2024.05.27

厚生年金加入者のための障がい厚生年金ガイド:受給条件と金額をわかりやすく解説!

不慮の事故や突然の病気などで障がいが残ってしまった方の中には、様々な疑問を抱えている方が多いでしょう。

障がい者が受け取れる厚生年金とは、不慮の病気やケガで一定の障がいが残った際に、初診日時点で厚生年金に加入している場合に支給されるものです。

通常の厚生年金(老齢厚生年金)は原則として65歳から支給開始ですが、障がい厚生年金は20歳に達していれば、障がい認定日の翌月分から受け取ることができます。このことは、一般的にも意外と知られていないことです。

 

障がい等級1級・2級・3級の方が「障がい厚生年金」を受給できる

どの年金を受け取れるのか以下にわかりやすく示すと、障がい等級1級・2級・3級の方が「障がい厚生年金」を受給できます。また、3級より軽い場合には「障がい手当金(一時金)」を受け取れる可能性があります(ただし一回のみ)。

 

障がい厚生年金を受給するための条件

障がい厚生年金を受給するための条件としては、初診日時点で厚生年金の被保険者であること、障がい認定日において一定の障がい状態に該当すること、そして保険料納付要件を満たしていることが必要です。

具体的には、初診日の前日において初診日の属する月の前々月までに被保険者期間のうち3分の2以上の期間、保険料を納付していること、または一定の免除期間があることが条件です。

出典:障がい者が受け取れる厚生年金は?加入者が知るべき年金種別と受給条件

 

判定は非常に複雑

しかしながら、「障がい厚生年金」を受給するための要件を満たしているかの判定は非常に複雑です。さらに、受給手続きも煩雑で時間がかかるため、事前に正しく理解しておかなければ、受給タイミングが遅れて損をしてしまう可能性があります。

そこでこの記事では、厚生年金に加入していた方が受け取れる年金の種類や金額について、等級ごとにわかりやすく解説します。また、受給要件についても詳しく説明し、判断して申請できるようサポートします。

例えば、以下のフローチャートを利用すれば、自分が厚生障がい年金を受け取れるのかを簡単に判断できるでしょう。

「自分はどの年金がいくらもらえるのだろうか?」「受け取る条件を満たしているのか?」という疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みいただき、ご参考にしてください。

 

障がい者が受け取れる厚生年金「厚生障がい年金」とは

障がい者の方は、厚生年金に加入している間(=厚生年金の被保険者である間)に病気やケガなどで1級・2級・3級に該当する障がい認定された場合に、厚生年金を受け取ることができます。これを「厚生障がい年金」といいます。

 

障がい厚生年金の対象となる病気・ケガの例

外部障がい  

眼、聴覚、音声または言語機能、肢体(手足など)の障がいなど

精神障がい

統合失調症、双極性障がい、認知障がい、てんかん、知的障がい、発達障がいなど

内部障がい

呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど

 

障がい等級1級・2級・3級の目安

1級  

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない状態

身の回りのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)・入院や在宅介護を必要とし活動の範囲がベッドの周辺に限られる方

2級

必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても日常生活は極めて困難で、労働による収入を得ることができない状態

家庭内で軽食を作るなど軽い活動はできてもそれ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)・入院や在宅で活動の範囲が病院内・家屋内に限定される方

3級

労働が著しい制限を受けるまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする状態

日常生活にはほとんど支障はないが労働には制限がある方

※障がい者手帳の等級と障がい年金の等級は異なります。

 

通常の厚生年金(老齢厚生年金)は原則として65歳から支給開始ですが、障がい厚生年金は20歳に達していれば、障がい認定日の翌月分から受け取ることができます。

ただし、初診日に厚生年金に加入していること、一定期間以上の加入期間があること、国民年金の保険料を一定期間以上しっかり払っていることなどが条件となります。

具体的には、以下の全てを満たしている場合に、厚生障がい年金を受け取ることができます。

 

障がい厚生年金の受給要件

障がいの原因となった病気やケガの初診日

初診日に、厚生年金に加入していた

障がいの状態

障がい認定日に、障がい等級表に定める1級・2級・3級のいずれかに該当している

(障がい認定日に障がいの状態が軽くても、その後重くなったときは、障がい厚生年金を受け取ることができる可能性があります)

