2024.07.22

大人の発達障がいとは?特性・困りごと・対応法を知ろう!

生活や仕事の中で「ほかの人はうまくできることが、自分はできない」と悩むことはありませんか?

うまくいかない原因が分からなかったり、気をつけているのに困りごとが続いたりする場合、発達障がいの特性が関係しているかもしれません。

発達障がいは子どもの頃に診断には至らず、大人になってから診断を受ける場合もあります。

この記事では、大人の発達障がいの特徴や仕事での困りごと、「発達障がいかもしれない」と思ったときの仕事の対処法や、相談できる機関などを紹介します。

 

大人の発達障がいとは?

発達障がいとは、生まれつきの脳機能の偏りによる障がいです。得意・不得意や行動の特性などによって、人間関係や仕事で困りごとが生じることがあります。

 

一般的には、発達期(幼児から学齢くらいまでの間)に特性があらわれます。しかし特性のあらわれ方や程度、環境などは人により異なるため、子どもの頃は発達障がいがあることに気づかれない場合もあります。

 

例えば、ADHD(注意欠如多動症)の方は「不注意」「衝動性が強い」などの特性がみられますが、子どもの頃は周りの人の理解やフォローがあることで「困りごと」にならない場合もあります。

 

仕事で困りごとが生じて発覚

しかし、社会に出て仕事を始めると「目の前の仕事に集中することが難しく、その結果としてケアレスミスが多くなってしまう」「仕事を頼まれたときに衝動的に取りかかることが多く、その結果タスク管理がうまくいかなくなる」などの困りごとが生じることがあります。困りごとによるストレスから心身に負担が生じ、医療機関を受診してみたところ、その背景に発達障がいがあることが分かる場合があります。

 

このように、大人になってから発達障がいであることが分かる場合を「大人の発達障がい」ということがあります。

主な発達障がいには、「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD・SLD(限局性学習症)※」の3種類があり、これらは重複することがあります。

※学習障がいは現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障がい)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

 

大人の発達障がいの特徴と仕事で困ること

発達障がいのある方の困りごとは、特性と環境が合わないことから生じます。このため同じ特性があっても、環境によっては困りごとが起こらない場合もあれば、起きる場合もあります。

なお、ここでいう「環境」とは、バリアフリーなどの物理的な環境面だけでなく、仕事内容や仕事の進め方、人間関係や職場のルールなどさまざまな意味を含んでいます。

 

また、発達障がいの種類によっても困りごとの傾向が異なります。ただし特性のあらわれ方は人により異なるため、同じ種類の発達障がいのある方であっても、正反対の特性があらわれる場合もあります。例えば、感覚過敏といっても人によって聴覚が過敏な方もいれば、視覚が過敏な方もいます。また、過敏ではなく鈍麻(どんま)といって、感覚を感じづらい方もいます。

次に、発達障がいの特性と、仕事において起きやすい困りごとの例を挙げます。

 

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と困りごとの例

ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期からみられ、日常生活に困難を生じる発達障がいの一つです。

知的障がい(知的発達症)を伴うこともあります。幼少期に気づかれることが多いといわれていますが、症状のあらわれ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから社会生活において困難さを感じ、診断を受ける場合もあります。

仕事をする中で感じる困難さの例としては、次のようなものが挙げられます。

  • あいまいな指示の理解が難しい
  • 急な予定変更があると混乱する
  • 会社の「暗黙のルール」を理解することが難しい

 

ADHD(注意欠如多動症)の特徴と困りごとの例

ADHD(注意欠如多動症)は「集中を持続させることが難しい(不注意)」「落ち着きがない(多動性・衝動性)」などの特性がみられ、仕事では次のような困りごとが起こる場合があります。

  • 仕事のタスク管理が難しい
  • 整理整頓が苦手で、大事な書類を紛失する
  • カッとなりやすく、職場での人間関係が険悪になる

 

LD・SLD(限局性学習症)の特徴と困りごとの例

LD・SLD(限局性学習症)は、知的発達の遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」などの特定の学習が極端に困難な状態にあることです。仕事の場面では、次のような困りごとが起きることがあります。

  • マニュアルや指示書を読むことが難しい
  • お釣りの計算やお金の管理が苦手
  • 会議の内容や上司の指示を聞きながらメモを取るのが苦手

 

二次障がいにつながることもある

発達障がいの特性から生じる困りごとのストレス反応が高じて発症するうつ病や不安症などの疾患は、「二次障がい」と呼ばれます。うつ病や不安症などの症状があり医療機関を受診すると、発達障がいであることが分かる場合もあります。

二次障がいの中には、治療に時間がかかる疾患もあります。発達障がいの困りごとに適切に対処していくことは、二次障がいを防ぐ意味でも重要です。

発達障がいかもしれないと思ったときの仕事の対処法は?

