身体障がい者手帳の等級一覧│ 音声・言語・そしゃく機能および肢体不自由の判定基準
身体機能に障がいを持つ方々が適切な支援を受けるためには、障がいの程度を正確に判定することが重要です。この記事では、音声機能、言語機能、そしゃく機能の障がいおよび肢体不自由の等級について詳しく解説します。障がいの等級はどのように決定されるのか、具体的な基準や判定方法について理解を深めましょう。
【音声機能 、言語機能またはそしゃく機能の障がい】の等級は3〜4級
音声機能、言語機能、またはそしゃく機能の障がいの等級は、以下のように3級と4級のみとなっています。
音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障がいの等級
- 3級:音声機能、言語機能またはそしゃく機能の喪失
- 4級:音声機能、言語機能またはそしゃく機能の著しい障がい
参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表」
等級は、歯科医師と都道府県知事の指定医師の2段階の診断で判定されますが、「喪失」と「著しい障がい」が、どのように違うのか少しわかりにくいかと思います。音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障がいにおいて、等級をわける喪失と著しい障がいの違いは、以下の通りです。
喪失 |
【音声機能、言語機能】 ・音声を全く発することができない ・発声しても、肉親とも会話の用をなさない ・手話や筆談等でしか意思疎通を図れない |
【そしゃく機能】 ・経口的に食物を摂取することができず、経管栄養以外に方法がない |
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著しい障がい
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【音声機能、言語機能】 ・音声、言語のみで意思疎通が困難 ・肉親との会話は可能であるが、他人には通じない |
【そしゃく機能】 ・経口摂取では栄養が不十分で経管栄養を併用している、摂取できる食物の内容に制限(ゼリー状のものしか食べられないなど)がある ・口唇・口蓋裂等の先天異常の後遺症による著しい咬合異常があり、歯科矯正治療等を必要とする |
参考:東京都「聴覚・平衡機能、音声・言語機能又はそしゃく機能障がい等級表と診断のポイント」
喪失は意思疎通がかなり困難な状態で、著しい障がいはさまざまな制限がある状態です。音声機能、言語機能の障がいの等級の具体例は、以下の通りです。
音声機能、言語機能の障がいの等級の具体例
3級 |
・無咽頭、咽頭部外傷、発声筋麻痺によるもの ・乳幼児期に発生した高度難聴に伴い、言語機能を獲得できなかった失語症によるもの |
4級 |
・咽頭の障がい、または形態異常によるもの ・唇顎口蓋裂など構音機能の障がい、または形態異常によるもの ・中枢性疾患によるもの |
参考:東京都「聴覚・平衡機能、音声・言語機能又はそしゃく機能障がい等級表と診断のポイント」
このように咽頭部の原因や、生まれつきの唇顎口蓋裂の影響などによって、音声機能や言語機能に障がいを抱えてしまう方がいるのです。
そしゃく機能の障がいの等級の具体例
そしゃく機能の障がいの等級の具体例は、以下の通りです。
3級 |
・重症筋無力症等の神経・筋疾患によるもの ・仮性球麻痺、血管障がいなど延髄機能障がいや、末梢神経障がいによるもの ・外傷、主要切除等による顎(顎関節を含む)、口腔(舌、口唇、口蓋、頬、そしゃく筋等)、咽頭、喉頭の欠損等によるもの |
4級 |
上記と同じ |
参考:東京都「聴覚・平衡機能、音声・言語機能又はそしゃく機能障がい等級表と診断のポイント」
バケツに入った氷水を頭からかぶるか、寄付するかを選ぶ「アイスバケツチャレンジ」が有名なALS(筋萎縮性側索硬化症)も、重症筋無力症と同じ神経難病で、そしゃく機能が低下します。このような音声機能、言語機能またはそしゃく機能障がい者への配慮ポイントは、以下の通りです。
音声機能、言語機能またはそしゃく機能障がい者への配慮ポイント |
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音声機能、言語機能障がい者 |
話し掛けるときは、できるだけゆっくり、一言一言をはっきりと話し、その都度聞き返し対応をする |
そしゃく機能障がい者 |
経管栄養摂取の時間やスペースが必要となるので、確保する |
3級は機能を喪失しているため、より手厚いサポートが必要となります。できることからで構わないので、相手に合わせて配慮しましょう。
【肢体不自由】の等級は1〜7級
肢体不自由は以下の4種類にわかれていて、種類によって等級の数が異なりますが、最大1~7級までとなっています。
・上肢機能がい ・下肢機能障がい |
1~7級まで |
体幹機能障がい |
1~5級まで |
乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障がい |
1~7級まで |
上肢機能障がい
上肢機能障がいの等級は、以下のように1~7級まで(身体障がい者手帳の交付は6級まで)あります。
上肢機能障がいの等級
1級 |
1.両上肢の機能を全廃したもの 2.両上肢を手関節以上で欠くもの※1 |
2級 |
1.両上肢の機能の著しい障がい 2.両上肢のすべての指を欠くもの※2 3.一上肢を上腕の2分の1以上で欠くもの※3 4.一上肢の機能を全廃したもの |
