きょうだい児とは?きょうだい児が抱える問題・きょうだい児支援
きょうだい児とは?きょうだい児が抱える問題・きょうだい児支援
ヤングケアラーという言葉が注目されるようになり、支援される障害者だけではなく、支援をする側にもケアが必要だという考えが広まっています。そこで注目されているのが、きょうだい児です。きょうだい児とはなにか、きょうだい児が抱える問題、きょうだい児の支援についてご紹介します。
きょうだい児とは?
きょうだい児とは、きょうだいが障害者である人のことを指します。きょうだい児自身は健常者であるため、障害をもつ兄弟の世話をしなくてはいけなかったり、親が障害をもつ兄弟ばかりに構うため、本人は孤独感や自己肯定感の低さに悩まされたりします。
きょうだい児の数は、全体にされた正式なデータはないため、推定になりますが、664万人前後といわれています。つまり人口のおよそ5%以上が「きょうだい児」と推測されます。
きょうだい児が抱える問題
生まれながら、または育つ環境のなかで、障害をもつ人と深く関わることになるきょうだい児。「障害への理解が深まった」「障がいがあるきょうだいを受け入れている」など肯定的な意見も見られますが、生涯にわたって障がい者を支えていくことに、不安や悩みを抱えている方も多くいます。
人間関係に影響がある
きょうだいが障害者であることをまわりに隠しているという方も見受けられます。
思春期になると周りの目や周りとの違いが気になるようになり、障害をもつきょうだいのことを恥ずかしく思うことがあります。そして、家族を隠すという罪悪感に悩まされることも。
また、子どもにはまだ障害への理解や知識が身についていないことがほとんどで、障害があるきょうだいのことでからかわれることも少なくありません。
自分の感情を出すことができない
きょうだい児には家族のために頑張りすぎるお子さんがいます。困っている親や家族のために、すすんで家事やケアをおこないます。それは家族を助けたいという理由であったり、または手伝いをすることで家族に求められたいという寂しさの裏返しであることもあります。
家族のケアが当たり前になってくると、自分の感情を出せず、気づかぬうちに我慢がたまって、心身に影響が出ることもあります。
自信を失いやすい
障がい児はスモールステップでほめることが大事とされており、小さなことでもほめるように徹底しているご家庭が多くあるでしょう。そのため障がい児ばかりほめて、きょうだい児には「健常者だからできて当たり前」といった価値観で接してしまうことがあります。
きょうだい児はほめられる経験が少なく、障害をもつきょうだいがほめられるところばかり見るようになり、自己肯定感を失いやすいです。
恋愛・結婚
相手と交際をするとき、障害をもつ兄弟がいることを伝えるかどうか悩んだり、相手に受け入れられないことがあります。
また結婚となると、相手と生涯の付き合いになるため、より慎重に考える必要性が出てきます。そこで一つの問題になるのが、「将来親がいなくなったとき、障がいをもつ兄弟の世話をしなければいけない可能性」です。これまで健常者との付き合いしかなかった相手への心理的な負担が大きいことや、経済的な問題などがあります。
このほか、「子どもに遺伝するかどうか」というのも、問題のひとつになっています。発達障害は遺伝的な要因が大きいとされます。知的障害の多くは遺伝子ではなく、遺伝子の突然変異や、環境の要因が大きいというデータがあります。しかし、「障害は遺伝的な要素が強い」と思っている方は多く、相手には受け入れられても、義母や義父など相手の家族に受け入れてもらえない場合があり、結婚をあきらめる方もいます。
将来やりたい仕事の幅が狭くなる
きょうだい児は「将来、親がいなくなったら、自分がきょうだいのケアをしなくてはいけないのではないか」という不安に悩まされることが多くあります。将来、きょうだい児のケアをするのであれば、転勤が多い仕事や地元ではできない仕事、多忙な仕事には就きにくくなります。そのため、将来やりたい仕事をあきらめてしまったり、きょうだい児のケアに関連するような仕事に変えたりする方もいます。
日本のきょうだい児支援
1963年には東京で「全国心身障害者をもつ兄弟姉妹の会」が結成され、今では全国各地にも、きょうだい児のための団体が設立されています。
また2019年には、アメリカで毎年4月10日に開催されている「シブリングデー(きょうだいを称える祝日)」を取り入れ、日本でも正式に4月10日が「きょうだいの日」として定められるようになりました。
きょうだい支援団体の活動
きょうだい支援団体の活動は以下のとおりです。
- きょうだい児同士の交流
- きょうだい児への相談支援
- きょうだい児の勉強会
- きょうだい児の居場所づくり
- きょうだい児の啓発活動
- きょうだい児の支援について意見を提出 など
きょうだい児のためのサイト
「きょうだい児支援団体に加入するのは抵抗がある」「きょうだいのことは前向きにとらえているので、支援団体と合わないかもしれない」という方もいます。
もっと気軽に交流できる場として、きょうだい児のためのサイト「Sibukot」があります。
Sibukotoシブコトでは、きょうだい児が集まるコミュニティで悩み相談ができたり、きょうだい児の交流や勉強会などイベント情報を広く知ることができます。
fa-arrow-circle-rightSibkoto シブコト | 障害者のきょうだい(兄弟姉妹)のためのサイト Sibkoto シブコト
まとめ
きょうだい児の負担や抱える問題は注目されることが少なく、また周囲に理解もされにくいため、ひとり悩んで苦しむきょうだい児の方が多くいます。
日本のきょうだい児支援は国単位で動いている状況ではありませんが、全国各地できょうだい児が助け合うための支援団体が発足されています。
きょうだいのことでお悩みの方は、こういった団体に参加するのもひとつの手です。きょうだい児同士で悩みを打ち明けたり、家以外の居場所をつくることで、精神的にはラクになれるかもしれません。団体に加入するのは少し不安だと思われる方は、オンラインコミュニティなどに参加することから始めてみましょう。
参考
障害者の兄弟姉妹を持つ“きょうだい”の方へ - バリバラ - NHK掲示板
きょうだい児のつらさから考える家族支援 | 障害者のきょうだい(兄弟姉妹)のためのサイト Sibkoto シブコト
「きょうだい児」を知っていますか? | NHK山形ポータル|NHKブログ
4月10日は「きょうだいの日」。病気や障がいのある子どもの「きょうだい」の存在を知り、思いを馳せる優しい記念日に〜NPO法人しぶたね | JAMMIN(ジャミン)
[活動報告] 新聞掲載されました『数字で見るきょうだい(児)』 | 【障がい者支援の新しい取り組み】きょうだい
障害者の兄弟姉妹「きょうだい児」、社会に見過ごされてきた生きづらさ | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン