非定型うつ病とは?普通のうつ病とどう違う?原因・治療法は?
非定型うつ病とは?普通のうつ病とどう違う?原因・治療法は?
コロナ禍での環境の変化などによって、うつ病になる方がふえています。特に多いとされるのが「非定型うつ病」です。非定型うつ病は、「甘え」「気まぐれ」「お天気屋」と誤解を受けやすかったり、認知度が低かったりします。
非定型うつ病とはなにか、よく知られているうつ病とはどう違うのか、原因・治療法をご紹介します。
非定型うつ病とは?
別名で新型うつ病、現代うつ病と呼ばれる非定型うつ病。医学的に明確な定義はなく、ある種の状態を示す症候群を指します。20代から30代の若年層や、とくに女性に発症しやすい傾向があります。
非定型うつ病が発見されたのは1960年前後。うつ病の症状や、治療薬の効き目が従来のものとちがうことから、非定型うつ病という言葉が用いられるようになりました。
1980~1985年におこなわれたアメリのかの疫学統計調査によると、非定型うつ病患者の割合は0.7%。1991~1992年にカナダでおこなわれた調査では1.4%。その同年代にアメリカでおこなわれた調査では、非定型うつ病患者の割合は3.8%。
2001~2002年にアメリカでおこなわれた疫学調査では、10.23%が非定型うつ病患者であるという結果が出ています。
非定型うつ病は数十年で2倍以上にふえており、日本ではこうした調査がありませんが、海外と同じように、非定型うつ病は急増していると考えられています。
現在も若者のあいだで急増しており、うつ病外来に来る方の約30%が「非定型・新型うつ病」というデータもあります。
非定型うつ病のサイン・症状
非定型うつ病になると、以下のような症状が見られます。
・気分の浮き沈みが激しい
・夕方ぐらいから調子が悪くなる
・人の批判や冷たい態度に過敏になる
・手足が鉛のように重い
・過眠、食欲増加
非定型うつ病と従来のうつ病のちがい
従来のうつ病と非定型うつ病の違いを表にまとめました。
従来のうつ病 |
非定型うつ病 |
|
年齢層 |
中高年層に多い |
若年層に多い |
気分 |
ずっと落ち込んでいる |
上がり下がりが激しい |
週末や休日 |
変わらず不調 |
週末や休日は元気 |
体調 |
全身をおそう疲労感 |
手足が鉛のように重い |
病識 |
自分のせいだと責める |
うつ病だと認識している |
食事・睡眠 |
食欲減退、不眠 |
食欲増加、過眠 |
薬物治療 |
よく効く |
あまり効かない |
従来のうつ病と非定型うつ病の大きなちがいは、心身の不調が起こる環境です。
従来のうつ病は週末や休日も変わらず心身の不調が続き、好きだった趣味も関心を失い、楽しいことがあっても気分が上がりません。非定型うつ病はストレスの原因から遠ざかった環境(ストレスの原因が職場である場合:休日や週末)になると、元気になります。好きな趣味も活発に取り組むことができます。
また従来のうつ病は午前中に心身の不調を感じますが、非定型うつ型は夕方ぐらいから調子が悪くなる傾向があります。
非定型うつ病になりやすい人は?