仕事で困りごとが続き「自分は発達障がいかもしれない」と感じている方もいるかもしれません。このような場合は、以下のような対処法を活用できる可能性があります。

 

ASD(自閉スペクトラム症)の困りごとと対応方法の例

  • あいまいな表現が苦手な場合

「できるだけ早く」などのあいまいな表現だと「できるだけ」の基準が分からず、困ってしまう場合があります。また、「もうちょっと早くできますか?」と言われたときも、「もうちょっと」が5分なのか1時間なのかといったことがつかめずに判断ができないという場合もあります。

 

その場合の対処法としては、いつまでなのかを明確に伝えてもらうよう、周囲の方たちにお願いしておくといいでしょう。それでも理解できないときは、相手や周囲の人に「◯◯日までに〇〇をやればいいでしょうか?」など聞いて確認してみましょう。また、口頭での指示の理解が苦手な方は、口頭ではなく、メールなど文章で指示をもらうと理解がしやすくなるかもしれません。

その他の困りごとや対処方法の例については、以下の記事でも解説しています。

関連ページ

ASD(自閉スペクトラム症)|向いている仕事や適職とは?事例もご紹介

感覚過敏とは?大人に当てはまるチェックリストと嗅覚・聴覚・視覚など種類ごとの対策を解説

聴覚過敏の症状や原因を解説|大人が仕事中にできる対処法も

 

ADHD(注意欠如多動症)の困りごとと対応方法の例

  • タスク管理が苦手な場合

複数の作業を管理することが苦手な場合は、優先順位を確認し、取りかかる順番を決めて一つずつ確実に進めます。順番を整理して取りかかれば、混乱せず落ち着いて作業できるでしょう。もし、優先順位の付け方などで迷ったら上司に相談してみましょう。

 

また、頭の中で処理するのではなく、TODOリストなどを用いて視覚化するなど、自分にあったツールを活用すると整理しやすくなるでしょう。

その他の困りごとや対処方法の例については、以下の記事でも解説しています。

関連ページ

ADHD(注意欠如多動症)と仕事|無理なく続けるコツとは?就職や適職探しも【専門家監修】

【ADHD(注意欠如多動症)】向いている仕事や職業とは?適職探しに悩んでいる方へ

【ADHD(注意欠如多動症)の悩み】頭の中がごちゃごちゃする場面と対処法とは?

 

LD・SLD(限局性学習症)の困りごとと対応方法の例

  • 会議の内容や上司の話を聞きながらメモを取ることが苦手

メモを取ることが苦手なことをあらかじめ説明し、上司や同僚に了承を得たうえで、ボイスレコーダーや音声入力などのツールを利用して記録します。また、手順の説明を受ける場合は動画を撮影する方法もあります。

 

周囲の方ができること

職場に「発達障がいなのかもしれない」と思われる人がいる場合は、まずその人の特性について知ることが重要です。本人が未診断の場合でも、困っている様子があれば「何に困っているのか」を本人に尋ね、一緒に対策を考えてみましょう。

 

発達障がいの診断

自分が「大人の発達障がい」かもしれないと思う場合は、適切な対処をおこなうためにも、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。

発達障がいの診断は、精神科や心療内科、発達障がい専門外来などでおこなわれています。ただし、子どもの診察のみ受け付けていて大人の診察はしていない精神科や心療内科もあるため、事前にWebサイトなどで確認しておきましょう。

 

自治体によっては、発達障がいの診断をおこなっている医療機関のリストを公開しています。

また、診断を受けるかどうかで悩んでいる方もいるかもしれません。以下の記事では、診断を受けるにあたって気になる点や、もし発達障がいと診断されたらどうすればいいのかなどについて解説しています。ぜひ参考にしてください。

関連ページ

大人の発達障がいかも?診断を受けるべきか悩む方へ|受診先や受けられる支援も解説

 

