2024.09.17

発語障がいとは?種類、原因、支援方法を解説!

発語障がいとは

発語障がいは、音声を生成し、言葉を適切に発する能力に影響を与える神経障がいです。この障がいを持つ人々は、口や舌、声帯などの筋肉が正常に機能しているにもかかわらず、言葉を正しく発音するのが困難になります。発語障がいは、主に脳内の神経経路に問題が生じ、意図的な音声生成ができなくなることが原因です。

 

発語障がいは幼児期に見られることもありますが、脳卒中や頭部外傷、脳の変性疾患などが原因で後天的に発症することもあります。この障がいは、日常生活のコミュニケーションに大きな影響を与え、患者が社会的な孤立感や自己肯定感の低下を経験することも少なくありません。

 

発語障がいの種類

発語障がいにはいくつかの異なるタイプが存在し、主に原因や症状の出現の仕方に基づいて分類されます。

 

発語失行(アプラキシア)

発語失行は、発語障がいの一種で、脳内の運動プランニングに問題が生じ、言葉を発するために必要な筋肉の動きを計画し実行する能力が阻害されます。これにより、特定の音を正確に発音することが難しくなります。発語失行は意識的に音声を生成しようとする際に、特に困難が表れ、無意識に発話することが比較的容易であることが特徴です。

発語失行の典型的な症状には、以下のようなものがあります。


  • 音の置き換えや音の順序の誤り
  • 音声を正確に再現できない
  • 何度も繰り返して発音しようとするが、正しい音声が出せない
  • 音の長さや強弱、音高のコントロールが不適切

 

ディスアースリア

ディスアースリアは、発語障がいの中で筋肉の制御に問題があるタイプです。脳や神経系が口、舌、喉、声帯などの筋肉を適切に制御できず、音声生成に影響を与えます。ディスアースリアは、発音だけでなく、声の強さや音の高さ、リズムにも影響を与えることがあります。

ディスアースリアの症状は、発語失行とは異なり、音声の生成に関わる筋肉そのものの機能低下や神経的な問題によって引き起こされます。主な症状は次のとおりです。


  • 不明瞭な発音や言葉が聞き取りにくい
  • 声の強さが一定せず、音量が不安定
  • 話す速度が異常に速いか遅い
  • 息切れや音声のリズムが不規則

 

発音障がい

発音障がいは、特定の音や音節を適切に発音できない状態を指します。特に子どもに見られる場合が多く、発達過程で言葉を学ぶ際に発音が不正確になることがあります。このような場合、特定の音を省略したり、異なる音に置き換えることが多いです。発音障がいは通常、治療や言語療法を通じて改善が可能です。

 

発語障がいの原因

発語障がいは、さまざまな要因によって引き起こされます。主な原因は以下のとおりです。

 

脳卒中

脳卒中は、発語障がいの主要な原因の一つです。脳卒中によって脳の一部に損傷が生じると、音声生成に関与する脳領域が影響を受けることがあります。特に左側の大脳半球が損傷すると、言語に関連する機能が阻害され、発語失行やディスアースリアが発生することが多いです。

 

脳外傷

交通事故や転倒などによる頭部外傷も、発語障がいの原因となります。頭部に強い衝撃を受けると、脳の神経ネットワークが損傷し、言語や発語に関わる領域が影響を受けることがあります。

 

神経変性疾患

パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病などの神経変性疾患も、発語障がいの原因となります。これらの疾患は、神経系の機能低下により、言葉を発するための筋肉の制御が困難になり、ディスアースリアが発症することがよくあります。

 

発達障がい

発語障がいは、発達障がいの一環として幼児期に現れることがあります。特に自閉症スペクトラム障がい(ASD)や注意欠陥多動性障がい(ADHD)を持つ子どもにおいて、言語発達の遅れや発語の困難が見られることがあります。

発語障がいの診断と評価

発語障がいの診断には、言語聴覚士や医師が関与し、詳細な評価が行われます。診断は、患者の症状や発話のパターンを観察することから始まり、さまざまなテストを通じて行われます。

 

言語評価

言語評価は、言語聴覚士によって行われ、患者がどの程度の言葉の困難を抱えているかを評価します。患者に特定の音を発音させたり、単語や文章を繰り返させたりすることで、発語の問題がどのように現れるかを確認します。

