「聞き間違いが多い、何を言っているのか聞き取れない」LiD/APD(聞き取り困難症/聴覚情報処理障がい)とは?
よく聞き間違いをしてしまう、聞こえているけど何と言っているのか分からない、聞いただけだと覚えることができない、などの経験はありませんか?
それはもしかしたらLiD/APD(聞き取り困難症/聴覚情報処理障がい)かもしれません。どういった障がいなのでしょうか?
LiD/APDとは何か?
LiD/APDは「聴覚情報処理障がい」といい、聴力が正常でも日常生活で聞き取りにくさを経験する状態を指します。伝音性難聴や感音性難聴とは異なり、音を感知する器官に問題がなく、脳の情報処理に障がいがあるという特徴があります。
伝音性難聴は、耳の解剖学的な構造に問題があり、音を耳に伝える能力が低下している状態を指し、感音性難聴は、内部または外部の聴覚器官に損傷があり、音を感知する能力が低下している状態を指します。
特徴と原因
LiD/APDは、聴覚機能に異常がないにもかかわらず、聴覚系統での情報処理の問題によって言葉の処理が困難になることが特徴で、音声を理解したり、音を区別したりする能力に影響を与えています。
聞き取りにくさ、音の混乱、音声の理解困難、音の方向性や音の源の特定の難しさなどが見られることがあり、個人によってさまざまですが共通して注意機能の低下が関連しています。
原因はまだ完全には解明されていませんが、神経発達や注意機能の問題、覚醒状態や心理的要因が挙げられます。中枢神経系の問題が関与しているという可能性と、遺伝的要因や環境要因が関与している可能性があります。また、聴覚刺激が適切に処理されず、音声情報が脳に正確に伝達されないことがあります。
症状
LiD/APDの症状には、
・耳からの指示の理解が難しい
・雑音があると聞き取りが難しい
・複数人との会話が難しい
・耳からだけの情報の記憶が難しい
などがあります。これらの症状は難聴と類似していますが、聴力検査では異常が見られません。適切な検査をしないと他のタイプの難聴と区別するのが難しい場合があります。
診断方法
LiD/APDの診断には、自分の聞こえにくさをどのように捉えているのかアンケートをとったり、実際に検査を行いどの程度その症状がみられるかの聴覚検査が用いられます。
これらの結果を総合的に評価し、専門家によって診断が行われます。日本国内ではまだ診断基準が定まっていないため、検査方法には個々の医療機関による違いがあります。
対処方法
LiD/APDへの支援方法は多岐にわたります。
・環境調整
まずは環境調整を行い、聞き取りやすい環境を整えることが重要です。周囲の人の理解を得る、騒音を減らす、話す距離を縮める等の工夫で聞き取りやすさが向上します。
・補聴手段の利用
補聴器の利用や心理的なサポートも有効です。雑音がある状態での聞き取りが苦手なことが多いため、補聴器等で雑音を減らして聞き取りやすくします。
・トレーニングを行う
聴覚トレーニングや文字化ソフトを使用して語彙力を高める、聞くこと自体に慣れる、推測力を高めるなど様々なトレーニングを行い聞く自信をつけていきます。
まとめ
LiD/APDに悩んでいる場合は、耳鼻咽喉科での診断が必要です。正常な聴力であっても、日常生活での聞き取りにくさを感じる場合は、専門の医療機関で相談を受けましょう。
トレーニングやサポートの適切な利用により、生活の質を向上させることが可能なので「聴力は正常」と判断されたにも関わらず、生活場面で聞き取りにくさに悩んでいる方はLiD/APDを診ることができる病院に受診してみてください。
参考