【令和3年度報酬改定】就労移行支援
【令和3年度報酬改定】就労移行支援
令和3年度障害福祉報酬改定では、就労定着率が高い就労移行支援事業所は基本報酬が上がったり、就労定着率を決める期間が約半年から約1年半に変わったりするなど、事業所がより良いサービスを提供できるように改定されています。
令和3年2月4日に発表された、就労移行支援の令和3年度報酬改定のおもな内容をまとめました。
就労系に関する改定内容
就労系全体に関する改定内容をご説明いたします。
改定内容は以下のとおりです。
・新型コロナウィルスの影響をふまえた実績の算出
・在宅サービス利用の要件の見直し
・一般就労への移行を促進
新型コロナウィルスの影響をふまえた実績の算出
新型コロナウィルスの影響をふまえた実績の算出ができます。令和3年度の報酬算定は、令和元年度または令和2年度の実績を用いなくてもよいとされます。
- 就労移行支援
次のいずれか2カ年度間の実績で評価
(Ⅰ)令和元年度及び令和2年度
(Ⅱ)平成30年度及び令和元年度
在宅でのサービス利用の要件の見直し
令和3年度から、在宅でのサービス利用要件が緩和されます。
- 利用者要件
在宅でのサービス利用を希望しており、在宅でのサービス利用による支援効果があると市町村が認めた利用者。
- 事業所要件
・ 在宅利用者が行う作業活動、訓練等のメニューが確保されていること。
・1日2回の連絡、助言または進捗状況の確認、日報作成を行うこと。作業活動、訓練等の内容などに応じ、1日2回を超えた対応を行うこと。
・緊急時の対応ができること。
・疑義照会等に対し、随時、訪問や連絡等による必要な支援が提供できる体制を確保すること。(ここまで現行と同じ)
・事業所職員による訪問、利用者の通所または電話・パソコン等のICT機器の活用により、評価等を1週間につき1回は行うこと。
・原則として月の利用日数のうち1日は事業所職員による訪問または利用者による通所により、事業所内において訓練目標に対する達成度の評価などをすること。
・1週間に1回の評価が通所により行われ、あわせて、月1回の訓練目標にたいする達成度の評価なども行われた場合、月1回おこなう評価などによる通所に置き換えてもよい。
・在宅と通所による支援を組み合わせることも可能。
一般就労への移行を促進
一般就労への移行に更なる評価があたえられます。また一般就労への移行や工賃の向上を目指すため、施設外就労加算を廃止・再編。一般就労への移行実績が高い事業所や、高い工賃を実現する事業所、地域連携の取り組みへの評価に組み替えられます。
就労移行支援の改定内容
就労移行支援の改定内容は以下になります。
・基本報酬の見直し
・就労定着率の算出方法を変更
・支援計画会議実施加算を新設
・医療連携体制加算の見直し
・就労移行支援員の人員基準を緩和
・身体拘束などの適正化
・福祉・介護職員等に関する加算の見直し
基本報酬の見直し
就労定着率が低い事業所は基本報酬が下がり、就労定着率が高い事業所はさらに評価が上がる、というかたちになっています。就労定着率の向上を目指して、より励むことが求められています。
画像:令和3年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容
就労定着率の算出方法を変更
基本報酬の区分にかかわる就労定着率。改定前は、「前年度の利用定員÷前年度就労を継続している人の数」と算出していましたが、改定後は2年間に引き延ばされ、「前年度と前々年度の利用定員÷前年度と前々年度、就労を継続している人数」に変更されます。就労定着率が決まる期間が、半年から1年半に伸びることになるので、余裕が出てきますね。
支援計画会議実施加算の新設
地域のノウハウを活用し、アセスメントの質を高めるため、「支援計画会議実施加算」が新設されました。
施設利用者の就労移行支援計画の作成や見直しのとき、外部の関係者を交えた会議をおこない、関係者の専門的な意見を求め、就労移行支援計画の作成や見直しをしたとき、1か月に1回(年4回が限度)、「支援計画会議実施加算」があたえられます。
支援計画会議実施加算・・・583単位
