2024.08.27

注意欠如・多動症(ADHD)とは?ADHDの理解と対処法、診断から日常生活のサポートまで

注意力が散漫、うっかりミスが多い、じっとしていられない、順番を待ったり時間を守るのが苦手――そうした悩みや困りごとは、ADHDの特性が原因で生じているのかもしれません。「わかっているのにできない」ことで、歯がゆい思いを繰り返してはいませんか?

集中力が続かない、落ち着きがない、順番を待てないなどの特性により、日常生活や学校生活に困難を抱える子どもがいます。このような困難の中には、育て方やしつけによるものでも、子どもの努力が足りないわけでもなく、神経発達症群(発達障がい)の一つであるADHD(注意欠如・多動症)が背景にあることもあります。

 

ADHDとは?

ADHDは、不注意、多動性、衝動性の3症状を主な特徴とする生まれつきの精神疾患で、神経発達症群(詳細は下記をご覧ください)の一つとされています。海外の学術論文では18歳以下で約5%存在すると報告されています。ADHDは、3つの特徴が通常の発達の水準からすると不相応で普段の生活に直接悪影響を及ぼすほど深刻な場合に一定の基準をもって診断されます。これら3つの特徴は、同時に全て現れるというわけではなく、「不注意」が目立つ場合、「多動性」や「衝動性」が目立つ場合、また全てを併せ持つ場合など、子どもによってさまざまな形で現れます。

 

一方、成長とともに状態が変化することもあり、例えば大人になってその特徴が自然と目立たなくなることがあります。また、成長に伴って、本人が状況に対処する「コツ」のようなものを身につけることで、その特徴が目立たなくなることもあります。しかし、その場合も特徴そのものが、全てなくなるということではありません。

 

神経発達症群(発達障がい)とは

神経発達症群(発達障がい)とは、特定の能力や一連の情報の獲得、維持、適用に発達上のかたよりがあることで、生活に悪影響が生じる神経学的な状態をいいます。神経発達症群(発達障がい)はいくつかのタイプに分類されており、ADHDのほかに、限局性学習症、自閉スペクトラム症などがあります。

 

不注意に関連する事象

年齢に相応しくない以下のような事象が少なくとも半年以上にわたって続き、日常生活に悪影響を及ぼすことがあります。


  • 忘れ物やなくし物が多い
  • 話しかけても聞いていない
  • 約束などを忘れてしまう
  • すぐに気が散ってしまう
  • 細かいことを見過ごしてしまう(ケアレスミスが多い)
  • 課題や遊びなどを途中でやめてしまう
  • 物事をやり遂げることができない
  • 順序立てることや整理整頓ができない
  • コツコツやること(勉強など)を避けたり、いやいや行う

など

 

多動性・衝動性に関連する事象

年齢に相応しくない以下のような事象が少なくとも半年以上にわたって続き、日常生活に悪影響を及ぼすことがあります。


  • 手足をそわそわ動かしている
  • 授業中に席を離れてしまう
  • じっとしていられない
  • 静かにできない
  • 急に走り出す
  • おしゃべりが過ぎる
  • 質問が終わる前に答えてしまう
  • 順番を抜かしてしまう
  • 友だちのしていることをさえぎる

など

ADHDの原因

ADHDの原因は、はっきりとはわかっていません。さまざまな研究より、ADHDは「脳」の機能に原因があることで、注意や行動をコントロールすることが難しくなっていると考えられています。生まれつきのものであり、きちんとしたしつけを受けていないことや、また、逆に厳しすぎる養育環境によって、ADHDになるというわけではありません。

 

ADHDは遺伝と関係があるのか

ADHDは遺伝子や環境因子など、さまざまな要素が相互に関係して起こると考えられていますが、現時点で明確な原因は特定されていません。遺伝の影響が考えられる場合もあれば、そうでない場合もあり、「ADHDは必ず遺伝する」というわけではありません。

 

ドパミンやノルアドレナリンとの関係も

ADHDはドパミンやノルアドレナリンという物質と関連があると考えられています。ドパミンやノルアドレナリンは、脳内で情報伝達を行う「神経伝達物質」のひとつで、これらの分泌量が調節不十分または機能不全により低下することで、ADHDの特性が表れるとされています。また、前頭前皮質での機能障がいも指摘されています。

 

ADHDの子どもの行動や事象を前向きに捉えていこう

ADHDの子どもの行動や事象には、前向きに捉えられるところがたくさんあります。例えば、以下のようにネガティブに捉えがちなADHDの子どもの行動や事象への認識を置き換えて、関わる大人も子ども自身もポジティブな気持ちで向き合える場面を増やしていきましょう。

 

  • 物事をやり遂げることができない→切り替えが早い
  • おしゃべりが過ぎる→積極的にコミュニケーションをとる
  • 質問が終わる前に答えてしまう→すばやく反応できる

 

ADHDについて、医療機関の受診から診断までの流れ

医療機関でADHDを診断する際には、まず問診を行います。問診の際には、DSM-5というアメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」や、世界保健機関(WHO)作成の国際疾病分類第11回改訂版(ICD-11)に記載されている基準などを用いて診断を進めていきます。ASRS、CAARS™、CAADID™といった心理検査、IQ測定などの認知機能検査を併用することもあります。また、てんかんなどの他の脳の病気の併存や鑑別を要する場合には、脳波の測定や画像検査を行うこともあります。

