2024.08.30

精神障がいってどんな障がい?理解とサポートについて詳しく解説

精神障がいとは、精神疾患のため精神機能の障がいが生じ、日常生活や社会参加に困難をきたしている状態のことをいいます。病状が深刻になると、判断能力や行動のコントロールが著しく低下することがあります。正しい知識が十分に普及していないこともあり、精神疾患というだけで誤解や偏見、差別の対象となりやすく、社会参加が妨げられがちです。

 

精神障がいの種類

統合失調症

被害妄想・幻聴・興奮・思考の脈絡の乱れ・感情の平板化・意欲や自発性が低下し閉じこもりがちになるなどの症状が見られます。思春期・青年期に発症することが多く、経過が長期にわたるため、福祉的な支援が必要となる人も少なくありません。薬物療法などで改善します。再発予防のためには服薬が有効です。

 

■主な特性

発症の原因はよくわかっていないが、100人に1人弱かかる、比較的一般的な病気である。

「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障がいとして表れることが知られている。

 

■陽性症状

幻覚:実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。なかでも、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い。

妄想:明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがある。

 

■陰性症状

  • 意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる。
  • 疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる。
  • 入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となる。

など

 

■認知や行動の障がい

  • 考えがまとまりにくく何が言いたいのか分からなくなる。
  • 相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない。

など

 

■配慮のポイント

  • 統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある。
  • 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。
  • 社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る。
  • 一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心がける。
  • 一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心がける。
  • 症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに主治医を受診することなどを促す。

 

気分障がい(躁うつ病、うつ病、躁病)

うつ状態では、憂うつな気分・意欲の減退・自責的で悲観的な考えが見られ、不眠や食欲低下などの症状もあらわれます。

躁状態では、爽快気分、過剰な活動性、誇大的な考え、浪費や性的逸脱などのトラブルの発生が見られます。

この病気は薬物療法などで改善します。再発予防に服薬や精神療法が有効です。また、うつ状態では自殺企図に注意が必要です。

 

■主な症状

  • 気分の波が主な症状として表れる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障がい(躁うつ病)と呼ぶ。
  • うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる。
  • 躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でもできると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。

 

■配慮のポイント

  • 専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する。
  • 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。
  • うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する。
  • 躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する。
  • 自分を傷つけてしまったり、自殺に至ったりすることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す。

 

てんかん

■主な特性

  • 何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作が起きる。
  • 発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある。

 

■配慮のポイント

  • 誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの者が一般的な生活が送れることを理解する。
  • 発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない。
  • 内服を適切に続けることが重要である。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する。

 

高次脳機能障がい

交通事故や脳血管障がいなどの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障がい。身体的には障がいが残らないことも多く、外見ではわかりにくいため「見えない障がい」とも言われている。

 

■主な特性

以下の症状が現れる場合がある。

記憶障がい

  • すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えたりすることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする。

 

注意障がい

  • 集中力が続かなかったり、ぼんやりしてしまい、何かをするとミスをしたりすることが多く見られる。
  • 二つのことを同時にしようとすると混乱する。
  • 主に左側で、食べ物を残したり、障がい物に気がつかなかったりすることがある。

 

遂行機能障がい

  • 自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てたりできない。

 

社会的行動障がい

  • ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。
  • こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢したりすることができない。
  • 思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする。

 

病識欠如

  • 上記のような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになる。

 

失語症(聞くこと・話すこと・読むこと・書くことの障がい)を伴う場合がある。

片麻痺や運動失調等の運動障がいや眼や耳の損傷による感覚障がいを持つ場合がある。

 

■配慮のポイント

本障がいに詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障がい支援普及拠点機関、家族会等に相談する

記憶障がい

  • 手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩いてもらったりなどする。
  • 自分でメモを取ってもらい、双方で確認する。
  • 残存する受障前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲では迷わず行動できるなど)。

 

注意障がい

  • 短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩をとるなどする。
  • ひとつずつ順番にやる。
  • 左側に危険なものを置かない。

 

遂行機能障がい

  • 手順書を利用する。
  • 段取りを決めて目につくところに掲示する。
  • スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認したりする。

