2024.08.09

大人の発達障がいとは?特徴とサポートのポイントを解説!

最近になってよく耳にするようになった発達障がいという言葉。ほとんどの人には発達障がいとは子どものもので、療育が必要といったイメージしかないかもしれません。しかし、発達障がいに悩むのは子どもだけではありません。

 

大人の発達障がいも存在するのです。発達障がいという概念がなかった時代には、風変りの子どもや人、変わった人といった扱いを受け、非常に生きづらい思いをしてきた人も少なくありません。発達障がいの人はその場の空気を読むことが苦手だったり、うっかりミスが多かったりという行動上の特徴があります。

 

このような特徴は発達障がいの場合、努力で治すことができるものではありません。なぜなら、発達障がいは脳の発達のしかたが普通の人とは異なる物であると考えられているからです。ここでは、その大人の発達障がいについて詳しく解説していきます。

 

大人の発達障がいとは?

発達障がいとは、脳の情報処理や制御に偏りが生じ、日常生活に困難をきたす状態のことをいいます。決して心や育て方により起こるものではありません。

 

発達障がいは日常生活に支障をきたすこともありますが、その一方である特定の分野においては優れた能力を発揮することもあります。その発達障がいの中でもあえて「大人の」と言われるものは、概ね大学生以上の年齢の人の発達障がいのことを言います。

 

その症状は子どもの発達障がいと同じですが、症状が軽かったため大人になるまで発達障がいとは気付かなかったり、周囲の人に発達障がいを特徴や個性の一つと捉えられていたため、日常生活を送る上において特に問題がなかったケースも多いようです。

 

二次的な問題が起きて発覚することも

では、なぜ今まで問題にならなかった発達障がいが大人になってから問題となるのでしょうか?今まで日常生活に支障がない程度の発達障がいを持つ人が、大学などへの進学や就職により異なる環境に置かれた場合、その環境がその人に合わない場合に、もともとの発達障がいに加えて、うつ病などの二次的な情緒や行動の問題が起きてしまうことがあります。

 

就職した仕事が自分の発達障がいの特性に向いていなかった場合、当然の事ながら失敗の連続となり、成功体験を積み重ねることができません。

また、発達障がいの特徴の中には「他人と上手にコミュニケーションを取ることができない」といったものも含まれるため、そのような失敗を上手く先輩や上司に相談したり、アドバイスを受けたりすることができないケースもあります。

 

そのようなことが続くと、周囲から否定的な目で見られることが多くなるとともにストレスが溜まり、最終的にはうつ病などを発症してしまうこともあります。発達障がいの二次的な問題により、仕事の継続が難しくなることで転職を繰り返したり、失職してしまったりといったことも多々あります。社会的・経済的に不安定な状況に陥ってしまう危険があるのが大人の発達障がいの特徴です。

大人の発達障がいにはどのような症状があるのか

大人の発達障がいの中には、大きく分けて三つの傾向があります。この傾向は発達障がいをきっちりと三つの種類に分けるものではなく、それぞれの傾向を併せ持つ人がいたり、人によってその傾向の強さが異なったりすることがあります。その三つの障がいとは、以下のようなものです。

 

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラムとは、かつて広汎性発達障がいと呼ばれていた発達障がいの種類の一つで、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障がい、レット症候群、不特定の広汎性発達障がいの独立した五つの障がいをまとめたものです。

 

自閉スペクトラムの中心となる症状は、「社会コミュニケーションの障がい」と「限定された反復的な行動」の二つです。社会コミュニケーションの障がいとは、日常的な会話のキャッチポールができない、愛着を示す行動が乏しく、知らない人の中に置かれても平気なように見える点です。

 

また、会話を行う際に表情の変化が乏しかったり、ジェスチャーが少なかったりする点も特徴です。周囲の空気を読むことが苦手なため、雰囲気を壊す発言をしてしまうこともあり、人との関係を上手に築くことが困難な人も多いです。また、柔軟性に欠ける傾向があるため、反復的な点も特徴です。

 

このような特徴を持っているため、変化に対応することが難しく、些細な変化に対しても大きな抵抗感や苦痛を感じてしまいます。このような特性は「融通が利かない」、「こだわりが人より少しだけ強い」というレベルの人が多いため、知的に障がいがない場合には障がい者とみなさないこともあります。

