• コミュニケーション
2025.04.11

耳で聞かずに心で聴く——ろう者が教えるコミュニケーションの本質

音のない世界から学ぶこと

私たちは毎日、誰かと会話をしたり、話を聞いたりしながら生活しています。
朝の「おはよう」から、学校の授業、友達とのLINE、家族との団らんまで。
コミュニケーションは、私たちが生きていくうえで欠かせないものです。

けれど、私たちはそのコミュニケーションを「耳で聞くこと」に頼りすぎてはいないでしょうか?
実は、耳が聞こえない「ろう者(ろうしゃ)」の方々は音のない世界でも、深く心が通じ合うコミュニケーションを日々行っています。

彼らの生き方から、私たちは何を学べるのでしょうか?
この記事では、ろう者のコミュニケーション方法や「心で聴く」という考え方について詳しく紹介します。

ろう者とは?聞こえないってどういうこと?

ろう者ってどんな人?

「ろう者」とは、生まれつき耳が聞こえない人、または事故や病気などで耳が聞こえなくなった人のことを指します。
日本には数十万人以上のろう者がいるとされており、全国にコミュニティもあります。

聞こえないというだけで、何もできないわけではありません。
むしろ、ろう者の人たちは私たちには思いもよらない方法で豊かに人と関わり合い、生活をしています。

聞こえない世界はどんな感じ?

音が聞こえないというのは、たとえば会話の中で声が届かない、アナウンスが聞こえない、車のクラクションに気づかないといった状況を意味します。
しかしその代わりに、目で見て情報を得る力感覚を研ぎ澄ませる力を高めている人が多いのです。

彼らは聴覚が使えない代わりに視覚、触覚、感情のつながりなどを通して、豊かなコミュニケーションを行っています。

手話だけじゃない!ろう者の多彩な表現

手話=言語、感情を伝える強力なツール

手話は、ろう者の間で使われている視覚的な言語です。
日本手話は日本語と同じ語順ではなく、独自の文法や構造を持っています。
指や手の動き、顔の表情、体の動きまでもが意味を持っており、まるで「体全体で語る」ような言語なのです。

手話では、「こんにちは」「ありがとう」だけでなく、「悲しい」「悩んでいる」「今はちょっと話したくない」など、繊細な気持ちも豊かに表現することができます。

表情はもうひとつの「声」

ろう者にとって顔の表情はとても大切な伝達手段です。
私たちも、無言の友達の顔を見ただけで「怒ってる?」と感じたりすることがありますよね。
それと同じように、ろう者は表情からたくさんの意味を読み取ります。

つまり、彼らのコミュニケーションは「目で見て、心で感じる」ことが基本なのです。

ジェスチャー・口の動き・視線も重要

ろう者は、手話以外にもジェスチャーや口の動き、視線、身体の動きなど、さまざまな方法を使って相手に伝えます。
たとえば口の動き(口形)を読み取ることで、手話にプラスの意味を加えることもあります。

こうした「非言語コミュニケーション」は、実は私たちが人間関係で大切にすべき部分でもあります。言葉がなくても「伝える」ことはできる。
そんなことを、ろう者は日々の中で体現しているのです。

心で聴くとはどういう意味?

「耳で聞く」と「心で聴く」は違う

「耳で聞く」というのは、ただ音として言葉を受け取ることです。
たとえば授業で先生の話を聞く、友達の話を何となく聞き流すなど。

一方「心で聴く」とは、相手の表情、雰囲気、気持ち、言葉の裏にある思いまでしっかりと受け止めようとすることです。

ろう者の人たちは、普段からこの「心で聴く」力を自然と鍛えています。
耳で聞くことができないからこそ、相手の感情や気配に敏感で、深い理解や共感が生まれるのです。

なぜ「心で聴く」ことが大切なのか?

たとえば、友達が「大丈夫」と言っても、表情が暗かったら「本当はつらいのかな?」と感じますよね。それに気づいて「大丈夫じゃないでしょ?話聞くよ」と言える人こそ、心で聴いている人です。

ろう者は、言葉のないやり取りの中でこのような気づきを日常的にしています。これは、聞こえる人たちにとっても、非常に大切なコミュニケーション力です。

ろう者から学ぶ、コミュニケーションの本質

「伝える」と「伝わる」は違う

どんなに長く話しても、相手に気持ちが伝わらなければ意味がありません。
ろう者の方々は、少ない言葉や動きでも、しっかりと心を伝える技術に優れています。

たとえば、簡単な手話や表情だけで喜びや感謝、悲しみなどを正確に伝えることができます。
それは「自分の気持ちをどう伝えるか」「相手の気持ちをどう感じ取るか」を、深く理解しているからです。

目を見る=心を見る

ろう者の会話は、相手の目を見て行うのが基本です。
これはとても大切なポイントです。
目を見ることで、相手の感情が見えてくる。
目をそらさないことで「ちゃんとあなたを見てるよ」という信頼が生まれます。

私たちも相手の目を見る習慣を取り入れるだけで、コミュニケーションがずっと豊かになります。

明日から使える!心で伝える5つのコツ

ろう者の方々が実践している「心で伝える」技術は、実は私たちも今日から使えるものばかりです。
ここでは、すぐに取り入れられる5つのコツを紹介します。

① 相手の目を見て話そう

目を見て話すだけで「ちゃんと聞いてくれてる」と相手は安心します。
視線を合わせることで信頼感が生まれます。

② 表情を豊かに使おう

感情を言葉にしなくても顔に出せばちゃんと伝わります。
嬉しいときは笑顔で、悲しいときは素直に悲しい顔をする。
それだけで十分伝わるのです。

③ ゆっくり、はっきり伝えよう

焦って早口になったりモゴモゴ話すと伝わりません。
ゆっくり、はっきり話すことで相手も安心して受け取れます。

④ 手やジェスチャーを使おう

手の動きやボディランゲージは感情を伝えるサポートになります。
大げさに見えても、実は相手にとってはわかりやすいのです。

⑤ 相手の反応をしっかり観察しよう

話したあとは相手がどう感じたかを見てみましょう。
首をかしげていたら理解できてないかも?うなずいていたら共感しているかも?
心で聴くには相手の心に目を向けることが何より大切です。

まとめ:心でつながる時代へ

情報があふれる現代、LINEやSNSで簡単につながれる時代になりました。
でも、それと同時に「本当の気持ちが伝わらない」「話してるのに通じ合えない」と感じる人も増えています。

ろう者の方々のように言葉に頼らない、でも心がしっかりつながるコミュニケーションを、私たちも目指してみませんか?

耳で聞かずに、心で聴く——
それは、今の時代にもっとも必要なコミュニケーションのかたちなのかもしれません。

 

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