る
VRで自閉症スペクトラムの方や、感覚過敏をもつ方の視覚、聴覚を体験できるコンテンツが提供されています。
これにより、健常者たちが障がい者への理解をすすめることができます。さらに、商品・サービス開発者が障がい者の見え方や感じ方を体験することで、より障がい者の方が利用しやすいシステム・商品の開発にも役立っています。
障がい者の医療・リハビリ
VRは精神疾患の治療、身体障がい者の幻肢痛治療、脳トレーニングも活用できます。
不安症の中でも恐怖症の改善に有効とされています。映像で恐怖を感じる場面を映し出し、それが安心であることを学ばせることで、不安を軽減できると考えられています。そのほか身体障がい者の脳トレーニングにVRを使ったところ、動かなくなった体の部位の感覚を取り戻し、回復不可能だといわれていた機能が回復した例も報告されています。
VRによる幻肢痛の治療は近年、医療の現場でおこなわれるようになっています。患者にVR空間の中で手足を自由に動かす感覚をあたえると、最も多くの患者に緩和効果が見られました。
参考
障害者がVRで脳トレーニング 下半身不随の患者が感覚取り戻し回復へ - ライブドアニュース
発達障がい者へのSST
現実世界を体験できるVRは、発達障がい者のSSTにも活用されています。SSTとは、人とのコミュニケーションなどを訓練するプログラムのことです。上司役、部下役など支援員が役割を演じ、障がい者はロールプレイング形式で、上司や部下など相手へのコミュニケーション方法を学びます。しかし、職場や学校など実際の場所を再現するのがむずかしい、支援員の演技力が必要といった課題がありました。
VRの場合、映像で職場や学校にいる体験ができ、さらに支援員が演じなくても、上司役、部下役をする役者の映像で学ぶことができます。またVRなので苦手な場面を何度も復習することが可能です。さらに、人との対面を苦手としている発達障がい者の方もすすんで取り組めるので、徐々にSSTにVRを活用する事業所がふえてきています。
参考
まとめ
脳の働きまで変えるVR技術は障がい者の生活や支援に多く関わっており、今後ますます障がい者支援に普及すると考えられます。
VRを支援に導入するメリットは、場所を選ばず体験ができる、対面を苦手とする人もSSTを受けられるようになる、支援員の指導力や演技力に頼らず一定の支援ができる、などメリットがあります。
ただVRは脳や体への影響もあるものなので、子どもが使用する際は特に注意すること、また長時間の使用は避けるようにしましょう。
参考
発達障害支援VRのジョリーグッド社長が提言「職場・学校でもソーシャルスキルを学ぶ機会を」
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