 

これらの特性を良い方向に考えると「自分のペースをブレずに守る」、「一つのことをコツコツと集中して行うことができる」という長所として見ることができます。しかし、この自閉スペクトラムを持つ人は、自分に合わない環境下に置かれてしまうと、日常生活にさまざまな悪い影響を及ぼしてしまうこともあります。この自閉スペクトラムに人の職場での具体的な困りごとには、以下のようなものがあげられます。


  • 職場で上司や部下、同僚などとうまくコミュニケーションを取ることができない
  • 職場やグループの暗黙のルールを理解できないため共同作業を行うのが難しい
  • 音や照明に過剰に敏感であったり逆に鈍かったりする
  • 同じ服や同じ作業手順にこだわるといったものがあります。

自閉症スペクトラムは、障がいになるパターンとならないパターンがあります。自閉スペクトラムの特性を生かすことができる仕事に就くことで、今の社会になじむことができる可能性もあります。

 

注意欠如、多動性障がい(ADHD)

注意欠如、多動性障がい(ADHD)には、不注意、多動性、衝動性の三つの症状があります。不注意とは集中力が続かないため物事に注意を向けることを持続できないことです。

この症状が強く表れるタイプの注意欠如、多動性障がい(ADHD)の人には、以下の特徴があります。

  • ケアレスミスが多い
  • 気が散りやすいため一つの物事に集中することが苦手
  • 自分が興味を持つことや好きな事には積極的に取り組むことができるが集中し過ぎてしまう
  • 物の置き忘れや物を無くすことが多い
  • 片付けや整理整頓が苦手
  • 約束や時間を守ることが苦手

注意欠如、多動性障がい(ADHD)の中で多動性と衝動性の傾向が強い人は以下の特徴がみられます。

  • 物事の優先順位が分からないことがある
  • 落ち着いてじっと座っているなどのことが苦手
  • 衝動的な発言や行動をすることがある

しかし、このような症状は時に多動性が「高い活動性」、衝動性が「優れた決断力や発想力」として周囲に評価されることもあるため、注意欠如、多動性障がい(ADHD)は一概に「悪いもの」と決めつけてしまうことはできません。

 

また、大人の注意欠如・多動性障がい(ADHD)は子どもの注意欠如・多動性障がい(ADHD)とは症状が少し異なります。一般的な子どもの注意欠如・多動性障がい(ADHD)は多動性が目立ち、大人になるにつれて多動性が目立たなくなり、相対的に不注意が目立つようになります。

 

また、注意欠如・多動性障がい(ADHD)の人は感情が強く表に出やすい傾向があり、大人になってもこの症状は治まらず、衝動的に職場や家庭内で暴言を吐いていしまったり、時には暴力という形で出ることもあります。また、好きな事に対する集中しすぎ・のめり込み・依存傾向があるため、大人の場合はアルコールや薬物、買い物、ギャンブル(日本では特にパチンコ)等への依存が問題となることもあります。

 

注意欠如・多動性障がい(ADHD)の人はその症状が子供のころから継続して症状が出ているのですが、大人になって社会に出た時に周囲から期待される目標の高さや人間関係の複雑さに対して、その特徴から社会性に欠けると思われてしまうことがあります。

 

周囲の人々や環境に上手くなじむことができずにうつ病や適応障がいを発症してしまうこともあります。精神疾患で精神科を受診した際に注意欠如・多動性障がい(ADHD)であるということが発覚することも少なくありません。

 

学習障がい(LD)

学習障がい(LD)の主な症状は、知的な遅れは見られないものの「読み」、「書き」、「算数(計算)」などのうち、特定の課題の学習が非常に困難である状態のことをいいます。ただ単に国語や算数の成績が悪いといった事を指すわけではありません。

 

聴覚的または視覚的短期記憶や物事の順番を認識する能力、聞いたものや見たものを処理する能力のアンバランスさが、結果的に「読み」、「書き」、「算数(計算)」の苦手さとして現れるのが学習障がい(LD)の特徴です。

 

学習障がい(LD)の症状は、子供のころから発症するものであるため、加齢により「読み」、「書き」、「算数(計算)」の能力が落ちてくることとは関係がありません。「読み」、「書き」、「算数(計算)」の障がいの中では、「読み」と「書き」の能力の障がいがセットになって現れることが特徴です。そのため、ここでは「読み書き障がい」と「算数障がい」という呼び方でそれぞれの症状を紹介していきます。

