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障がい者基本計画を見てみよう!消費者トラブルの防止と被害からの救済

前回に続き、障がい者基本法を詳しく見ていきましょう。障がい者の権利を尊重し、消費者の安心と安全を確保するため、我々は消費者トラブルの防止と障がい者への救済に向けて、積極的な取り組みを行います。障がい者の消費者教育から始まり、消費者被害の早期発見や法的なサポートまで、幅広い方策を展開し、より包括的な支援体制を構築します。以下に、我々の具体的な施策を示します。   情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実 情報アクセシビリティの向上と意思疎通支援の充実は、障がい者基本法の重要な柱です。この取り組みは、障がい者が必要な情報に円滑にアクセスし、意思を適切に伝えることができるよう支援することを目指しています。   情報通信機器やサービスの企画、開発、提供を促進 障がい者に配慮した情報通信機器やサービスの企画、開発、提供を促進し、放送や出版の分野でも障がい者が利用しやすい環境を整備することで、情報アクセシビリティの向上を図ります。 また、障がい者が円滑に意思表示やコミュニケーションを行えるよう、意思疎通支援を担う人材の育成やサービスの利用促進、支援機器の開発・提供などの取り組みを通じて、意思疎通支援の充実を目指します。   情報通信における情報アクセシビリティの向上 障がい者の情報通信機器やサービスの利用における情報アクセシビリティの確保及び向上・普及を図るため、障がい者に配慮した情報通信機器やサービスの企画、開発、提供を促進します。 研究開発やニーズ、ICTの発展を踏まえながら、情報アクセシビリティの確保及び向上を促進するため、適切な標準化を進め、必要に応じて国際規格提案を行います。また、各府省における情報通信機器等の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格や日本工業規格への準拠・配慮に基づいて実施されます。   当該国際規格に基づいて技術仕様を定める 特に、WTO政府調達協定の適用を受ける調達等を行う際には、アクセシビリティに関する国際規格が存在する場合には、当該国際規格に基づいて技術仕様を定めます。さらに、国立研究機関等では障がい者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発を推進し、障がい者がICTを利用しやすい環境を整備します。 障がい者がIT相談を受けられる支援施設や、パソコン機器等を使用できるよう支援するパソコンボランティアの養成・派遣の促進などにより、障がい者のICTの利用及び活用の機会の拡大を図ります。また、聴覚障がい者が電話を一人でかけられるよう支援する電話リレーサービスの実施体制を構築します。   情報提供の充実等 身体障がい者の利便の増進に資する通信・放送身体障がい者利用円滑化事業の推進に関する法律や放送事業者への制作費助成などを通じて、字幕放送、解説放送、手話放送などの普及を図ります。 聴覚障がい者に対して、字幕(手話)付き映像ライブラリーや手話通訳者の養成・派遣、相談を行う施設の整備を促進し、ICTの発展に応じてニーズの変化にも対応します。また、身体障がい者利用円滑化事業の助成などを通じて、民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進し、障がいによって利用が困難な通信・放送サービスへのアクセスの改善を図ります。 電子出版物の利用の拡大に向けた技術開発や普及啓発などの取り組みも行います。心身障がい者用低料第三種郵便についても、障がい者の社会参加を促進する観点から検討を続けます。   意思疎通支援の充実 聴覚、言語機能、視覚などの障がいにより意思疎通が困難な障がい者に対して、手話通訳者や要約筆記者の派遣、点訳や代読による支援を行い、その他の支援機器の給付や貸与を行います。絵記号などの普及や理解の促進を図ることで、意思疎通の支援を行います。   行政情報のアクセシビリティの向上 各府省において、障がい者や障がい者施策に関する情報提供や緊急時の情報提供などに障がい特性に応じた配慮を行います。また、ウェブサイト等で情報提供を行う際には、アクセシビリティに配慮した仕様の採用やウェブアクセシビリティの向上に取り組みます。さらに、災害時や選挙時に障がい者への情報提供を充実させるための施策も行います。   防災、防犯等の推進 障がい者が地域社会において安全かつ安心して生活できるよう、国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」を踏まえて、以下の取り組みを推進します。   災害に強い地域づくりの推進:障がい者の安全を確保するために、災害に強い地域づくりを推進します。これには、地域の防災意識の向上や適切な避難計画の策定、防災施設の整備などが含まれます。   障がい特性に配慮した災害時の支援強化:災害発生時には、障がい者の特性やニーズに応じた適切な情報提供や避難支援が必要です。福祉避難所や応急仮設住宅の確保、福祉・医療サービスの継続など、障がい者が安全に避難し、必要な支援を受けるための体制を整備します。   防犯対策と消費者保護の強化:障がい者を犯罪被害や消費者被害から守るために、防犯対策や消費者トラブルの防止に向けた取り組みを推進します。これには、地域社会全体での安全意識の向上や、障がい者が安心して生活できる環境の整備が含まれます。 防災対策の推進 地域防災計画の作成と防災訓練の実施: 障がい者や福祉関係者の参加と防災関係部局、福祉関係部局との連携の下で、地域防災計画の作成や防災訓練を促進し、災害に強い地域づくりを推進します。   要配慮者利用施設の土砂災害対策:自力避難の困難な障がい者等が利用する施設の立地箇所において、土砂災害のおそれのある場所では、砂防えん堤の施設整備や危険区域の明示など、土砂災害対策を重点的に推進します。   災害時の障がい者への情報伝達の体制整備:災害発生時に障がい者に適切な情報を伝達できるよう、民間事業者や消防機関などと協力して、障がい特性に配慮した情報伝達の体制を整備します。   障がい者への避難支援と安否確認:災害発生時には、避難行動要支援者名簿などを活用して障がい者への適切な避難支援や安否確認を行うため、地方公共団体に必要な体制整備を支援します。   避難所と応急仮設住宅のバリアフリー化:避難所や応急仮設住宅のバリアフリー化を推進し、障がい者が適切な支援と合理的配慮を受けられるよう、市町村の取り組みを促進します。   災害時の福祉・医療サービスの継続:災害発生後も福祉・医療サービスを提供できるよう、障がい者支援施設や医療機関の災害対策を推進し、広域的なネットワークの形成に取り組みます。   聴覚・言語機能障がい者向けの緊急通報システムの導入:火災や救急事案の発生時に、聴覚・言語機能障がい者が円滑な緊急通報ができるよう、音声によらない緊急通報システムの導入を推進します。   要配慮者の避難確保計画の実施:水害・土砂災害時に、要配慮者の円滑な避難を確保するため、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成と訓練を促進します。   防火安全体制の強化:非常災害時における障がい福祉サービスの提供継続や、消防団や近隣住民との連携体制の構築を促進し、防火安全体制を強化します。   男女共同参画の視点からの防災・復興の取組:防災体制や避難所、応急仮設住宅において、男女共同参画の視点からの取り組みを促進し、障がいのある女性を含めた配慮を行います。   東日本大震災を含む災害からの復興の推進 地域のまちづくりへの障がい者の参画促進: 各地域の復興施策において、障がい者やその家族などの参画を促進し、地域全体のまちづくりを推進するため、事例集の作成や公表などの情報提供を行います。   被災地での障がい福祉サービスの安定的な提供:被災地の障がい福祉サービス事業者に対する支援を実施し、被災地での障がい者の生活継続や帰還を支援し、安定的な障がい福祉サービスの提供を図ります。   避難生活を送る障がい者への心のケア:避難生活を送る障がい者に対して心のケアや見守り活動、相談活動などの取り組みを充実させます。   雇用の創出と求職支援の推進:被災地における雇用情勢を考慮し、産業政策と連携した雇用の創出や求人と求職のミスマッチの解消を図り、障がい者の就職支援を推進します。   防犯対策の推進 110番通報の利用促進と的確な対応: ファックスやEメールなどを活用した110番通報の利用を促進し、事案の内容に応じた迅速かつ的確な対応を行います。   警察職員の障がい理解とコミュニケーション支援:警察職員の障がい理解を深めるための研修を充実させ、手話を行うことのできる警察官の配置やコミュニケーション支援ボードの活用などを推進します。   地域との連携による犯罪被害の防止と早期発見:警察と地域の障がい者団体や福祉施設、行政などとの連携を促進し、犯罪被害の防止と早期発見に努めます。   障がい者支援施設等の安全確保:障がい者支援施設等を利用する障がい者が安心して生活できるよう、施設整備や職員の対応に関する点検などの取り組みを促進し、安全確保体制の構築を図ります。   性犯罪被害者への支援体制の充実:障がい者を含む性犯罪被害者や配偶者暴力被害者への支援体制の充実を図り、ワンストップ支援センターの設置促進や相談機能の充実を推進します。   消費者トラブルの防止及び被害からの救済 障がい者の消費者教育の推進: 障がい者やその支援を行う者に対して、消費者関連の情報提供や各種消費者関係行事への参加を促進し、障がい者等に対する消費者教育を推進します。   消費者被害防止のための見守りネットワークの設置促進:障がい者団体、消費者団体、福祉関係団体、行政などの連携により、消費者被害防止のための見守りネットワークの設置を促進します。   障がい者の消費生活相談体制の整備:地方公共団体における消費生活センター等での障がい者に対する消費者相談の受付や相談員の障がい者理解のための研修を促進し、障がい者の特性に配慮した消費生活相談体制の整備を図ります。   法制度の利用促進:被害を受けた障がい者の被害回復に関する法制度の利用を促進するため、日本司法支援センター(法テラス)の業務充実に努めます。   振り込め詐欺や悪質商法への対応強化:法テラスの契約弁護士が福祉機関等との連携・協力体制を密にし、配慮を要する障がい者などの振り込め詐欺の被害や悪質商法による消費者被害の早期発見と被害回復に努めます。 まとめ 消費者トラブルの防止と被害からの救済は、障がい者が安心して消費生活を送るための重要な取り組みです。障がい者やその支援を行う者に対して消費者教育を推進し、消費者被害防止のための見守りネットワークの設置を促進します。さらに、消費生活相談体制の整備や法制度の利用促進、振り込め詐欺や悪質商法への対応強化を通じて、障がい者の消費者権利の保護と被害からの救済を図ります。   参考 障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度)

障がい者基本計画を見てみよう!障がい者施策の総合的推進とアクセシビリティの向上

前回に続き、障がい者基本法を詳しく見ていきましょう。政府は障がい者の社会参加を促進し、アクセシビリティを向上させるために、横断的な視点から施策を展開しています。この法律は、障がい者が社会の中で自立して活動し、自己実現することを支援し、彼らが快適に暮らせる環境を整えることを目指しています。 そのために、法律ではさまざまな分野にまたがる施策が提案されており、バリアフリーな社会を築くための具体的な取り組みが示されています。こうした横断的なアプローチによって、障がい者の社会参加を実現するための基盤が整備されています。   各分野に共通する横断的視点 条約の理念の尊重及び整合性の確保 障がい者に関する施策や制度を策定・実施する際には、条約の理念を尊重し、整合性を保つことが不可欠です。障がい者を社会の一員として捉え、彼らが自らの決定に基づき社会に参加する主体として尊重することが重要です。 そのためには、障がい者の視点を施策に反映させ、彼らが意思決定過程に参画する機会を提供する必要があります。さらに、障がい者の委員選任に配慮し、障がい特性に応じた適切な情報保障や合理的配慮を行うことが求められます。   社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上 社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れ、障がい者の社会参加を実質的なものとすることが必要です。社会的障壁の除去や障がい者差別の解消に向けた取り組みを強化し、障がい者が安心して生活できる環境を整備することが重要です。 また、広報・啓発活動や企業・市民団体の支援を通じて、アクセシビリティの向上と心のバリアフリーを推進する必要があります。さらに、情報公開やパブリックコメントの際には、障がい特性に配慮した適切な情報保障を実施することが求められます。   アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用の推進 社会のあらゆる場面で情報通信技術(以下「ICT」という。)が浸透しつつあります。新たな技術を活用した機器やサービスは、社会的障壁を生み出す可能性がありますが、同時にアクセシビリティに配慮したものも存在します。 このようなICTを含む新たな技術の利活用は、障がい者への移動支援や情報提供など、様々な場面でアクセシビリティを高める上で重要です。そのため、積極的な導入を推進する必要があります。   市場創出が課題 また、中小・ベンチャー企業が先進的な技術を開発する際には、市場創出が課題となります。この課題に対処するため、国が需要側の視点に立った施策の充実が必要です。 具体的には、公共部門における新技術の調達において、透明性と公正性を確保しつつ、中小・ベンチャー企業の入札機会を拡大することが重要です。さらに、政府調達においてアクセシビリティに配慮した機器・サービスを推進するため、国際規格に基づいた技術仕様の定め方を検討することも必要です。   倫理的・法制度的な課題 そして、科学技術の社会実装には倫理的・法制度的な課題が伴います。遺伝子診断や再生医療などの分野で見られるように、社会としての意思決定が必要です。これらの課題に対処しながら、アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用を推進していくことが求められます。   当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援 障がい者の尊厳と自律、自立の尊重を目指す条約の趣旨に基づき、障がい者が各ライフステージで適切な支援を受けられるよう、教育、文化芸術、スポーツ、福祉、医療、雇用などの分野を有機的に連携させ、切れ目のない支援を提供します。 この支援は、障がい者が直面する困難に対処するだけでなく、自立と社会参加の観点から行われ、障がい者やその家族への支援も重視します。複数の分野にまたがる課題に対処するためには、関係する機関や制度の連携が必要です。   障がい特性等に配慮したきめ細かい支援 障がい者一人ひとりの尊厳を重視し、障がい者の個別的な支援を障がい特性や状態、生活実態に応じて提供します。外見からは分からない障がいや状態の変動する障がいに対しても、配慮が必要です。 また、発達障がいや難病、高次脳機能障がいなどについては、社会全体の理解を促進し、施策の充実を図ることが重要です。特に発達障がいについては、社会全体での理解促進と、家族支援、福祉、労働、教育、医療の分野での総合的な取り組みが必要です。   障がいのある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援 障がい者施策は、障がいのある女性や複合的な困難に直面する障がい者に対して、特にきめ細かい支援を提供する必要があります。 障がいのある女性は、障がいの種類や状態によって異なる支援が必要であり、また女性であることがさらなる困難を引き起こす場合もあります。同様に、障がいのある子供や高齢者についても、それぞれに適した支援が必要です。高齢者施策との整合性を考慮しながら、条約の理念に基づいた支援を提供していくことが重要です。   PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 政策立案の確かな根拠に基づくために、障がい者施策では、必要なデータ収集や統計の充実を図り、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを構築し、着実に実行していきます。このサイクルを通じて、施策の見直しや改善を継続的に行い、実効性のある取り組みを推進していきます。   企画 (Plan) 確かな根拠に基づく政策立案を実現するためには、障がい者の実態や社会環境を適切に把握することが重要です。各府省は、障がい者の性別、年齢、障がいの種類などの観点を考慮しながら、必要なデータ収集や統計の充実を図ります。具体的な成果目標を設定し、総合的な施策を企画することで、効果的な施策を展開します。   実施 (Do) 各府省は、障がい者やその関係者の意見を聴取しながら、計画的な施策の実施に努めます。障がい者の状況や施策に関する情報を収集し、分析することで、効果的な施策を展開します。他の施策や計画との整合性を図り、総合的な支援を提供します。   評価 (Check) 障がい者の意思決定過程への参画を促進し、施策の実施状況を継続的にモニタリングします。数値やデータに基づき、施策の実施状況や効果を評価し、必要に応じて課題や支障を解消するための分析を行います。障がい者政策委員会も、実施状況の評価や監視を行います。   見直し (Act) 施策の実施状況や評価結果に基づき、各府省は施策の見直しを行います。必要に応じて法制度の整備なども検討します。障がい者政策委員会は、政府全体の見地から施策の実施状況を評価し、必要に応じて勧告を行います。また、社会情勢の変化に柔軟に対応するため、本基本計画の見直しを行います。 施策の円滑な推進 (1) 連携・協力の確保 政府の障がい者施策を一体的に推進するために、各府省間で緊密な連携・協力を図ります。地方公共団体との連携も重要であり、役割分担のもとで連携体制を強化します。障がい者団体や専門職の協力も得ながら、施策を展開していきます。さらに、国際機関や他国政府との連携も努め、持続可能な開発目標の実施を総合的かつ効果的に推進します。   (2) 理解促進・広報啓発に係る取組等の推進 ① 重点的な理解促進事項 社会全体で障がいの有無によらず支え合う共生社会の理念を普及させ、共生社会の実現に向けて啓発活動を展開します。2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて共生社会のイメージを広め、障がい者施策の意義について理解を深めます。さらに、知的障がいや精神障がいなど、理解が必要な障がいについても啓発活動を行います。   ② 理解促進に当たり配慮する事項 行政や民間団体との連携による広報・啓発活動を計画的かつ効果的に展開し、国民の理解を深めます。地域社会における障がい者との交流を促進し、障がい者週間などの行事を通じて啓発活動を推進します。また、幼児や児童生徒を対象とした理解促進の取り組みも重要です。   各分野における障がい者施策の基本的な方向:安全・安心な生活環境の整備 【基本的考え方】 障がい者が地域で安全かつ安心して生活できる環境を整備することを目指します。そのために、バリアフリーな住環境や移動しやすい環境、アクセシビリティを考慮した施設の普及などを推進し、社会的な障壁を取り除き、アクセシビリティを向上させます。   (1) 住宅の確保 公営住宅の整備や改修を通じてバリアフリーな環境を提供し、障がい者向けの公共賃貸住宅の供給を増やします。 民間賃貸住宅の活用やバリアフリーな改修を促進し、障がい者の入居をサポートするための制度を導入します。 障がい者の日常生活を支援するため、日常生活用具の給付や住宅改修に対する支援を行います。 グループホームや地域生活支援拠点の整備を推進し、障がい者の地域での生活を支援します。 非常時における防火安全体制の強化を図り、障がい者が安心して福祉サービスを利用できる環境を整えます。   (2) 移動しやすい環境の整備等 駅や旅客施設において段差解消や転落防止設備の整備、障がい者に配慮した車両の整備を促進し、公共交通機関のバリアフリー化を推進します。 公共交通機関内外での案内表示や情報提供の充実を図り、障がい者の利用しやすさを高めます。 交通事業者に対して、障がい者に適切な対応を確保するための教育訓練を促進します。 障がい者に対する個別の輸送サービスを提供するため、福祉タクシーやスペシャル・トランスポート・サービス(STS)の普及を促進します。 過疎地域や地方での移動手段の確保や、高齢者や障がい者の安全な移動を支援するため、ITSの研究開発や高度自動運転システムの導入に取り組みます。   (3) アクセシビリティに配慮した施設、製品等の普及促進 バリアフリー法に基づく建築物のバリアフリー化を促進するため、地域の実情に合わせた取り組みを行い、建築物のバリアフリー化を進めます。 官庁施設においても、バリアフリー法に基づく整備水準を確保することで、窓口業務を行う施設のアクセシビリティを向上させます。 都市公園や河川の整備においても、障がい者や高齢者が利用しやすい環境を整備し、安全で安心した利用を促進します。 日常生活製品や設備のユニバーサルデザイン化を推進し、障がい者や高齢者の利用に配慮した製品の普及を図ります。   (4) 障がい者に配慮したまちづくりの総合的な推進 高齢者や障がい者の社会参画の拡大とバリアフリーのまちづくりを促進するため、バリアフリー法や関連施策の見直しを行います。地域連携を強化し、ハード・ソフトの両面から取り組みます。 福祉・医療施設の適正な立地や公園との一体的整備、生活拠点の集約化などを通じて、バリアフリーに配慮したまちづくりを推進します。 市町村が定める重点整備地区内での生活関連経路の整備や公共交通機関のバリアフリー化を促進し、幅広い歩道や視覚障がい者誘導用ブロックの整備を行います。 国立・国定公園の主要利用施設のバリアフリー化を実施し、生活関連経路を構成する道路においてもバリアフリー対応型信号機や道路標識の整備を推進します。 自動車の運転においても障がい者の安全を考慮し、信号灯器の改善や速度規制などの対策を講じます。 駐車区画の適正利用を促進するため、地方公共団体における「パーキングパーミット制度」の普及を図ります。 ユニバーサル社会の構築に向け、ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進を行い、屋内外でのストレスない活動を実現します。 「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、具体的な取り組みを実施します。 まとめ 障がい者の社会参加を促進し、アクセシビリティを向上させるために、政府は横断的な視点から施策を展開します。連携強化や新技術の活用を通じて、障がい者が安心して生活できる社会の実現に向け、着実な一歩を踏み出しています。   参考 障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度)

