2024.09.17

間欠性爆発性障がい(IED)とは?症状と特徴、サポートと予防まで解説!

間欠性爆発性障がい(IED)とは?

間欠性爆発性障がい(IED)は、衝動的かつ極端な怒りや攻撃的な行動を繰り返し起こす精神的な障がいです。この障がいを持つ人々は、日常的なストレスや刺激に対して過度に反応し、暴力的な行為や激しい怒りを抑えきれないことがあります。これらの爆発的なエピソードは、状況に対して過度な反応であり、後から後悔や罪悪感を感じることが多いのが特徴です。

 

IEDは、感情的な自己調整が困難なため、家族や職場、社会生活において深刻な問題を引き起こすことがあります。また、他の精神疾患(うつ病、不安障がい、アルコールや薬物乱用など)と併発することも少なくありません。この障がいの理解と適切な治療は、患者がより健全な生活を送るために非常に重要です。

 

IEDの症状と特徴

衝動的な怒りの爆発

IEDを持つ人々は、外的な状況や他者の行動に対して過剰に反応し、怒りや攻撃的な行動を突然表すことが特徴です。これらの行動は、他人に対する暴言、物を壊す、身体的な暴力などを含むことがあり、日常的な小さな不満やトリガーが原因で引き起こされることがよくあります。

 

怒りのエピソードの反復

IEDの人々は、一度だけでなく、同じような怒りの爆発を繰り返します。これらのエピソードは断続的に起こり、普段は平穏で落ち着いているにもかかわらず、何かがトリガーとなると突然暴発することがあります。エピソードの間は比較的安定している場合が多いです。

 

破壊的な行動

IEDのエピソード中、対象者は物理的な暴力を伴う行動を取ることが多く、他人や自分を傷つけたり、物を破壊することがあります。これらの行動は、対象者にとって後悔や罪悪感を引き起こし、社会的な孤立感やトラブルにつながることもあります。

 

後悔と罪悪感

怒りが爆発した後、IEDの患者はしばしば自分の行動に対して強い後悔や罪悪感を感じます。彼らは自分の行動がコントロールできなかったことに対して自己嫌悪を感じる一方で、再び同じような状況に直面すると同様の行動を繰り返すことがあります。

 

IEDの原因

間欠性爆発性障がいの原因は、遺伝的要因、環境要因、神経生物学的要因が複雑に絡み合っているとされています。

 

遺伝的要因

研究によると、IEDは遺伝的要因が関与している可能性があります。家族歴に精神疾患や攻撃的な行動を持つ人々は、IEDを発症するリスクが高いことが示されています。特に、衝動的な行動や感情のコントロールに問題を抱える家族の中で育った場合、その影響を受けやすいとされています。

 

環境的要因

幼少期における虐待やネグレクト、家庭内暴力などのトラウマ体験が、IEDの発症に関連していることが多く報告されています。これらの体験は、子どもの感情調整能力や対人関係に深刻な影響を及ぼし、攻撃的な行動を引き起こす一因となることがあります。

 

神経生物学的要因

IEDは、脳内の神経伝達物質(特にセロトニンやドーパミン)の異常が関与していると考えられています。これらの物質は、感情の調整や衝動のコントロールに関与しており、そのバランスが崩れることで、攻撃的な行動が引き起こされることがあります。また、前頭前皮質や扁桃体など、感情を司る脳の特定の領域に機能的な異常が見られることも示唆されています。

 

IEDの診断

IEDの診断は、主に精神科医や臨床心理士によって行われます。患者の行動パターンや感情の表出、過去のエピソードについて詳細なヒアリングが行われ、DSM-5(精神障がいの診断と統計マニュアル)に基づいた診断基準を用いて評価されます。

 

DSM-5による診断基準

DSM-5によると、IEDの診断には以下のような基準が適用されます。

  • 衝動的で反復的な攻撃的行動のエピソードが少なくとも数ヶ月にわたって繰り返されること。
  • 怒りの爆発は状況に対して過剰な反応であり、その行動が社会的、職業的な機能に深刻な影響を与える。
  • これらの攻撃的な行動は計画的ではなく、衝動的である。
  • 他の精神障がいや薬物乱用が原因ではないこと。

 

精神科的評価と併存症

IEDは他の精神障がいと共存することが多いため、診断時には他の疾患(例:うつ病、不安障がい、ADHD、薬物乱用)の有無についても評価されます。併存する疾患がある場合、その治療も並行して行う必要があります。

IEDの治療法

間欠性爆発性障がいの治療には、心理療法と薬物療法の併用が効果的とされています。

 

心理療法

心理療法は、IEDの治療において重要な役割を果たします。特に認知行動療法(CBT)は、怒りや攻撃的な行動を抑えるための効果的な方法として広く用いられています。


  • 認知行動療法(CBT)

認知行動療法では、患者が自身の思考や感情、行動のパターンを認識し、それらをより適応的な方法に変えるための技術を学びます。怒りが爆発する前のトリガーとなる状況や思考に気づき、その反応をコントロールするための対処法を学ぶことが目的です。


  • マインドフルネス

マインドフルネスは、怒りやストレスに対する反応を減少させ、感情のコントロールを向上させるための方法として用いられることが増えています。瞑想や呼吸法を通じて、自分の感情に対する認識を深め、それに対する適切な反応を選択する能力を養います。

 

薬物療法

薬物療法は、心理療法と併用されることが多く、IEDの症状を軽減するために用いられます。


  • 抗うつ薬

セロトニンの異常がIEDに関与していることが多いため、抗うつ薬(SSRI)は衝動性や攻撃性を軽減するために処方されることがあります。これにより、感情の安定性が改善されることが期待されます。


