精神障がい者の才能を活かす挑戦 ~法すう株式会社の取り組みと未来への展望~
このたび、法すう株式会社 代表取締役である菅原 淳一 様に取材の機会をいただきました。
菅原様の情熱とビジョンは、多くの人々に勇気と希望を与えるものであり、その取り組みの背景には深い思索と確固たる信念がありました。
菅原様がどのような想いで起業し、どのような課題に直面しながらも精神障がい者の支援を行っているのか……以下では菅原様の活動のきっかけや現在の課題、そして未来への展望について詳しくご紹介いたします。
「自由研究コンテスト」を企画運営
私たち法すう株式会社は、精神に不安をかかえる方々を対象として「自由研究コンテスト」を企画運営しています。
経営陣はともに30歳前後に統合失調症に罹患した夫婦です。
2019年に出会い、同年に結婚した私たち夫婦は、20年近くにわたりそれぞれ療養生活を送ってきました。
夫婦二人でコロナ禍において幾多のプロジェクトを試行したのち、一昨年10月に当プロジェクトを発起。昨年2023年3月に法人化しました。
活動を開始したキッカケは妻との出会い
私は妻と出会った当初から起業を考えていました。
今まで、個性や能力のある仲間たちを見ながら、彼らがただ疲弊していくことへじくじたる想いや、障がい者雇用にもは疑問を感じていましたし、自分たちならその問題を解決できると思っていたからです。
さらに、コロナ禍において世の中全体が疲弊しギスギスしていく中で、精神的にも経済的にもゆとりのある生活を送りたい、そして自分たちならその問題を解決できる、という気持ちが一層強くなりました。
オンラインでできるイベントの構想
オンラインでできるイベントの構想は早い段階から頭の中にありました。世間がオンラインでのイベントを求めているように感じましたし、起業におけるさまざまなリスクも低減できると思ったからです。
精神障がい者の社会的地位の向上のために
障がい者雇用において、特に精神障がい者を雇用するケースでは、様々なハードルが高いと言われています。
見た目で健常者と判別できないケースも多く、理解が進まないために差別的な扱いを受けることも少なくありません。
そんな精神障がい者は増加の一途をたどっています。
障がい当事者である我々は救済されるべきであり、社会的地位の向上が図られなければならないと強く思っていました。
芸術や文芸、科学などの諸分野で活躍し、功績を残した歴史上の精神障がい者に強く思いを馳せながら、精神障がい者の社会的地位をどうしたら向上させられるのか……
と、様々な催し事を計画しましたが、どれも決め手に欠けていました。
さらにネックとなるのが匿名性の保持でした。なぜなら、障がいをオープンにしたくない方がほとんどであろうと予想されたからです。
しかし、何かしらの手段で公開しなければスポンサーがつかないとも考えていました。
情報番組の「子どもたちの自由研究」からヒントを得る
一昨年の夏休みも終わりに差し掛かる頃、テレビの情報番組で子どもたちの自由研究についての話題が取り上げられているのを見て、これに決めました。
それでも、これを事業化するには1か月間考えました。精神障がいという病歴をオープンにすることもリスクでしたし、そもそも皆が自由研究をやりたがるのだろうか、応募が集まるのだろうかという迷いがあったからです。その迷いは今でも抱えています。
始めてみて気づいた課題
私たちの業務は大きく分けて、応募作品の獲得と協賛金の獲得の2つに分類されます。
このほかにも審査や表彰などの付随的な業務も予定されていますが、それを除くと特に前者を左サイド、後者を右サイドと区分しています。
これは業務の性質の違いからくる便宜的なものです。
しかし、現状ではどちらもうまくいっているとは言えません。
クラウドファンディングで運営資金に困らない、と楽観
開業当初は「ホームページを設置しSNSで発信していれば、ある程度の応募数は見込める」と思っていましたし、クラウドファンディングを実施すれば運営資金には困らないだろうと楽観していました。
しかし、実際にはまったくそんなことはありませんでした。
広告を出すのにも資金が必要
応募数を増やすためには広告を出す必要があることがすぐにわかりました。
広告を出すにはそれには資金が必要であり、企業協賛を得なければなりません。一方で、応募が集まらなければ協賛獲得は難しいという「卵が先か鶏が先か」というようなジレンマに陥りました。
そこで、できるアクションをまずは起こすべきだと考え、今年の初めから全国の事業所宛てにダイレクトメールを送り、チラシの設置をお願い始めました。
設置いただく案内状の印刷や三つ折り、封入作業などは私たちが手作業でおこなっています。
この作業こそまさに事業所等で日々行われている単純作業の典型で、長い期間継続することはとても大変な作業でした。
同志の協力やピンとくるような表現の工夫が必要
何か新しく事を進めようと思えば、次々と必要となるスキルや知識が増えてしまいます。
例えば資料作成やプレゼンテーションのスキルです。
自分たちだけで成せることには限界があるので、同じ志を持つ事業者や個人の手助け・連携も歓迎しています。
ご興味がございましたら是非ご連絡ください!
また、自由研究のコンテストを周知する中で
「どのような取り組みなのか、なかなかピンとこない」
という方が多いことも課題です。
今後、ピンとくるような表現の工夫が必要だと思っています。
さらに、私たち自身が精神障がいの当事者であるため、体調を崩すこともあり、その度に仕事を中断しなければならなかったことも課題の一つです。
今後の展望について
当事業が発展することによって、精神障がい者への研究が進み、能力の開発や認知が進むと考えています。
さらに、障がいが個性であるとの認識が広まり、経済的かつ社会的な価値をもたらす社会を思い描いています。当事業がそのきっかけになり、重要な役割を担っていきたいと考えています。
精神障がい者の地位向上を目指す
国々によって、精神障がいの基準や制度が異なることは承知しています。
そのため、ハードルは高いですが、この事業は国内のみでなく世界的に拡大されるべきだと思っています。
また、当事業は精神障がい者の地位向上という、ひとつの社会運動という側面も持っています。これは万国普遍の願いです。
「みんな違って、みんな良い」
今後は、健常者であっても人工知能の進歩により職を追われる人も出てくるでしょう。そんな時代に人間らしさとは何であるかと多くの人が思いを巡らしたとき、当事業の真価が問われるような気がしています。
「みんな違って、みんな良い」この言葉は重要なコンセプトです。
工業化時代には型どおりの人間を育成することが合理的でした。しかし、時代は前に進んでいます。社会は個性を必要としていると強く訴えていきたいです。
法すう株式会社
代表取締役 菅原淳一
まとめ
法すう株式会社の取り組みは、精神障がい者の個性と能力を社会に活かすための重要なステップだと感じました。
これからも多くの課題に直面することがあるかと思いますが、菅原さんご夫婦はその一つ一つを乗り越え、社会に価値を提供し続ける覚悟を持っています。
すべての人が個性を尊重され、豊かな生活を送れる未来を目指して、菅原さんご夫婦はこれからも努力を続けられることと思います。
もし少しでも興味がありましたら、自由研究へのご応募や、協力のご連絡をしてみてください!