2024.07.23

「障がいは個性」、健常者と共に働ける職場へ 精神疾患がある若者を人材活用する企業の狙い

鬱病や統合失調症、発達障がいなどの精神疾患を抱える若者を、企業が採用する事例が増えています。一定割合での障がい者雇用が義務付けられていることに加え、人手不足の深刻化や、精神疾患について社会的認知度が高まっていることも背景にあります。「働きやすさ」の実現には、仕事内容や勤務条件、周囲の理解などの課題があります。企業には、本人が能力を発揮できる環境を整える取り組みが求められています。

 

就活生の54%「鬱を自覚」

「鬱病などは身近な病気。精神科を受診することは〝普通のこと〟として受け止められています」学生の就職活動の支援サービスを手掛けるABABA(アババ、大阪)で広報を担当する尾上七海(おのうえななみ)さん(24)は、最近の若者についてそう語ります。

 

かつて「精神病院」には暗いイメージがつきまといましたが、近年は軽症でも気軽に通える、清潔で明るい「メンタルクリニック」や「心療内科」などの医療機関が増えました。「若い人たちは自分の精神疾患を知られることに抵抗が小さくなっている」と話す尾上さんによると、人気バンド「サカナクション」のボーカル、山口一郎さんが鬱病を公表しながら活動を続けていることも、若者に影響を与えているといいます。

 

精神疾患を発症しやすい状況

一方、学生の就職活動は長期化し、「交流サイト(SNS)で周りが内定をもらっているのに自分はもらえていないと知り、焦りを募らせる学生が多い」といいます。ABABAが昨年10月、就職活動を経た学生100人に行った調査によると、54%が「鬱の自覚症状がある」、30%が「就活中に死にたいと思ったことがある」と回答しました。

 

医師の診断がなくても、自覚症状を抱えて悩む人がいます。若者が強いストレスにさらされ、精神疾患を発症しやすい状況にあることが分かります。

 

人手不足で要件を緩和

その結果、いったん就職しても早い時期に退職する若者も多いとみられ、中途採用を含む労働市場に精神疾患を抱える若者が増加し、企業は雇用に向けて対応を迫られています。

 

人材関連事業などを手掛けるレバレジーズ(東京)が昨年11月、企業の中途採用担当者330人を対象に調査したところ、半数が「精神疾患を抱える若者から応募があった経験がある」と回答しました。そのうち「新型コロナウイルス禍を経て、精神疾患を抱える若者からの応募割合が増加したと感じる」と回答した会社は75・7%に上りました。

 

「法定雇用率」の制度変更も採用を促している

さらに同調査では、半数以上が精神疾患を抱える若者の採用要件を緩和していることも判明しました。理由として、46.6%が「早急な人員確保を行う必要があったから」と回答し、若年層の人手不足が背景にあることが浮き彫りになりました。

 

障がい者雇用促進法により、企業には従業員に占める障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。障がい者手帳を持っている患者が対象で、平成30年4月から、身体障がい者、知的障がい者に精神障がい者が追加されました。この制度変更も、精神疾患のある若者の採用を促しています。

 

特性理解、貴重な戦力に

課題は大きいです。レバレジーズの担当者は「精神疾患を抱えていても、外見ではわかりにくく、どこまでどんな仕事ができるのか見極めが難しい。体調も不安定な事例が多い。雇用側の理解が及ばず、職場への定着率は身体障がい者より低い」と話します。

 

それでも、企業が精神障がい者を健常者と同様に雇用する利点はあります。発達障がいの人はコミュニケーションが苦手な場合でも、集中力に優れていることがあります。そうした視点から人材活用を模索する企業があります。

 

日揮ホールディングス特例子会社で、IT技術を軸に業務支援サービスを行う日揮パラレルテクノロジーズ(横浜市)は「障がいの有無にかかわらず、全ての人が対等に働ける社会の実現」をミッション(使命)として掲げ、令和3年1月に設立されました。20~40代の社員37人のうち34人が障がい者で、大半が精神障がい者です(今年6月下旬現在)。

 

採用に際しては、インターンでIT技術の基礎があるかを判断したうえで、最終面接で「障がいについての自己理解、障がいの特性が出たときに自己対処できるか」を見ます。

採用されると、在宅勤務を基本に、自由な時間に働けます。職場は「1人1プロジェクト」でチームでの仕事はせず、人間関係の摩擦が生じにくい環境をつくっています。心理的負担をかけないように「重要だが、緊急ではない仕事」を任せてせかさないようにしています。自身も生まれつき両腕に障がいがある阿渡(あわたり)健太社長(37)は「環境を整備することで、障がい者が活躍できるという手応えを感じている」と話します。

