男性は外食、女性はつまみ食いに要注意?心臓疾患予防戦略:生活習慣の違いと注意点
心臓の病気を予防する方法について、「神の手」として知られる心臓血管外科医、天野篤さんは最近の研究で男性と女性の間に血管と心臓の疾患発症リスク因子に違いがあることが分かったと語っています。男女それぞれが留意すべき生活習慣があるということです。
疾患発症リスク因子に「いくつかの違い」
2022年9月に、男性と女性の間に心臓と血管の疾患発症リスク因子に「いくつかの違い」があることが、世界的医学誌『ランセット』で報告されました。カナダのマックマスター大学の医師らが、35~70歳の約15万6000例を対象にした大規模前向きコホート研究において、脂質=コレステロールとうつ症状が男性の心血管疾患リスクと関連が強く、一方女性では食事が関連していると述べられました。
発症数や症状に明確な差
男女の心臓疾患には発症数や症状に明確な差があり、たとえば、高齢女性では大動脈弁狭窄症が多く見られますが、男性は冠動脈疾患が主な特徴です。このような差異は、ホルモンの働きや生活習慣の違いによるものと考えられています。
男性は特に20~50代や60歳以上でも外での活動が多く、外食や飲酒が頻繁に行われることが挙げられます。外食では高カロリーかつ高脂肪のメニューが多く、野菜や豆類、海藻などの摂取が不足しがちになり、コレステロール値が上昇しやすくなります。
LDLコレステロールの増加は主なリスク因子
LDLコレステロールの増加は動脈硬化を促進し、これは心臓疾患や脳卒中の主なリスク因子となります。なぜ男性において脂質とうつ症状が心血管リスクと関連が強いのかは明確ではありませんが、これらの要因が影響している可能性があります。
うつ症状が現れやすい環境で生活
現在では女性にも言えることですが、長時間外で働く人々は、仕事の成果を求められたり、夜遅くまで多くの仕事をこなしたり、職場での人間関係などで大きなプレッシャーを受けることが少なくありません。その結果、精神的な負担が増大し、うつ症状が現れやすい環境で生活していると言えます。
ホルモンが大きく関与
以前は「長時間外で働く」といえば男性でしたが、その活力にはホルモンが大きく関与していました。しかし、現在では男性のテストステロンというホルモンの値が年齢とともに減少し、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)として知られる男性更年期障がいの認識も高まっています。これは男性のメンタル面にも影響を及ぼします。
血管や血流に悪影響を与え心臓に負担
うつ症状はストレスと深く関わっており、自律神経のバランスが崩れて副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンの血中濃度が増加し、神経伝達物質が増えることがあります。これらの変化が過剰になると血管や血流に悪影響を与え、心臓に負担をかける可能性があります。
一方、女性の場合、心臓疾患のリスク因子として「食事」との関連が強かったのは、家庭での時間が長いことが一因と考えられます。
結婚を機に専業主婦になった方に傾向が顕著
近年、外で働く女性も増えていますが、結婚を機に専業主婦として家庭に入るケースも多く見られます。特に心臓疾患のリスクが高まる高齢世代の女性では、この傾向が顕著です。
家庭では食品が豊富に備蓄されており、食べ物を手軽に口にすることが簡単です。甘いものやお菓子をつまみ食いする習慣もあります。これらの摂取が内臓脂肪の増加や肥満を引き起こす可能性があります。
また、家庭での過ごし方が多い女性は運動不足になりやすく、さらに肥満を招きやすい状況です。肥満は脂質異常症や高血圧、糖尿病のリスクを高めます。これらの疾患が同時に存在すると、動脈硬化が進行し、心臓疾患の発症リスクが高まります。
男性と女性ではかかりやすい心臓疾患が異なる
最近の研究では、人工甘味料の摂取量が多い人は心血管疾患のリスクが上昇することが報告されています。近年、人工甘味料を含むスナック菓子や低カロリーの飲料、インスタント食品が増えていますので、無意識にこれらを摂取することに注意が必要です。
研究論文では、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要」と述べられていますが、その前提として、男性と女性ではかかりやすい心臓疾患が異なり、注意すべき生活習慣も異なることを認識しておく必要があります。
ベストな治療を受けることが重要
心臓と血管の治療は日々進歩しており、将来さらに進化した治療法が登場する可能性もあります。しかし、心臓の不調がある場合は、進歩した治療法を待つのではなく、現在行われているベストな治療を受けることが重要です。その上で、将来の体の変化に備えておくことが大切です。
万一の場合、新しい治療法は必ず役立ちます。心臓と血管の治療では、今日の備えが将来に生きてくることがあります。
心血管疾患:その予防と治療
心血管疾患は、心臓や血管に関わる病気の総称であり、世界中で最も多くの死亡原因の1つとなっています。この記事では、心血管疾患についての基本的な情報、予防法、そして治療について紹介します。
心血管疾患の種類
心血管疾患には、さまざまな種類があります。その中でも代表的な疾患には以下のものが含まれます。
- 冠動脈疾患(CAD):冠動脈の狭窄や閉塞によって、心筋への血液供給が不足し、心筋梗塞(心臓の一部が壊死する状態)や狭心症(胸部の痛みや圧迫感を引き起こす状態)などが発生します。
