大人の注意欠如・多動症(ADHD)とは?
注意が散漫になりやすい、うっかりミスが頻繁に起こる、じっとしていられない、順番を待つことや時間を守るのが難しい――こうした困りごとや悩みは、もしかするとADHDの特性が原因かもしれません。
「やるべきことはわかっているのに実行できない」と感じて、もどかしい思いを繰り返していませんか?
ADHDとは?
ADHDとは、Attention-Deficit Hyperactivity Disorderの略称であり、注意欠如・多動症と呼ばれます。これは、発達障がいの一種であり、不注意や多動性・衝動性などの特性があります。
この症状は、子どもの頃に気づかなくても、日常生活に支障が出ることなどで大人になってから気づくこともあります。このような困りごとを軽減するためには、環境の調整やソーシャルスキルトレーニング、薬物治療などの対処法があります。
大人のADHDの特徴とは
大人のADHDの特徴は、注意欠如・多動症(ADHD)に関連しています。これには、注意を継続することが難しく、作業中にミスを起こしやすい不注意な特性が含まれます。
また、落ち着きがなく、待つことが苦手で衝動的な行動をとりがちな多動性・衝動性の特性もあります。これらの特性が同時に現れる場合もあれば、どちらか一方がより顕著に現れる場合もあります。
「不注意」の特徴例
- 活動に集中できない
- 気が散りやすい
- 物をなくしやすい
- 順序だてて活動に取り組むことができない
「多動性・衝動性」の特徴例
- じっとしていられない
- 静かにすることができない
- 待つことが苦手
- 衝動的な感情・行動を抑えられない
デザイナーや営業職などで能力を活かす人も多い
ADHDの不注意の特性は、日常生活においてさまざまな影響を及ぼします。遅刻や予定の忘れ、書類の紛失といった具体的な事例だけでなく、計画を立てることが難しく見積もりが甘いという傾向は、仕事や学業、社会生活全般にわたって深刻な問題を引き起こす可能性があります。
このような特性がある一方で、アイデアを豊富に出し、人とのコミュニケーションが得意な人も多くいます。こうした能力を活かせば、デザイナーや営業職など様々な分野で成功を収めることができるでしょう。
同じ診断を受けた人でも特性の現れ方は異なる
ADHDは発達障がいの一つであり、同じ診断を受けた人でも特性の現れ方は異なります。また、自閉スペクトラム症(ASD)や限局性学習症(SLD)との重複もあるため、個々の状況に合わせたサポートや理解が必要です。
特性は小児期から成人期にかけて持続する傾向がありますが、多動性・衝動性は大人になるにつれて目立たなくなることがあります。ただし、不注意な特性は大人でも継続する可能性が高く、職場でのミスや社会生活での問題によって、大人になってからADHDに気づくこともあります。
これらの理解と適切な支援が、ADHDを持つ人々が自己実現し、充実した生活を送るための鍵となります。
ADHDの原因
ADHDなどの発達障がいは、生まれつき脳の性質や働き方、発達の仕方に偏りがあることで生じますが、その原因ははっきりわかっていません。
ADHDは遺伝と関係があるのか
ADHDの発症には遺伝子や環境因子などが関与していると考えられていますが、現時点では明確な原因が特定されていません。遺伝の影響があるケースもありますが、必ずしもすべての場合に遺伝するわけではありません。一方で、環境要因も重要な役割を果たす可能性があります。ADHDの発症メカニズムは複雑であり、さまざまな要素が相互に影響し合っています。
ドパミンやノルアドレナリンとの関係も
ADHDと神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンとの関連が指摘されています。これらの物質は脳内で情報伝達を担う重要な役割を果たしており、その分泌量が調節不十分または機能不全に陥ることで、ADHDの特性が現れると考えられています。
具体的には、ドパミンやノルアドレナリンの低下が、不注意や多動性・衝動性といったADHDの症状を引き起こす可能性があります。また、前頭前皮質での機能障がいも、ADHDの症状に関連しているとされています。
ADHDの病態には複雑な要因が関与しており、神経伝達物質の異常や前頭前皮質の機能障がいがその一部を占める可能性があります。
ADHDについて、医療機関の受診から診断までの流れ
ADHDの診断は、まず医療機関での問診から始まります。医師はDSM-5やICD-11などの診断基準を参考にしながら、患者の症状や行動パターンを評価します。心理検査や認知機能検査(ASRS、CAARS™、CAADID™など)を用いて、症状の詳細な把握や診断の補助を行うことがあります。また、IQ測定などの認知機能検査も併用されることがあります。
ADHDの診断には、他の脳の疾患との鑑別が重要です。そのため、脳波の測定や画像検査を行うこともあります。例えば、てんかんなどの脳の病気とADHDの症状が類似する場合、脳波検査などを通じて鑑別を行います。
総合的な診断を行うため、医師や専門家は患者の症状だけでなく、日常生活や学業・職場での問題、家族歴なども考慮に入れます。これらの情報を総合的に評価し、正確な診断と適切な治療プランを立てることが重要です。
DSM-5での診断基準
- 不注意と多動および衝動性の特性が、同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められる
- 症状のいくつかが12歳以前より認められる
- 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障がいとなっている
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障がいされている
- その症状が統合失調症、または他の精神病性障がいの経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない
これらの条件が全て満たされたとき、ADHDと診断されます。
特性による困りごとは、環境調整や薬物療法などで対処できる
発達障がいはいわゆる「病気」ではなく「脳の特性」であることから、特性や困りごとへの対応方法についても「治療」ではなく「対処」と表現するのが望ましいでしょう。
ADHDの特性による困りごとや生きづらさを軽減する方法として、以下のような対処法があります。
環境調整、ソーシャルスキルトレーニングなどによる対処
ADHDと診断された場合、まず医師や臨床心理士などからのアドバイスをもとに集中しやすい環境をつくる「環境調整」や、日常生活で実際に遭遇するトラブルを回避するため、あいさつの仕方やメモの取り方などを具体的なロールプレイを通して学ぶ認知行動療法のひとつである「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」などが行われます。
薬による対処
環境調整などの対処を行ってもADHDの症状の改善が十分ではない場合は、ADHDの症状を改善するための薬を使用することもあります。その際には、「通院日や通院時間を忘れがち」といった特性も考慮し、スマートフォンのスケジュール管理アプリの利用や、家族に通院情報を共有してリマインドしてもらうなどの工夫をするとよいでしょう。
薬は有効性と安全性のバランスに注意しながら選択されます。なお、薬を使う場合でも環境調整やSSTなども続けて取り組んでいくようにします。また、うつや不安などの精神的な不調を伴う場合には、その治療もあわせて行います。
そのほかにも、ADHDの症状によって日常生活に支障が出る場合は、ライフステージに応じてさまざまなサポートを受けることができます。
ひとりで悩まず、相談窓口や医療機関に相談することで、生きづらさを和らげることができるかもしれません。
「ADHDかも」と思ったら、何科の病院に行けばいい?
日常生活での違和感から「ADHDかもしれない」と感じたときや、ADHDの特性による困りごとや生きづらさがあるときには、医療機関へ相談することもできます。
大人のADHDの診療は、主に精神科や心療内科、メンタルクリニックなどで行われます。
まとめ
医療機関以外にもさまざまな相談先があります。悩みや困りごとに応じた相談先から、それぞれに合った支援・サービスにつなげていくことができます。まずは気軽に相談先を探してみませんか。
参考
凸凹村や凸凹村各SNSでは、
障がいに関する情報を随時発信しています。
気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!