2024.07.30

高次脳機能障がいとはどんな障がい?見えにくい障がいとその対処法

高次脳機能障がいとは、脳卒中などの病気や交通事故などで脳の一部を損傷したために、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障がいが起きた状態をいいます。

外見からは分かりにくい障がいであるために、周りの人から十分に理解を得ることが難しく誤解されてしまうことがあります。

 

高次脳機能障がいの色々な症状

高次脳機能障がいは、病気やけがによって脳に損傷を負うことで脳機能に障がいが出て、日常生活や社会生活に支障が生じる状態をいいます。

高次脳機能障がいは、単純な知覚障がい(痛みや感覚がないなど)や運動障がい(手足を動かしにくいなど)ではなく、より高いレベルで、知覚と運動をつなぎ合わせて判断などを行なうネットワーク機能の異常です。「知覚」を例にとると、触っていることは分かるものの、触ったものが布か紙か分からない、といった状態です。


  • 注意障がい

集中力が続かない。気が散りやすい。複数のことを同時にできない。


  • 記憶障がい

病気やけがの前のことは覚えているのに、新しい出来事を覚えられない。


  • 失語

言いたい言葉が出てこない。聞こえていてもその意味が分からない。


  • 遂行機能障がい

段取り良く物事を進めることができない。優先順位がつけられない。


  • 半側空間無視

目では見えているのに、片側に注意がいかないため、見落としたり、ぶつかったりしやすい。


  • 感情と社会的行動の障がい

感情や欲求のコントロールができない。やる気が起きない。人柄が変わってしまう。

 

高次脳機能障がいの原因

高次脳機能障がいは、さまざまな原因によって起こります。

 

脳外傷(頭部外傷) 

交通事故や高いところから転落して、頭を強く打ち脳に損傷を受けることです。

  • 硬膜外血腫
  • 硬膜下血腫
  • 脳挫傷
  • びまん性軸索損傷
  • 脳出血

 

脳卒中(脳血管障がい) 

脳の血管がつまったり破れたりしてその部分が機能しなくなる病気です。

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • もやもや病

 

その他 

他に脳をおかす感染症や自己免疫疾患、中毒などによっても高次脳機能障がいは起こります。

  • 脳炎(ヘルペス脳炎など)
  • 低酸素性脳症 ビタミンB欠乏症
  • 腫瘍

高次脳機能障がいの種類

記憶障がい

記憶とは、「新しい経験が保存され、その経験が後になって、意識や行動の中に再生されること」と定義されます。

エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶などがありますが、この中でもおかされやすいのはエピソード記憶です。高次脳機能障がいでは、新しいことが覚えられず、今見たこと、聞いたこと、したことを忘れてしまいます。病気や事故にあう以前にさかのぼって記憶がなくなることもあります。

  • 何を食べたか忘れる
  • どこにしまったか忘れる
  • 何度も同じことを言う
  • 買い物に行っても何を買うのか忘れてしまう
  • 忘れていることさえ忘れる

 

注意障がい

外からの刺激に対して、注意を向け持続したり、変換したり、また、無関係の刺激を抑制したり、あるいは同時にいくつもの刺激に注意を向けたりすることの障がいです。

  • まわりの状況に気が付かない
  • 集中できない
  • 周囲のことにすぐ気を取られる
  • 落ち着かない
  • 同時にいくつものことができない
  • ミスが多く効率が上がらない

 

遂行機能障がい

目的を持った一連の活動を段取り、手順を考えて効率よく行うことの障がいです。この機能をうまく働かせるためには、記憶、言語、思考、推理、判断などの機能をまとめて使えることが必要です。

  • 自分から行動が開始できない
  • 計画ができない
  • 順序良くまとまった形で実行できない
  • 出来ばえを気にしない

 

社会的行動と情緒の障がい

状況に適した行動が取れない、感情のコントロールがうまくできない、欲求が抑えられないといった障がいです。

  • イライラしやすい
  • 怒りっぽい
  • 一つのことにこだわる
  • すぐパニックになる
  • 何もしようとしない
  • 過度になれなれしい
  • 子供っぽい
  • ほしいものが我慢できない

 

言語とコミュニケーションの障がい

失語症

失語症は言語中枢が損傷されることによって起こる言語そのものの障がいです。理解がよく、とつとつと話すタイプと、なめらかだが、言い誤りの多い、理解の悪いタイプがあります。

  • なかなか言葉が出ない
  • 言い間違いをする
  • 読み書きができない
  • 簡単な計算ができない

 

コミュニケーションの障がい

お話はできるのに、相手の意図やユーモアが通じないなど、意思疎通に問題が生じることです。

  • まとまりがない
  • 脱線しやすい
  • 言葉どおりの理解しかできない
  • 感情やニュアンスが伝わらない
  • 共感ができない

 

