男性も更年期障がいになる?テストステロンの役割と治療法に迫る
「朝起きたらなんとなくだるいし、やる気が起きないんだよね。健康診断では異常はないって言われたけど、どうも調子が出ないんだ」と不調を訴えるAさん。そんな症状に対して、男性更年期障がいの可能性を指摘するのは、Dクリニック東京のメンズヘルス外来で診察を行う辻村晃医師です。
彼は、このまま放置すると記憶力の低下や動悸・息切れ、EDといった症状が現れる可能性もあると警告しています。そして、男性更年期障がいの治療法の一つであるテストステロン療法について説明します。
男性も更年期障がいになる
男性も更年期障がいにかかる可能性があるというのは、意外な情報かもしれません。女性の場合は閉経と共に女性ホルモンが急激に減少するため、その影響が顕著ですが、男性の場合は20~30歳をピークに男性ホルモンが徐々に減っていきます。その結果、疲れやすくなったりやる気が低下したりする症状が表れるのです。
男性ホルモンのメカニズム
男性ホルモンと言われるものは、主に精巣と副腎で作られます。精巣で作られるテストステロンが男性ホルモンの主要な成分であり、体内で作られる男性ホルモンの95%を占めます。一方、副腎で作られるのは残りの5%で、デヒドロエピアンドロステロンやアンドロステンジオンなどが含まれます。
このメカニズムは、脳の下垂体から精巣に性腺刺激ホルモンが分泌され、精巣でテストステロンが作られるプロセスで進行します。
テストステロンは肉体、脳、精神の各面で重要な役割
テストステロンは肉体、脳、精神の各面で重要な役割を果たしています。特に分かりやすいのが男児の第二次性徴で、中学生前後の思春期にテストステロンの影響で骨格や肉体が成長し、男性特有のたくましい体が形成されます。このため、スポーツ競技ではテストステロンが筋肉増強剤として禁止されています。
思春期になると射精ができるようになったり性に関心を寄せるようになるのも、テストステロンの影響です。テストステロンは精巣内で精子の生成を促進し、性欲を高める効果があります。
脳内の神経細胞の新生を促進する
さらに、最近の研究ではテストステロンが脳内の神経細胞の新生を促進することがわかっています。新たな神経細胞が生成されることで、記憶、思考、理解、判断などの認知機能が向上することが期待されます。また、テストステロンは多幸感ややる気を生むドーパミンの産生を促す働きもあります。
つまり、テストステロンは肉体、脳、精神の各面で重要な役割を果たしており、健康な男性生活に欠かせないホルモンなのです。
肉体的な変化が現れる
辻村医師によれば、男性更年期障がいにおいては、まず肉体的な変化が現れます。筋肉量が減少するため、代謝が低下しやすくなり、結果として太りやすくなります。また、疲れやすくなることや、関節に痛みを感じることもあります。
性機能においても、問題が生じることがあります。勃起が難しくなったり、症状が現れることがあります。これらの問題があると、性行為への欲求が低下することもあるとのことです。
脳の働きの低下
脳の働きに関しては、記憶力や集中力の低下が挙げられます。男性更年期障がいでは、記憶力が低下し、日常のタスクに集中するのが難しくなることがあります。また、精神面ではイライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりするケースもあります。これらの変化が生じることで、日常生活や仕事への取り組みが困難になることがあります。
自律神経系の症状
辻村医師によれば、テストステロンの減少によってホルモンバランスが崩れることで、さまざまな自律神経系の症状が現れることがあります。耳鳴り、めまい、多汗、手足の冷え、動悸・息切れなどがその代表例です。
しかし、これらの症状が出ても、自分でそれがテストステロンの減少によるものだと気づきにくいことが課題です。一般的な健康診断や人間ドックではテストステロンの値を計測することはないため、症状が進行し、生活の質が低下してしまうこともあります。
男性更年期障がいの可能性
これらの症状がある場合は、男性更年期障がいの可能性が考えられます。幸いなことに、メンズケア系のクリニックや男性更年期障がい外来では、血液検査によってテストステロン値を測定することができます。一度数値を確認してみることも、症状の原因を特定する上で重要です。