 

神経学的評価

発語障がいの原因が神経学的な問題である場合、医師による神経学的評価が行われます。脳卒中や頭部外傷、神経変性疾患が疑われる場合、MRIやCTスキャンを用いて脳の状態を確認し、発語に関連する神経経路の損傷を評価します。

 

音声分析

音声分析は、患者の発音や音声の特性を詳細に解析するために行われます。音声の周波数や強度、リズム、音の持続時間などを測定することで、発語障がいの具体的な特徴を把握します。

 

発語障がいの治療法

発語障がいの治療は、障がいの種類や重症度、原因によって異なります。一般的には、言語療法や音声療法が主な治療法となりますが、必要に応じて薬物療法や外科的治療が行われることもあります。

 

言語療法

言語療法は、発語障がいの治療において最も一般的で効果的な方法です。言語聴覚士が患者の言語能力を評価し、個別のニーズに応じた訓練プランを提供します。発音の正確性や言語のリズム、音声の強弱などを改善するための練習が行われます。

 

特に発語失行の場合、言語療法では音の生成プロセスを段階的に学ぶ方法が用いられます。患者は、音を単独で練習し、徐々に音の組み合わせや文章の生成に進んでいきます。このような訓練を通じて、脳の神経経路が再編成され、発語能力の向上が期待されます。

 

音声療法

音声療法は、発声や声の強さ、音の高さなどの音声特性を改善するために行われます。ディスアースリアの患者に対しては、声帯や喉の筋肉の制御を向上させる練習が行われ、音声の明瞭さを高めることが目的です。また、患者が話す際のリズムやスピードの調整も行われ、コミュニケーションの効果を高めることが目指されます。

 

薬物療法

発語障がいの原因が脳卒中や神経変性疾患の場合、薬物療法が治療の一部として使用されることがあります。例えば、パーキンソン病によるディスアースリアには、ドーパミン補充療法が効果的です。また、脳卒中後の回復期には、神経再生を促進する薬物が処方されることがあります。

 

外科的治療

重度の発語障がいに対しては、外科的治療が行われることもあります。例えば、脳の一部が損傷している場合、神経外科手術によって損傷部位を修復することが検討されます。また、声帯や喉の構造的な問題が発語障がいを引き起こしている場合、手術によって声帯の機能を回復させることがあります。

 

発語障がいに対する支援

発語障がいを持つ患者には、家族や社会からのサポートが非常に重要です。コミュニケーションの困難さが生活の質に大きな影響を与えるため、適切な支援体制を整えることが不可欠です。

 

家族のサポート

家族は、患者が日常生活で感じる困難を理解し、感情的なサポートを提供することが重要です。また、言語療法や音声療法の進行状況を把握し、家庭での練習をサポートすることも、患者の回復に貢献します。

 

ソーシャルサポート

発語障がいの患者は、職場や学校、地域社会でもサポートを受けることが重要です。特に、発語障がいによってコミュニケーションに困難を抱える患者に対して、適切な配慮が求められます。また、ソーシャルワーカーやサポートグループなどの専門的な支援も利用することで、患者が孤立せずに生活できるよう支援を受けることができます。

 

発語障がいの予後

発語障がいの予後は、原因や治療のタイミング、個々の患者の状況によって異なります。早期の診断と治療が行われた場合、特に軽度の発語障がいでは、言語能力の回復が期待できることが多いです。ただし、脳卒中や神経変性疾患などの重篤な原因による場合、完全な回復は難しいことがありますが、適切なリハビリテーションを通じて症状を管理し、日常生活の質を向上させることが可能です。

まとめ

発語障がいは、コミュニケーションに深刻な影響を及ぼす神経学的な障がいです。この障がいは、言葉を発するための運動プランニングや筋肉制御に問題が生じることで発生します。発語失行やディスアースリアなど、発語障がいの種類や原因は多岐にわたり、それぞれに対する治療法も異なりますが、言語療法や音声療法を通じて多くの患者が症状を改善することが可能です。

 

家族や社会からの支援が重要であり、早期の診断と適切な治療を受けることで、患者は発語能力を取り戻し、日常生活の中でより良いコミュニケーションを実現することができます。

 


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