医療連携体制加算の見直し
医療連携体制加算の報酬単位は、医療的ケアがあるかどうか等で区分されるようになります。また、原則、利用者を診察している主治医から個別に受けるものを「医師からの指示」とすることが決められます。
看護職員が看護する利用者 |
単位数 |
|
医療連携体制加算(Ⅰ) |
32単位 |
|
医療連携体制加算(Ⅱ) |
63単位 |
|
医療連携体制加算(Ⅲ) |
125単位 |
|
医療連携体制加算(Ⅳ) |
1人 |
800単位 |
2人 |
500単位 |
|
3人以上8人以下 |
400単位 |
|
医療連携体制加算(Ⅴ) |
500単位 |
|
医療連携体制加算(Ⅵ) |
100単位 |
就労移行支援員の人員基準を緩和
現行では、常勤換算方法で「利用者の数÷15」をした数以上を配置し、うち1人以上は常勤でなければいけない、としていました。この「うち1人以上は常勤でなければいけない」という条件がなくなります。
身体拘束の適正化
事業の運営基準に、身体拘束に関する要件が追加されます。
①身体拘束をおこなうときは、その態様や時間、利用者の心身の状況、やむを得ない理由、そのほか必要な事項を記録すること。
②身体拘束の適正化のための対策検討委員会を開き、委員会の検討結果を徹底して従業員へ周知すること。
③身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。
④従業者へ、身体拘束等の適正化のための研修を定期的におこなうこと。
②~④は1年間の準備期間を設け、令和4年度から義務化されます。
①の運営基準を満たしていない事業所は「身体拘束廃止未実施減算」が適用され、基本報酬が減算されます。
②~④は令和5年4月以降から、身体拘束廃止未実施減算の要件に加えられます。
身体拘束廃止未実施減算・・・5単位/日
福祉・介護職員処遇改善加算・処遇改善特別加算の見直し
福祉・介護職員処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)と、福祉・介護職員処遇改善特別加算は、1年間の経過措置を設けて廃止されます。
また加算率の算定方法は、障害福祉サービス等経営実態調査にある従業者数や報酬請求事業所数を用いて、加算率が算定されることになります。類似する複数のサービスはグループ分けし、加算率が算定されます。
就労移行支援の加算率は以下のように見直されました。
(Ⅰ)所定単位数× 6.4%
(Ⅱ)所定単位数× 4.7%
(Ⅲ)所定単位数× 2.6%
※指定障害者支援施設の場合
(Ⅰ)所定単位数× 6.4%
(Ⅱ)所定単位数× 4.9%
(Ⅲ)所定単位数× 2.7%
(Ⅳ)(Ⅲ)の90/100
(Ⅴ)(Ⅲ)の80/100
職場環境要件も変更されました。職場環境の改善につながる取り組みは、当該年度に実施することを求められます。ただし、継続して処遇改善加算を取得している事業所は、当該年度に実施できない正当な理由がある場合、例外的に前年度の取り組み実績で要件を満たすことができます。
福祉・介護職員等特定処遇改善加算の見直し
福祉・介護職員等特定処遇改善加算の平均の賃金改善額の配分ルールが変更されます。「経験・技能のある障害福祉人材」は「ほかの障害福祉人材」の「2倍以上とすること」としているルールを、「より高くすること」に見直されました。
また福祉・介護職員等処遇改善加算と同じく、類似している複数のサービスはグループ分けし、加算率が設定されます。
(Ⅰ)所定単位数× 1.7%
(Ⅱ)所定単位数× 1.5%
指定障害者支援施設の場合は、(1月につき +所定単位数×1.8)が加算率になります。
まとめ
就労移行支援の令和3年度障害福祉報酬改定では、就労定着率の高い事業所はさらに評価されます。また、就労定着率が決まる期間が半年から約1年半と伸ばされたので、事業所は余裕をもって障がい者をサポートできるようになります。
このほか全サービスに関わる報酬改定の内容は別記事にまとめたので、ご参考ください。
【令和3年度障害福祉サービス報酬改定】全サービス
<<参考>>