3級 |
1.両上肢の親指と人差し指を欠くもの※4 2.両上肢の親指と人差し指の機能を全廃したもの 3.一上肢の機能の著しい障がい 4.一上肢のすべての指を欠くもの※5 5.一上肢のすべての指の機能を全廃したもの |
4級 |
1.両上肢の親指を欠くもの※6 2.両上肢の親指の機能を全廃したもの 3.一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうち、いずれか一関節の機能を全廃したもの 4.一上肢の親指と人差し指を欠くもの※7 5.一上肢の親指と人差し指の機能を全廃したもの 6.親指または人差し指を含めて一上肢の三指を欠くもの※8 7.親指または人差し指を含めて一上肢の三指の機能を全廃したもの 8.親指または人差し指を含めて一上肢の四指の機能の著しい障がい |
5級 |
1.両上肢の親指の機能の著しい機能障がい 2.一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障がい 3.一上肢の親指を欠くもの 4.一上肢の親指の機能を全廃したもの 5.一上肢の親指と人差し指の機能の著しい障がい 6.親指または人差し指を含めて一上肢の三指の機能の著しい障がい |
6級 |
1.一上肢の親指の機能の著しい障がい 2.人差し指を含めて一上肢の二指を欠くもの 3.人差し指を含めて一上肢の二指の機能を全廃したもの |
7級 |
1.一上肢の機能の軽度の障がい 2.一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障がい 3.一上肢の手指の機能の軽度の障がい 4.一上肢の親指人差し指を含めて一上肢の二指の機能の著しい障がい 5.一上肢の中指と薬指と小指を欠くもの 6.一上肢の中指と薬指と小指の機能を全廃したもの |
参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表」
手指については、機能障がいがある指の数が増えるにつれて等級は重くなりますが、親指の機能が最重要視され、続いて人差し指の機能が重要視されます。見た目でわかる手指や腕の欠損については理解できても、「機能の全廃」や「著しい障がい」とはどのような状態なのかイメージするのは、難しいですよね。
上肢の部位別に見た等級ごとの機能障がい
上肢の部位別に見た等級ごとの機能障がいについては、以下の通りです。
一上肢の 機能障がい |
・全廃(2級):肩関節、肘関節、手関節、手指のすべての機能をなくした状態 ・著しい障がい(3級):握る、摘むといった手や指先の機能、物を持ち上げる、運ぶといった腕の機能が低下し、5kg以内のものしか下げられない、もしくは一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうちいずれか二関節の機能をなくした状態 ・軽度の障がい(7級):精密な運動ができない、10kg以内のものしか下げられない |
肩関節の 機能障がい |
・全廃(4級):関節可動域が30度以下、または徒手筋力テストで2以下 ・著しい障がい(5級):関節可動域が60度以下、または徒手筋力テストで3以下 ・軽度の障がい(7級):関節可動域が90度以下、または徒手筋力テストで4に相当 |
肘関節の 機能障がい |
・全廃(4級):関節可動域が10度以下、高度の動揺関節(関節がグラグラして安定しなかったり、通常では曲がらない方向に曲がる)、または徒手筋力テストで2以下 ・著しい障がい(5級):関節可動域が30度以下、中等度の動揺関節、徒手筋力テストで3に相当、または前腕の回内及び回外運動が可動域10度以下 ・軽度の障がい(7級):関節可動域が90度以下、軽度の動揺関節、または徒手筋力テストで4に相当 |
手関節の 機能障がい |
・全廃(4級):関節可動域が10度以下、または徒手筋力テストで2以下 ・著しい障がい(5級):関節可動域が30度以下、または徒手筋力テストで3に相当 ・軽度の障がい(7級):関節可動域が90度以下、または徒手筋力テストで4に相当 |
手指の 機能障がい (五指全体) |
・全廃(3級):掴む、握るなどの指の動作がまったくできない、または手の握力が0kg ・著しい障がい(4級):5kg以内のものしか下げられない、または手の握力が5kg以内 ・軽度の障がい(7級):精密な運動ができない、10kg以内のものしか下げられない、手の握力が15kg以内 |
参考:東京都福祉局 東京都心身障がい者福祉センター「障がい種類ごとの基準(3)肢体不自由」
全廃とは、機能をなくしていたり、可動域が非常に狭かったりする状態です。このように上肢機能障がいの等級は、手を使った繊細な動作ができるかどうかにダイレクトに影響するため、関節ごとに複雑に基準が決められています。
上肢機能障がい者への配慮ポイント
- つり革を持つ、手すりを掴むなど、体を支えるのが難しい場合があるため、ラッシュ時の通勤は避けるように配慮する
- 重いものを持つことができない場合、サポートする
- 素早くメモを取るのが難しい場合、代筆したり、ボイスレコーダーの活用を勧める
- パソコンの入力支援ソフトや支援機器の導入を検討する
等級によって、できることとできないことが違います。その人の障がいの程度に合わせて配慮しましょう。
下肢機能障がい
下肢機能障がいの等級は、以下のように1~7級まで(身体障がい者手帳の交付は6級まで)あります。
下肢機能障がいの等級
1級 |
1.両下肢の機能を全廃したもの 2.両下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの※1 |