- 脳血管疾患:脳の血管に異常が起こることで、脳卒中(脳の血管が詰まったり破れたりして脳組織が壊死する状態)が引き起こされます。
- 心不全:心臓が適切に血液を送り出せない状態であり、慢性的な疾患であることが多いです。心臓のポンプ機能が低下し、全身への血液供給が不十分になります。
これらの疾患は、個々の症状や進行度合いによって異なる治療法が必要となります。また、早期発見と治療が重要であり、定期的な健康診断やリスク因子の管理が不可欠です。
リスク因子
心血管疾患のリスク因子には、以下のようなものがあります。
- 高血圧:血圧が正常範囲を超えると、血管や心臓に負担がかかり、心血管疾患のリスクが上昇します。
- 高コレステロール:LDLコレステロールが高いと、動脈硬化が進行し、血管が詰まりやすくなります。
- 喫煙:喫煙は血管を収縮させ、血栓ができやすくなるため、心血管疾患のリスクが高まります。
- 肥満:過剰な体重は心臓や血管に負担をかけ、心血管疾患のリスクを増加させます。
これらのリスク因子を適切に管理し、健康な生活習慣を実践することが心血管疾患の予防につながります。
早期の警告サイン
心血管疾患の早期の警告サインには、以下のようなものがあります。
- 胸部の圧迫感や痛み:狭心症や心筋梗塞の典型的な症状として現れます。
- 息切れや動悸:心臓の機能低下によって引き起こされることがあります。
- めまいや失神:脳血管疾患の症状として現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、早急に医師の診察を受けることが重要です。心血管疾患は生活習慣や遺伝などの要因によって引き起こされる可能性がありますが、適切な予防策や早期の治療を行うことで、そのリスクを減らすことができます。正しい知識と健康的な生活習慣の維持が、心臓と血管の健康を守るための重要な鍵となります。
心血管疾患の予防
健康な食生活
健康な食生活は心臓と血管の健康を維持するために非常に重要です。具体的には、以下の点に留意することが勧められます。
- バランスの取れた食事:食事は主食、主菜、副菜などのバランスを考え、栄養素をバランスよく摂取することが重要です。過度な栄養不良や栄養過多を避けるようにしましょう。
- 野菜や果物の摂取:野菜や果物には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれており、心臓と血管の健康に良い影響を与えます。1日に推奨される摂取量を意識して摂取しましょう。
- 全粒穀物の選択:白米や白パンなどの精製された穀物ではなく、全粒穀物を選ぶことで食物繊維や栄養素を豊富に摂取することができます。
- 飽和脂肪や塩分の控える:飽和脂肪は動脈硬化を促進し、塩分は高血圧を引き起こす原因となります。加工食品や高カロリーの食品に含まれるこれらの成分を控えることが大切です。
適度な運動
適度な運動は心臓と血管の健康を促進するために不可欠です。以下の点に留意しましょう。
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は心臓と血管を強化し、血流を改善します。
- 筋力トレーニング:筋力トレーニングは筋肉の強化だけでなく、代謝を促進し、体重を管理するのにも役立ちます。
- 日常生活に運動を取り入れる:エレベーターやエスカレーターを使わず階段を使ったり、公共交通機関を利用する際に歩く距離を増やしたりするなど、日常生活に運動を取り入れる努力をしましょう。
禁煙
喫煙は心血管疾患のリスクを大きく高める要因の1つです。禁煙を心がけることで、心臓と血管の健康を守ることができます。必要なら禁煙治療やサポートを受けることも考えましょう。
適切な体重の維持
肥満は心血管疾患のリスクを高める要因の1つです。適切な体重を維持するためには、適切な食事と運動が必要です。バランスの取れた食事と適度な運動を行い、健康的な体重を維持しましょう。
心血管疾患の治療
心血管疾患の治療は、症状や疾患の進行具合に応じて異なります。一般的な治療法には、以下のようなものがあります。
- 薬物療法:血圧やコレステロールを下げる薬物が処方されることがあります。
- 血管内治療:血管内にバルーンを挿入して狭窄部を広げる血管内治療が行われる場合があります。
- 心臓手術:重症の場合には、バイパス手術や心臓弁の置換手術などの手術が必要となることがあります。
まとめ
心臓の健康を守るためには、男性と女性がそれぞれ留意すべき生活習慣が存在します。最新の研究によれば、性別によって心血管疾患の発症リスク因子に違いがあります。そのため、個々の生活環境やリスク要因を認識し、適切な予防策を取ることが重要です。未来の治療法に期待しつつも、現在行われているベストな治療を受け、今日の備えを怠らないことが、将来の健康を守る鍵となります。
心血管疾患は深刻な健康問題であり、予防が重要です。健康な生活習慣の維持や定期的な健康診断を通じて、心臓と血管の健康を保つ努力が必要です。また、症状が現れた場合は、早めの治療を受けることが重要です。心臓と血管の健康を守るために、生活習慣の見直しや医師との定期的な相談が必要です。
参考
その食べ方が心臓と血管の病気を引き起こす…最新の論文で報告された「死を招く生活習慣の男女差」 男性は外食、女性はつまみ食いに要注意 #プレジデントオンライン
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