国民年金などの納付済期間

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること

ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

一方で、初診日に厚生年金に加入していなかった方や、障がい等級が4級以上の方、保険料の納付済期間が足りていない場合には、残念ながら厚生障がい年金がもらえません。

厚生年金加入中に障がい認定された方がもらえる年金の一覧

ここからは、厚生年金加入中に病気やケガなどで障がいが残った方がもらえる年金について、さらに詳しく解説していきます。1級・2級の方と、3級の方は、もらえる年金の構成が違うため、注意が必要です。

出典:障がい者が受け取れる厚生年金は?加入者が知るべき年金種別と受給条件

※報酬比例額の計算において、被保険者期間300カ月みなし措置あり

※3級より軽い場合に障がい手当金(一時金)を受けられる場合あり

※参考:厚生労働省「[年金制度の仕組みと考え方]第12 障がい年金」

 

障がい等級1級・2級の方:障がい基礎年金+障がい厚生年金がもらえる

障がい等級が1級・2級の方は、障がい基礎年金と障がい厚生年金の両方がもらえます。障がい基礎年金とは、障がいの原因となった病気やケガの初診日が「国民年金に加入している間」(または20歳前、もしくは60歳以上65歳未満)の場合に支給されます。

 

障がい基礎年金の受給要件

障がいの原因となった病気やケガの初診日

以下のどれかに該当している

(1)初診日に、国民年金に加入していた

(2)初診日に、20歳前だった

(3)初診日に、60歳以上65歳未満だった

障がいの状態

障がい認定日に、障がい等級表に定める1級・2級のいずれかに該当している

国民年金などの納付済期間

初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしている

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

障がい等級が1級・2級の方は、障がい厚生年金だけでなく基礎年金も同時にもらえるという手厚い制度となっているので、同時に手続きを進めましょう。

 

障がい等級3級の方:障がい厚生年金がもらえる

障がい等級3級の方は、障がい基礎年金はもらえませんが、障がい厚生年金のみが支給されます。

なお、3級の障がい厚生年金には「配偶者加給年金」は加算されないので注意しましょう。

 

障がい等級3級よりも軽い障がいの方:障がい手当金(一時金)がもらえる

厚生年金に加入していた場合、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障がい厚生年金を受けるよりも軽い障がいが残ったときには、障がい手当金(一時金)が支給されます。

 

障がい手当金の受給要件

障がいの原因となった病気やケガの初診日

障がいの原因となった病気やケガの初診日

初診日に被保険者であったこと

病気やケガの状態

・初診日から起算して5年を経過する日までに、傷病が治っている(症状が固定している)こと

・治った日に、政令で定める程度の障がいの状態(※)にあること

国民年金などの納付済期間

初診日前日において、初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、その被保険者期間のうち保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること

ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

 

政令で定める程度の障がいの状態とは、以下の状態です。

  • 両眼の視力が0.6以下に減じたもの
  • 一眼の視力が0.1以下に減じたもの
  • 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  • 両眼による視野が二分の一以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの
  • 両眼の調節機能及び輻輳(ふくそう)機能に著しい障がいを残すもの
  • 一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
  • そしやく又は言語の機能に障がいを残すもの
  • 鼻を欠損し、その機能に著しい障がいを残すもの
  • 脊柱の機能に障がいを残すもの
  • 一上肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障がいを残すもの
  • 一下肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障がいを残すもの
  • 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
  • 長管状骨に著しい転位変形を残すもの
  • 一上肢の二指以上を失つたもの
  • 一上肢のひとさし指を失つたもの
  • 一上肢の三指以上の用を廃したもの
  • ひとさし指を併せ一上肢の二指の用を廃したもの
  • 一上肢のおや指の用を廃したもの
  • 一下肢の第一趾又は他の四趾以上を失つたもの
  • 一下肢の五趾の用を廃したもの
  • 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障がいを残すもの
  • 精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障がいを残すもの

「障がい等級1級~3級の状態ではないから年金対象外」と思わず、障がい手当金(一時金)の対象かどうか今一度確認してみましょう。

まとめ

障がい厚生年金を受給するためには、さまざまな条件や手続きが必要で、その内容は非常に複雑です。しかし、正しい情報を事前に把握しておくことで、受給タイミングを逃さず、安心して申請を進めることができます。この記事を参考に、ご自身の状況に応じた年金の受給条件や手続きをしっかりと確認し、必要なサポートを受けてください。困ったときには専門家に相談することも検討しながら、確実に権利を守っていきましょう。

 

参考

障がい者が受け取れる厚生年金は?加入者が知るべき年金種別と受給条件


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