2級 |
1.両下肢の機能の著しい障がい 2.両下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの※2 |
3級 |
1.両下肢をショパー関節以上で欠くもの※3 2.一下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの※4 3.一下肢の機能を全廃したもの |
4級 |
1.両下肢のすべての指を欠くもの 2.両下肢のすべての指の機能を全廃したもの 3.一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの※4 4.一下肢の機能の著しい障がい 5.一下肢の股関節または膝関節の機能を全廃したもの 6.一下肢が健側に比して10㎝以上または健側の長さの10分の1以上短いもの |
5級 |
1.一下肢の股関節または膝関節の機能の著しい障がい 2.一下肢の足関節の機能を全廃したもの 3.一下肢が健側に比して5㎝以上または健側の長さの15分の1以上短いもの |
6級 |
1.一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの※5 2.一下肢の足関節の機能の著しい障がい |
7級 |
1.両下肢のすべての指の機能の著しい障がい 2.一下肢の機能の軽度の障がい 3.一下肢の股関節、膝関節または足関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障がい 4.一下肢のすべての指を欠くもの 5.一下肢のすべての指の機能を全廃したもの 6.一下肢が健側に比して3㎝以上または健側の長さの20分の1以上短いもの |
参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表」
下肢の部位別に見た等級ごとの機能障がい
上肢機能障がいと同様に、「全廃」や「著しい障がい」というのはどのような状態なのかわかりにくいですよね。下肢の部位別に見た等級ごとの機能障がいについては、以下の通りです。
両下肢の 機能障がい |
・全廃(1級):下肢全体の指示性と運動性を失い、立っていることも歩くことも不可能な状態 ・著しい障がい(2級):1人で歩くのは不可能だが、室内での補助的歩行(補装具なし)が可能な状態 |
一下肢の 機能障がい |
・全廃(3級):下肢全体の筋力低下のため、患肢で立っていられない、または大腿骨か脛骨の骨幹部偽関節のため患肢で立っていられない ・著しい障がい(4級):1km以上の歩行ができない、30分以上立っていられないなどの状態 ・軽度の障がい(7級):2km以上の歩行ができない、1時間以上立っていられないなどの状態 |
股関節の 機能障がい |
・全廃(4級):各方向の可動域が10度以下、または徒手筋力テストで2以下 ・著しい障がい(5級):可動域が30度以下、または徒手筋力テストで3に相当 ・軽度の障がい(7級):可動域が90度以下、または徒手筋力テストで4に相当 |
膝関節の 機能障がい |
・全廃(4級):関節可動域が10度以下、高度の動揺関節(関節がグラグラして安定しなかったり、通常では曲がらない方向に曲がる)、または徒手筋力テストで2以下 ・著しい障がい(5級):関節可動域が30度以下、中等度の動揺関節、徒手筋力テストで3に相当、または前腕の回内及び回外運動が可動域10度以下 ・軽度の障がい(7級):関節可動域が90度以下、軽度の動揺関節、または徒手筋力テストで4に相当 |
足関節の 機能障がい |
・全廃(5級):関節可動域が5度以下、高度の動揺関節、または徒手筋力テストで2以下 ・著しい障がい(5級):関節可動域が10度以下、中等度の動揺関節、または徒手筋力テストで3に相当 ・軽度の障がい(7級):関節可動域が30度以下、軽度の動揺関節、または徒手筋力テストで4に相当 |
足指の 機能障がい |
・全廃(7級、両側の場合は4級):下駄や草履をはくことのできない状態 ・著しい障がい(両側の場合で7級):特別の工夫をしなければ下駄や草履をはくことのできない状態 |
参考:東京都福祉局 東京都心身障がい者福祉センター「障がい種類ごとの基準(3)肢体不自由」
下肢機能障がい者への配慮ポイント
全廃とは、機能をなくしていたり、可動域が非常に狭かったりする状態です。車椅子の他に、義足や歩行補助杖、歩行器などの補装具を利用して、機能を補完している方もいます。
等級によって、残された下肢の長さや使える機能が異なります。その人の障がいの程度に合わせて配慮しましょう。このような下肢機能障がい者への配慮ポイントは、以下の通りです。
- 通勤ラッシュを避けるため、時差出勤や時短勤務、在宅勤務、車通勤を認める
- 通路幅の確保や段差の解消など、バリアフリー化する
- 重量物の運搬や、立作業、頻繁な移動、かがむ作業、階段昇降が必要な作業を避ける
- 適度に休憩を設けて、下肢が固まらないように歩き回ることを許可する
まとめ
身体機能の障がい等級は、専門的な診断を経て慎重に判定されます。これらの等級は、障がいの種類や程度に応じた適切な支援を受けるための重要な基準です。理解が難しい部分もありますが、専門医の説明や具体的な事例を通じて、より正確なイメージを持つことができるでしょう。
参考
身体障がい者手帳の等級一覧│基準や違い、等級別のサポートを解説
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