テストステロンを増やす方法
テストステロンを増やす方法にはいくつかあります。まず、食事に注目しましょう。バランスの取れた食事を心がけ、特に亜鉛とたんぱく質を積極的に摂取することが重要です。亜鉛は牡蠣、ホタテ、うなぎ、たらこ、牛肉、レバー、カシューナッツなどに多く含まれています。たんぱく質は卵、肉類、魚類、大豆類、牛乳などから摂取できます。
また、筋力トレーニングを行うことでテストステロンの分泌を促進することもできます。特に、太ももやお尻などの筋肉量を増やす効果が期待できるスクワットなどのエクササイズがおすすめです。
筋トレに抵抗がある方もいますので、最初はエスカレーターではなく階段を使う、歩行を早歩きにするなど、身近な活動から始めてみることが大切です。
生活習慣も重要
また、十分な睡眠時間を確保し、ストレスを軽減することも重要ですが、これらは生活習慣の改善が必要です。生活習慣の変化は簡単にはできないものですから、その間にテストステロン療法を取り入れることをおすすめしています。
テストステロン療法
テストステロン療法は、血中のテストステロン濃度を増やすためにホルモンを注射や塗り薬で投与する治療です。注射は通常2〜3週間に1回の投与ですが、塗り薬は1日1回、陰嚢に塗布して吸収させます。注射は比較的すぐに効果を感じることができますが、塗り薬はじっくりと効果が現れるイメージです。
テストステロン療法の治療期間には特に決まった規定はなく、3カ月で効果を実感したから一旦中断する、または調子が良いので継続するといった個人差があります。治療のペースは基本的には医師と相談しながら決めていきます。効果を実感できる人の割合については、辻村医師の経験から言うと、症状の改善が見られるのはおおよそ7割程度だと考えています。
副作用もあるため注意
一般的にテストステロン療法は自由診療ですが、注射1本の費用は数千円程度です。効果を実感できる人も多いため、費用面でのハードルは高くありません。ただし、副作用として前立腺疾患や多血症などがあるため、医師には事前に自身の病歴などを正確に伝える必要があります。
自覚しにくい障がい
男性更年期障がいに苦しんでいる人は自覚しにくいこともありますので、自分で気づかない場合でも一度クリニックを受診してみることが大切です。自身の健康や生活の質を向上させるためにも、積極的な行動を心掛けましょう。
男性更年期障がい:中年男性が直面する健康上の課題
男性更年期障がいは、女性の更年期障がいと同様に、中年期以降の男性が経験する可能性のある健康上の課題です。しかし、一般的な認知度は低く、症状が他の病気や単なるストレスと混同されることがあります。そこで、本記事では男性更年期障がいの定義、症状、原因、治療法について解説します。
男性更年期障がいとは
男性更年期障がいは、男性ホルモンであるテストステロンの減少に伴って起こる一連の身体的、精神的な変化を指します。通常、40歳から60歳の男性に現れることが多く、テストステロンの減少によってさまざまな症状が引き起こされます。
症状
男性更年期障がいの症状は個人によって異なりますが、一般的な症状には以下が含まれます。
- 疲労感やエネルギーの低下
- 怒りっぽさやイライラ感
- 性欲の低下や勃起障がい(ED)
- 筋肉量の減少や体脂肪の増加
- 睡眠障がいや集中力の低下
- 記憶力の低下や気分の変動
原因
男性更年期障がいの主な原因は、年齢とともにテストステロンの自然な減少です。しかし、生活習慣やストレス、遺伝的要因なども影響を与える可能性があります。
治療法
男性更年期障がいの治療法にはいくつかの選択肢があります。
- 生活習慣の改善:バランスの取れた食事、適切な運動、十分な睡眠を心がけることが重要です。
- テストステロン療法:テストステロンの補充を目的とした治療法で、注射や塗り薬などがあります。
- カウンセリングや心理療法:症状の管理やストレスの軽減に役立つことがあります。
まとめ
男性更年期障がいは、多くの人々が意識していない可能性がありますが、その症状は生活に大きな影響を与えることがあります。テストステロンの減少が引き起こす可能性がある症状に対して、早めの対策や適切な治療を行うことが重要です。自身の健康や生活の質を向上させるためにも、一度クリニックを受診してみることをおすすめします。
参考