障がい者基本計画を見てみよう!第4次計画の基本理念と原則とは?

障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援する基本理念に基づき、平等、無差別、合理的配慮の原則を重視して策定されました。 障がい者基本計画(第4次)における基本的な考え方について、以下の要点をまとめました。   基本理念と基本原則 基本理念:障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援することを基本理念とします。 基本原則:平等、無差別、合理的配慮の原則を重視します。すべての人に対し、差別なく適切な支援を提供します。   昭和45年に制定された心身障がい者対策基本法から始まる 我が国の障がい者施策は、昭和45年に制定された心身障がい者対策基本法から始まりました。この法律は、心身障がい者の福祉に関する施策を基本的なものとして定め、当時は心身障がい者という表現が用いられていました。 平成5年には、この法律が障がい者基本法に改正され、心身障がい者だけでなく精神障がい者も含めた「障がい者」として位置付けられました。法の目的も、障がい者の自立とあらゆる分野の活動への参加の促進に変更されました。   着実に取り組みが進められている その後の改正では、障がい者差別を禁止する基本的理念が盛り込まれ、中央障がい者施策推進協議会が設立されました。平成23年には、我が国が署名した障がい者の権利に関する条約の批准に向け、法の改正が行われました。社会モデルの考え方や合理的配慮の概念が導入され、障がい者政策委員会が新たに設置されました。 障がい者基本計画の策定も進み、平成25年には第4次の基本計画が閣議決定されました。これまでの取組では、障がい者の自己決定の尊重や意思決定支援、当事者本位の総合的な支援、障がい特性に配慮した支援、アクセシビリティの向上などが重視されてきました。これらの施策分野において、障がい者政策委員会による監視を経て、着実に取り組みが進められています。   施策の方向性や政策課題について幅広く議論が行われた 障がい者政策委員会は、平成28年10月以降、本基本計画の策定に向けた熱心な調査と審議を行ってきました。この間、障がい者施策の分野では、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催や障がい者差別解消法の施行など、大きな変化がありました。委員会では、これらの動向を踏まえつつ、障がい者施策の方向性や政策課題について幅広く議論が行われました。 その結果、計11回の審議を経て、平成30年2月に「障がい者基本計画(第4次)の策定に向けた障がい者政策委員会意見」がまとめられました。政府は委員会の意見に基づき、本基本計画の案を作成し、パブリックコメントを経て、平成30年3月に閣議決定しました。   共生社会の実現やさまざまな社会的目標に貢献する期待 本基本計画は、障がい者基本法の目的である障がい者の自立と社会参加の支援に加えて、共生社会の実現や2020年東京オリンピック・パラリンピックでの活躍、障がい者施策の社会的意義など、さまざまな社会的目標に貢献することが期待されています。これらの目標を達成するためには、本基本計画に基づいた施策の策定と実施が重要であり、常にこれらの目標を念頭に置いて取り組んでいくことが必要です。   障がい者の自立と社会参加を支援する施策 障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に推進するために策定されました。これは、基本法第11条第1項に基づくものであり、政府が行う障がい者支援施策の中核的な計画です。 対象期間は平成30年度からの5年間です。構成は、障がい者基本計画(第4次)に関するⅠ、基本的な考え方に関するⅡ、各分野における障がい者施策の基本的な方向に関するⅢの3つの部分から成り立っています。   障がい者の権利を保護する国際的な動き 条約との関係においては、障がい者の権利を保護する国際的な動きがありました。国際連合総会では、障がい者の権利に関する宣言が採択され、障がい者の人権の重要性が認識されました。その後、障がい者の権利を包括的かつ総合的に保護する国際条約の検討が行われ、平成18年に条約が国連総会で採択されました。 障がい者の権利に関する国際条約は、障がい者の人権と基本的自由の享有を確保し、彼らの固有の尊厳を促進することを目的としています。その主な内容は以下の通りです。   一般原則:障がい者の尊厳、自律、自立の尊重、無差別性、社会参加と包摂が挙げられます。 一般的義務:合理的配慮の実施、全ての障がい者の人権と基本的自由の完全な実現と促進が含まれます。 障がい者の権利実現のための措置:身体の自由や拷問の禁止などの自由権と、教育や労働などの社会権に関する締約国の取るべき措置が含まれます。 条約の実施のための仕組み:国内の枠組みの設置や障がい者権利委員会による報告の検討が含まれます。   日本はこの条約に署名し、国内法の整備を進めてきました。障がい者基本法や障がい者自立支援法、障がい者差別解消法などが整備され、平成26年に批准されました。その後、障がい者政策委員会による監視を経て、政府報告が作成され、障がい者権利委員会に提出されました。   障がい者に関する基本的な考え方が明確に示されている 障がいの捉え方に関して、従来の医学モデルでは心身の機能の障がいのみが問題視されていましたが、条約では社会モデルの考え方が採用され、障がい者が直面する制限は心身の機能の障がいだけでなく、社会的な障壁によっても生じるとされています。 次に、平等・無差別及び合理的配慮について、条約は全ての障がい者に対する平等な権利と基本的自由の確保を促進し、合理的配慮の提供を求めています。合理的配慮は、障がいに基づく差別を禁止し、障がい者の権利を保護するための重要な要素です。また、障がい者の意思決定過程への積極的な参加も求められています。 最後に、条約の実施に関する仕組みについて、国内の枠組みの設置や障がい者権利委員会による報告の検討が規定されています。障がい者権利委員会は、専門家によって構成され、締約国の報告を審査し、提案や勧告を行う役割を担っています。このような仕組みにより、締約国は条約の実施について国際的に監視されることになります。   障がい者の権利の実現に向けた努力がより効果的に 障がい者基本計画(第4次)は、条約の批准後に策定される初めての計画であり、その整合性が非常に重要です。本基本計画では、条約の理念を反映し、各分野の施策と条約の各条項との対応関係を明示しています。これにより、計画の実施状況と条約の国内実施の状況を対応させ、効果的かつ適切な取り組みを進めることが期待されます。 さらに、障がい者政策委員会による条約の実施状況の監視を円滑化するために、本基本計画には、条約の実施状況に関する障がい者権利委員会からの勧告や意見を取り入れる機構が組み込まれています。これにより、計画と条約に関連する取り組みの連携が適切に行われ、障がい者の権利の実現に向けた努力がより効果的に推進されることが期待されます。 オリンピック・パラリンピック競技大会 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、障がいの有無にかかわらず、世界中から多くの人々が集まり、パラリンピック競技大会では障がいのある選手が圧倒的なパフォーマンスを披露することで、共生社会の実現に向けた大きな機会となります。 政府は、この大会に向けて心のバリアフリーやまちづくりの施策を推進し、障がい者の視点を反映させながら取り組みました。具体的には、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れて施策を展開し、公共交通機関のバリアフリー化や移動しやすい環境の整備、障がい者に配慮したまちづくりを進めています。   心のバリアフリーへの理解 また、本基本計画では、文化芸術活動・スポーツの振興を独立した施策分野として格上げし、パラリンピック競技大会を念頭に置いた施策を強化しています。障がい者スポーツの競技性の高さに焦点を当て、アスリートの育成強化や地域でのスポーツ環境整備などに力を入れています。 さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて共生社会の姿を広く発信し、心のバリアフリーへの理解を深め、社会全体で推進することも重要視されています。   基本的な考え方 基本理念 条約は、障がい者の人権と基本的自由を確保し、彼らの固有の尊厳を尊重することを目指しています。基本法の改正においても、この理念に基づき、障がいの有無にかかわらず、すべての国民が等しく基本的人権を享有し、障がいの有無による分け隔てがない共生社会を実現する必要があります。本基本計画は、この社会の実現に向け、障がい者を支援しながら自己決定の主体として捉え、彼らの能力を最大限発揮できるよう支援し、社会的な障壁を除去する方向性を定めています。   基本原則 政府は、障がい者を支援しながら自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体として捉え、条約の理念に基づいて改正された基本法の基本原則に従って、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に実施します。   地域社会における共生等 基本法第3条や条約の理念に基づき、本基本計画では障がい者が尊厳を持ち、尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としています。障がい者施策の実施においては、以下の点に重点を置きます。   社会参加の機会の確保:障がい者が社会、経済、文化などあらゆる分野で活動に参加できるよう機会を提供します。 共生の機会の確保:障がいの有無にかかわらず、地域社会で他者と共生できる環境を整え、生活の選択肢を提供します。 コミュニケーション手段の選択の機会:障がい者が意思疎通に適した手段を選択できるよう、言語や手話などのコミュニケーション手段を提供します。 情報取得の機会の拡大:障がい者が情報を取得し、利用する手段を選択できるよう、情報へのアクセスの機会を拡大します。   差別の禁止 基本法第4条や条約、障がい者差別解消法に基づき、障がい者差別やその他の権利利益の侵害行為を禁止し、合理的配慮を提供する必要があります。具体的には、以下の点に注意を払います。   差別の禁止:障がい者差別や権利利益の侵害を禁止します。 合理的配慮の提供:社会的障壁を除去するために、合理的配慮を提供します。障がい者差別解消法の実効性を確保するため、施行状況を定期的に検討し、必要に応じて見直しを行います。   国際的協調 基本法第5条や条約第32条に基づき、共生社会の実現は国際的な協調の下で行われる必要があります。障がい者の自立や社会参加の支援は国際社会と密接に関係しており、以下の点に注意を払います。   国際協力の重要性:共生社会の実現に向けた施策は国際協力に基づいて行われるべきです。 条約の遵守と報告:条約を批准し、障がい者権利委員会に政府報告を提出するなど、国際的な枠組みとの連携を強化します。 まとめ 障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援する基本理念に基づいています。平等、無差別、合理的配慮の原則を重視し、すべての人に対し差別なく適切な支援を提供します。この計画は国際的な協調の下で推進され、障がい者の権利を保護し、共生社会の実現に向けた取り組みがさらに強化されることが期待されます。   参考 障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度)

障がい者基本法を見てみよう!平成16年6月に改正された障がい者基本法の主なポイントとは?

