2024.09.12

ADHDと睡眠障がいの関係とは?症状悪化を防ぐための対処法

ADHD(注意欠陥・多動性障がい)は、注意力の不足や多動性、衝動性を特徴とする発達障がいですが、ADHDを持つ多くの人々が、同時に睡眠障がいにも悩んでいることがわかっています。睡眠は、心身の健康にとって非常に重要であり、睡眠不足や質の低い睡眠は、注意力や集中力をさらに低下させ、ADHDの症状を悪化させる可能性があります。

この記事では、ADHDと睡眠障がいの関係性、そしてそれに対処するための方法について詳しく説明します。

 

ADHDと睡眠障がいの共通点

ADHDと睡眠障がいは、脳の同じ部分が関係していると考えられています。脳の前頭前皮質は、注意や感情のコントロールに関与しており、ADHDを持つ人々は、この部分の機能が通常よりも低下していることが多いです。睡眠の調整にも同じ脳領域が関わっており、ADHDを持つ人々が睡眠に問題を抱えやすい理由の一つは、この相互作用にあります。

 

また、ADHDの症状の一つである過剰なエネルギーや衝動的な行動は、寝つきの悪さや深い睡眠に入ることの難しさに直結することが多いです。夜になっても頭が活発に動き続けてしまい、リラックスできず、結果として寝つけない状態が続きます。ADHDを持つ人々は、特に就寝前にリラックスすることが難しく、睡眠スケジュールの乱れを引き起こす傾向があります。

 

ADHDにおける主な睡眠障がいのタイプ

ADHDを持つ人々が経験する睡眠障がいには、いくつかのタイプがあります。以下にその主なものを紹介します。

 

入眠障がい(寝つきが悪い)

ADHDの人々に最もよく見られるのが入眠障がいです。寝ようとしても、頭の中で考え事が止まらず、なかなか眠りにつけないことがあります。これは、ADHDの特性である過剰な思考活動や感覚の過敏さが影響しており、脳がリラックス状態に移行することが難しいためです。

 

睡眠の維持が難しい(途中で目が覚める)

一度寝つけたとしても、ADHDを持つ人々は、夜中に何度も目を覚ますことが多いです。これは、深い睡眠に移行するのが難しいためで、浅い睡眠が続くことで、途中で目が覚めることが多くなります。特に、周囲の音や光に敏感であったり、ストレスを感じやすい場合、この傾向が強まります。

 

起床困難(朝起きられない)

ADHDを持つ人々は、朝早く起きるのが苦手なことも多いです。これは、夜中に十分な睡眠が取れないことに加えて、体内時計の調整が難しいことが原因です。結果として、朝起きる時間になっても眠気が残り、起床が困難になります。

 

睡眠相後退症候群

ADHDを持つ人々には、睡眠相後退症候群が見られることもあります。この症候群は、通常の寝る時間よりも大幅に遅れて眠るようになるもので、夜中まで眠れず、朝起きるのが非常に難しくなるという特徴があります。多くの場合、ADHDの人々は就寝時間が深夜1時や2時、さらにはそれ以降になることもあります。

 

ADHDと睡眠不足がもたらす影響

ADHDを持つ人々が十分な睡眠を取れないと、ADHDの症状が悪化することが多くなります。以下のような影響が考えられます。

 

注意力と集中力の低下

睡眠不足は、ADHDの最も顕著な特徴である注意力の低下をさらに悪化させます。集中力が続かず、仕事や学業においてのパフォーマンスが低下することが考えられます。さらに、短期記憶や問題解決能力にも影響を及ぼし、日常生活での課題が増えてしまいます。

 

感情の不安定さ

ADHDの人々は、感情のコントロールが難しいことがありますが、睡眠不足はこの問題をさらに深刻にします。イライラしやすくなったり、急に感情が爆発したりすることが増える可能性があります。感情の不安定さが原因で、人間関係におけるトラブルや仕事上での問題が発生しやすくなります。

 

衝動性の増加

睡眠不足により、衝動的な行動が増えることがあります。ADHDを持つ人々はもともと衝動的な行動が特徴ですが、睡眠不足によりその傾向が強まり、無計画な行動や過度のリスクを取るような行動を引き起こすことがあります。

 

身体的健康への影響

睡眠不足が続くことで、身体的な健康にも悪影響が現れます。免疫力の低下、体重増加、糖尿病や心血管疾患のリスク増加といった問題が発生する可能性があります。また、慢性的な疲労感により、日常生活の中でエネルギーが不足し、生活の質が低下することが考えられます。

 

ADHDによる睡眠障がいの原因

ADHDを持つ人々がなぜ睡眠障がいを抱えるのかについて、いくつかの原因が考えられています。

 

生理的な要因

ADHDの人々は、脳の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの分泌が不規則であることが知られています。これにより、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすく、就寝前にリラックスするのが難しい状態になることが考えられます。

 

外的要因

ADHDの人々は、外部からの刺激に対して敏感であるため、周囲の環境が睡眠に影響を与えることが多いです。例えば、騒音、光、温度といった要素が、寝つきや睡眠の質に悪影響を及ぼすことがあります。また、電子機器の使用も問題となり、就寝前にスマートフォンやパソコンを使い続けることで、脳が覚醒状態になりやすくなります。

 

ストレスや不安

ADHDを持つ人々は、日常生活でのストレスや不安感が強いことが多く、それが原因で寝つきが悪くなることがあります。仕事や学業、家庭内でのプレッシャーが原因で、夜遅くまで考え事をしてしまい、眠れなくなることが一般的です。

