ADHDに「適した職業」「適さない職業」とは?マルチタスクな机仕事はオススメできない
ADHDの人にとって、職業選択は極めて重要な要素です。彼らは一般的に、気が散りやすく、細かなミスが頻繁に発生する傾向があります。このような特性を踏まえると、マルチタスクな机仕事は適していない可能性が高いとされています。
精神科医の岩波明氏によると、「金スマ」「世界一受けたい授業」などで解説されたように、適切な職業選択が彼らが社会で円滑に機能するためのカギとなります。したがって、彼らの能力と特性に合った職種を見つけることが、彼らが自信を持って働き、成果を上げる上で非常に重要です。
落ち着きのなさはある程度本人の意思で抑えることができる
ADHD(注意欠如多動性障がい)の人が持つ落ち着きのなさは、一定程度、本人の意志で抑えることが可能です。身体を動かしてしまう症状を抑えるために、米粒や粘土を手で丸めるなどの行動を取る人もいます。これは、スポーツ選手が緊張をほぐすためにガムを噛むのと似た効果があるかもしれません。
大人になると、多くの場合、目立つほどの多動症状は抑えられることがあります。これは、本人の意識的な取り組みによるものです。しかし、静かに座っていなければならない場面では、内面の緊張や不安が増すことがあります。
完全に抑えることはストレスになる
ただし、ADHDの人は体を動かすことで内面の不安を和らげているため、それを完全に抑えることはストレスになることがあります。貧乏ゆすりや騒音など、周囲に迷惑をかける行動は避けるべきですが、粘土を丸めるなどの手遊びは問題ありません。また、職場で歩き回ったり一方的に話しかけたりする行動も、過去の多動傾向の名残かもしれません。
ADHDの課題の一つ「気が散りやすい」
ADHDの課題の一つは、「気が散りやすい」ことです。職場では、仕事に取り組むべき時にも関わらず、よそ見をしてしまったり、タバコ休憩やコーヒー休憩に行くことが頻繁に見られます。やらなければならないことを理解していても、なかなか手をつけられないことがあります。自分に対して「集中しなければいけない」と言い聞かせても、改善されるのは難しい場合もあります。
ADHDの人は、興味のあることには「過剰集中」し、大きな成果を出すことができる一方で、興味のないことには全く集中できず、周囲に関心が向いてしまう傾向があります。また、強い衝動性のため、仕事中に他のことに気を取られると、我慢できずにその方向に関心が向いてしまうこともあります。このため、肝心の業務が進まないということもよくあります。
工夫次第で改善の余地
しかし、工夫次第で改善の余地があります。例えば、1時間の集中が難しい場合は、小さな目標を設定し、それをクリアするごとに休憩を挟む方法があります。また、仕事中にネットを見てしまうならば、一時的にネットを切断する、エアコンや周囲の雑談が気になる場合は耳栓を使用する、個人用のパーティションを設置するなどの方法があります。
普通の人の「うっかり」とADHDの人の「うっかり」
普通の人の「うっかり」とADHDの人の「うっかり」は、表面的には似ている現象ですが、ADHDの場合は一時的なものではなく、場所や状況に関わらず持続することがあります。
ADHDの特徴の一つに、「羽田と成田」を間違えることも挙げられます。このような不注意の症状は、子ども時代から思春期、大人になっても継続的に現れることが特徴です。例えば、幼児期では積み木からミニカーに気を取られたり、児童期以降では学校に持ち物を忘れたり、外出時に迷子になることがあります。成人になっても、スマホをよくなくしたり、大事なアポを忘れて別の予定を入れてしまうことが典型的です。
大事な場面でも同様の不注意が表れる
普通の人が起こす「うっかり」とは異なり、ADHDの場合は、重要でないことでも忘れてしまうことがあります。さらに驚くべきは、大事な場面でも同様の不注意が表れることです。例えば、羽田空港に行く予定があるのに成田空港に向かってしまうなどの状況が発生します。これは普通、そうした重要なことを間違えることはまずありません。しかし、ADHDの人は高学歴であってもこのような不注意が起こることがあります。
健常者に比べて交通違反や事故の頻度が高い
さらに、ADHDの人は交通事故を起こしやすいというデータも示されています。アメリカの心理学者・バークレーらの調査では、成人ADHD患者は健常者に比べて交通違反や事故の頻度が高いことが示されました。
このような特性を理解し、サポートすることが職場で重要です。ADHDの人がミスを犯した場合、それを能力不足ややる気のなさと誤解することは避けるべきです。代わりに、彼らが最大限の成果を発揮できるよう、適切なサポートを提供することが必要です。
「分配性」や「転換性」の障がい
ADHDの注意機能には、「持続性」の障がいだけでなく、「分配性」や「転換性」の障がいもあります。つまり、特定の事柄に注意を向け続けることが難しく、さまざまな事柄に注意を分散し、必要に応じて注意の対象を切り替えることが苦手なのです。
このため、「周囲全体にそれとなく注意を向けること」や「いくつかの事柄にうまく注意を分散すること」が難しい傾向があります。特に、複数の対象がある場合、注意の切り替えがうまくいかないことがあります。
予想外のアクシデントが起こるとパニックに
しかし、一方で「注意欠如多動性障がい」という病名とは異なり、ADHDの人は注意力が完全に欠如しているわけではありません。実際に、特定の事柄には過剰に集中することがあります。
それでも、通常ADHDの人は不注意であり、ケアレスミスが多い傾向があります。また、課題に取り組んでいるときに予想外のアクシデントが起こると、注意をどこに向ければ良いかわからずにパニックを起こすこともあります。
こうした特性を持っているため、一般的には、ADHDの人は総合職的な事務職には向かないとされています。総合職的な事務職では、複数の業務や対象に対して注意を分散し、柔軟に対応する能力が求められるためです。