平成16年6月に改正された障がい者基本法は、平成16年5月12日に衆議院内閣委員会委員長の提案によって国会に提出され、5月28日に参議院本会議で可決されました。そして、同年6月4日に公布・施行されました(一部を除く)。この改正法の成立に際しては、参議院で附帯決議が付されました。   改正の趣旨 障がい者基本法の一部改正案の要綱によれば、この改正の趣旨は、現代の障がい者の状況や社会経済の変化に対応し、彼らの自立と社会参加を促進することにあります。このため、障がいを理由とする差別や権利侵害を禁止し、都道府県や市町村には障がい者のための基本的な施策計画の策定を義務付け、中央障がい者施策推進協議会を設立するなどの改正が行われます。   目的 第一条の目的は、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に推進し、彼らの福祉を増進することです。第二条の目的は、障がい者の自立や社会への積極的な参加を促進するための取り組みを支援し、障がい者の福祉を向上させることを目的としています。第三条では、障がい者に対する差別や権利侵害を禁止する基本的理念が明確化されます。第四条では、国と地方公共団体に障がい者の権利擁護や差別防止、自立支援の責務が課されます。   改正案では新たに第五条が追加 また、改正案では新たに第五条が追加され、国民に障がい者の人権尊重と差別撤廃に貢献する責務が課せられます。自立への努力に関する規定は第六条で削除され、障がい者週間の規定が新たに追加されます。施策の基本方針も改められ、障がい者の自主性尊重と地域での自立した生活を営む支援が強調されます。   障がい者基本計画等に関する改正 障がい者基本計画等に関する改正は、都道府県、市町村、国、地方公共団体などに対する責務の明確化を図っています。都道府県は、障がい者基本計画を基本とし、障がい者の地域ごとの状況を考慮して、障がい者の施策計画である都道府県障がい者計画を策定しなければなりません。同様に、市町村も障がい者基本計画と都道府県の計画を基に、地域の状況に即した施策計画である市町村障がい者計画を策定しなければなりません。   閣議での決定が求められる また、障がい者基本計画は内閣総理大臣が策定するものであり、その際には関係行政機関の長との協議や中央障がい者施策推進協議会の意見を踏まえ、閣議での決定が求められます。更に、地方自治体が地域において障がい者施策を推進する場合、地方障がい者施策推進協議会の設置が求められ、障がい者や関係者の意見を尊重した施策の策定が要求されます。障がい者基本計画や障がい者施策に関する計画が策定された場合は、都道府県知事や市町村長はそれを地方議会に報告しなければなりません。   障がい者の日常生活を支援するための様々な施策 医療や介護、福祉用具の提供、教育、職業相談、公共的施設のバリアフリー化など、障がい者の日常生活を支援するための様々な施策が、国や地方公共団体によって取られることが定められています。 第十四条では、情報の利用におけるバリアフリー化が要求されています。国や地方公共団体は、障がい者が円滑に情報を利用し、意思を表示できるようにするため、障がい者にとって利便性の高い電子計算機や情報通信機器の普及、電気通信や放送における障がい者の利便性の向上、そして障がい者向け情報提供施設の整備など、必要な施策を講じなければなりません。さらに、行政の情報化や公共分野における情報通信技術の活用に際しては、特に障がい者の利用を考慮し、配慮しなければなりません。   相談業務や成年後見制度、障がいの予防に関する基本的な施策 第十五条では、障がい者に関する相談業務や成年後見制度などの施策や制度が適切に行われ、また広く利用されるようにするための施策が求められています。 第十六条では、障がいの予防に関する基本的な施策が定められています。国や地方公共団体は、難病など障がいの原因となる疾病の予防や治療の困難さに鑑み、関連する調査や研究を推進し、その結果に基づいて障がい者への支援を行うよう努めなければなりません。   中央障がい者施策推進協議会の設置 第十七条では、中央障がい者施策推進協議会(中央協議会)の設置が規定されています。内閣府が中央協議会を設け、障がい者基本計画に関する重要事項を処理します。この協議会は、障がい者や障がい者の福祉に関わる専門家、学識経験のある者からなる委員で構成され、彼らの意見を踏まえて政府の政策に対する助言や提言を行います。 第十八条では、法律の施行期日や検討事項に関する規定が述べられています。   施行期日: この法律は、公布の日から施行されます。ただし、第十七条については、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。また、第九の一の2については、平成十九年四月一日から施行されることとなります。   検討: 政府は、この法律の施行後五年を目途として、改正後の規定の実施状況や障がい者の社会経済情勢の変化などを考慮し、障がい者に関する施策の在り方について検討を行います。その結果に基づいて必要な措置を講じます。   その他の規定: 必要な規定が整備されることが求められています。 障がい者基本法の改正案の該当部分 第四条 国及び地方公共団体の責務を定め、障がい者の権利擁護、差別防止、自立支援、社会参加促進等により障がい者の福祉を増進する責務を課します。第六条を削除します。   第五条 国民の責務として、社会連帯の理念に基づき、障がい者の人権尊重と差別なき社会参加の実現に努めることを規定します。 これに伴い、既存の第五条を第六条とし、新たに国民の理解に関する規定を加えます。   第二章 既存の第九条を第十一条に変更し、その後に新たに障がい者の福祉に関する基本的施策を規定した第二章を追加します。   第十二条(医療、介護等) 国及び地方公共団体に、障がい者の医療の提供やリハビリテーションの実施など、福祉を増進するための施策を講じる責務を課します。 医療やリハビリテーションの研究・開発・普及の促進、障がい者が必要な支援を受けられるよう施策を講じることが求められます。 専門的技術職員の育成や福祉用具・身体障がい者補助犬の提供に関する施策も行われるよう努めなければなりません。   第十三条(年金等) 障がい者の自立と生活の安定を支援するために、国や地方公共団体は年金や手当などの制度に関する施策を講じなければなりません。   第十四条(教育) 障がい者が適切な教育を受けられるように、国や地方公共団体は教育の内容や方法の改善・充実を図るとともに、教育に関する調査や研究、学校施設の整備を促進しなければなりません。   第十五条(職業相談等) 障がい者が適切な職業に就けるように、国や地方公共団体は障がい者の能力や状態に応じた職業相談や訓練、紹介などの支援を行う必要があります。   第十六条(雇用の促進等) 障がい者の雇用を促進するために、国や地方公共団体は適した職種や職域に対する障がい者の優先雇用の施策を講じるとともに、事業主に対して雇用の安定を図るための支援を行う必要があります。   第十七条(住宅の確保) 障がい者の生活の安定を図るため、国や地方公共団体は障がい者向けの住宅を確保し、日常生活に適した住宅の整備を促進する必要があります。   第十八条(公共的施設のバリアフリー化) 官公庁施設や交通施設などの公共的施設において、障がい者が利用しやすいような施設の構造や設備の整備を国や地方公共団体、そして事業者が推進する必要があります。   第十九条(情報の利用におけるバリアフリー化) 電子計算機や情報通信機器などの普及、電気通信や放送サービスの利用の障がい者向けの利便性の増進、障がい者向けの情報提供施設の整備など、障がい者が情報を円滑に利用できるようにするための施策が必要です。   第二十条(相談等) 障がい者に関する相談業務や権利保護制度などが適切に行われ、広く利用されるように国や地方公共団体が努める必要があります。   第二十一条(経済的負担の軽減) 障がい者やその扶養者の経済的負担を軽減し、自立を促進するために、税制上の措置や公共施設の利用料の減免などの施策が必要です。   第二十二条(文化的諸条件の整備等) 障がい者の文化的活動やレクリエーション、スポーツ活動の支援のために、施設や設備の整備など必要な施策が講じられるべきです。   第七条の改正 障がい者計画の策定に関する規定や、施策の推進に必要な行政機関間の連絡調整についての改正が行われています。さらに、障がい者施策における地方の意見や関係者の意見を尊重する方針が盛り込まれました。   第六条の二(障がい者週間) 障がい者週間の期間や日付が具体化され、12月3日から12月9日までの1週間とされることが提案されています。   その他の改正 さまざまな条項や見出しの修正が行われ、障がい者基本法の体系や内容が整理されています。特に、地方障がい者施策推進協議会に関する規定の改正や、中央障がい者施策推進協議会の名称変更などが含まれています。   障がい者基本計画に関連する事項 中央障がい者施策推進協議会は、障がい者基本計画に関連する事項を処理するために内閣府に置かれる組織です。以下に、この改正案の主なポイントをまとめます。   組織と人員 中央協議会は最大で30人の委員で構成され、障がい者や障がい者の福祉に関わる専門家、学識経験者などが内閣総理大臣によって任命されます。彼らの委員会の構成は、様々な障がい者の意見を考慮して行われることが求められます。委員は非常勤であり、中央協議会の組織や運営についての詳細は政令で定められます。   法改正内容 障がい者基本法の改正では、基本計画の策定について「策定しなければならない」という義務が明記されています。   施行期日 この法律は公布の日から施行されますが、内閣府設置法の改正に関する規定は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定められる日から、障がい者基本法の改正規定は平成19年4月1日から施行されます。   検討 施行後5年を目途に、この法律の実施状況や障がい者を取り巻く社会経済情勢の変化などを勘案して、障がい者に関する施策の在り方について検討を行い、必要な措置を講ずることが政府に求められています。   この法律改正案は、障がい者に対する差別や権利の侵害を防止し、障がい者の福祉を向上させるための包括的な取り組みを進めるためのものです。 まとめ 障がい者基本法の改正は、障がい者の自立と社会参加を促進するための包括的な取り組みを進めるものであり、施行後の効果検証や社会の変化に応じた柔軟な対応が求められます。障がい者の権利擁護や福祉増進に向けたこの法律は、日本社会の包摂性と共生性を高める重要な一歩となるでしょう。   参考 障がい者基本法の改正について(平成16年6月)

「障がい者週間」と「共生社会の構築」障がいのある人に対する理解を深めるための基盤づくり

障がい者基本計画(第4次)に基づき、障がいのある人との共生社会を推進するため、広報・啓発活動が重要視されています。内閣府が発行する障がい者白書の第2章では、障がい者週間を活用して、国民の理解を深める取り組みが行われています。本記事ではどのような事が行われているのか見ていきたいと思います。   毎年12月3日から9日までの1週間「障がい者週間」 障がい者週間は、毎年12月3日から9日までの1週間が指定され、共生社会の理念の普及と障がいに対する理解を促進することを目的としています。政府は、障がい者週間に向けて様々なイベントを展開しています。 例えば、小・中学生などから障がいのある人とのふれあいをテーマにした作文やポスターの募集が行われ、最優秀作品が選定されます。また、関連行事では、一般国民を対象に障がい者に関するセミナーが開催され、障がい者関係団体との連携も図られています。 障がい者週間の関係表彰式では、最優秀作品や功労者に内閣総理大臣表彰が授与され、その功績が称えられます。これらの取り組みを通じて、障がい者との理解を深め、共生社会の実現に向けた一助となることが期待されています。   各種の広報・啓発活動が行われ障がいのある人への理解を促進 様々な週間・月間の取り組みが行われています。例えば、9月は「障がい者雇用支援月間」、10月は「第65回精神保健福祉普及運動」、12月は「人権週間」となっており、これらの期間を通じて障がいに関する理解を深めるための活動が展開されています。また、4月には「発達障がい啓発週間」があり、地方公共団体や関係団体による啓発活動が行われています。   バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進功労者表彰 バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進功労者表彰も行われています。高齢者や障がいのある人、妊婦、子供連れの人々が安全かつ快適な社会生活を送るために、バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進が重要視されています。内閣総理大臣表彰等を通じて、顕著な功績や功労を持つ個人や団体が表彰され、その取り組みが称えられています。平成29(2017)年度には、9団体が表彰されました。   障がい者政策委員会は会議の情報提供を行う 障がい者政策委員会では、会議の情報提供に積極的で、インターネットを通じて会議の全状況を動画や音声、手話、要約筆記の文字情報として一定期間提供しています。 障がい者白書は、障がい者基本法第13条に基づき、政府が毎年提出する報告書です。平成28年版からは、視覚障がい者や印刷物を読むことが難しい人々のためにデジタル録音図書である「マルチメディアデイジー」版が作成され、内閣府のホームページで公表されています。   福祉教育の推進 福祉教育の推進では、学校教育において交流や共同学習の機会を設けることが規定されています。教育委員会が主体となり、各学校で様々な交流や共同学習が行われ、障がい者理解の推進が図られています。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、「心のバリアフリー学習推進会議」が設置され、交流や共同学習の推進方策についての提言がまとめられています。 地域住民への広報・啓発活動も行われており、社会教育施設や精神保健福祉センターでは、障がいのある人に対する理解を深めるための学習活動や知識の普及・啓発が行われています。これらの取り組みを通じて、障がい者への理解が広がり、共生社会の実現に向けた一助となっています。   ボランティア活動の推進 学校におけるボランティア教育では、学習指導要領に基づき、道徳や総合的な学習の時間などで思いやりの心や助け合いに関する指導やボランティア活動の充実を図っています。特に高等学校では、生徒が行うボランティア活動などの学校外での学修が認められ、単位として認定される場合もあります。 地域福祉等ボランティア活動の促進に向けて、内閣府では「地域コアリーダープログラム」を実施し、共生社会の実現に向けた人材育成を行っています。また、障がい者関連分野では、国内外での青年の交流やリーダー育成を促進しています。   公共サービス従事者等に対する障がい者理解の促進 公共サービス従事者等に対する障がい者理解の促進では、警察や刑務所、更生保護官署、法務省の人権擁護機関などで障がい者理解の研修や教育が行われています。警察学校や矯正研修所では、障がいのある人への配慮やコミュニケーション方法などについての研修が実施され、社会福祉施設での体験実習も行われています。 法務省では、国家公務員や地方自治体職員を対象にした研修が行われ、障がい者に関する理解と認識の向上が図られています。また、日本司法支援センターでは、障がい者支援の知識を持つ担当職員が研修を通じて全国の職員に知識を伝え、利用者の立場を理解した適切な対応が行われるよう支援しています。 障がい者差別解消法の制定経緯と概要 障がい者差別解消法の制定経緯 障がい者の権利を保障するために、国際的な取り組みとして「障がい者の権利に関する条約」が採択され、日本も2007年に署名し、2014年に批准しました。これに基づき、障がい者基本法が改正され、差別の禁止が規定されました。その後、障がい者差別解消法が2013年に成立し、2016年に施行されました。   障がい者差別解消法の概要 (1)対象となる障がい者 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)など、障がいによって日常生活や社会生活に制限を受ける者が対象です。障がい者手帳の所持者に限定されず、広範な障がい者が含まれます。   (2)対象となる事業者及び分野 行政機関や事業者が対象で、商業や非営利活動など様々な分野が含まれます。特に教育、医療、福祉、公共交通、雇用など、障がい者の自立と社会参加に関わる分野が重視されています。   (3)不当な差別的取扱いの禁止 障がいを理由とした財・サービスの拒否や条件付けなどは不当な差別とされ、法律で禁止されています。ただし、客観的に正当な理由がある場合は例外とされます。 障がい者差別解消法は、障がい者の権利を保障し、差別をなくすための具体的な措置を講じることで、社会の多様性と包摂性を実現するための重要な法律です。   (4)合理的配慮の提供 障がい者や関係者から配慮を求められた場合、負担が過重でない範囲で、社会的障壁を取り除くための必要かつ合理的な配慮を行います。負担の有無は、事案ごとに具体的に判断され、事務・事業の影響や実現可能性、費用などを総合的に考慮します。ただし、行政機関には義務が課される一方で、事業者には努力義務があります。   (5)環境の整備 公共施設や交通機関のバリアフリー化、サービス・介助者の提供、情報アクセシビリティの向上など、不特定多数の障がい者を対象とする事前的改善措置を行います。これには、ハード面だけでなく、職員の研修などのソフト面の対応も含まれます。   (6)障がい者差別解消法 「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を定め、行政機関等は対応要領を定めます。これに加え、各主務大臣は対応指針を定め、事業者が適切に対応するための指針を提供しています。   障がい者差別解消法 内閣府では、関係省庁や地方公共団体、障がい者団体などから障がい者差別解消法に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を収集し、「合理的配慮の提供等事例集」としてまとめています。 障がい者差別解消法に基づき、地域協議会の設置が促進されています。地域協議会は、相談事例の共有や協議を通じて、事案解決や類似事案の発生防止を図るためのネットワークです。未設置の地域に対しては、有識者をアドバイザーとして派遣するなどの支援が行われています。   地域の障がいのある人や関係者の意見を広く聴取 地域フォーラムが開催され、地域の障がいのある人や関係者の意見を広く聴取し、障がい者差別解消法の円滑な施行を目指し、地域における取り組みの促進と気運の醸成を図っています。 事業者における障がい者差別解消に向けた取り組みが期待されますが、必要に応じて主務大臣や地方公共団体の長が、事業者に対し報告を求めたり、助言・指導・勧告を行ったりすることができます。   2020年東京オリンピック・パラリンピックの基本方針 2015年に閣議決定された「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」では、東京大会を契機に、障がいの有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、ユニバーサルデザインの街づくりを進めることが位置づけられました。その基本方針に基づき、2017年には「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が決定されました。   行動計画 行動計画では、以下の2つの観点から具体的な取組が行われています。   「心のバリアフリー」の推進:障がいのある人への社会的障壁を取り除く社会の責務を理解し、差別をなくし、異なる条件を持つ他者とコミュニケーションを取る力を養い、共感する力を培うことが重要視されています。   ユニバーサルデザインの街づくり:東京大会に向けたバリアフリー化と全国各地でのユニバーサルデザインの推進が行われ、幅広い施策がとられています。   共生社会を実現するために必要な取り組み 2020年パラリンピック大会まで1000日を切った2018年1月に、「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議(第2回)」が開催されました。この会議では、ユニバーサルデザインを推進する上での重要な要素である「心」と「街」の両分野における取り組みが共有され、更なる施策の進展が図られました。特に、共生社会を実現するために必要な取り組みの加速化が確認されました。 まとめ 障がい者週間や関連する取り組みは、障がいのある人々と社会全体の理解を深め、共生社会の実現に向けた重要な一歩となっています。これらの活動を通じて、社会の多様性と包摂性を促進し、障がい者の活躍と尊重を推進していくことが期待されます。障がい者週間を通じて展開されるイベントや関連行事は、多様な人々に障がい者とのふれあいや理解を深める機会を提供し、その結果、社会全体がより包括的かつ温かい場所となることが期待されます。   参考 第2章 障がいのある人に対する理解を深めるための基盤づくり|内閣府

どんな種類の障がいがあるの?障がいの多様性:身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい 知っておきたい基礎知識!