失認

見ること(視覚)、聞くこと(聴覚)などの機能に問題はないのに、それが何であるのか分からないのが失認です。

  • 見えているのに、そのものが何であるか分からない
  • 声を聞かないと誰なのか分からない
  • 絵を見て全体のまとまりが分からない
  • 聞こえているのに、何の音か分からない

 

半側空間無視など

大脳の損傷された側と反対の側の空間あるいは体における出来事を無視することです。左(右)側にあるものに気がつかないのが半側空間無視、どこも悪いところはないというのが病態失認です。

  • 左(右)側にあるものを見落とす
  • 左(右)側にぶつかって歩く
  • 麻痺があるのにないようにふるまう

 

動作と行動の障がい(失行)

麻痺はないのに、簡単な動作、一連の動作がうまくできないことです。

  • 歯ブラシを反対に持つ
  • お茶を入れる時に、順序が逆になる
  • 洋服を着るときに袖口から手を入れたり、後ろ前逆にしたりする

 

地誌的障がい

熟知している場所で道に迷うことです。

  • よく知っているはずの建物や風景が分からない
  • 道順や方角が分からない
  • 自宅内で迷いトイレに行けない

 

自己意識性の障がい

自分自身を客観的にとらえることができない、障がいの認識ができない状態です。病識欠落もこの中に含まれます。

  • 事故や病気の前のように何でもできると思う
  • 逆に何もできないと思う

 

行政的に定義され、支援の対象とされる高次脳機能障がいは、主として記憶障がい、注意障がい、遂行機能障がい、社会的行動障がいなどの認知障がいで、病識の欠落も問題とされます。失語、失行、失認などの認知障がいは身体障がいを伴うことが多いので、その中での支援となります。

これらの障がいは単独で現れることもありますが、重複していることが多く、症状の重なり方によって一人一人違ってきます。症状も環境によって軽減したり、増大したりします。本人自身が障がいを認識していないことが多いのも、この障がいの特徴です。

 

高次脳機能障がいの検査・診断

障がいの有無を把握するために、認知機能を総合的に調べる簡易検査として、ミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を行ないます。さらに、脳の領域(認知ドメイン)ごとに機能を調べる神経心理検査を行ないます。

より詳細に調べるために頭部MRI検査やCT検査といった画像検査を行ない、脳の組織に異常があるかを確認します。画像検査で異常が見つからない場合に、脳の血流の変化が分かる脳血流シンチグラフィや、脳波検査などを行なうことで初めて異常が見つかることもあります。

 

高次脳機能障がいの治療法

患者さんごとの障がいに合わせて、認知機能訓練、認知行動療法などのリハビリテーション、環境調整を行ないます。

環境調整とは、患者さんが生活しやすいように家や職場を整えたり、家族や職場の人など患者さんに日常的に関わる人たちに障がいについて理解してもらったりすることで、互いにストレスの少ない状態で過ごせるようにすることです。

 

サポート方法

高次脳機能障がいの程度やあらわれ方は人それぞれで、本人が気づきにくいこともあります。

 

職場で【困ったこと】

  • 疲れやすくなり、仕事に集中できなかったり、イライラしたりしてしまうことがある。
  • 段取り良く、物事を進められない。

 

【対応の方法】

疲労やイライラしている様子が見られたら、一休みして気分転換を促すようにしましょう。「手順を簡単にする」「日課をシンプルにする」など環境の調整をすることも大切です。

 

日常生活の中で困ったこと

  • コミュニケーションがうまくいかない。
  • 新しいことを覚えにくい。

 

【対応の方法】

ゆっくり、分かりやすく、話すことを心がけ、何かを頼むときには、一つずつ具体的に提示しましょう。情報はメモに書いて渡し、絵や写真、図なども使って説明するようにしましょう。

 

日常生活で困ったこと

  • 感情や欲求のコントロールがきかず、些細なことで腹を立てたり、涙もろくなったりする。

 

【対応の方法】

環境の変化やマイナス感情への対応が困難で、ストレスが溜まりやすいということを周りの人は理解しましょう。できるだけ混乱せずに安心して過ごせるように、行動の手がかりが多い環境を作りましょう。

 

街中で困ったこと

  • 図や表示の意味を理解できないことがある。
  • 文字が読めなくなることがある。
  • 視界の左側(あるいは右側)の空間にある情報を見落としてしまう。

 

【対応の方法】

具体的な絵、写真、ジェスチャーなどを活用して分かりやすくしましょう。また、見落としてしまう側の空間を意識して、情報を見直す習慣をつけてもらいましょう。

まとめ

高次脳機能障がいは、外見からは分かりにくく、理解されにくい障がいです。しかし、適切なサポートと理解があれば、患者は日常生活や社会生活をよりスムーズに過ごすことができます。私たち一人ひとりがこの障がいについて理解を深め、支援の手を差し伸べることで、患者のQOL(生活の質)を向上させることができるのです。

 

参考

高次脳機能障がい|ハートシティ東京

高次脳機能障がい|東北医科薬科大学病院

高次脳機能障がい|済生会

 


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