 

社会的行動障がい

  • 感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る。
  • あらかじめ行動のルールを決めておく。

 

神経症・ストレス関連障がい

〈パニック障がい〉

突然、強い不安感に襲われ、動悸や息苦しさ、発汗、めまいなどの身体症状が現れる障がいです。発作は予測不可能で、短時間のうちにピークに達し、その後は徐々におさまりますが、再発の恐れが大きなストレスとなり、外出や人混みを避けるようになることもあります。発作を繰り返すことで、日常生活に大きな支障が出ることがあります。

 

〈恐怖症〉

特定の状況や対象に対して、過剰な恐怖感や不安感を抱く障がいです。対人場面、閉所、広場、飛行機、動物など、恐怖の対象はさまざまです。この恐怖感が強すぎて、それらを避けるために日常生活が制限されることがあります。例えば、対人恐怖症では、人前で話すことや集団の中にいることに強い不安を感じ、社会生活に大きな支障をきたすことがあります。

 

〈強迫性障がい〉

繰り返し浮かぶ不快な考えやイメージ(強迫観念)に対して、それを打ち消そうとする行為(強迫行為)を何度も繰り返す障がいです。例えば、戸締りや火の元の確認を何度もしないと気が済まなかったり、手を何度も洗わないと安心できなかったりします。これらの行為は本人も不合理であると理解していても、止めることができず、日常生活に大きな影響を与えます。

 

〈心的外傷後ストレス障がい(PTSD)〉

重大な事故や自然災害、犯罪被害、戦争体験など、極めて強いショックや恐怖を経験した後に発症する障がいです。トラウマとなった出来事がフラッシュバックのように突然思い出され、悪夢として現れたり、関連する場所や状況を避けたりするようになります。また、過度な警戒心や過敏な反応、感情の鈍化などが見られ、日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼします。

 

アルコールや薬物依存症

アルコールや覚せい剤などの乱用を、自分の意志だけではやめられず、身体面や社会生活に問題が生じて、周囲も大きな影響を受けます。

 

■主な特性

  • 適度な依存を逸脱し、その行為を繰り返さないと満足できない状態となり、自らの力では止めることができなくなった結果、心身に障がいが生じたり家庭生活や社会生活に悪影響が及ぶに至る。
  • 代表的な依存の対象として、アルコール、薬物およびギャンブル等がある。

 

■配慮のポイント

  • 本人に病識がなく(場合によっては家族も)、依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲が理解する。
  • 他者からの非難などの厳しい現実から逃れるために、さらに依存が強まるという可能性があるため、家族も同伴の上で、依存症の専門家に相談する。
  • 一度依存対象を断っても、再度依存してしまうことがあるため、根気強く本人を見守る。

 

認知症

認知症は、脳の萎縮や神経細胞の変性などによる明らかな脳の障がいにより、記憶力や判断力が低下する状態です。初期段階では、物忘れや時間・場所の混乱が目立つようになり、進行するにつれて、日常生活の動作やコミュニケーションに支障をきたします。

また、被害妄想や幻覚(特に幻視)、夜間の興奮、徘徊などの症状が見られることもあります。これらの症状は、本人だけでなく、家族や介護者にとっても大きな負担となり得ます。認知症の進行は個人差があり、適切な治療とケアが重要です。

 

パーソナリティ障がい

パーソナリティ障がいは、著しい性格の偏りや固着が原因で、物事の受け取り方や対人関係、感情や衝動のコントロールにおいて障がいが見られる状態です。これにより、本人自身が強い苦痛を感じたり、周囲の人々との関係に問題が生じたりすることが多くあります。

パーソナリティ障がいには、複数のタイプがあり、それぞれ特徴的な行動パターンや思考様式が見られます。例えば、境界性パーソナリティ障がいでは、感情の不安定さや自己イメージの混乱が顕著で、人間関係が不安定になることが多いです。これらの障がいは、長期にわたり生活に大きな影響を及ぼし、専門的な治療や支援が必要となることがあります。

 