ADHDの人とASDの人が就業する職種
調査結果から明らかになったように、ADHDの人とASDの人が就業する職種には、特定の傾向が見られます。ADHDの人は静かなデスクワークやマルチタスクが苦手であり、自分の裁量でできる仕事が向いている傾向があります。そのため、イラストレーターや作家、コピーライター、プログラマーなど、創造性や専門知識が求められる職種に多く見られます。
一方で、ASDの人は決まった作業を続けることが得意であり、デスクワークにも抵抗が少ないですが、突然の指示や社交的な状況には不安を感じる傾向があります。そのため、定型的な事務職が彼らにとって適した環境であることが多いです。
人気な職業
私たちの調査の結果、ADHD145例のうち、専門的・技術的職業が48%、事務従事者34%、サービス業6%、運輸・包装・清掃6%という内訳でした。またASD348例のうち、事務従事者が54%、専門的・技術的職業26%、運輸・包装・清掃8%、サービス業5%でした。
また、ADHDの人は話し方が早口であり、落ち着きがなく過剰な印象を与えることがあると指摘されています。これは彼らの興奮や刺激への感受性が高いことに関連している可能性があります。このような特性を理解し、適切な職場環境やサポートが提供されることで、彼らも自己の能力を発揮しやすくなるでしょう。
適切に対応する能力が重要
ADHDの当事者は、相手の一言に即座に反応して自分の思いついたことを一方的に話し続ける傾向があります。休職していたADHDの患者が「就職説明会に行ってきた」と話した際、質問に答えることなく自分の考えを熱く語りました。このような行動は、自分の考えを伝えたいという衝動を抑えられない結果です。再度質問をすると、やっと要点を伝えましたが、このような状況は社会生活でのコミュニケーションにおいては大きな問題です。
注意深く聞くことや、質問をすることが重要
ADHDの人が話をズレさせる原因の1つは、相手の要点を理解せず、自分の関心に従って一方的に話す傾向があることです。これにより、会話が混乱し、相手が何を求めているか理解しないまま話が進むことがあります。また、本人自身がこの点に自覚していないこともよくあります。しかし、社会生活においては、相手の話を理解し、適切に対応する能力が重要です。
そのためには、コミュニケーションスキルの向上や相手の話に対する注意を高めることが必要です。相手の要点を理解し、適切に反応するためには、注意深く聞くことや、質問をすることが重要です。さらに、自分の話が相手の興味を引くかどうかを意識し、適切なタイミングで話題を変えることも有効です。このような工夫をすることで、ADHDの人も円滑なコミュニケーションを図ることができます。
ADHDについて:理解と対応
ADHD(注意欠如多動性障がい)は、多くの人々が直面する神経発達障がいの一つです。この障がいは、注意力の欠如、過活動、衝動性の増加など、さまざまな症状を特徴とします。ここでは、ADHDについて理解し、効果的に対応するための情報を提供します。
ADHDの特徴
- 注意力の欠如(不注意): ADHDの人々は、特定の仕事や課題に対して集中することが難しく、気が散りやすい傾向があります。このため、仕事や学校での成績に影響を与えることがあります。
- 過活動: 不安定な座り方、動き回ること、無意味な動作など、過活動な行動が見られることがあります。これは、じっとしていることが難しいという特徴です。
- 衝動性: 衝動的な行動や言動が頻繁に見られることがあります。思考や行動を抑えることが難しいため、衝動的な決定をすることがあります。
ADHDの診断と治療
ADHDの診断は、専門家による評価に基づいて行われます。一般的に、ADHDの治療には以下の方法が含まれます。
- 薬物療法: 刺激性薬や非刺激性薬などの薬物が処方されることがあります。これらの薬物は、注意力や集中力を向上させる効果があります。
- 行動療法: カウンセリングや行動療法は、ADHDの管理に役立つことがあります。行動の変化や対処方法を学ぶことで、日常生活での問題を軽減することができます。
- 環境の調整: 学校や職場などの環境を調整することで、ADHDの人々がより成功することができます。特別な配慮や支援が必要な場合は、教育者や雇用主と協力して対応することが重要です。
ADHDの影響と対応策
ADHDは、日常生活や社会的関係にさまざまな影響を与えることがあります。以下は、ADHDに対応するための効果的な戦略です。
- ストラクチャーとルーチン: ADHDの人々は、予測可能なスケジュールやルーチンによって支えられることが重要です。ストラクチャーのある環境は、彼らがより集中し、効果的に機能するのを助けます。
- 目標設定とモチベーション: 小さな目標を設定し、それを達成することで自己成長を感じることが重要です。モチベーションを高めるために、楽しい活動や興味を持つことを取り入れることが役立ちます。
- ポジティブな強化: 良い行動や成果に対してポジティブな強化を行うことで、ADHDの人々が自信を持ち、より良い結果を出すことができます。
まとめ
ADHDの人にとって、適切な職業選択と効果的なコミュニケーション戦略は、社会での円滑な機能を支える重要な要素です。彼らが自己の能力を最大限に発揮し、他者との関係を築くためには、これらの課題に理解と適切なサポートが欠かせません。
そのため、個々の特性やニーズを考慮した取り組みが求められます。症状や困難さにかかわらず、彼らの能力を活かし、社会での自立を促進するためには、環境の適応や柔軟性が不可欠です。彼らの多様性とポテンシャルを理解し、適切な支援を提供することで、彼らが満足できる職場での成功を実現することができます。
参考
ADHDに「適した職業」「適さない職業」の決定的差 #東洋経済オンライン @Toyokeizai
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