【令和3年度障害福祉サービス報酬改定】全サービス
【令和3年度障害福祉サービス報酬改定】全サービス
令和3年度障害福祉サービス報酬改定は、コロナの流行など、令和2年度に起きた社会の大きな変化への対応を求める動きとなっています。令和3年度障害福祉サービス報酬改定の全サービスの事業所に関わる改定内容をまとめたので、ご参考ください。
(経過措置を延長するなど、大きな変更がない点は記載しておりません。)
全サービスの事業所に共通する改定内容は以下のとおりです。
・地域区分の見直し
・感染症や災害への対応力の強化
・ICTの活用を推進
・障がい者虐待防止のための対策
・両立支援を配慮し人員基準の見直し
地域区分の見直し
地域区分は平成30年度報酬改定と同じく、原則、介護報酬の地域区分の考え方に合わせる方針となりました。
ただし、隣接する地域とのバランスを考え、公平性を確保すべきと考えられる場合は、特例を適用できるものとされます。
ただし見直しは、自治体の意見を聴取し、令和5年度末まで、必要に応じて経過措置をとられます。
感染症や災害への対応力の強化
障害福祉サービスは、障がい者にとって欠かせないサービスです。感染症や災害が発生したときにも、変わらず障害福祉サービスを提供できるよう、日ごろからの備えや対策をすることが義務化されます。
感染症の発生・まん延防止の取り組みを義務化
すべての障害福祉サービス事業者へ、3年(準備期間)のあいだに、委員会の設置や指針の整備、研修、訓練の実施を義務付けられます。
業務継続に向けた計画や研修・訓練を義務化
すべての障害福祉サービス事業者へ、感染症や災害が発生したときも業務を続けられるよう、業務継続に向けた計画や研修・訓練をおこなうことが義務付けられます。
3年間で準備をして、業務継続に向けた取り組みをおこなわないといけません。
地域と連携した災害対策をすすめる
通所系、施設系、居住系サービス事業所を対象に、地域と連携した災害対策をおこなうことが義務付けられます。
対象:療養介護、生活介護、短期入所、施設入所支援、共同生活援助、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、福祉型障害児入所施設、医療型障害児入所施設
非常災害に備えるための訓練をおこなうときは、地域住民に参加してもらうように努める必要があります。
新型コロナウイルス感染症への対応に関わる評価
新型コロナウイルス感染症に対応するための経費が多くかかることを考え、すべての障害福祉サービス事業所で、通常の基本報酬に0.1%ぶんが上乗せされます。
なお、この措置は令和3年9月サービス提供分までとしていますが、今後の感染状況や実態などをみて、柔軟に対応する動きです。
ICTの活用を許可
運営基準や、加算の算定などに必要となる委員会・会議、身体的接触がない、または必ず対面で提供する必要がない支援で、ICT(テレビ電話など)の活用が許可されます。
ICTの活用が許可される委員会・会議、支援、また関係する加算は以下のとおりです。
対象 | 委員会・会議等 | 加算 |
全サービス |
感染症・食中毒の予防のための対策検討委員会 |
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全サービス |
虐待防止のための対策検討委員会 |
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訪問系・通所系・入所系 |
身体拘束等の適正化のための対策検討委員会 |
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通所系・入所系 |
個別支援計画に関わる担当者等会議 |
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計画相談支援、障がい児相談支援 |
サービス等利用計画を作成するための担当者会議・相談支援センターが実施する事例検討会 |
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訪問系 |
利用者やサービス提供に関わる情報伝達または技術指導を目的とした会議 |
特定事業所加算 |
生活介護 |
リハビリテーション実施計画の作成や支援のあとにおこなうリハビリテーションカンファレンス |
リハビリテーション会議 |
短期入所 |
日中活動実施計画の作成のため保育士などが共同する場面 |
日中活動支援加算 |
施設入所支援 |
経口移行計画や経口維持計画を作成するために医師などが共同する場面や会議 |
経口移行加算・経口維持加算 |
就労移行支援 |
就労移行支援計画の作成をするために就労支援に従事する人とおこなう会議 |
支援計画会議実施加算 |
就労定着支援 |
企業や地域障害者職業センター、医療機関など関係機関を交えた会議 |
定着支援連携促進加算 |
就労定着支援 |
利用者の雇用に関する日常生活の相談や指導 |
|
自立生活援助・地域移行支援・地域定着支援 |
居住支援協議会や居住支援法人との情報連携・共有をする場面 |
居住支援連携体制加算 |
児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス |
保育所や関係機関をまじえた、児童発達支援計画に関する会議 |
関係機関連携加算 |
障がい者虐待防止のための対策
障がい者への虐待を防止するため、すべての障害福祉サービスに以下のことが義務付けられます。
・虐待防止委員会の設置
・委員会での検討結果を従業者へ必ず周知すること
・従業者へ虐待防止に関する研修の実施
・虐待防止などのための責任者を置くこと
虐待防止委員会の役割は、虐待を未然に防止することや、虐待事案が発生したときに検証や再発防止策を検討することなどです。
令和3年度は現行の「努力義務化」を続け、1年間の準備期間が設けられます。
令和4年度からは完全に義務化され、運営基準に組み込まれるので、早めに準備をしましょう。
両立支援を配慮し人員基準の見直し
職員の仕事や育児、介護などとの両立をすすめ、職場への定着率を上げるため、「常勤」「常勤換算」の要件が一部緩和されます。
①職員が介護や育児で短時間勤務制度を利用しているときも、週30時間以上の勤務をしていた場合は、「常勤」として扱うことが認められます。
②職員が育児・介護で短時間勤務制度などを利用するとき、週30時間以上勤務していれば、常勤換算での計算上も「1」として扱うことができます。
③人員基準などで「常勤」とされている職員が、産前産後休業や育児・介護休業などをしたとき、常勤と同等の資質をもつ複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員基準を満たすことができます。
④福祉専門職員配置等加算は、産前産後休業や育児・介護休業などをした職員も、常勤職員の割合に含めることが可能となります。
運営基準にハラスメント対策を新設
すべての障害福祉サービス事業者へ、「適切な職場環境をつくること」が運営基準に追加されます。
職場での度を超えた不適切な言動により、従業員の職場環境が害されるのを防止する方針を明確にし、必要な措置をしなければいけません。
まとめ
令和3年度障害福祉サービス報酬改定(全サービス)では、新型コロナウィルスや昨今の障がい者虐待に関するニュースなどの影響をよく検討し、改定案が発表されています。
障がい者の虐待防止への取り組みなどは大きな変化ですね。改正前まで努力義務だったものが、準備期間後に完全に義務化されるので、早めに体制を整えていきましょう。
参考