ADHDによる睡眠障がいへの対処法

ADHDと睡眠障がいに対処するためには、いくつかの方法が有効です。以下に、具体的な対策を紹介します。

 

睡眠環境の改善

まず、睡眠環境を整えることが重要です。以下のような方法で、ADHDを持つ人々がリラックスして眠れる環境を作り出すことができます。


  • 静かな寝室を作る

寝室は、できる限り静かで落ち着いた空間にすることが理想です。外部からの騒音を遮断するために、耳栓やホワイトノイズマシンを使用することが推奨されます。


  • 光を抑える

寝室の照明を暗くし、夜はできるだけ自然な光の少ない環境を作ることが重要です。


  • ブルーライトの除去

就寝前にスマートフォンやパソコンを使用することで、目がブルーライトに晒されると、脳はまだ活動していると認識し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられてしまいます。ブルーライトをカットするメガネを使用する、もしくは夜間モードを設定したり、寝る1時間前には電子機器の使用を控えたりすることで、より早く眠りにつくことが可能です。


  • 適切な温度設定

寝室の温度は、快適な睡眠に大きく影響を与えます。最適な室温は18~20℃と言われており、暑すぎず寒すぎない環境を整えることが大切です。また、通気性の良い寝具を使用することも、深い睡眠を促進する要因となります。

 

睡眠リズムの確立

ADHDの人々は、生活のリズムが乱れやすい傾向にありますが、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きることで、体内時計を整えることができます。睡眠リズムを一定に保つことで、脳も徐々に「この時間は寝る時間だ」と認識しやすくなり、自然と眠りにつきやすくなります。

 

メディテーションやリラクゼーション

ADHDを持つ人々は、寝る前にリラクゼーションを取り入れることで、脳を落ち着かせることができます。深呼吸やストレッチ、ヨガ、瞑想といったリラックス方法は、心を鎮め、睡眠準備を整えるのに効果的です。これにより、脳がリラックス状態に入り、自然と眠りに誘われることが期待できます。

 

カフェインの摂取を控える

カフェインは脳を刺激する作用があり、ADHDの人々にとっては特に注意が必要です。カフェインはコーヒーやエナジードリンクに含まれているため、日中の摂取を控え、午後以降はカフェインを含む飲料を避けることで、睡眠に悪影響を与えるリスクを減らすことができます。

 

ADHD治療薬と睡眠

ADHD治療に使用される薬(主に刺激薬)は、脳を活性化させるため、睡眠に影響を与えることがあります。そのため、薬のタイミングや種類を見直すことで、睡眠障がいが改善される可能性があります。医師と相談しながら、薬の効果や副作用を確認し、適切な治療計画を立てることが重要です。

 

認知行動療法(CBT)

ADHDと睡眠障がいの両方に対して効果が期待できる治療法として、認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)が挙げられます。CBTは、不安やストレスを軽減し、ポジティブな行動パターンを促進するための心理療法です。特に不眠症の治療に特化した「CBT-I(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)」は、ADHDを持つ人々の睡眠改善に有効とされています。

 

ADHDと睡眠障がいを抱える子どもへの支援

ADHDと睡眠障がいは、子どもたちにも大きな影響を与えます。子どもが十分な睡眠を取れないと、学校でのパフォーマンスや感情のコントロールが難しくなり、行動上の問題が増えることがあります。以下は、ADHDを持つ子どもの睡眠を改善するための方法です。

 

規則正しい生活習慣の確立

ADHDを持つ子どもには、毎日の生活リズムを一定に保つことが重要です。決まった時間に寝る、決まった時間に起きるといった習慣を作ることで、体内時計を整え、子どもの脳も自然にリラックスできるようになります。また、就寝前には、落ち着いた時間を過ごすことが大切です。

 

寝る前のリラックスタイム

子どもが寝る前に過剰な刺激を受けると、睡眠に入るのが難しくなります。電子機器を使用せずに、読書やお風呂、穏やかな音楽を聴くといったリラックスした活動を取り入れることで、自然に眠気が誘発されやすくなります。

 

睡眠日記の活用

子どもがどのような睡眠の問題を抱えているかを把握するために、睡眠日記をつけることが役立ちます。親が子どもの睡眠パターンや夜中に目が覚める回数、朝の目覚めの様子を記録することで、問題の原因を特定しやすくなります。これにより、医師との相談時にも具体的な情報を提供でき、適切な対策を講じやすくなります。

 

家庭環境の調整

家庭環境も、子どもの睡眠に大きな影響を与えます。寝室の環境を静かで暗く、温度も快適な状態に保つことが大切です。さらに、家族全体で規則正しい生活を心がけることで、子どもも自然と健康的なリズムを取り入れやすくなります。

 

睡眠障がいの専門医の受診

ADHDによる睡眠障がいが長引いたり、日常生活に大きな支障をきたす場合は、睡眠障がいの専門医を受診することが推奨されます。専門医は、睡眠の問題を診断し、適切な治療法や支援策を提案することができます。また、睡眠時無呼吸症候群などの他の睡眠障がいが疑われる場合にも、専門医の診断が重要です。

まとめ

ADHDと睡眠障がいは、互いに影響を与え合いながら複雑な問題を引き起こすことが多いです。睡眠不足や質の悪い睡眠は、ADHDの症状を悪化させる一方で、ADHD自体が睡眠障がいを引き起こす原因となることもあります。適切な睡眠環境の整備や生活リズムの確立、医師や専門家との相談を通じて、ADHDを持つ人々は睡眠の質を向上させ、日常生活のパフォーマンスを改善できる可能性があります。

 


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