障がいは主に「身体障がい」「知的障がい」「精神障がい」の3つに大別される 障がいとは、障がい者基本法によれば、「身体障がい、知的障がい、精神障がいがあるため、継続的に日常生活や社会生活において相当な制限を受ける者」を指します。この定義に基づくと、障がいは主に「身体障がい」「知的障がい」「精神障がい」の3つに大別されます。 身体障がいは、身体の一部に損傷や機能の制限があり、日常生活に支障をきたすものです。知的障がいは、認知能力や学習能力に問題があり、社会参加や自立が難しい状態を指します。精神障がいは、心の健康に関連する障がいであり、感情や行動の制御が難しくなることがあります。これらの障がいは、個々の人の状況や程度によって異なり、支援や配慮が必要とされる場合があります。   身体障がい 身体障がいとは、先天的な要因や病気、事故などにより身体機能に制限が生じる障がいのことです。身体障がい者福祉法では、5つの主要な種類に分類されています。   視覚障がい 視覚障がい者は、視力に関する問題によって日常生活に様々な困難を抱えます。例えば、移動時には安全なルートの確保や交通手段の利用に課題が生じます。読書や書類の理解、情報の収集、デジタル機器の操作なども困難を伴います。 また、視覚障がいによって生じる社会的孤立や心理的なストレスも考慮する必要があります。支援としては、点字や音声案内、拡大印刷物、音声合成技術などの利用が挙げられます。   聴覚障がい 聴覚障がい者は、コミュニケーションや情報収集において困難を経験します。日常生活では、会話や講義、公共のアナウンスなどが聞き取りにくい場合があります。特に、背景雑音のある環境や複数の話者がいる場面での情報の把握が難しくなります。聴覚障がい者への支援策としては、手話や筆談、口話言語訓練、聴覚補助装置の利用などがあります。   音声・言語機能またはそしゃく機能障がい 音声・言語機能の障がいやそしゃく機能障がいを持つ人々は、コミュニケーションや食事において日常生活におけるさまざまな困難に直面します。言葉の理解や発声が難しいため、コミュニケーションの円滑な進行が難しくなります。 また、そしゃく機能障がいを持つ人々は、食事や嚥下に関する問題により、栄養摂取や健康管理に支障を来すことがあります。これらの障がいへの対応としては、手話や文字によるコミュニケーション支援、食事内容や嚥下訓練の改善などが挙げられます。   肢体不自由 肢体不自由は、四肢や体幹の運動機能に障がいがある状態を指します。この障がいにより、日常生活において様々な困難が生じます。例えば、移動や身の回りの世話、衣服の着脱、食事の準備や摂取、さらには仕事や学校などの社会的な活動にも影響を及ぼします。肢体不自由の原因は多岐にわたります。 先天的な障がい、遺伝的な要因、疾患、事故や外傷など、さまざまな要因が考えられます。また、脳や脊髄の損傷、筋肉や関節の異常、先天性の四肢の発育不全なども肢体不自由の原因となります。リハビリテーションや適切な医療、補助具の利用など、個々の状況に応じた支援が重要です。   内部障がい 内部障がいは、心臓や腎臓、免疫機能などの内部器官の機能に障がいがある状態を指します。これらの障がいにより、全体的な体力低下や疲労感が生じます。心臓の機能障がいによる場合、身体のどこからでも不規則な動悸や息切れが起こることがあります。 腎臓の機能障がいでは、体内の余分な水分や老廃物が排泄されず、浮腫や高血圧などの症状が現れることがあります。免疫機能障がいによる場合、体が感染症に対して充分な抵抗力を持たず、さまざまな健康問題が生じる可能性があります。 これらの障がいの原因は、様々なものが考えられます。心臓や腎臓の機能障がいは、疾患や生活習慣によるものが主な原因です。免疫機能障がいは、遺伝的な要因や環境要因、または病気や治療によるものがあります。内部障がいは、適切な治療や管理が不可欠であり、それによって生活の質を改善することが可能です。   知的障がい 知的障がいの特徴を掘り下げると、以下のような点が挙げられます。   知的発達の遅れや制限 知的障がいは、一般的な知的発達の遅れや制限が主な特徴です。これは、認知能力、言語能力、学習能力、社会的な適応能力などに影響を与えます。 この遅れや制限は、人々が情報を処理し、問題を解決し、日常生活のスキルを獲得する能力に影響を及ぼします。   知的機能と適応機能の評価 個々の知的障がいの程度は、知的機能と適応機能のレベルに基づいて評価されます。知的機能は、知的テストによって測定されます。これには、言語、数学、記憶、問題解決能力などが含まれます。 適応機能は、日常生活や社会生活における能力を示します。これには、自己ケア、コミュニケーション、社会的相互作用、職業訓練などが含まれます。 年齢に応じて、個人の能力や成長を評価し、必要な支援やサービスを提供するために、定期的な評価が行われます。 このような詳細な評価を通じて、個々のニーズや能力に合わせた適切な支援が提供され、知的障がいを持つ人々が最大限の可能性を引き出すことができるようになります。   日常生活における困難 影響について更に掘り下げると、知的障がいが日常生活や教育、雇用に及ぼす具体的な影響を理解することができます。   日常タスクの理解と実行 知的障がいを持つ人々は、日常のタスクやルーチンを理解し、実行することに困難を抱えることがあります。これには、自己ケア、家事、買い物、交通手段の利用などが含まれます。   コミュニケーションの困難 コミュニケーションは、言語能力や社会的な適応能力が必要なため、知的障がいを持つ人々にとって困難な場合があります。言葉の理解や表現、会話の流れや社会的なルールの理解に問題を抱えることがあります。   教育や雇用の制約 学習の制約 知的障がいを持つ人々は、学習や教育においても障がいを抱えることがあります。特別な教育プログラムや支援が必要となることがあります。   雇用の制約 一部の人々は、知的障がいを克服し、職場で十分な支援を受けることで、一定の成果を達成することができます。しかし、適切な教育や雇用の機会へのアクセスが難しい場合があります。また、雇用先での適切な支援や配慮がないと、適切な役割を果たすことが難しいこともあります。 これらの影響を考慮することで、知的障がいを持つ人々に対する支援やサービスが改善され、彼らがより満足度の高い生活を送ることができるようになります。   社会的な関係の構築と維持 社会的な関係と自立について更に掘り下げると、以下の点が挙げられます。   コミュニケーションの障がい 知的障がいを持つ人々は、言語理解や表現の障がいから、コミュニケーションにおいて困難を抱えることがあります。これにより、友情や家族関係の構築や維持に影響を与えることがあります。適切なコミュニケーション手段や支援が必要です。   適応能力の制限 社会的な状況や関係に対する適応能力の制限も、知的障がいを持つ人々に影響を与えます。新しい環境や社会的なイベントに対する適応が難しく、社会的な孤立や不安感を引き起こすことがあります。   自立生活の目標の達成 生活スキルの向上 自立生活を送るためには、生活スキルの向上が不可欠です。これには、日常生活の基本的なスキル(料理、清掃、買い物など)や社会生活に必要なスキル(コミュニケーション、交渉、問題解決など)の獲得が含まれます。   適切な住居の提供 自立生活を支援するためには、適切な住居の提供が必要です。これには、安全で快適な住環境や必要なサポートサービスへのアクセスが含まれます。   職業訓練 自立生活を実現するためには、適切な職業訓練や就労支援が必要です。これにより、自己価値感や生活の質が向上し、社会参加が促進されます。 これらの支援が提供されることで、知的障がいを持つ人々が社会的な関係を築き、自立的かつ充実した生活を送ることができるようになります。 精神障がい(発達障がいを含む) 精神障がいは、感情や思考、行動に変化が現れ、日常生活に支障をきたす障がいを指します。その中でも、統合失調症や気分障がいはよく知られた代表的な例です。   統合失調症 統合失調症は、現実感覚の歪みや幻覚、妄想などの症状が特徴的です。これにより、患者は日常生活において困難を経験し、社会的な関係や職業生活に支障をきたすことがあります。例えば、幻聴や被害妄想によって周囲とのコミュニケーションが困難になることがあります。 発症の原因は、遺伝的な要因や生活環境、神経化学の変化などが関与すると考えられています。また、ストレスやトラウマも発症に影響を与えることがあります。心理的な治療や薬物療法が一般的な治療法ですが、個々の症状や経過に応じてアプローチが異なります。   気分障がい 気分障がいには、うつ病や双極性障がいなどが含まれます。うつ病では、患者は長期間にわたって抑うつ状態が続きます。双極性障がいでは、患者は抑うつと興奮の状態が交互に現れます。これらの気分変動により、患者は日常生活において様々な問題を抱えることがあります。 気分障がいの原因は、脳の神経化学の変化や遺伝的な要因、ストレスなどが関与します。特定の生活イベントや季節の変化も発症に影響を与えることがあります。治療法としては、薬物療法や心理療法、生活習慣の改善が行われますが、個々の症状や重症度によって治療方針が異なります。 これらの精神障がいは、個々の症状や影響が異なるため、適切な診断と治療が重要です。また、ストレスへの脆弱性を持つ人々が発症しやすいとされるため、心理的なサポートや適切なケアが必要です。   発達障がい 発達障がいは、脳の発達に関する先天的な異常によって引き起こされるものであり、その特性は個々の障がいによって異なります。ここでは、よく知られている発達障がいのいくつかを詳しく見てみましょう。   自閉スペクトラム症(ASD) 自閉スペクトラム症は、社会的な相互作用やコミュニケーション、興味や行動における制限されたパターンなどが特徴です。例えば、他人との関わりを避ける傾向や、反復的な行動が見られることがあります。 ASDは、生涯にわたって持続する障がいであり、個々の症状や重症度は大きく異なります。多くの場合、早期の介入や適切な支援が必要です。   注意欠陥・多動症(ADHD) ADHDは、注意力の欠如、衝動性、多動性などが特徴的な障がいです。これにより、学校や職場での集中力や組織力が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。 環境要因や遺伝的な要因が発症に関与する可能性があります。多くの場合、行動療法や薬物療法などが症状の管理に用いられます。   学習障がい(LD) 学習障がいは、読み書きや計算などの基本的な学習スキルの獲得に困難を抱える障がいです。これにより、学業成績や学習へのモチベーションが低下し、自己価値感に影響を与えることがあります。 環境要因や遺伝的な要因が発症に関与する可能性があります。個々のニーズに応じた教育的な支援や学習療法が重要です。 これらの発達障がいは、個々の特性や症状に応じて様々な支援や介入が必要です。早期の診断と適切な支援を提供することで、個々の能力を最大限に引き出し、日常生活における成功や満足度を高めることができます。   特性や影響は異なるが共通して理解される必要がある これらの障がいには、個々の特性や影響が異なりますが、共通して理解される必要があります。支援やケアの提供においては、その人のニーズや特性を十分に理解し、個別化されたアプローチが重要です。また、二次障がいを引き起こす可能性も考慮する必要があります。 まとめ 障がいは、身体的な制約から知的な遅れ、精神的な変化、発達上の課題まで、様々な形で現れます。それぞれの障がいは、個々の人の生活や関係に異なる影響を与えますが、理解と支援を通じて、誰もが充実した生活を送る機会を得ることができます。   参考 どんな種類の障がいがあるの? 知っておきたい基礎知識をご紹介|ワークリア