発達障がいの診断・検査の流れ

発達障がいは生まれつきの脳機能の偏りであるため、診断では生育歴が重要な情報となります。

問診では生育歴について詳しい聞き取りがおこなわれます。そのため、現在の困りごとだけではなく、幼少時の様子やこれまでの学業や仕事での状況、既往歴などについてメモをとったものや資料(例:母子手帳や当時の連絡帳や通知表など)を持参するとよいでしょう。

また、必要に応じて以下の検査が行われる場合もあります。

  • 発達障がいに関するスクリーニング検査
  • 心理検査(知能検査など)
  • 脳波検査など

現在の心身症状のほか、問診や検査から得られた情報を国際的な診断基準である「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」に照らし合わせ、総合的に判断して診断がおこなわれます。

 

発達障がいの治療

発達障がいの脳機能の偏りに対する根本的な治療法は、現在までのところ見つかっていません。このため、困りごとに対する自己対処を身につけたり、自分に合う環境調整(※)をしたりすることで、困りごとに対処します。

(※)環境調整とは、発達障がいのある方の特性や困りごとに合わせさまざまな条件を整えていくことで、本人の感じる困りごとを解消したり減らしたりすることを指します。例えば、口頭指示の理解が苦手な人には、メモやメールでの指示にする、といったことも環境調整のひとつです。

 

ほかに認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング(SST)などが併用されることもあります。

それでも効果がみられない場合、薬物療法をおこなうことがあります。例えば、ADHD(注意欠如多動症)の薬物療法では症状を軽減する効果が期待できる薬が使われる場合があります。

 

大人の発達障がいの相談先

発達障がいによる困りごとを減らすには、自分の特性を知り、特性への対処と環境調整をおこなうことが大切です。一人では対処が難しいと感じる場合は、以下の支援機関への相談も検討してみるといいでしょう。

 

発達障がい者支援センター

発達障がいのある方の生活全般と仕事など幅広い相談を受け付けています。必要に応じて、関係機関とも連携してサポートをおこないます。また、医療機関の情報を教えてくれる場合もあります。未診断の方も相談できますので、「どの医療機関で受診したらいいのだろう」など迷ったときはぜひ相談してみましょう。

 

障がい者就業・生活支援センター

障がいのある方の生活と仕事の分野を一体的に支援する機関です。職場での困りごとについて支援をおこなうほか、生活習慣の構築や健康管理などの日常生活における自己管理についても助言をおこなっています。利用するには、原則として発達障がいやうつ病などの診断書や障がい者手帳などが必要になりますが、利用前の相談は未診断の方でもできる場合があります。事前に障がい者就業・生活支援センターにお問い合わせてみましょう。

 

就労移行支援事業所

障がいのある方を対象に、就職に向けて必要な知識や能力の習得、自己理解を深め適職を見つけるための支援などをおこなっています。また、就職活動の支援だけではなく、就職後も長く働き続けられるよう定着支援も提供しています。利用するには、原則として発達障がいやうつ病などの診断書や障がい者手帳などが必要になりますが、利用前の相談は未診断の方でもできる場合があります。事前に就労移行支援事業所にお問い合わせてみましょう。

まとめ

発達障がいは生まれつきの脳機能の偏りによるものであり、その特性は個人によって大きく異なります。大人になってから発達障がいの診断を受けることは決して珍しいことではありません。自分の特性を理解し、適切な対処法を実践することで、生活や仕事の中での困りごとを軽減することが可能です。

もし一人での対処が難しいと感じた場合は、発達障がい者支援センターや障がい者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所など、専門の支援機関に相談することをお勧めします。自分に合ったサポートを受けることで、より良い生活と充実した仕事を実現する一歩を踏み出してみましょう。

 

参考

大人の発達障がいとは?特徴や仕事の対処法、診断の流れや相談先も紹介|LITALICOワークス

 


凸凹村や凸凹村各SNSでは、

障がいに関する情報を随時発信しています。

気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!

 

凸凹村ポータルサイト

 

凸凹村Facebook

凸凹村 X

凸凹村 Instagram

凸凹村 TikTok


 

関連情報

みんなの障がいへ掲載希望の⽅

みんなの障がいについて、詳しく知りたい方は、
まずはお気軽に資料請求・ご連絡ください。

施設掲載に関するご案内