  • 抗てんかん薬

一部の抗てんかん薬は、感情の爆発をコントロールするために用いられることがあります。これらの薬は、脳内の異常な興奮を抑え、攻撃的な行動を減少させる効果があります。

 

IEDと生活への影響

家族関係への影響

間欠性爆発性障がい(IED)を持つ人々は、家族やパートナーとの関係において深刻な問題を引き起こすことがよくあります。特に、日常生活の中で予測できない瞬間に怒りが爆発することで、家族は常に緊張感を感じることになります。これにより、家庭内での信頼感が失われ、家族全体が感情的に疲弊することがあります。

 

また、IEDを持つ親がいる場合、子どもたちはしばしば感情的な混乱や不安を感じることが多く、成長過程で心理的な問題を抱えるリスクが高まります。家庭内暴力や虐待のリスクも増大し、家族全体の安全や幸福感が損なわれることがあるため、早期の治療が非常に重要です。

 

職場での影響

IEDを持つ人々は、職場でも同様に問題を引き起こすことがあります。特に、上司や同僚とのコミュニケーションにおいて、衝動的な怒りが出現すると、職場の人間関係に深刻な悪影響を及ぼすことがあります。たとえば、些細なミスや誤解に対して激しい怒りを表し、同僚とのトラブルや対立が頻繁に発生することがあります。

 

さらに、感情をうまくコントロールできないことが原因で仕事のパフォーマンスが低下することも少なくありません。こうした問題が続くと、職場での信頼を失い、昇進のチャンスを逃したり、最悪の場合、職を失うこともあります。

 

社会的孤立

IEDを持つ人々は、怒りのエピソードが原因で社会的に孤立しやすくなります。友人や知人との人間関係においても、感情の爆発によってトラブルが発生し、周囲の人々が距離を置くようになることがあります。これにより、孤独感や疎外感が強まり、さらに心理的なストレスが増加することがあります。

 

社会的孤立はIEDの症状を悪化させる要因となることがあり、孤立感からさらに攻撃的な行動が増え、悪循環に陥ることがよくあります。そのため、社会的なサポートを得ることや、友人や家族との関係を維持するための対策が必要です。

 

犯罪行為との関連

IEDの攻撃的な行動は、しばしば法的なトラブルを引き起こすことがあります。暴力行為や物の破壊、他者に対する身体的な攻撃が犯罪行為とみなされ、逮捕や罰金、刑務所に収容されることもあります。特に、感情の爆発が頻繁に起こる人々は、再犯のリスクが高く、法的な問題が長期化する傾向があります。

 

このような状況に陥ると、さらに社会的な孤立が進み、IEDの治療が遅れることがよくあります。法的な問題を回避するためにも、適切な治療やサポートを早期に受けることが重要です。

 

IEDに対するサポートと予防

家族や友人のサポート

間欠性爆発性障がいを持つ人々に対して、家族や友人のサポートは非常に重要です。患者が感情的な爆発を起こしているときに冷静に対応し、事態を悪化させないようにするための技術を学ぶことが、家族全体の健康に貢献します。また、家族は心理的なサポートを提供するだけでなく、治療やカウンセリングの場に連れて行くなど、積極的な役割を果たすことが求められます。

 

家族や友人が患者を理解し、怒りのエピソードを共感的に受け止めることができれば、患者自身が自己制御を学びやすくなります。ただし、家族自身が心理的に疲弊してしまうことがあるため、家族もまたカウンセリングやサポートグループに参加して支援を受けることが重要です。

 

ストレス管理とセルフケア

IEDの患者にとって、日常生活でのストレス管理は非常に重要です。適切なストレス管理を行うことで、感情の爆発を予防し、症状をコントロールする助けとなります。具体的な方法としては、次のようなものが挙げられます。

 

  • リラクゼーション法:瞑想や深呼吸、ヨガなどのリラクゼーション法を日常に取り入れることで、感情を落ち着け、衝動的な反応を減少させることができます。
  • 運動:適度な運動はストレスを軽減し、感情の安定を促進する効果があります。特に、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、脳内のセロトニンやエンドルフィンの分泌を促し、気分を改善する助けとなります。
  • 時間管理:ストレスの原因となる要因を減少させるために、スケジュールを適切に管理し、過剰なプレッシャーを避けることが大切です。
  • 趣味の追求:リラックスできる趣味や活動を見つけ、日常の中で楽しむ時間を持つことで、精神的なバランスを保つことができます。

 

IEDの予防

IEDの予防には、幼少期からの健全な感情表現やストレス管理のスキルを養うことが重要です。例えば、子どもが感情を抑圧せずに表現できる安全な環境を提供し、怒りを適切に表現する方法を教えることが大切です。

また、トラウマや虐待などのストレスフルな経験がある場合、早期にカウンセリングやセラピーを受けることで、感情のコントロール能力を向上させることができます。学校や家庭、地域社会においても、感情調整の教育やサポートが提供されることで、IEDのリスクを軽減することが期待されます。

まとめ

間欠性爆発性障がい(IED)は、感情のコントロールが困難で、衝動的な怒りや攻撃的な行動を引き起こす精神的な障がいです。この障がいは、家族関係、職場環境、社会的なつながりに深刻な影響を及ぼし、適切な治療やサポートがなければ、法的なトラブルや社会的孤立に繋がる可能性があります。

 

しかし、認知行動療法や薬物療法、家族のサポート、ストレス管理の技術などを通じて、IEDの症状は管理可能です。早期に診断と治療を受け、適切なサポート体制を整えることで、患者はより健全な生活を取り戻すことができます。また、予防策として感情調整のスキルを養い、ストレスフルな状況に適切に対処する能力を身につけることが、IEDの発症リスクを低減する鍵となります。IEDの理解と適切な対応は、患者本人だけでなく、その周囲の人々の生活の質を向上させるために非常に重要です。

 


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