身体障がい、知的障がい、精神障がいとは?異なる障がいとその理解

身体障がい、知的障がい、精神障がい。これらの言葉は、私たちの社会でしばしば使われるが、その背後には個々の人々の生活に大きな影響を与える複雑な現実があります。 身体的な障がい、認知能力の低下、感情や思考の混乱、これらは単なるラベルではなく、それぞれの障がいに個々の人々の困難があります。では、身体障がい、知的障がい、精神障がいとは何であり、私たちはこれらの障がいをどのように理解し、支援することができるのでしょうか?   それぞれの障がいの特性 身体障がい、知的障がい、精神障がいは、それぞれ異なる特性を持ち、個々の人々の生活に影響を与える障がいです。これらの障がいを理解することは、彼らの生活を支援し、包括的な社会への参加を促進する上で重要です。   身体障がい 身体障がいは、身体の一部の損傷や機能の低下によって生じる障がいを指します。例えば、脳卒中による片麻痺、事故による四肢の切断などが該当します。身体障がいを持つ人々は、身体的なアクセスや移動に制限が生じることがありますが、それでも彼らは能力や才能を持ち、多くの場合、適切な支援を受ければ充実した生活を送ることができます。   知的障がい 知的障がいは、知能指数(IQ)が低下し、日常生活や社会生活での適応能力が低い状態を指します。これは生涯にわたって持続する障がいであり、早期の診断と適切な支援が重要です。知的障がいを持つ人々は、学習やコミュニケーションに課題を抱えることがありますが、彼らも自己決定や自立を求める権利を持っています。社会的な支援や適切な教育プログラムを通じて、彼らの能力を最大限に引き出すことが重要です。   精神障がい 精神障がいは、感情や思考、行動に影響を与える状態を指します。統合失調症、うつ病、不安障がいなどがその例です。精神障がいを持つ人々は、日常生活や社会生活においてさまざまな困難に直面することがあります。しかし、適切な治療と支援を受ければ、多くの場合、彼らも健康的で充実した生活を送ることができます。   これらの障がいは、一般的な社会への理解と配慮が必要です。差別や偏見によって彼らの権利が侵害されることなく、彼らも他の人々と同様に尊重され、自己実現を追求する機会を得ることが重要です。   身体障がい:体の一部の運動機能が制限 身体障がいは、様々な原因によって引き起こされますが、その影響は個々の状況や障がいの種類によって異なります。たとえば、脳卒中によって片麻痺が生じる場合、体の一部の運動機能が制限されます。また、事故や先天性の障がいによって四肢が切断された場合、日常生活における身体的な挑戦がより複雑になります。   肢体の欠損や切断:手足の一部または全部が欠損している場合。 神経系障がい:脳損傷や脊髄損傷による麻痺、筋肉の強弱、運動障がいなど。 知覚障がい:視覚障がい、聴覚障がい、触覚障がいなど、感覚器官の機能が低下または喪失する場合。 慢性疾患:糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症などの身体的な疾患による障がい。   身体障がいを持つ人々は、日常生活においてさまざまな困難に直面することがありますが、それでも彼らは自己実現のための能力や才能を持っています。例えば、車いすや義足などの補助具を使用することで、彼らは自立した生活を送ることが可能です。また、バリアフリーの施設や交通機関のアクセシビリティ向上によって、身体障がいを持つ人々の社会参加が促進されます。   差別や偏見のない社会を築く 身体障がいを持つ人々が充実した生活を送るためには、社会全体が理解し、支援することが重要です。身体障がいのある人々が健康で幸福な生活を送ることができるよう、差別や偏見のない社会を築くことが求められます。   知的障がい:認知能力や学習能力が低い水準を示す傾向 知的障がいは、個々の能力や学習スタイルに大きな影響を与えることがあります。知的障がいを持つ人々は、認知能力や学習能力において一般の人々よりも低い水準を示す傾向があります。このため、彼らが教育や職業訓練を受ける際には、個別化された支援が必要とされます。   軽度から重度までの知的発達遅滞:知的機能の発達が一般の基準よりも遅れている場合。 自閉症スペクトラム障がい(ASD):社会的な相互作用やコミュニケーションに障がいを持つ状態。 ダウン症候群:遺伝的な要因により引き起こされる知的障がいの一形態。   自閉症スペクトラム障がい(ASD) 自閉症スペクトラム障がい(ASD)は、社会的相互作用、コミュニケーション、興味や行動において、特定のパターンが見られる神経発達障がいの一つです。ASDは、個人ごとに症状や程度が異なるスペクトラム内のさまざまな状態を含みます。ASDの特徴的な症状には、以下のようなものがあります。   社会的相互作用の困難:他者との適切な対人関係を築くのが難しい、他者の感情や視点を理解することが苦手などがあります。 コミュニケーションの障がい:言語の遅れ、話題に関連性がない話し方、非言語コミュニケーション(身振りや表情など)の困難が見られることがあります。 独特な興味や行動のパターン:特定の興味や繰り返しの行動、ルーチンの強い執着などがあります。   早期の発見と適切な支援が重要 ASDは、早期の発見と適切な支援が重要です。多くの場合、早期介入や適切な治療によって、症状の緩和や生活の質の向上が見込めます。さまざまな療育プログラムや行動療法、言語療法などが用いられ、個々のニーズや能力に合わせて支援が提供されます。また、家族や教育者、医療専門家の理解と協力も重要です。   社会的な支援や適切な教育プログラム 知的障がいは生涯にわたって持続するため、早期の診断と適切な支援が非常に重要です。彼らの学習スタイルやコミュニケーション方法を理解し、個々のニーズに合わせたプランを立てることが必要です。また、彼らも自己決定や自立を求める権利を持っており、彼らの希望や目標を尊重することが重要です。 社会的な支援や適切な教育プログラムを通じて、知的障がいを持つ人々の能力を最大限に引き出すことが可能です。包括的なアプローチを取り、個々の強みを活かしながら、彼らが自己実現し、意義のある生活を送ることができるよう支援することが重要です。   精神障がい:感情や思考、行動に影響を与える 精神障がいは、感情や思考、行動に影響を与える様々な状態を包括します。統合失調症、うつ病、不安障がいなどが代表的な例ですが、その他にもさまざまな種類が存在します。これらの障がいは、個々の人々の日常生活や社会生活に深い影響を与えることがあります。 例えば、統合失調症は、幻覚や妄想、社会的な引きこもりなどの症状が現れることがあります。うつ病は、悲しみや無気力感、睡眠障がいなどの症状が特徴的です。 不安障がいは、過度の不安や恐怖、パニック発作などが頻繁に起こることがあります。これらの症状は、日常生活や社会的な相互作用において様々な困難を引き起こす可能性があります。   統合失調症:統合失調症は、幻覚や妄想、混乱した思考、感情の鈍麻、社会的な引きこもりなど、さまざまな症状が現れる精神障がいです。幻覚とは、実際には存在しない視覚や聴覚の刺激を感じる状態であり、妄想は現実と異なる信念や考えを持つことを指します。治療には、抗精神病薬や心理社会的な支援が含まれます。   うつ病:うつ病は、持続的な悲しみや無気力感、興味の喪失などが特徴的な精神障がいです。他の症状には、睡眠障がい、食欲の変化、集中力の低下、自殺念慮などがあります。治療には、抗うつ薬や心理療法が一般的に使用されます。   不安障がい:不安障がいには、さまざまな種類がありますが、一般的な症状には、過度の不安や恐怖、身体的な症状(頭痛、吐き気、動悸など)、パニック発作などが含まれます。不安障がいは、日常生活や社会的な活動に大きな支障をきたすことがあり、抗不安薬や認知行動療法が治療に用いられます。   双極性障がい(躁うつ病):双極性障がいは、気分の極端な変動を特徴とする障がいであり、躁状態(興奮状態)と抑うつ状態を繰り返します。躁状態では、興奮、多弁、無謀な行動、極端な幸福感などが見られますが、それが収まると抑うつ状態になります。治療には、安定剤や気分安定剤、心理療法が用いられます。   精神障がいを持つ人々は、適切な治療と支援を受けることで、健康的で充実した生活を送ることができる場合があります。薬物療法や心理療法などの治療法を組み合わせることで、症状の軽減や管理が可能となります。また、家族や友人、専門家のサポートを受けることも重要です。 ニーズに応じた適切な支援体制が整備されることが必要 精神障がいを持つ人々が社会的な偏見や差別に直面することがあるため、理解と包含的な支援が欠かせません。健康的な社会を築くためには、彼らのニーズに応じた適切な支援体制が整備されることが必要です。   統合失調症:幻覚や妄想、思考の混乱などの症状 統合失調症は、幻覚や妄想、思考の混乱などの症状が特徴的な精神障がいです。この病気を持つ人々は、現実と非現実の区別がつかなくなることがあります。幻覚では、実際には存在しない視覚や聴覚の刺激があると感じることがあります。また、妄想では、根拠のない信念や思い込みが強くなり、周囲の人々との関係に影響を与えることがあります。これらの症状は、日常生活や社会的な相互作用において困難を引き起こし、統合失調症を持つ人々が社会的に孤立することがあるため、適切な治療と支援が必要です。   うつ病:興味や喜びの喪失などの症状 うつ病は、持続的な悲しみや無気力感、興味や喜びの喪失などの症状が特徴的な精神障がいです。うつ病を持つ人々は、日常生活の活動に対する興味やエネルギーが低下し、日常の機能に支障をきたすことがあります。 睡眠障がいや食欲の変化、自己価値感の低下などの症状も見られます。うつ病は、生活の質や日常生活の機能に影響を与えるだけでなく、重症化すると自殺のリスクも高まることがあります。適切な治療と支援を受けることで、多くの患者が回復し、健康的な生活を取り戻すことができます。   不安障がい:過度の不安や恐怖、パニック発作などの症状 不安障がいは、過度の不安や恐怖、パニック発作などの症状が特徴的な精神障がいです。不安障がいを持つ人々は、日常生活や社会的な相互作用においてさまざまな困難を経験することがあります。 過度の心配や恐れによって日常生活の機能が妨げられ、社会的な活動に制約を感じることがあります。また、不安障がいは、身体的な症状として息切れ、動悸、手の震えなどを引き起こすことがあります。適切な治療と心理的な支援を受けることで、多くの人が不安障がいを管理し、健康的な生活を送ることができます。 まとめ 身体障がい、知的障がい、精神障がいは、それぞれ異なる特性を持ち、個々の人々の生活に影響を与える障がいです。これらの障がいを理解することは、彼らの生活を支援し、包括的な社会への参加を促進する上で重要です。 差別や偏見によって彼らの権利が侵害されることなく、彼らも他の人々と同様に尊重され、自己実現を追求する機会を得ることが重要です。彼らの多様性を認め、理解と共生の文化を築くことで、より包括的で公正な社会を実現することができます。   参考 障害者の範囲|厚生労働省

精神障がい・内部障がいとは?感覚過敏の症状のある人は、人が多く集まる場所は苦手?気になるアレコレ

身体と心の健康は、個々の生活の質や幸福感に深く関わる要素です。しかし、内部障がいや精神障がいといった様々な障がいが、その健康を脅かす可能性があります。これらの障がいを持つ人々が充実した生活を送るためには、私たちの理解と支援が欠かせません。   内部障がいとはどの様な障がいですか? 内部障がいは、身体の内臓機能に障がいがある状態を指します。身体障がい者福祉法では、「心臓機能障がい」「腎臓機能障がい」「ぼうこう・直腸機能障がい」「呼吸器機能障がい」「小腸機能障がい」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障がい」「肝機能障がい」の7種類の機能障がいが定められています。   厳しい食事制限や人工透析などの治療が必要な場合がある これらの障がいには、厳しい食事制限や人工透析などの治療が必要な場合があります。また、慢性的な倦怠感や疲労感に悩まされることもあります。一方で、外見からは障がいが分かりにくいため、周囲の理解を得るのが難しい場合もあります。そのため、内部障がいを持つ人々は心理的な苦痛を抱えることがあります。 このような状況下で、周囲の理解とサポートが重要です。また、内部障がいを持つ人々が生活の質を向上させるためには、適切な医療と社会的な支援が不可欠です。   精神障がいとはどの様な障がいですか? 精神障がいとは、精神疾患により日常生活や社会生活に制約が生じる状態を指します。精神障がいにはさまざまな種類がありますが、その症状や影響は個々に異なります。以下に代表的な精神障がいの一例を挙げます。   統合失調症:幻覚や妄想、意欲の減退などの症状が見られます。 気分障がい:うつ病や躁うつ病(双極性障がい)などが含まれ、気分の変動が大きく日常生活に影響を与えます。 中毒性精神病:アルコールや薬物の依存症など、中毒による精神的影響が見られます。 神経症性障がい:パニック障がいや強迫性障がいなど、心的ストレスに起因する症状が現れます。 発達障がい:学習障がい、自閉症、ADHDなど、発達段階における症状の異常が見られます。   これらの精神障がいは、個々の症状や状況に応じて、適切なサポートや治療が必要とされます。早期の診断と適切な介入が、患者の生活の質を改善し、社会参加を促進する上で重要です。   感覚過敏の症状のある人は、人が多く集まる場所は苦手? 感覚過敏の症状を抱える人々は、人が多く集まる場所を避ける傾向があります。なぜなら、そのような場所では周囲からの刺激が強く、彼らにとってはストレスの原因となるからです。 例えば、映画館では音や光が刺激的であり、そのために映画鑑賞を楽しむことが難しいかもしれません。そのため、一部の映画館では、音響を抑えるヘッドホンの貸し出しや、照明や音声を調整できる鑑賞室を設けています。 同様に、空港やスタジアムなどの公共施設では、感覚過敏の人々やパニック障がいを持つ人々が安心して過ごせるスペースを提供しています。これらの取り組みは、感覚過敏の人々が日常生活をより快適に送ることを支援するために重要です。このような配慮が、社会全体で理解されることで、より多くの人々が安心して外出や公共の場所を利用できるようになるでしょう。 ADHDの人は忘れ物が多いと聞きますが、どんなことに気をつけているの? ADHDの人々は、忘れ物が多いと聞かれることがありますが、実際にはさまざまな工夫をしています。手帳や付箋へのメモ書きを習慣づけたり、ペンを色分けして分かりやすく整理することで、情報を効果的に管理しています。 さらに、スマートフォンのスケジュール登録やリマインダーアプリを活用し、予定やタスクを把握しやすくしています。出かける前には、チェックリストを使って必要なものを準備することも一般的です。   自己管理能力を向上 これらの工夫は、彼らが日常生活で効果的に機能し、忘れ物や時間管理の問題を軽減するのに役立っています。ADHDは集中力が続かない、じっとしていることが難しいといった特徴がありますが、このような対策を取ることで日常生活の課題に対処し、自己管理能力を向上させています。 高次脳機能障がいの人が仕事で困るのはどんなことですか? 高次脳機能障がいの人が仕事で困ることはさまざまですが、その中でも特に挙げられるのは以下の点です。   新しい仕事内容を覚えることが難しいため、何度も同じ質問や些細なミスを繰り返してしまうこと。 同時に複数の作業をすることが難しく、集中力が持続しないことから、業務効率が低下すること。 脳の機能低下や損傷により、精神的エネルギーを使い果たしてしまい、疲れやすいこと。   これらの課題に対処するために、上司や同僚は分かりやすい言葉や文章で説明したり、適切なタイミングで休憩を促したりする配慮が必要です。また、仕事の内容やスケジュールを柔軟に調整することも重要です。そのようなサポートがあれば、障がいを持つ人々もより良い仕事環境で活躍できるでしょう。   精神障がいのある人は、作業などに集中しすぎてしまったり、逆に集中しにくい場面があると聞きました。そんな時どうしていますか? 精神障がいのある人々は、作業などに集中しすぎることや逆に集中しにくいことがあります。そのような時に彼らが取る方法は様々ですが、以下にいくつかの例を挙げてみましょう。   集中しすぎる時にはタイマーを使って意識的に休憩を取る: 集中しすぎると疲れやストレスが溜まることがあります。そのため、タイマーを設定して定期的に休憩を取ることで、リフレッシュし集中力を回復させることがあります。   静かな環境へ移動する: 他の人の視線や物音に敏感になり集中しにくい場合、静かな環境へ移動することが有効です。例えば、個別の作業スペースや静かな部屋へ移動することで、外部の刺激を遮断しやすくなります。   衝立や耳栓を使う: 視線や物音に過敏になる場合は、衝立や耳栓を使って外部の刺激を遮断することがあります。これにより、周囲の刺激を最小限に抑えて集中しやすくなります。   これらの方法は、精神障がいを持つ人々が日常生活や仕事で集中力を維持するために役立つものです。周囲の理解とサポートがあれば、彼らはより良い環境で生活し、仕事を遂行することができます。   人工透析を受けているとなにか食事制限があるの? 人工透析を受けている人々は、食事制限をしなければならない場合があります。その理由は、腎機能が低下しているため、通常の人と比べてカリウムやリンの排出が難しくなっているからです。これらの栄養素が体内に蓄積すると、さまざまな合併症を引き起こす可能性が高まります。   カリウムが多く含まれる食品を制限する必要 具体的には、カリウムが多く含まれる食品(例:きゅうり、メロン、じゃがいも、サツマイモ、野菜ジュース)や、リンが多く含まれる食品(例:しらす干し、プロセスチーズ、まる干しイワシ)を制限する必要があります。 また、透析によって老廃物を排出する機能が低下しているため、水分摂取量にも気を配る必要があります。透析の回数や体内の水分除去量には限界があるため、常に水分摂取量を注意深く管理する必要があります。 これらの食事制限は、人工透析を受ける患者の健康を維持し、合併症を予防するために非常に重要です。医師や栄養士の指導のもとで、適切な食事を摂取することが必要です。   ペースメーカを利用している人に、携帯電話を近づけちゃいけないって本当? ペースメーカを利用している人々に対して、携帯電話などの電子機器を近づけないようにするよう勧められています。これは、携帯電話から出る電波がペースメーカに影響を与え、誤動作を引き起こす可能性があるためです。そのため、総務省の指針ではペースメーカの植込み部位から15センチ以上離すように注意するように指示されています。   携帯電話によって誤作動するケースは報告されていない しかし、実際には携帯電話によってペースメーカが誤作動するケースは報告されていません。多くの場合、携帯電話からの電波がペースメーカに影響を与える可能性は低いとされています。   心臓マッサージやAEDを使用できる また、ペースメーカを利用していても、心臓マッサージやAED(自動体外式除細動器)を使用することができます。これらの措置は蘇生のために有効であり、ペースメーカの存在がその使用に制限を加えることはありません。 ただし、ペースメーカを利用している人々は医師の指示に従い、電子機器との距離や使用方法について適切な注意を払う必要があります。   内部障がいのある人は、周囲の人に知らせたい場合どうしているの? 内部障がいのある人々は、周囲の人に自分の状況を知らせるためにさまざまな方法を取っています。特に外見からは障がいが分かりづらい場合に、以下のような方法が一般的です。   ヘルプマークやハート・プラスマークの携帯:ヘルプマークやハート・プラスマークなどの特定のマークを身につけている人が多いです。これらのマークは、周囲の人に自分の状況を知らせるために使用されます。   公共の場での提示:電車などの公共の場では、周囲の人に見えるようにマークを提示している人もいます。これにより、周囲の人が配慮を示し、必要な支援を提供することが期待されます。   これらの方法は、内部障がいを持つ人々が自分の状況を周囲の人に伝えるための手段として有効です。周囲の人々が理解し、適切なサポートを提供することで、彼らの生活の質を向上させることができます。   お店にある多目的トイレに「オストメイト対応」と書かれていましたが、オストメイトって何ですか? オストメイトとは、人工肛門や人工膀胱を指す言葉です。これは、特定の健康上の理由により、自然な排泄機能を失った人々が、体外に排泄物を収集するための手段として使用する装置です。例えば、大腸がんの手術や慢性炎症性腸疾患などの治療の一環としてオストメイトが必要になることがあります。   安心して利用できるように設計 「オストメイト対応」と書かれた多目的トイレは、このようなオストメイトを利用している人々が安心して利用できるように設計されています。これらのトイレには、排泄物の処理だけでなく、汚れた腹部や衣服を洗うための設備も備わっていることがあります。このような配慮があることで、オストメイトを使用する人々が公共の場で快適に過ごすことができます。   人工透析治療は時間がかかると聞くけれど、どんなことをしているの? 人工透析治療は、腎機能の代わりに血液中の老廃物をろ過する治療方法です。この治療を受けることで、腎臓が機能不全に陥った場合に起こる「尿毒症」を予防することができます。 具体的には、治療を受ける際には、まず血液を体内から取り出します。その後、血液を血液透析器と呼ばれる機械に通します。血液透析器は、血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、浄化された血液を体内に戻します。   欠かせない治療法 このプロセスには時間がかかり、通常1回の治療には3から4時間かかります。このため、透析治療を受ける患者は週に数回、定期的に通院する必要があります。この治療は時間と労力を必要としますが、腎臓の機能が十分でない患者にとっては欠かせない治療法です。   まとめ 内部障がいや精神障がいは、患者とその周囲の理解と支援が不可欠です。適切な医療と社会的なサポートにより、彼らの生活の質を向上させることが重要です。 これらの障がいには、それぞれ異なる症状や影響がありますが、適切なサポートと理解が提供されることで、患者の生活の質を改善することができます。早期の診断と適切な介入が、彼らの社会参加を促進するために不可欠です。   参考 精神障がい者:ゆうゆうゆう 内部障がい者:ゆうゆうゆう

