2024.07.17

発達障がいのナレーターが実践する即効ライフハック 仕事と生活の質を向上させる方法とは?

発達障がい・グレーゾーンかもしれない人の仕事術(中村 郁 著、かんき出版)の著者は、ナレーター/声優として活動する人物。発達障がいの当事者でもあり、前著発達障がいで「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法(秀和システム)をご紹介したこともあるので、覚えておられる方もいらっしゃるかもしれません。

発達障がいと聞くと戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、決して珍しいものではなく、発達障がいの診断がおりる日本人は急増しているそう。文部科学省の調査では、日本人小学生の約10人に1人が発達障がいであることがわかっており、大人になってから発達障がいであることがわかるケースも増えているのだとか。

 

発達障がいを持つ人は能力に凹凸がある

なお、発達障がいとしてはおもに3つが挙げられるといいます。まずは、コミュニケーションや対人関係に困難を抱え、強いこだわりがあることを特徴とする「自閉症スペクトラム症」(ASD)。次に、注意力散漫だったり、多動・衝動性があったりする「注意欠如・多動症」(ADHD)。そして、知的障がいを持たなくても、文字の読み書きや計算などの特定の能力に困難を抱える「学習障がい/限局性学習症」(LD/SLD)。

いずれにしても発達障がいを持つ人は能力に凹凸があり、できることとできないことの差が激しい傾向にあるようです。では、そんな人たちがビジネスの世界で生きていくためにはなにが必要なのでしょうか?

 

私たちに必要なのは、環境を調整することです。

発達障がいの特性は、使い方を間違えると大暴走し、周りの人に迷惑をかけてしまうことがありますが、うまく使いこなすことができれば、他の人にはできないようなことを達成することもできます。

私たちの特性をうまく使いこなすために必要なこと。それは、まず自分を知り、理解し、認めることです。(「まえがき」より)

つまり本書において著者は、発達障がいを抱えながらもよりよく働くための考え方や姿勢、方策を紹介しているわけです。きょうはそのなかから第2章「環境を整えるライフハック」に注目してみたいと思います。

 

書類整理は年に4回と決める

書類は気づかぬうちに増えていくもの。そこで著者は、重要な書類は「専用の引き出し」にすぐ入れ、提出しなければならない書類はよく見える場所に貼り出しているそうです。そうなると「さほど重要ではない書類」をどう整理するかが気になるところですが、こちらに関しては、紙袋を活用すればなんとかできるのだといいます。

私は、仕事関係の書類、子供の学校関係の書類、習い事関係の書類、郵便物など、カテゴリー別に分けて、別々の袋に入れています。そして、どこに分類したらいいのかわからないものは、「分類できないもの」として別の袋に入れます。(62ページより)

 

とりあえず3カ月はそのまま入れ続ける

書類がたまってしまう原因としてよく見られるのが、「いまは必要ないけれど、のちのち必要になるかもしれない」「目を通しはしたけれど、捨ててしまうのはなんとなく不安だ」「思い出がある」などの“妙な感情”。そこで、そういった感情を紙袋に預けてしまうわけです。ポイントは、とりあえず3カ月はそのまま入れ続けること。

そして最後の書類を入れてから3カ月が経ち季節が変わる頃、紙袋の中身を改めて確認してほしいのです。

ほとんどの書類は、もうずいぶん前のものになっているはずです。3カ月間、一度も必要にならなかったら、何の躊躇もなく、ごっそり捨てることができるでしょう。(63ページより)

日常的に、細かい書類整理や分類をすることは、著者のようにADHDを持つ人にとってはかなりのストレスであるようです。その時間を手放して、好きなことややるべきことに時間を使うためにも、3カ月に一度、ごっそり捨てられるタイミングで書類整理をするべきだということです。(62ページより)

たったひとつのクリアファイル術

カバンのなかにぜひ入れておいてほしいものとして、著者はクリアファイルを挙げています。自身もクリアファイルに、「その日必要な書類」「近々必要になる書類」「公共料金の振込用紙」など、肌身離さず持っていたほうがいいものをすべて入れているのだそう。

外出先での空き時間などにクリアファイルのなかを見なおせば、公共料金の支払い忘れなども防ぐことが可能。また、大切な書類の内容を見返したり、仕事に備えて下準備をしたりすることもできるわけです。

1日の中で書類をもらうタイミングは数限りなく訪れます。その都度、クリアファイルへさっと入れていきます。カテゴリーごとに細かく分ける必要はありません。さっと入れる。これが最大のポイントなのです。

 

とにかくクリアファイルに入れる

書類を入れるものとしては、ジッパー式のものや、パチンと蓋を閉められるようなファイルもありますが、これは避けましょう。なぜなら書類を渡されるタイミングはさまざまだからです。(64~65ページより)

ジッパーや蓋をいちいち開けることすら難しいシチュエーションがはあるもの。そんなときには、カバンのなかに直接書類を入れてしまうかもしれません。しかし、そうなってしまうと、書類整理は崩壊してしまうことに。そうした事態を避けるために、シンプルなクリアファイルが役立つわけです。

だからこそ、書類をなくさないためには、とにかくクリアファイルに入れてひとつにまとめるべき。そして帰宅後は、クリアファイル内にある「今後あまり使わない書類」を、上述した紙袋に移しておけばいいのです。(64ページより)

 