 

DSM-5での診断基準

  • 不注意と多動および衝動性の特性が、同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められる
  • 症状のいくつかが12歳以前より認められる
  • 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障がいとなっている
  • 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障がいされている
  • その症状が統合失調症、または他の精神病性障がいの経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない

これらの条件が全て満たされたとき、ADHDと診断されます。

 

ADHDの対処方法について

発達障がいはいわゆる「病気」ではなく「脳の特性」であることから、特性や困りごとへの対応方法についても「治療」ではなく「対処」と表現するのが望ましいでしょう。

ADHDの特性による困りごとや生きづらさを軽減する方法として、以下のような対処法があります。

 

環境調整、ソーシャルスキルトレーニングなどによる対処

ADHDと診断された場合、まず医師や臨床心理士などからのアドバイスをもとに集中しやすい環境をつくる「環境調整」や、日常生活で実際に遭遇するトラブルを回避するため、あいさつの仕方やメモの取り方などを具体的なロールプレイを通して学ぶ認知行動療法のひとつである「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」などが行われます。

 

薬による対処

環境調整などの対処を行ってもADHDの症状の改善が十分ではない場合は、ADHDの症状を改善するための薬を使用することもあります。その際には、「通院日や通院時間を忘れがち」といった特性も考慮し、スマートフォンのスケジュール管理アプリの利用や、家族に通院情報を共有してリマインドしてもらうなどの工夫をするとよいでしょう。

 

薬は有効性と安全性のバランスに注意しながら選択されます。なお、薬を使う場合でも環境調整やSSTなども続けて取り組んでいくようにします。また、うつや不安などの精神的な不調を伴う場合には、その治療もあわせて行います。

 

そのほかにも、ADHDの症状によって日常生活に支障が出る場合は、ライフステージに応じてさまざまなサポートを受けることができます。

ひとりで悩まず、相談窓口や医療機関に相談することで、生きづらさを和らげることができるかもしれません。

「ADHDかも」と思ったら、何科の病院に行けばいい?相談先をご紹介

日常生活での違和感から「ADHDかもしれない」と感じたときや、ADHDの特性による困りごとや生きづらさがあるときには、医療機関へ相談することもできます。

 

どんな医療機関を受診すればいい?

大人のADHDの診療は、主に精神科や心療内科、メンタルクリニックなどで行われます。診療の初期段階では、まず詳しい問診や診断テストが実施されます。これにより、患者さんの生活状況や行動パターンを詳しく把握し、ADHDの特徴がどの程度現れているのかを評価します。また、他の精神疾患や身体的な問題がADHDの症状に影響している可能性も考慮しながら、総合的な診断が行われます。

 

診断が確定した後は、個々の症状に応じた治療プランが立てられます。治療には、薬物療法、認知行動療法、カウンセリングなどが含まれます。薬物療法では、集中力や注意力の改善を目指した薬が処方されることが一般的です。また、認知行動療法では、日常生活での行動や思考のパターンを改善するための具体的なスキルを学びます。

 

さらに、生活習慣や環境の調整も重要です。例えば、仕事や家事の優先順位を整理したり、ストレスを軽減するための方法を見つけたりすることが、症状の管理に役立ちます。家族や職場の理解と協力も、治療の成功には欠かせません。

 

診療の過程で定期的なフォローアップが行われ、症状の変化や治療効果が評価されます。必要に応じて治療プランの見直しが行われ、最適なアプローチが模索されます。ADHDの症状は人それぞれ異なるため、個別対応が求められることが多く、医療チームとの密な連携が重要です。治療を通じて、患者さんがより快適に日常生活を送れるよう、サポートが提供され続けます。

 

その他の相談先について

医療機関以外にもさまざまな相談先があります。悩みや困りごとに応じた相談先から、それぞれに合った支援・サービスにつなげていくことができます。まずは気軽に相談先を探してみませんか。

例えば、地域の発達障がい者支援センターや精神保健福祉センター、児童相談所など、さまざまな公共機関がサポートを提供しています。また、学校や職場のカウンセラー、NPO法人や自助グループも、専門的なアドバイスや情報提供を行っています。こうした窓口では、直接的な支援だけでなく、適切な医療機関や専門家への紹介も行っています。

 

一人で抱え込まずに、まずは気軽に相談してみることが大切です。適切な支援を受けることで、困難な状況が少しずつ改善され、生活の質が向上する可能性があります。相談することは、解決への第一歩です。自分に合った支援を見つけるために、遠慮せず、積極的に相談を利用してみてください。

 

まとめ

ADHDの特性による困難は、一人で抱え込まず、専門家や支援機関と連携することで、少しずつ改善されることがあります。適切な支援を受けることで、生活の質を向上させることができる可能性がありますので、ぜひ一歩踏み出してみてください。あなたに合った支援やアドバイスを得ることで、より良い日常生活を築く手助けとなるでしょう。

 

参考

ADHDについて知ろう|武田薬品工業株式会社

大人の注意欠如・多動症 (ADHD)とは|大人の発達障がいナビ

 


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