 

■「読み書き」障がい

読み書き障がいとは、読んだり書いたりすることに困難さが現れる症状をいいます。これはどういうことかというと、文字の形を捉えることが苦手だったり、実際に自分で読み書きができていても、文字を思い出すのに時間がかかっているというような事です。

 

読み書き障がいがない一般的な人は、文章を読む際に無意識に単語のまとまりを作って読んでいるのですが、読み書き障がいがある人は、文字を一文字ずつ追って文章を読んでいるため、一般的な人より文章を読むのに時間がかかります。読み書き障がいがある人でも、日常会話は普通にできるため、普通に接しているだけではそのような障がいがあることが分かりにくいことがほとんどです。

 

■算数障がい

算数障がいに関してですが、この障がいも先天的な物で「計算や数の概念を捉える」ことや、例えば算数の文章問題を解くなどの「推論する」ことに困難さを抱える症状が出ます。算数障がいと聞くと単に勉強としての算数や数学が苦手な事かと思われがちですが、そうではありません。

 

算数障がいは読み書き障がいと同様に、認知能力のアンバランスさが要因となり症状が発生します。算数障がいを持つ人は短期的な記憶が弱かったり、視覚的な認知が弱かったりといった認知能力の偏りがあります。算数や数学を必要としない仕事についている人も、算数障がいを持つ人は仕事や日常生活の中で苦手なことが生じやすくなることも少なくありません。

 

大人の発達障がいの人との接し方

今後障がい者の雇用が進むにつれて、大人の発達障がいを持つ人と一緒の職場で働く機会も増えてくると思われます。このような機会が訪れた時に、大人の発達障がいを持つ人とどのように接したら良いのでしょうか。

 

まず、大事にしていただきたいことは「今のその人の状態をそのまま受け入れる」という心がまえです。大人の発達障がいの特性はもって生まれたものです。苦手な特性については「頑張ればできる」ことではありません。苦手なことをできるようにと強迫的に改めようとして自己肯定感を下げ、うつ病などの2次障がいを引き起こしかねません。特性は特性として受け入れ、その人の実力を発揮できるように環境を整えていく、という発想で支援していくことが大事となるでしょう。

 

例えば、仕事の進め方に自己流のこだわりがありますが、その方法で成果が上がり危険がないのであればそのままにすることも検討の余地があります。もし、その方法が危険につながったり、緊急性が高い状況にあるため仕事の進め方を変えてほしい場合には、直接声をかけ仕事の進め方を確認しましょう。

 

そのとき気を付けなければならないのが、大声や威圧的な態度で接してはいけないという点です。また、発達障がいの人の仕事が進んでいなかったり、進め方が分からず困っているような場合には、何か困っているのではないかと声をかけてみましょう。

 

もし、困っているのであれば、その内容に応じて解決方法を教えてあげるのが望ましいのですが、このとき具体的な言葉で解決法を教えるようにしましょう。その理由は大人の発達障がいの人は、抽象的な指示を理解することが得意ではないからです。

 

このように、大人の発達障がいを持つ人でも周囲のサポートにより、十分な仕事上の成果を上げることが可能です。そのためには、やはり周囲の理解が必要です。大人の発達障がいを持つ人の特性を理解して、それに合った方法で接するようにしましょう。

まとめ

大人の発達障がいは、本人の特性を理解し、適切なサポートを行うことで、十分に社会で活躍することができます。周囲の人々の理解と協力が、発達障がいを持つ人々の生活をより良いものにするための鍵となります。特性を尊重し、共に働く環境を整えることで、誰もが安心して働ける社会を築いていきましょう。

 

参考

大人の発達障がいとは?症状の特徴や周囲からの接し方や対応について|atGP


凸凹村や凸凹村各SNSでは、

障がいに関する情報を随時発信しています。

気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!

 

凸凹村ポータルサイト

 

凸凹村Facebook

凸凹村 X

凸凹村 Instagram


 

関連情報

みんなの障がいへ掲載希望の⽅

みんなの障がいについて、詳しく知りたい方は、
まずはお気軽に資料請求・ご連絡ください。

施設掲載に関するご案内