デスクトップぐちゃぐちゃ回避術

パソコンのデスクトップがファイルやアプリでとっ散らかっていると、当然のことながら作業効率が落ち、パフォーマンスレベルは低下していきます。しかし発達障がいの人には、片づけが苦手なタイプが多いもの。しかもそれは、リアルにおいてもデジタルにおいても共通することでもあるでしょう。

そこで著者は、デスクトップ上に「とりあえずいったん入れておくフォルダ」をつくることにしたそう。フォルダ名は「A、B、C、D」と適当につけ、カテゴリー別に分けることもなく、とにかく普段あまり使わないファイルやアプリをそこにまとめることにしたというのです。

 

フォルダを最低でも4つは作る

大事なのは、フォルダを最低でも4つは作ることです。すべてのファイルを1つのフォルダに入れてしまうと確かに画面はスッキリしますが、必要なときに必要なものが見つからず、やはり作業効率が落ちてしまいます。(77ページより)

4つのフォルダに分けておけば、視覚的な探しやすさが段違い。著者は、自身の経験からそのように述べています。(76ページより)

発達障がいの人は、人よりもできないことが多いかもしれません。しかし大切なのは、できないことを克服しようとすることではなく、とにかく工夫をすること。そうした考え方に基づく本書は、発達障がいを持ちながら働いている方の大きな支えになってくれるかもしれません。(Source:かんき出版)

 

発達障がいとは?

発達障がい(Developmental Disorders)は、神経発達の過程で生じる障がい群を指します。これらの障がいは、個々の脳の発達に関連しており、注意力、学習能力、行動制御、社会的な相互作用などの様々な領域に影響を及ぼします。発達障がいは生涯にわたって持続する可能性があり、治療や支援が必要な場合があります。主な発達障がいには以下のようなものがあります。

 

自閉症スペクトラム症(ASD)

特性:コミュニケーションや社会的相互作用に困難を持ち、狭い興味・強い興味を示すことがあります。

亜型:重度自閉症からアスペルガー症候群まで幅広い。

特性の例:相手の感情や意図を理解することが難しい、繰り返し行動や言動を示すことがある。

 

注意欠如・多動症(ADHD)

特性:注意力の欠如、多動性、衝動性の問題が中心。集中力の維持や計画的な行動が難しいことがあります。

亜型:注意欠如型、多動・衝動性型、混合型があり、症状の強さや特性に個人差があります。

特性の例:特定の作業に集中できない、物事を組織立てて進めることが難しい、即興的な行動が多い。

 

学習障がい/限局性学習症(LD/SLD)

 

特性:特定の学習領域(読み書き、計算、記憶など)において困難を抱える状態。知的能力自体には問題がないが、学習の進展に遅れが生じることがあります。

亜型:読解障がい(ディスレクシア)、計算障がい(ディスカルキュリア)、記憶障がいなどがあります。

特性の例:読むことが苦手で文脈理解が難しい、数学の概念や計算が理解しづらい、長期的な記憶や情報の整理が難しい。

 

言語障がい(言語発達障がい)

特性:言語の理解や表現に問題があり、言葉の使用や文法的な構造の理解が難しいことがあります。

特性の例:言葉の遅れがある、文法的な正確さが欠ける、会話や文章の理解が困難。

 

発達性協調運動障がい(DCD)

特性:運動の調整や運動技能の獲得に問題を抱える障がいで、手の精密な動作や筆記、スポーツなどで困難を示すことがあります。

特性の例:器具を使った精密な操作が難しい、スポーツや運動競技での技術的なスキルが身につきにくい。

 

感覚統合処理障がい(SPD)

特性:感覚刺激(視覚、聴覚、触覚など)の処理に問題があり、過敏症や感覚過少の状態になることがあります。

特性の例:特定の音に敏感で集中が途切れる、触覚刺激に対して過剰な反応を示す、視覚刺激に過敏で環境の変化に敏感。

 

これらの障がいは、個々の能力や社会的な環境との相互作用によって、日常生活や教育、就労において異なる影響を及ぼします。早期の診断と適切な支援が重要であり、個別に合わせた治療や教育プランが必要です。また、発達障がいの当事者やその家族、支援者は、障がいに関する正確な情報や理解を深めることで、社会参加や生活の質の向上を図ることができます。

啓発活動や包括的な支援体制の整備も、発達障がいの理解と受け入れを促進するために重要です。発達障がいに関する理解が進むにつれて、個々の多様性を尊重し、適切な支援を提供する社会の構築が求められています。発達障がいは一般に知られる身体的な障がいと異なり、見た目や外見からは判断しにくいことが多く、その理解と支援が必要不可欠です。

まとめ

発達障がいを抱える人々は、自らの特性を理解し、環境を調整することで、他の人にはできない成果を上げることができるかもしれません。たとえば、著者が実践しているような具体的なライフハックがその一例です。

日常の中での書類整理やデスクトップの整理法は、単なる整理術にとどまらず、作業効率の向上やストレス軽減にも寄与します。これらの実践を通じて、彼らは自分の能力を最大限に活かし、生活の質を飛躍的に向上させることができるのです。著者のような工夫と実践が、日々の生活をより豊かにする鍵となるのです。

 

参考

【毎日書評】発達障がいのナレーターが働きながら実践している「すぐに環境を整えるライフハック」(ライフハッカー・ジャパン) #Yahooニュース

 


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