非定型うつ病患者の約7割が、親のどちらかがうつ病だったという研究結果もあり、非定型うつ病になる原因は遺伝的な要因ではないかとも指摘されています。
しかし、一般的には「その人の性格的傾向」が大きな原因なのではないかとする説が有効です。非定型うつ型になりやすい人の性格的傾向を見ていきましょう。
良い子だとよくほめられた
良い子だとよくほめられた、手のかからない子どもだった方は、非定型うつ病になりやすい傾向があります。子どもの頃からまわりの大人の目を気にしていたり、まわりに配慮していたりと、気にしいであること、ストレスを抱え込みやすいことが要因だと考えられています。
失敗を過度に恐れる
失敗を過度に恐れたり、失敗したときに過度にショックを受けたりする方は、非定型うつ病になりやすいといわれています。同様に、たとえば仕事でミスをしたときに叱られると、攻撃をされているように感じて、非定型うつ病になったという方もいます。
甘えることが苦手
甘えることが苦手な方は自分に厳しい傾向があり、悩みやストレスを抱え込みがちです。そうした悩み・ストレスを発散することができず、非定型うつ病になってしまうことがあります。
完璧主義
完璧主義な方は、他の人なら許せるようなミスも許せず、自他ともに厳しい方がいます。しかし、仕事で多くの方がミスを経験します。そのミスが受け入れられなかったり、まわりにミスをどう思われたのかが気になったりして、非定型うつ病になってしまう可能性があります。
非定型うつ病の治療法
従来のうつ病が慢性化する確率は11%にたいして、非定型うつ病が慢性化する確率は79%というデータがあります。非定型うつ病を自然に治すことはとてもむずかしいです。
非定型うつ病の疑いがある場合は、「精神科」や「精神神経科」で診断を受けましょう。
非定型うつ病の治療には、主に「認知行動療法」「生活環境の改善」「薬物治療」が用いられます。
認知行動療法
自身の考え方や、まわりの反応への感じ方などを知ったり、より良い考え方や反応へ変えていくトレーニングです。個人でおこなうものと、グループでおこなうものがあります。
認知行動療法は患者の約7割が症状を改善できたという報告があり、多くの病院で実施されています。
さらに非定型うつ病の場合、従来のうつ病とちがって、他者の声がけや応援が力になる可能性があります。
生活環境の改善
非定型うつ病を発症している方のほとんどが大きく生活環境が乱れています。
生活環境が乱れ、朝に日光に当たらなかったり、運動をまったくしなかったりする生活を続けていると、非定型うつ病は治りにくいです。そのため生活環境を改善するように指導が入るでしょう。
薬物治療
非定型うつ病には、薬物治療は限定的であり、まったく効かない場合もあります。薬物治療は最終手段です。また治療そのものではなく、あくまで症状を抑えたり、治療のサポートに使用されます。
非定型うつ病には双極性障がいも混在している可能性があり、十分に気を付けて薬をえらばなくてはいけません。
非定型うつ病によく使用される薬は「抗うつ剤」「気分安定薬」「抗精神病薬」「抗不安薬」です。
fa-arrow-circle-right抗うつ剤
非定型うつ病にも効果が報告されているSSRIをつかうことが主流です。比較的、安全性が高く、離脱症状なども起こしにくい抗うつ剤です。
fa-arrow-circle-right気分安定剤
気分の波が大きい場合や、攻撃性・衝動性が目立つ場合は、気分安定剤が使われることもあります。
fa-arrow-circle-right抗精神病薬
気分安定効果をねらって、抗精神薬を処方されることもあります。また抗精神薬の中にはドーパミンを増加する薬があるので、手足が鉛のように重くなる症状や、過眠の症状を改善できることがあります。
fa-arrow-circle-right抗不安薬
非定型うつ病患者の方は不安症状や不眠を訴えることがあるので、症状を抑えるために抗不安薬が使われます。抗不安薬は即効性があるのが強みですが、次第に効かなくなり、依存性も高まってしまうため、必要最低限で服用することが大切です。
まとめ
認知度が低く、誤解を受けやすい非定型うつ病。コロナ禍の生活環境の変化などもあり、若年層のあいだで急増しているとされています。
非定型うつ病は食欲も睡眠欲もあり、趣味や楽しいことはすごく気分が上がることから、病気だと他人から思われることなく、自分でも疑ってしまうような病です。しかし、うつ病と同じく、自然に治るわけではなく、放置するとどんどん悪化してしまいます。
非定型うつ病の症状に思い当たることがあり、悩んでいる場合は、精神科や精神神経科で相談してみましょう。
参考
【精神科医が解説】非定型うつ病を克服するための治療法 | こころみ医学元住吉こころみクリニック【内科・呼吸器内科・心療内科】
うつ病は甘え? 新しいうつ病非定型うつ病の症状と治療方法│MIZENクリニック豊洲内科・心療内科
甘えではない非定型うつ病の原因と症状|心療内科・精神科|うつ病治療の新宿ストレスクリニック
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臨床社会心理学における“自己”:「新型うつ」への考察を通して
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