 

得意分野で活躍する〝スペシャリスト〟を育てる

一方、「障がいは個性」を掲げ、健常者と同じ職場で障がい者の特性を生かそうとしているのが、人材派遣事業などを行うマーキュリー(東京)です。約110人(平均年齢44歳)の障がい者を雇用し、大半が精神障がい者です。今年3月に「パーソナリティ推進部」を設置し、それぞれの病気や症状をみながら仕事を支えています。

 

6月1日には「マーキュリー農活部」を設立しました。千葉県木更津市にある農園を借りて、健常者と障がい者がともに野菜や米の無農薬農法に取り組むことで、一体感の醸成や健康促進などを目指しています。同社の福元直樹・管理本部副本部長は「障がい者は貴重な戦力。もっと能力を生かせるようにしていくことが人材サービス会社の使命」と語ります。

 

東京都立大の山下真裕子教授(精神看護学)は「精神疾患は比較的早期に適切な治療をすることにより、就労できるほど回復することが多くなった。本人が疾患・障がいを自覚し、企業が特性を理解することが重要です。そのうえで、何でもできる〝ゼネラリスト〟ではなく、得意分野で活躍する〝スペシャリスト〟を育てることで、企業の生産性も上がる」と指摘します。(牛島要平)

精神疾患とは

精神疾患は、心や脳の働きに影響を及ぼし、感情や思考、行動に異常をきたす病気の総称です。代表的なものには、鬱病、統合失調症、双極性障がい、強迫性障がい、パニック障がい、発達障がいなどがあります。これらの病気は、本人の生活や社会活動に大きな影響を及ぼすことがありますが、適切な治療やサポートを受けることで、症状を管理し、社会復帰や生活の質を向上させることが可能です。

 

精神疾患の種類と特徴

鬱病

鬱病は、持続的な抑うつ気分や興味・喜びの喪失を特徴とする病気です。身体的な症状として、食欲不振や睡眠障がい、倦怠感などが現れることがあります。社会的な孤立や仕事のパフォーマンス低下を引き起こすことも少なくありません。

 

統合失調症

統合失調症は、現実と非現実の区別がつかなくなる幻覚や妄想、思考の混乱などを特徴とする病気です。発症は遺伝的要因や環境的要因が関与しているとされ、治療には抗精神病薬や心理療法が用いられます。

 

双極性障がい

双極性障がいは、鬱状態と躁状態が交互に現れる病気です。躁状態では異常な高揚感や活動の増加が見られ、鬱状態では重度の抑うつが現れます。治療には気分安定薬や抗うつ薬が使用されます。

 

強迫性障がい

強迫性障がいは、強迫観念(不合理な考え)や強迫行為(繰り返し行う行動)を特徴とする病気です。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすことが多く、治療には認知行動療法や薬物療法が用いられます。

 

パニック障がい

パニック障がいは、突然の強い恐怖感や不安感を伴うパニック発作を繰り返す病気です。発作時には心拍数の増加や息切れ、めまいなどの身体症状が現れます。治療には認知行動療法や抗不安薬が使用されます。

 

精神疾患の原因と治療

原因

精神疾患の原因は複雑で、遺伝的要因、脳の構造や機能の異常、ストレスやトラウマ、環境要因などが関与しています。これらの要因が組み合わさって発症すると考えられています。

 

治療

精神疾患の治療には、薬物療法と心理療法が主に用いられます。薬物療法では、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬などが使用され、症状の緩和を図ります。心理療法では、認知行動療法やカウンセリングが行われ、患者が自分の考えや行動を理解し、適切に対処する方法を学びます。また、家族や友人のサポートも重要です。

 

社会的な理解と支援

精神疾患を抱える人々が社会で生きやすくするためには、社会全体の理解と支援が不可欠です。偏見や差別をなくし、精神疾患についての正しい知識を広めることが求められます。また、企業や学校などでのサポート体制の整備も重要です。例えば、柔軟な勤務時間やリモートワークの導入、専門家による相談体制の設置などが効果的です。

まとめ

精神疾患は誰にでも起こりうる病気であり、適切な治療と支援を受けることで、社会復帰や生活の質の向上が期待できます。社会全体で精神疾患に対する理解を深め、支援体制を整えることが重要です。精神疾患を抱える人々が安心して暮らせる社会を目指しましょう。

 

参考

「障がいは個性」、健常者と共に働ける職場へ 精神疾患がある若者を人材活用する企業の狙い(産経新聞) #Yahooニュース

 


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