過去から現代への障がい観の変遷:障がい福祉サービスの法的枠組みと地域生活支援の展望 Part7

障がい福祉計画において、サービス提供の目標や地域生活支援の実施に関する事項が必須項目として規定されました。また、障がい福祉計画の見直しはPDCAサイクルに則って行われることが明記され、サービス提供体制の計画的な整備が促されます。同時に、地域の実情に合わせて自立支援協議会の名称が定められ、当事者や家族の参画が法的に保障されました。   福祉サービスの範囲 福祉サービスの範囲は多岐にわたり、在宅生活や外出支援から昼間の生活、住まい、訓練、相談支援まで包括的な支援が提供されます。これにより、障がいのある個人が自立した生活を送るためのサポートが地域全体で確保されます。   在宅生活を支援するサービス 居宅介護(ホームヘルプ) 身の回りの世話や家事、食事の支援など、高齢者や障がい者が自宅で生活するための支援を提供します。例えば、入浴介助、掃除、買い物などの日常生活の支援が含まれます。   重度障がい者等包括支援 重度の障がいを持つ個人やその家族に対して、包括的な支援を提供します。医療、介護、福祉、教育など、多岐にわたるサービスを提供し、障がい者やその家族の生活を支えます。   重度訪問介護 重度の身体的または精神的障がいを持つ人々の自宅での生活を支援するために、訪問介護サービスが提供されます。日常生活の世話や医療的な支援など、様々なニーズに対応します。   短期入所(ショートステイ) 主に介護者の休息やリフレッシュを目的として、高齢者や障がい者を一時的に施設に入所させます。施設内での生活支援や医療的なケアが提供され、介護者の負担を軽減します。   外出を支援するサービス 行動援護 身体的、精神的な障がいや認知症を持つ人々が外出する際に、安全な行動をサポートします。交通手段の利用や道路の横断など、外出時のリスクを最小限に抑えるための支援が提供されます。   同行援護 障がい者が外出する際に、同行者が付き添い、必要な支援や安全確保を行います。医療機関や公共交通機関への移動、買い物やレクリエーション活動など、様々な外出活動を支援します。   昼間の生活を支援するサービス 療養介護 病気や障がいの療養中に、医療的なケアや生活支援を提供します。病院や診療所などの医療施設内で、安全な療養生活を送るための支援が行われます。   生活介護 日中に施設で過ごす高齢者や障がい者の生活を支援します。日常生活の世話やリハビリテーション、社会参加の支援など、生活全般にわたるサポートが提供されます。   住まいの場としてのサービス 共同生活介護 (ケアホーム) 高齢者や障がい者が集団生活を送るための施設であり、24時間の介護や支援が提供されます。生活支援、医療ケア、リハビリテーションなど、様々なニーズに応じたサービスが行われます。 2014年からは「共同生活援助 (グループホーム)」として名称が変更され、より個別の支援が重視されるようになりました。   施設入所支援 高齢者や障がい者が施設に入所する際に、入所手続きや生活支援などの支援を提供します。施設選びや入所後の生活調整、施設内でのサービスの利用方法などに関する支援が含まれます。   共同生活援助 (グループホーム) グループホームでは、少人数のグループが共同生活を送りながら、必要な支援を受けることができます。より家庭的な雰囲気の中で、個別のニーズに合わせた支援やケアが提供されます。   訓練のためのサービス 自立訓練 (機能訓練) 高齢者や障がい者が日常生活で必要な能力を向上させるための訓練プログラムです。身体機能の向上やリハビリテーションを目的とし、個々の能力やニーズに合わせたトレーニングが提供されます。   宿泊型自立訓練 施設に一定期間宿泊しながら、日常生活で必要な能力を向上させるトレーニングを行います。24時間体制での支援や訓練が提供され、生活技能や社会参加能力の向上を目指します。   就労継続支援A型 (雇用型) 障がい者が雇用された職場で、仕事を継続して行うための支援が提供されます。職場への移行支援や職務の適正化、必要な支援体制の構築などが行われ、障がい者の職場での定着を支援します。   自立訓練 (生活訓練) 日常生活の自立を目指す訓練プログラムであり、生活技能や社会生活のスキルを向上させます。施設や地域での訓練が行われ、生活全般での自立を支援します。   就労移行支援 障がい者が就労するための準備段階で、キャリアカウンセリングや職業訓練などの支援が提供されます。職場への適応力を高めるためのトレーニングやスキルアッププログラムが実施されます。   就労継続支援B型 (非雇用型) 障がい者が施設内での作業を通じて、生活や社会参加のスキルを維持・向上させる支援が行われます。職業体験や作業療法などを通じて、障がい者の自己実現や社会参加を促進します。   相談支援に関するサービス 地域移行支援 障がい者や高齢者が施設や特定の環境から地域社会へ移行する際に、生活や社会参加の支援を行います。移行先の生活環境への適応支援や地域社会とのコミュニケーション構築、必要なサービスの提供などが行われます。 個々のニーズや状況に応じて、適切な移行計画やサポート体制が立てられます。   サービス利用支援 障がい者やその家族が利用可能な福祉サービスや支援制度について、情報提供や利用方法の説明、手続きのサポートを行います。利用者のニーズや目標に合わせて、最適なサービスの選択や利用計画の立案が支援されます。 利用者の権利や利益を保護し、サービスの利用が円滑に行われるように支援します。   地域定着支援 地域社会での生活や社会参加を促進するための支援を提供します。地域コミュニティとの交流や地域資源の活用、地域でのネットワーク構築などが支援されます。 地域に根ざした支援体制の構築や地域の特性に合わせた支援プログラムが展開されます。   継続サービス利用支援 利用者が継続して福祉サービスや支援を受けるための支援を提供します。サービスの利用状況やニーズの変化に合わせて、適切なサービスの調整や再計画が行われます。 利用者の生活や支援環境が安定し、継続的な支援が提供されるようにサポートします。   自立支援医療 自立支援医療は、障がい者や高齢者が医療機関を通じて自立した生活を送るための支援を提供します。これには、適切な医療診断と治療、リハビリテーションプログラムの提供、生活に適した医療機器や補装具の提供が含まれます。 自立支援医療は、機能の維持や向上、生活の質の向上を目指し、個々の利用者のニーズや健康状態に応じたサービスが提供されます。   地域生活支援事業 地域生活支援事業は、地域社会での自立した生活を支援するための様々なサービスを提供します。これには、地域コミュニティとの連携、日常生活の支援、社会参加の促進、生活技能の向上などが含まれます。 地域生活支援事業は、利用者が地域社会で安心して生活できるように、地域資源を活用しながら総合的な支援を提供します。   補装具 補装具は、障がい者や高齢者が日常生活をより快適に行うための支援具です。身体機能の補助や維持、身体的な安定や安全を確保するために使用されます。 車椅子、義足、義手、歩行補助具、視覚補助具など、様々な種類の補装具があり、個々のニーズや生活状況に応じて選択されます。   福祉サービスの利用手続き 福祉サービスの利用手続きは、相談・申請、障がい支援区分認定、支給決定の流れに従います。まず、地域の障がい福祉窓口や相談支援機関で相談を行い、希望があれば市区町村に申請を提出します。申請後は、市町村の認定調査員が面接を行い、全国共通の質問紙に基づいて認定調査を実施します。 医師の意見書とコンピューター判定により一次審査が行われ、その後市区町村の審査会で二次判定が行われます。これによって、支援区分1~6の認定が行われます。最後に、障がい者に対する差別の禁止と合理的配慮について説明がなされ、法律に基づいた適切なサポートが提供されます。   障がい者差別解消法の制定 障がい者差別解消法の制定は、障がいを理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障がいの有無にかかわらず尊厳を持ち、共生する社会の実現を目指しています。法律の目的には、障がい者基本法の理念に基づき、全ての障がい者が基本的人権を享受し、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を持つことが明記されています。   合理的配慮 合理的配慮についての説明によれば、「障がい者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失ったり、過度の負担を課さないものをいう」とあります。 この合理的配慮は、個々の障がいに応じて基本的人権が損なわれることなく、必要な変更や調整が行われることを意味します。ただし、均衡を失ったり、過度の負担を課すような変更や調整については制限があります。例えば、建物全体を改造する必要がある場合など、その実施が合理的でない場合は、代替案を検討することが必要です。   障がい者差別解消法 障がい者差別解消法の第7条第2項、第8条第2項では、行政機関や事業者に対し、障がい者から社会的障壁の除去が必要である旨の意思がある場合には、その実施に伴う負担が過重でない場合には、障がい者の権利や利益を侵害しない範囲で、合理的な配慮を行うことが求められています。 厚生労働省から出された障がい者雇用促進法に基づく合理的配慮指針では、すべての事業主が対象となり、合理的配慮は個々の事情を考慮しつつ、障がい者と事業主の相互理解の中で提供されるべき性質のものとされています。 具体的な支援策として、視覚障がいのある人には音声で情報提供するなどの方法が挙げられています。また、厚生労働省障がい者雇用対策課からは、合理的配慮指針事例集が提供されており、内閣府ホームページには合理的配慮等具体例データ集が掲載されています。 共生社会の概念を支える障がい観について再考することが重要 障がい観の変化に関する学習では、障がいが欠陥でないことを説明し、障がい観の変遷概要を解説することが目標です。障がいをどのように捉えてきたのか、共生社会の実現に向けた障がい観の変化を理解することがポイントです。 障がい観の変化を学ぶことで、過去から現在までの変遷や、障がい者に対する理解の深まりを把握し、共生社会の概念を支える障がい観について再考することが重要です。   障がい者福祉に関わる社会の変化を知る 社会の変化に関する学習目標は、障がい者福祉に関わる社会の変化を知ることです。具体的には、少子高齢化や高度情報化などの社会的な変化が障がい者に及ぼす影響や、Society5.0がもたらす期待について理解することが目標です。 少子高齢化社会の影響や、Society5.0による障がい者への影響を理解することがポイントです。障がい者福祉における社会の変化を学ぶことで、将来の社会を予想し、障がい者の生活改善に向けた対策を考える機会となります。   障がいの概念や種類の概要を知ることが目標 障がいの種類に関する学習では、障がいの概念や種類の概要を知ることが目標です。法律的な障がいの種類や区分に従って、教育や支援が行われることがポイントです。身体障がい、視覚障がい、聴覚障がい、内部障がいについて理解し、それぞれの特徴や支援方法を学ぶことが重要です。 社会の変化や障がい者観の変遷を踏まえて、障がい者施策の法的な流れや制度について学びました。障がい者基本法や障がい者総合支援法を中心に、障がい者の権利保障や支援体制の整備に関する法律の成立や改正について概論的な理解を深めました。法律や制度が急激に変わったように見えても、その流れをつかむことで現在の福祉の仕組みを大まかに理解できるようになりましょう。 まとめ 具体的には、障がい者基本法に基づいて各障がい関係の法整備がなされていることや、障がい者総合支援法との関係について学びました。また、法律や制度の変遷を把握することで、障がい者の社会参加や福祉サービスの提供に関する枠組みを理解しました。 全体的な枠組みの理解から個別の具体的な支援方法まで、障がい者の理解を深めるための基礎知識を身につけました。今後も都道府県庁や市区町村役所の資料や関連するウェブサイトを活用して、学習を続けていくことが重要です。   参考 障がいの理解:アシスティブテクノロジー・アドバイザー育成研修用テキスト