若年性認知症について

高次脳機能障がいと似た症状が見られる疾患として、認知症がありますが、特徴として進行性であるということがあげられます。特に、若年性認知症(18歳以上65歳未満で発症)に関しては、推定発症年齢の平均が51歳程度と、働き盛りの年代であることから、雇用が大きな課題となります。しかし、支援機関や支援制度を活用したり、症状に応じた職務内容の変更や配置転換を行うなどの取組により、若年性認知症の方の雇用継続の可能性は広がります。

 

配置転換により雇用が継続された例

高校卒業後、長年自動車販売会社の営業職として勤務してきた男性がいます。40歳になった頃から、「顧客の顔が覚えられない」「道に迷う」といった症状が見られるようになり、精神科を受診しましたが、改善は見られませんでした。その後、意識障がいが生じたため総合病院を受診したところ、若年性アルツハイマー型認知症の疑いとの診断を受けました。

 

診断を受けたことで繋がりを持った若年性認知症家族会からの勧めもあり、高次脳機能障がい支援拠点病院および地域障がい者職業センターの支援を受け、記憶障がいの補完方法を習得しました。また、職場にも症状を踏まえた職業生活の見直しを相談し、洗車業務担当へ配置転換がなされ、雇用継続に至りました。

 

就労支援機関と相談し、ジョブコーチ支援を利用して再就職した例

長年、介護職やケアマネージャーとして働いてきた61歳の女性がいます。「何度も同じことを言う」「同じ書類を作る」といった行動が見られ、本人も物忘れを自覚したため、認知症専門クリニックを受診し診断を受けました。治療を受けながら雇用継続について職場と相談しましたが、うまくいきませんでした。

 

退職後、ハローワークや地域障がい者職業センターと相談し、「仕事内容を絞り込み、手順の確認をきちんと行えば、できる仕事はある」と自信を得て再就職活動を進めました。そして、障がいを開示した上で、ジョブコーチ支援事業を活用し、清掃やシーツ交換などの介護補助作業で再就職に至りました。

対応の一例~統合失調症の方の場合を例に~

心配事を相談されたとき

  • まず、本人のペースで話に耳を傾けましょう。
  • 相手を尊重した聞き方・話し方を心がけましょう。
  • ときどき、話を具体的に整理しながら会話を進めましょう。

 

助言をする場合

  • 頭ごなしな言い方や命令口調ではなく、「○○してみてはいかがでしょうか」など、穏やかな口調で話しましょう。
  • 具体的かつ手短に、誤解の余地がないように伝えましょう。
  • お手本や具体例を示しましょう。

 

対応が難しいと感じた場合

  • 同意を求められても、違うと思うことや分からないことは率直に伝えましょう。
  • 対応できる範囲を明確に伝えましょう。
  • 専門機関などと相談をしながら対応しましょう。

 

サポート方法

精神障がいの方の声をもとに一例を紹介します。


  • マニュアルどおりの内容を早口で説明されると理解ができない。

【対応の方法】

丁寧に分かりやすく伝えるよう心がけましょう。


  • 入り口やロビーで、どこに行けば良いのか分からずに迷ってしまう。

【対応の方法】

初めての場所で、初対面の人と話をすることに慣れていない方もいます。

「ご用件はうかがっているでしょうか?」などと声をかけて、来所・来店の目的について確認しましょう。


  • 書類の書き方が分からない。

【対応の方法】

「何かお手伝いしましょうか?」などと声をかけ、記入例を示すと分かりやすいでしょう。

また、書類の記入に時間がかかる場合などは、落ち着いて、ゆっくり書くことができるように、配慮をしてください。


  • 入場時に精神障がい者保健福祉手帳を提示すると、介護者同伴でないことを理由に断られることがある。

【対応の方法】

手帳を持っていても一人で外出できる人は大勢います。そのことを理解しましょう。

まとめ

精神障がいに関する正しい知識を持ち、適切な対応と配慮を行うことは、社会全体の理解と共生を促進するために非常に重要です。個々の状況に応じた支援を行い、誰もが安心して社会生活を送ることができる環境づくりに努めていきましょう。

 

参考

精神障がい(精神疾患)の特性(代表例)|厚生労働省

精神障がい|ハートシティ東京

 


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