過去から現代への障がい観の変遷:障がい者福祉法の発展と地域生活支援の新たな展開 Part6

今回の重要な学びは、戦後日本の障がい者福祉の展開と現行の法制度について広く理解すること、関連する法律の概要を把握することです。 要約すると、障がい者に関する法律は障がい者基本法に基づき、各障がい関連法の整備が行われており、障がい者総合支援法が支援における中心的な役割を果たしているということです。   法整備の歴史 障がい者福祉に関する法整備の歴史を追うことで、当時の社会の障がい者に対する考え方や取り組みを理解することができます。障がい者全般に関する施策と各障がいに対する法律を分けて考えることで、より明確に理解できます。 戦後、障がい者に関する法律は身体障がい者福祉法(1949年)、精神衛生法(1950年)、精神薄弱者福祉法(1960年)など、各障がいに対して個別の法律が制定されてきました。しかし、1970年に心身障がい者対策基本法が制定され、これらの個別の法律を統合し、国として全体的な障がい者施策の基本的な法律となりました。 この法律は議員立法として提案され、各政党の合意のもとで成立しました。1993年にはこの法律が全面改正され、障がい者基本法へと発展しました。   「障がい者総合支援法」に統合 現在、障がい福祉は「障がい者総合支援法」によって統合され、身体障がい、知的障がい、精神障がいといった障がいの区別なく支援が提供されるようになっています。 国際的な動きに呼応し、日本でも障がい者施策に関する初の本格的な長期計画が策定されました。1981年には国連が定めた「国際障がい者年」や「国連・障がい者の十年」の宣言があり、これに合わせて日本国内でも長期計画が進められました。   「障がい者基本法」 1980年には内閣総理大臣を本部長とした「国際障がい者年推進本部」が設置され、障がい者の自立と社会参加を促進するための様々な行事や事業が展開されました。1987年には「国連・障がい者の十年」の中間年に後期重点施策が策定され、より具体的な計画が立てられました。この長期計画と重点施策は、今日に至るまで継承されています。 1993年には心身障がい者対策基本法が全面改正され、「障がい者基本法」と改称されました。この法律では、障がい者の自立と社会への完全な参加を促進することを目的とし、身体障がい、精神薄弱(現在の知的障がい)、または精神障がいを対象としています。さらに、障がい者基本計画の策定や雇用促進など、政府や事業主に対する具体的な責務も規定されています。   障がい者の自立と社会参加を促進 日本の障がい者施策に関する長期計画は、1982年に初めて策定され、その後数回の改定が行われています。1993年の障がい者基本法改正以降、障がい者の自立と社会参加を促進するための取り組みが強化され、ICF(国際生活機能分類)の観点も反映されています。 第2次計画では、「共生社会」を目指し、障がいの有無にかかわらず、国民が相互に人格と個性を尊重し支え合う社会を実現することが掲げられました。障がい者の自立と社会参加を促進するために、各分野での取り組みが進められました。   2004年の障がい者基本法改正 2004年の障がい者基本法改正では、障がいのある人の社会参加を実質的なものとするための施策が強化されました。改正のポイントとしては、障がいを理由とする差別の禁止、都道府県や市町村の障がい者計画の策定義務化、教育や地域の作業活動の場への支援、障がいの予防に関する施策の強化、中央障がい者施策推進協議会の設置などが挙げられます。これらの改正は、障がい者の権利保護や社会参加の促進に向けた重要な一歩となりました。 第二次障がい者基本計画の間には、国際的な動きと国内の法整備が大きく進展しました。2006年に国連で採択された「障がい者の権利に関する条約」は、国際的に包括的かつ総合的な規定を持つ重要な条約でした。日本も2007年に署名し、2008年に批准されました。この障がい者権利条約に対応するため、日本国内では様々な法律の改正や整備が行われ、2013年に批准され、翌年には国連事務局から承認されました。   バリアフリー化や利用者本位の考え方が重視 第二次障がい者基本計画の期間には、発達障がい者支援法(2004年)、障がい者自立支援法(2005年)、教育基本法の改正(2006年)、バリアフリー法(2006年)など、重要な法律が制定または改正されました。これらの法律の背景には、障がい観の変化や社会の変化がありますが、特にバリアフリー化や利用者本位の考え方が重視され、障がいの特性に配慮しながら活動し、参加することが基本とされました。 2003年3月まで、障がいのある人が利用する福祉サービスの内容や量はすべて行政によって決定されていました。この仕組みは「措置制度」と呼ばれ、障がい者の暮らしを行政が一括して決定することに対する批判がありました。そのため、2000年には高齢者向けの福祉サービスが介護保険制度に移行したことを受けて、障がい福祉でも支援費制度が導入されました。   2005年に障がい者自立支援法が制定 支援費制度では、障がい者が福祉サービスを提供する事業所を選択し、事業所との契約によってサービスを利用する「利用契約制度」が導入されました。この制度は画期的でしたが、利用者の増加や財源確保の困難さ、地域や障がいの種類によるサービス提供の格差などの問題が生じました。また、精神障がい者が対象外となるなどの課題もありました。 これらの問題に対処するため、2005年に障がい者自立支援法が制定されましたが、基本理念の欠如や障がい程度区分の問題などが指摘されました。特に、自立支援法では利用者の収入に応じた自己負担が導入されましたが、これが収入を上回るケースもあり、サービス利用の減少や控えの問題が生じました。そのため、2010年に自立支援法が改正され、自己負担額が見直されました。   発達障がい者支援法 さらに、2013年には共生社会の実現や身近な地域での支援の提供などの法の基本理念が定められ、障がい者総合支援法が成立しました。障がい者総合支援法は、障がい者総合支援計画の策定や難病の方々を含めた福祉サービスの対象範囲の見直しなどを行い、2018年に改正されて施行されました。 発達障がい者支援法は、従来の身体障がい、知的障がい、精神障がいという枠組みでは的確な支援が難しい発達障がいのある人々に対する支援を目的とした法律です。2004年に議員立法によって制定され、発達障がいの定義を明確にし、保健、医療、福祉、教育、雇用などの分野を超えて一体的な支援体制を整備しています。   2006年「バリアフリー法」 2006年には、生活環境の分野において「バリアフリー法」が成立し、公共交通機関や道路、建築物、都市公園など、日常生活において利用される施設や経路のバリアフリー化が推進されました。 また、雇用や就業の分野においては、2008年に「障がい者雇用促進法」が成立し、中小企業における障がい者雇用の促進や短時間労働に対応した雇用率制度の見直しが行われました。この法律では、障がい者を身体障がい、知的障がい、発達障がい、精神障がい、その他の心身の機能の障がいを持つ者と定義し、障がい者の職業生活への参加を促進しています。   雇用率の引き上げ 現在、45.5人以上の従業員を擁する民間企業は、雇用率を2.2%以上に引き上げることが求められており、2021年3月末までに2.3%に引き上げられる予定です。これにより、障がい者の雇用機会が拡大し、職業的自立の促進が期待されています。 障がい者に対する教育や支援に関する法律の整備は、従来の制度を見直し、個々のニーズに柔軟に対応することを目指して進められています。 2006年に成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」では、盲学校や聾学校、養護学校などの制度を特別支援学校の制度に転換し、障がいのある幼児や児童生徒に適切な指導と支援を提供することを定めました。 2007年の教育基本法の改正では、障がいのある幼児や児童生徒に対して十分な教育を受けられるよう、国や地方自治体が必要な支援を講じることが明確化されました。これに基づき、教育振興基本計画が策定され、障がい者教育の充実が図られました。   障がい者に対する差別を防止し支援を促進することを目的 障がい者に関連する法律の整備には、障がい者虐待防止法や障がい者優先調達推進法なども含まれます。これらの法律は、障がい者に対する差別を防止し、支援を促進することを目的としています。 2013年に成立した障がい者差別解消法は、障がいを理由とする差別の解消を推進するために制定されました。また、障がい者雇用促進法の改正も行われ、障がい者の雇用機会の拡大が図られました。 さらに、公職選挙法の改正なども行われ、障がい者の社会参加や権利の保障が強化されています。これらの法律の整備により、障がい者の権利や福祉がより確保され、社会全体での包括的な支援体制が整備されることが期待されています。   改正された障がい者基本法の基本理念 障がい者権利条約への参加や、障がい者基本法の改正など、日本政府は障がい者の権利と尊厳を保護し、促進するための取り組みを積極的に進めてきました。障がい者基本法の改正では、社会モデルに基づく障がい者の概念や、障がい者権利条約における「合理的配慮」の概念が盛り込まれ、障がい者政策委員会が設置されています。 障がい者総合支援法の成立と施行により、障がい者の日常生活や社会生活を総合的に支援する仕組みが整備されました。改正された障がい者基本法の基本理念は、障がいの有無に関わらず全ての国民が基本的人権を享有し、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を目指すものです。 2010年障がい者制度改革の基本的な方向が閣議決定 政権交代後に設置された障がい者制度改革推進本部や障がい者制度改革推進会議により、障がい者制度の改革が進められました。2010年には、障がい者制度改革の基本的な方向が閣議決定され、障がい者の社会参加や権利の保障を強化するための方策が打ち出されました。 これらの取り組みを通じて、障がい者の権利と尊厳を保護し、社会全体での包括的な支援体制を構築するための基盤が整備されています。 この閣議決定により、現行の障がい者自立支援法を廃止し、障がい者の個々のニーズに基づいた地域生活支援体系を整備する『障がい者総合福祉法』(仮称)の制定が目指されました。障がい者制度改革推進会議総合福祉部会では、新法の検討が始まり、目的規定では「自立」の表現が「基本的人権を享有する個人としての尊厳」に置き換えられました。この法律により、障がい者総合支援法の目的を達成するために、地域生活支援事業を含む総合的な支援が提供されることになります。   障がい者総合支援法の改正 障がい者総合支援法の改正により、障がい者の範囲が見直され、特定の難病患者も支援の対象に含まれるようになりました。これにより、市区町村全体で福祉サービスの提供が可能になりました。また、障がい者支援の区分名称と定義も改正され、より適切な支援が提供されることとなりました。 特に、知的障がいや精神障がいに対する配慮が強化され、新たな支援形態も導入されました。さらに、障がい者の高齢化や重度化に対応するため、共同生活介護が共同生活援助に統合され、地域生活支援事業も見直されました。これにより、より多くの障がい者が住み慣れた地域で支援を受けられるようになりました。   広域的な対応が必要な事業が追加 市区町村が実施する地域生活支援事業の必須事業には、障がい者に対する理解を深めるための研修や啓発活動、障がい者やその家族、地域住民が自発的に行う活動への支援、市民後見人等の人材育成や活用を図るための研修、意思疎通支援を行う者の養成(手話奉仕員の養成を想定)が追加されました。 一方、都道府県が実施する地域生活支援事業の必須事業には、意思疎通支援を行う者の中でも特に専門性の高い者を養成し、または派遣する事業(手話通訳者、要約筆記者、触手話及び指点字を行う者の養成または派遣を想定)や、意思疎通支援を行う者の派遣に係る市区町村相互間の連絡調整等、広域的な対応が必要な事業が追加されました。   サービス提供体制を整備 さらに、サービス提供体制を計画的に整備するために、障がい福祉計画にサービス提供体制の確保に係る目標や地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項を必ず定めることや、PDCAサイクルにそって障がい福祉計画を見直すことが規定されました。 自立支援協議会の名称は、地域の実情に応じて定められることとなり、当事者や家族の参画が法律上に明記されました。 まとめ 障がい者総合支援法の改正により、地域生活支援が一層充実し、障がい者の権利と尊厳を保護し、促進する取り組みが強化されました。地域社会全体での包括的な支援体制が整備される中、障がい者の自立と社会参加を促進するための新たな展望が開かれています。   参考 障がいの理解:アシスティブテクノロジー・アドバイザー育成研修用テキスト

過去から現代への障がい観の変遷:共生社会への道のり Part5

共生社会に向かう現代社会では、障がいに対する理解が医学的なモデルから生活の中での実際の困難に焦点を移しています。しかし、現行の福祉制度や教育制度では、法律に基づいた枠組みで障がい者を分類しています。 このようなアプローチは、従来の医学的なモデルに近いものです。日本が法治国家であることから、法律によって障がい者支援が行われる仕組みとなっています。身体障がいや精神障がいなどの分類によって、支援の対象者を示しています。 行政などは、特定の分野における支援や対応をするために、障がいの種類に応じて異なるアプローチを取ることがあります。そのため、支援を提供する際には、各障がいに関する一般的な知識だけでなく、支援対象者の個々の特性についても理解する必要があります。   国際的な規約である障がい者の権利に関する条約 国内の法律の分類に先立ち、国際的な規約である障がい者の権利に関する条約を見てみましょう。この条約では、全ての障がい者が人権や基本的な自由を享受し、保護されることを目指しています。 障がい者は、長期的な身体的、精神的、知的、または感覚的な機能の障がいによって、他の人々との平等な社会参加が妨げられる場合を含みます。つまり、障がい者の権利に関する条約では、生活モデルを基本としながら、障がいごとに適切な支援や対応を提供する考え方が示されています。すべての人が平等に生活するためには、障壁を克服するための支援が必要です。そのためには、障がいの分類が必要です。   日本の法律 日本の法律において、障がい者の支援は大きく全体的な枠組みから始まり、福祉分野と教育分野で障がい者の種類が定められています。障がい者基本法では、身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)、その他の心身の機能の障がいを総称し、日常生活や社会生活に制限を受ける者を障がい者と定義しています。 この法律には、身体障がい者福祉法、知的障がい者福祉法、精神保健及び精神障がい者福祉に関する法律、発達障がい者支援法などが含まれます。教育においても、学校教育法が関連する条文を定めています。さらに、「障がい者総合支援法」では、障がい者を具体的に定義し、その支援の必要性を明確にしています。これらの法律は難解ですが、支援対象を明確にするために必要な説明が含まれています。   学校教育法 日本の教育分野では、「学校教育法」によって特別支援学校や特別支援学級の設置が定められています。特別支援学校は、視覚障がい者、聴覚障がい者、知的障がい者、肢体不自由者、または病弱者に対し、学習上や生活上の困難を克服し自立を図るための教育を提供します。さらに、「学校教育法」では、特別支援学級の設置も規定されており、知的障がい者、肢体不自由者、身体虚弱者、弱視者、難聴者、その他障がいのある者に対する教育が行われます。   学校教育法施行規則 また、「学校教育法施行規則」によれば、通級指導教室という形態も存在します。この指導は、言語障がい者、自閉症者、情緒障がい者、弱視者、難聴者、学習障がい者、注意欠陥多動性障がい者、その他の障がいのある者に対して、通常の学級に在籍しながら特別な指導を提供します。このように、教育制度では障がいの程度や種類に応じて、様々な支援が行われています。   身体障がい者福祉法 身体障がい者福祉法では、障がいの種類が具体的に列挙されており、これに基づいて身体障がい者手帳の交付が行われます。具体的には、視覚障がい、聴覚または平衡機能の障がい、音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障がい、肢体不自由、心臓、じん臓または呼吸器の機能の障がい、その他政令で定める障がいが含まれます。そして、身体障がい者福祉法施行令において、政令で定める障がいの具体例が追加されています。さらに、障がい者総合支援法では、治療方法が確立していない疾病やその他の特殊な疾病による障がいも障がい者として規定されています。   三つのレベル 法律や規則の階層構造には、「○○法」、「○○法施行令」、「○○法施行規則」の三つのレベルがあります。法律は国会で制定され、施行令は政府によって制定されます。そして、施行規則は各省庁によって定められ、法律や施行令の具体的な運用方法や手続きが定められます。 身体障がい者福祉法の別表には、視覚障がい、聴覚障がい、音声機能、言語機能、そしゃく機能の障がいに関する具体的な基準が示されています。   視覚障がいについては、以下のような基準が設けられています。 両眼の視力がそれぞれ0.1以下のもの 一眼の視力が0.02以下で、他眼の視力が0.6以下のもの 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの   聴覚障がいについては、次のような基準が示されています。 両耳の聴力レベルがそれぞれ70デシベル以上のもの 一耳の聴力レベルが90デシベル以上で、他耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの 平衡機能の著しい障がい   音声機能、言語機能、そしゃく機能の障がいに関しては、以下の基準が設けられています。 音声機能、言語機能、またはそしゃく機能の喪失 音声機能、言語機能、またはそしゃく機能の著しい障がいで、永続するもの   肢体不自由に関する基準は、以下のように示されています。 一上肢、一下肢、または体幹の機能の著しい障がいで、永続するもの 一上肢の親指を指骨間関節以上で欠損するもの、または親指を含む一上肢の二本以上の指をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠損するもの 一下肢をリスフラン関節以上で欠損するもの 両下肢の全ての指を欠損するもの 一上肢の親指の機能の著しい障がい、または親指を含む一上肢の三本以上の指の機能の著しい障がいで、永続するもの 上記1から5までの基準に合致しないが、その程度がそれらの基準以上であると認められる障がい   心臓、腎臓、または呼吸器の機能の障がいについては、以下の基準が設けられています。 心臓、腎臓、または呼吸器の機能の障がいその他政令で定める障がいで、永続的であり、かつ、日常生活に著しい制限を受ける程度のものが該当します。 身体障がい者手帳の交付 これらの基準に合致する障がいがある場合、身体障がい者手帳の交付などの支援措置が行われることになります。 身体障がい者手帳の交付は、身体上の障がいを有する者に対して、都道府県知事、指定都市市長、または中核市市長から行われます。この手帳は、身体障がい者福祉法施行規則別表の身体障がい者障がい程度等級表に基づいて、障がいの種類別に重度から1級から6級の等級が定められています。   知的障がい 一方、知的障がい者に関しては、知的障がい者福祉法に法律的な定義はありませんが、「知的障がい者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障がい者を援助するとともに必要な保護を行い、もって知的障がい者の福祉を図る」という目的で、児童相談所や知的障がい者更生相談所で知的障がいの判定が行われています。 その結果、都道府県知事から「療育手帳」の交付が行われ、この交付の判定基準が事実上の知的障がいの定義となっています。多くの場合、IQ70か75以下の人を知的障がいとして判定し、さらにIQ50程度とIQ35程度に区切りを設けています。   知的障がいに関する定義 知的障がいに関する定義は、世界保健機関(WHO)の「精神及び行動の障がい 臨床記述と診断ガイドライン(ICD-10)」やアメリカ精神医学会(APA)の『精神疾患の分類と診断の手引(DSM-5)』によって示されています。 ICD-10では、標準化された知能検査における知能指数が69以下であると定義されています。一方、DSM-5では、知的機能と適応機能の両面での欠陥を含む障がいとされています。   精神障がい 精神障がい者については、「精神保健及び精神障がい者福祉に関する法律」で定義されています。統合失調症や精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障がい、精神病質その他の精神疾患を有する者がこれに該当します。   統合失調症 統合失調症は、思春期から青年期にかけて発症し、幻覚や妄想などが特徴的な精神病症状です。ストレスが引き金となることが多いとされています。 精神作用物質による急性中毒またはその依存症は、違法な薬物やアルコール、ギャンブルなどによって引き起こされる精神的な支障を指します。   その他の精神疾患 精神病質その他の精神疾患には、認知症やうつ病、双極性障がい、神経症性障がい、ストレス関連障がい、高次脳機能障がいなどが含まれます。これらの疾患は、精神科医療の対象として考えられます。 精神障がい者保健福祉手帳の判定基準は、厚生労働省から各都道府県に出された通知に基づいています。この通知には、以下の項目が含まれています。 精神疾患の存在の確認 精神疾患(機能障がい)の状態の確認 能力障がい(活動制限)の状態の確認 精神障がいの程度の総合判定   これらの項目に基づいて、精神障がい者の具体的な状態が記された判定基準の表が作成されます。審査では、この表に基づいて十分な審査が行われ、精神障がい者の日常生活がどの程度困難であるかが判断されます。その結果、日常生活がかなり難しい程度の1級から、一定の制限を必要とする程度の3級までに区分されます。 発達障がい者に関しては、「発達障がい者支援法」によって定義されています。この法律では、以下のような障がいが含まれます。 自閉症 アスペルガー症候群その他の広汎性発達障がい 学習障がい 注意欠陥多動性障がいその他これに類する脳機能の障がい   さらに、「発達障がい者支援法施行規則」で、「心理的発達の障がい並びに行動及び情緒の障がい」が含まれることが定められています。これは、「事務次官(厚労省と文科省の共同)通知」に基づき、ICD-10に基づいて定義されています。 また、「発達障がい者支援法」では、18歳未満の発達障がいを有する人を発達障がい児と定義しています。   複数の障がいを抱える人もいる 障がい者の中には複数の障がいを抱える人もいます。例えば、視覚障がいと肢体不自由、知的障がいと肢体不自由と聴覚障がいなどが組み合わさる場合があります。これを「重複障がい」と呼びます。特に障がいの程度が重い場合には、「重症心身障がい児」や「重度重複障がい者」と呼ばれます。 一般的に、「大島の分類」と呼ばれるものがあります。これは身体の動きと知的能力を軸にして、障がいの重さに応じて1から番号が振られています。 「大島の分類」では、1から4の範囲に入る児童が「重症心身障がい児」とされます。この範囲では以下の特徴が挙げられます。 絶えず医学的管理下に置くべきもの 障がいの状態が進行的であると思われるもの 合併症が多いもの   一方で、5から9の範囲に入る児童は「重症心身障がい児」の定義には当てはまりにくいものの、以下の特徴が見られるため、「周辺児」と呼ばれています。 まとめ 障がいの捉え方が共生社会に向けて変化している中で、法律的な障がいの種類や区分について理解することは重要です。障がい者基本法では、身体障がい、知的障がい、または精神障がいが日常生活や社会生活に相当な制限をもたらす者を障がい者と定義しています。そして、それぞれの障がいに対応するための福祉法や支援法が存在します。 学校教育においては、指導や支援の必要度に応じて、特別支援学校、特別支援学級、通級指導などの制度が提供されています。これにより、障がいの種類や程度に応じた適切な支援を受けることが可能です。 医療の分野では、病名や疾患名が障がいの分類と重なることがあります。障がい者の医療ニーズを理解し、適切な診断と治療を提供するために、これらの分類が重要な役割を果たしています。   参考 障がいの理解:アシスティブテクノロジー・アドバイザー育成研修用テキスト

過去から現代への障がい観の変遷:Society5.0における障がい者支援の展望 Part4

現代社会において、少子高齢化が進む中、障がい者への支援はますます重要な課題となっています。そこで、Society 5.0の概念が注目されています。Society 5.0では、ICT技術の進化を活用して、経済発展と社会的課題の両立を目指す人間中心の社会が構想されています。特に、この新たな社会の枠組みにおいて、障がい者支援の展望は非常に大きく、革新的な解決策が期待されています。   Society5.0とは? Society5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会の概念です。内閣府によれば、Society5.0は「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を指します。この社会像は、日本が目指すべき未来社会の姿として提唱されています。   分野を超えた連携が強化 Society5.0では、これまでの情報社会にはなかった問題が解消されます。情報や知識の共有が進み、分野を超えた連携が強化されます。人々が適切な情報を見つけて分析する作業の負担が軽減され、年齢や障がいによる制約も軽減されます。また、少子高齢化や地方の過疎化といった課題に対処する新たな手段が提供されます。   持続可能な社会の実現と個人のQOL向上 IoTの普及により、全ての人や物がつながり、知識や情報が共有されます。AIによって必要な情報が適切なタイミングで提供され、ロボットや自動走行車などの技術が課題の克服に役立ちます。このようなイノベーションを通じて、閉塞感が打破され、希望に満ちた社会が実現し、互いを尊重し合う社会や快適な活躍の場が提供されます。 さらに、Society5.0では持続可能な社会の実現と個人のQOL向上が目指されます。地球環境を含む持続可能な社会の運営や、人と技術の調和、全体の最適化と個人の生活の質向上が重視されます。   より安全で効率的な移動の実現 Society 5.0では、個人情報の保護が徹底されつつも、共有された情報や環境制御を通じて、個々の障がい者の生活にICTが最大限活かされる社会が想定されています。これまでの情報社会では、個々人のカーナビが人工衛星の情報を利用して目的地に案内していましたが、Society 5.0では、車に装備されたセンサーが環境情報や人の情報、さらに機器の作動情報を読み取り、人工知能によって解析されたビッグデータと照合されて自動運転が可能になります。これにより、個人情報は厳格に保護されながら、より安全で効率的な移動が実現されます。   「インクルーシブ」の未来 一方、「インクルーシブ」の未来では、年齢や性別、障がいの有無、国籍、所得などに関わらず、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちながら、豊かな人生を享受できる「インクルーシブ(包摂)」の社会が想定されています。 例えば、スイッチ1つで切り替わるバーチャル個室や、補助アームやARグラスを装備した高齢者、目や耳が不自由な人でも外国語が苦手でも、自分の選んだメニューで会議の内容を翻訳して自在に伝えるシステムなどが紹介されています。これらの技術により、少子高齢化が引き起こす様々な問題も解決の方向が見えてきます。   個々の状態に合わせた支援を提供することが重要 障がいのある人の生活において、Society 5.0は個々の状態に合わせた支援を提供することが重要です。ICFの概念に基づくと、環境要因が大きな影響を与えるため、AIやIoT、ARやVR、ロボットや自動運転などの技術が具体的な問題解決や支援に活用されることが想定されます。支援者は、アクセシビリティや支援技術の知識を持つことが重要です。   リアルタイムな自動健康診断や健康促進 Society 5.0における医療や介護は、個々のリアルタイムな生理計測データや医療現場の情報、医療・感染情報、環境情報などをAIが解析することで、高度な医療の提供が可能となります。リアルタイムな自動健康診断や健康促進、病気の早期発見などが実現し、医療機関間での生理データと医療データの共有により、どこでも快適な治療が受けられることが期待されます。   医療ロボットや介護ロボット 医療ロボットや介護ロボットによる支援が進むことで、事業者と利用者の双方の負担が軽減され、生活支援を受ける障がい者や高齢者が1人での生活をより快適に送ることが期待されます。しかし、このような取り組みにはいくつかの問題があります。   合理的な配慮の提供が日本ではまだ遅れている 総務省IoT新時代の未来づくり検討委員会(高齢者・障がい者WG)のまとめでは、社会の側における障がいへの意識変革が不可欠であるとされました。ICFの概念である「障がいは心身の機能のみに起因するものではなく、社会におけるさまざまな障壁と相対することによって生ずる」という「社会モデル」の考え方に基づき、社会的障壁の除去や合理的な配慮の提供が日本ではまだ遅れています。 当事者の具体的な情報を共有 社会の意識を変えるためには、障がいのある方が地域で暮らし、子供の頃から障がいについて偏見のない理解を身につけるための情報、教育、経験の機会が必要です。また、社会的障壁をなくすためには、疑似体験だけではなく当事者の具体的な話を聞くことが重要です。研究成果によれば、当事者の具体的な情報を共有するためには、IoTやAIなどの技術の活用が有効であるとされています。   障がいのある当事者の視点を考慮することが重要 障がいのある当事者の視点を考慮することが重要であると指摘されました。ICT関連の製品やサービスを開発・提供する側においても、障がいのある当事者の視点を取り入れることが必要であり、障がいに関する情報の共有や障がいのある当事者が参加する機会を確保することが求められています。 さらに、障がい者が「夢」や「希望」を実感できる社会を実現するためには、「ボランティア」や「かわいそう」といった意識ではなく、障がい者の人権の確保や尊厳、自律・自立の尊重を促進し、障がい者が社会の対等な一員であることを実感できるような社会の構築が必要です。   IoTやAIなどの技術の活用が不可欠 さらに、障がい者のICT利活用支援の環境整備においては、障がい者ごとに異なる障がいの特性や状態、生活実態に対応するために、製品やサービスの利用方法に多様性のある対応が必要です。 そのため、IoTやAIなどの技術の活用が不可欠です。また、これまでの視覚や聴覚、身体障がいに限定されないように、精神的、発達的、知的な障がいや難病にも対応できるような関連技術の開発が強化されるべきです。   すべての人が共通して使えることが重要 さらに、ICT製品やサービスの開発・提供においては、障がいの有無に関わらず、すべての人が共通して使えるという考え方が重要です。このような考え方は、事業者の努力だけでなく、政府における公共調達においても配慮されるべきであり、政府によるアクセシビリティに配慮した機器やサービスの採用が必要です。   支援者向けの技術の開発 新たなICT製品やサービスの開発・提供においては、個々の障がい特性に応じた支援技術との連携や、アクセシビリティ規格への準拠、アクセシビリティAPIの実装が重要です。また、障がい者を支援する者の負担を軽減するために、支援者向けの技術の開発も検討されるべきです。さらに、障がいを支援する者のICTやIoTへの理解を促進する取組みも必要です。   ICTやAIを最大限に活用するために 障がいのある人がICTやAIを最大限に活用できるようにするためには、製品やサービスにおける情報アクセシビリティの確保が必須です。これに関連し、政策的な強化が求められます。 また、ICTやAI時代の到来に備えて、地域などでの利活用スキルの習得を支援する仕組みの充実や、人材の確保が重要視されています。さらに、遠隔教育やメンタリングなど、技術的な支援と人的な支援を組み合わせることも必要です。   配慮した就労機会を創出する取り組みが重要 就労支援においても、障がいのある当事者の視点から業務プロセスを改善し、配慮した就労機会を創出する取り組みが重要です。 AIの活用により、人間関係や状況判断に困難を抱える人の意思疎通を支援することも必要です。このような取り組みが、障がいのある人々の生活や就労の質を向上させることにつながります。   テレワークの促進 テレワークの促進は、障がいや病気のある人が働く機会を増やす可能性が高いため、その促進とともに、テレワークに必要なICTスキルを身につける支援も行われるべきです。行政、学校、事業者などが連携し、障がいや病気があっても多様な働き方ができることを紹介し、就労マッチングを行うことが重要です。   ICT利活用の支援策として重要 ICTを活用した学校教育においても、教員のICT知識が限られている場合や機器トラブルへの対応が困難な場合があります。このため、IoTやAIを活用した教員支援策や外部人材の活用など、地域における人材確保の仕組みが必要です。また、高等教育における遠隔教育や教材開発も、ICT利活用の支援策として重要です。   国内外で共通の環境を構築することが重要 障がい者の日常生活を支援する製品やサービスの開発においては、使いやすさを確保するための環境整備が必要です。国際的な標準化を進め、国内外で共通の環境を構築することが重要です。さらに、障がい者の移動をサポートするアプリの提供も重要視されています。これらの取り組みによって、障がい者の生活や就労環境が改善され、社会参加が促進されることが期待されます。   障がい者の数の増加 少子高齢化が進む現代社会では、障がい者への影響も深刻化しています。高齢化に伴い、身体的な機能の低下や認知機能の衰えが増加し、障がい者の数も増えています。このような状況において、Society5.0がもたらす可能性は大きいと考えられます。   障がい者の生活支援や社会参加を促進することが期待 Society5.0では、ICT技術の進化を活用して、障がい者の生活支援や社会参加を促進することが期待されます。具体的には、自動運転技術やロボット技術の発展により、移動の自由や日常生活の支援が向上することが期待されます。また、AIやIoTを活用した医療・介護サービスの充実や、テレワークの普及により、障がい者の就労や社会参加の機会が拡大する可能性もあります。   アクセシビリティが向上することが期待される さらに、Society5.0においては、障がい者の声がより積極的に取り入れられることが期待されます。障がい者のニーズや要望に基づいて、製品やサービスが開発され、社会のあらゆる側面でアクセシビリティが向上することが期待されます。 これらの取り組みにより、障がいや病気のある人々がより良い暮らしを送ることができる社会の実現に向けて、Society5.0が貢献することが期待されます。 まとめ Society 5.0においては、ICT技術の進化を活用し、障がい者の生活支援や社会参加がより効果的に促進される可能性があります。自動運転技術やロボット技術の進歩により、移動の自由や日常生活の支援が向上し、AIやIoTを活用した医療・介護サービスの充実やテレワークの普及により、障がい者の就労や社会参加の機会が拡大する見込みです。 さらに、障がい者の声が積極的に取り入れられ、製品やサービスが障がい者のニーズに適切に対応することで、社会のあらゆる側面でアクセシビリティが向上することが期待されます。これらの取り組みにより、障がいや病気のある人々がより豊かな生活を送ることができる社会の実現に向けて、Society 5.0が貢献することが期待されます。   参考 障がいの理解:アシスティブテクノロジー・アドバイザー育成研修用テキスト

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